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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (70)

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次の私にバトンを渡すのは…これ以上は…無理。
うん、何度、冷静に考えても現実的じゃない、そもそも、過去に情報を飛ばさないといけない状況ってことは、かなり奥地に進んで敗戦してしまった状況ってことでしょ?
そうなると魔力が底を突いているはず、過去に飛ばすだけの余力何て無い。
そもそも、計算してないから!敗戦するって状況を想定して魔力を残すなんて計算していない!!

っていうか、計算できるわけがない…

未知すぎて、どれ程の魔力があれば勝てるか何て計算のしようがない、下手に余力を残せるほど余裕なんて無い。
だから、戻ることを考えてはいけない全力を出しつくす、全ての魔力を使い切るつもりで戦う…次の私に託す…そんな事を考えない!後ろを見ない!戦う前から負けることを考える馬鹿がいるかよ!ってね!!

こうやって、何度も自分自身を鼓舞して誤魔化してきているけれど…
わかってるよ…負けた状況で戻るってことは、ことはだよ?そうなるってことは…
ぅぅ、想像するだけで胸が裂けて心臓が止まってしまいそう…

…勇気くんを失ってからになると思う
そんな状態で過去の私に情報を渡したらどうなる?


考える迄も無い


狂うに決まっている…
耐えきれるわけがない、精神が砕ける…
それ程の愛を知った、それ程の愛を得た、狂おしい程に我儘に、強欲な願いを抱くほど…
私の全てを変えてしまう程にその輝きは強い

太陽よりも…私の心を焼いて妬いてヤキツクシテしまう程に彼の輝きは強いの。
それほどにまで…彼の存在は大きい…全てを見たしつくす白き輝き…
正に、彼こそが私にとっての…白き黄金の太陽…

その輝きに、私の…私達の全てが満たされてしまった…
今だからこそ解かる理解できるよ。お母様、お母さん…
誰かを愛する、誰かに愛してもらう、愛が通じ合うってこんなにも尊く強く激しいモノなんだね…


未来が欲しい…
人並の寿命が欲しい…


遠い昔に諦めた夢を最近はずっと抱いてしまう。欲してしまう。そうなると…
自然と私の手はお臍の下辺りを摩ってしまう、新しい癖が出来てしまった…
新しい癖でお腹を摩りながら共に戦った人達ともに一時帰還する為に移動を開始する。
当然、遠足に出たんだからお土産を持って帰らないとね!現地で手に入れたモノはしっかりと再利用しないとね☆彡

…惜しむらくは虫呼びの魔道具を解析したかったかなー、周波数とか波長とか、どんな原理で音をワームに伝え、ワームに指示を出しているのか知ることが出来たらワーム共を此方側で操ることが出来たんだけどなぁ…
ちらりと人型だったものに視線を向けると魔道具は粉々になったのかどこにも見当たらない…
何処かのタイミングで完全に砕けてなくなったんだろうね。加減なんて出来る余裕なんて無かったからしょうがないよね。しょうがいない、うん、しょうがない!
ッチっと心の中で舌打ちをしながら溜息を溢して歩き続ける…この感情はセーフティエリアに帰ったらお母さんにぶつけるように甘えよっと!

ぇ?勇気くんっていう相手が出来たのなら甘えるのは勇気くんにしろって?
それはそれ、これはこれ!勇気くんとお母さんとじゃ甘え方が違うの!こういう愚痴に近いモノはお母さんが一番良いの!

ふんっと鼻から全力で息を吐き捨て歩き続ける。

誰かに気が付かれない程度に溜息を吐きながらセーフティエリアへと向かって歩いていると
「それにしても、毎度のことながら、姫様は凄いですね」
獲物の下半身を抱えながら古くからの付き合いである一人の戦士が声を掛けてくれる。
やだ、溜息が聞こえちゃったかしら?気を遣わせちゃったかな?
心配かけない様に自称老骨の戦士には気丈に振舞わないとね☆彡
「ふふん、術式の神髄はまだまだ、これよりも凄いのがいっぱいだよ?若い頃の私とは比べ物にならないんだから、知ってるでしょ?私が何年も研鑽を積んできたのを」
長年の付き合いだからこそ彼には自然体で受け答えが出来る。
彼と共に戦っていた子供の時のように自慢げに胸を張ると
「ええ、知っておりますとも、力及ばずでしたが、私も共に研鑽を積んだ仲でございますれば、惜しむらくは、その術を我ら全員が扱えれたらと思う事ばかりですな、姫様のような卓越した技術を習得することが叶うのであれば、どんな戦況で在ろうと覆せれるのでしょうね…才能が開花しなかったのが悲しい限りですよ」
悲しそうな声を出しながら後ろを振り返って、術式が暴れた跡地を感慨深げに見つめている表情は悲しげであり、何処かセンチメンタルな雰囲気が滲み出ている。
昔を思い出しているのだろう。

懐かしいよね、この街にきて間もない頃、何度か私と共に出撃して戦った帰り道は、毎度のように感想を述べてくれたよね、このやり取りを懐かしく感じてしまう。

この数年、時間がある時に色んな戦士や騎士達に術式の講義を何度も行ったけれど…
彼が描く願いを叶えることは出来なかったかな~、何度も一緒に術式の訓練したんだけどね~

ただー、先ほど用いた術式の数々はねー、練習云々だけじゃないんだけどね。
先ほどの術式の殆どが体内で生み出せる魔力量だけでは再現不可能じゃないかな?
始祖様の術式を再現するときは何時だって複数の人で儀式のように複数人で発動しないと発動できない、もしくは、大量の魔力を連結させないとね、消費魔力量が桁違い
私達にも始祖様と同じくらいの魔力があれば、ね~…
私が扱う術式で人型に通用するものってなると始祖様の秘術がメインになるから、魔力が幾らあっても足らないんだよなぁ~…

魔力量が乏しい体に対して、つい不敬な考えに辿り着いちゃう。

始祖様の扱う術式は強力だけれど、魔力の消費量が始祖様基準なんだもんなぁー!
何でそんなのを伝えたんだっての!
なんつってね…始祖様はちゃんと考えてくれていた、道しるべを残してくれていたんだよ、力の使い道を正しい在り方を。

…分かってる、愚かなのは私達、力を託された人達が悪い
欲を出したのがいけない
力に溺れたのがいけない
全てを欲したのが良くない
自分の身の丈に会わない欲を…強欲を抱いたのが良くない、地球の教えにある通りだよね。

…死の50年、人の欲望が渦巻くことが無かったら、たぶん、始祖様の魔術を扱えきれたんだろうなぁ、数多くの人が…そうであれば、こんな追い詰められる様な状況に陥らなかったろうね。

はぁ、始祖様の血が最も濃い人達が今もしっかりと血を薄くせずに繋げてくれていたら、もっと楽だったんだろうなぁ!!欲望に飲まれた過去の貴族共のバーカバーカ!!
…どうして、その時代に私や勇気くんが居なかったんだろう?
居たとしても止めることが出来なかったかも、ね…力に溺れ大罪を犯し続ける人達を導くことなんて、出来る気がしないや。

気心の知れた二人がアンニョイな気分に包まれていると
「無知な俺に知恵を与えてもらっても良いだろうか?」
珍しくこの手の話題に乗ってきたのは珍しい人物、最近、戦士の座へとたどり着いた若人、パワータイプの一撃を受け流していた戦士の片割れ。
力こそパワーって感じで憧れの人はマリンさんな君が珍しいね?
パワーこそ全て一派に属する戦士が理の謎について質問なんて?
やっと、術式に興味を持ったの?

術式を愛するものとして、心の奥が笑顔になってしまう。
だったら、大歓迎かな!
平和な時代になったらさ、君たちの身体能力に回している魔力を術式に転用することが出来たらお仕事の幅が大きく広がるよ?

大歓迎だよっと意志を込めてにこやかな笑顔でコクリと頷くと
「不躾で無知な質問を許されたし」
ペコリを頭を下げてから疑問を尋ねられるんだけど、内容が良くない。
「時に姫様は死体であれば、どの様なモノでも…」
神妙な顔つきで危険なワードを…
敬虔なる信徒の人が聞いたら即座に首を出せと、断罪されてもおかしくない質問をしてくる…
その質問は危険だよ?ここにだって教会の敬虔なる信徒が居るんだよ?全てが終わったら極刑にされちゃうよ?
そんな敬虔なる信徒である一人の騎士もこの質問に興味を持ったのか聞き耳を立ててる。
正直に答えてあげないとね異端審問に呼び出される未来なんてご免こうむりたいよね
「出来ないよ…生前と同じ動き思考や動作を生きていた時のように動いてもらう事なんて出来るわけがない、が!モノとして扱う事なら出来るよ?君たちが今している様に持ち上げたりとか、鈍器として敵に投げつけたりとか、そういう感じで物としてなら扱えれるよ?もう一度言うけれど、死んだ人を生前のように魔力によって動いてもらうことは出来ないよ?」

語尾を強めて強調する”死者を蘇らせることは出来ない、死者と言葉を交わすことは出来ない、死者と意識を通わせることなどは出来ない”っと…うん、嘘じゃない。
今の私は出来ない、何時かの私は出来たかもしれないけれど、私は、まだその境地に至っていない。

「で、ですが…」
私の言葉が信じ切れないのか、眉間に皺を寄せて疑いの瞳で先ほどまで戦っていた現場を見ている?それ以外にも誰かを見ている?後方の誰を見ているのかな?
質問をしてくれた戦士の目線の先を辿っていくと、納得してしまう、それもそうだよね、あの一連の流れを傍で見ていたのなら、その疑問を抱いてもおかしくない!

…あーなるほどね?そういうことかっと、うんうんっと頷いて納得したよっと姿勢をとる。
「言ったでしょ、物としてなら扱えれるって」
彼が疑問を抱くのは至極当然!だって、彼の視線の先には…
複数人で神輿のように担がれながら運ばれるパワータイプの姿があり、運ばれている敵の背中が良く見える、物語っているよねパワータイプの強固な皮膚と筋肉を吹き飛ばした爆発について、だよね。
「っとなると?」
どうやら、言葉の意図に辿り着いていないみたいで首を傾げている、欲しがりさんだねー!
「っと言う事!先の説明通りだよ、自爆タイプの体を…自爆するための機構そのものを”そこにある爆発する物”として扱っただけだよ」
理解したのか皺を作っていた眉間から皺が無くなり気付きに脳内が蕩けているのか、嬉しそうに口角を上げている。
そんな彼に更に答えを投げつけてあげようじゃないか!
「機能停止した人型だからこそ”物”として扱うことが出来るんだよ、生きていたら物じゃなくて者でしょ?自由に動かす事なんて出来ないよ。簡単に説明するとね、掌握した自爆機構を何時でも爆発できるように術式によって誘発させておいて、自爆タイプの体を君たちが腕の力で持ち上げる様に、術式によって持ち上げて、君たちを倒す為に意識を前方へと向けていて後ろには誰もいないと油断しきっているパワータイプの背中にぶん投げて、自爆タイプの肉体を敵の背中に張り付かせてから、自爆機構を使って自爆タイプを爆発させたってだーけ」
ふんふんっと、鼻を広げて頷いている、今になって思い出しちゃった。
闘っている時に驚いてビクっと跳ねてたよね?きみ~、間抜けな人みたいにね。にへへ。
湧き上がるサディスティックな感情を表に出さない様に気をつけながら説明を続けていく。からかっちゃ可哀相だもんね。ここが戦場じゃなかったらからかい倒すんだけどね!
「非道で人とも思えぬ所業を選択肢に入れれるのも、あいつ等だからこそ、だよ?向こうだって騎士道精神とかそういうの空っぽでしょ?だからこそ、先のような非道で外道な作戦を躊躇うことなく用いただけ…人と人の決闘の末であれば、死に敬意を払うよ?でも、あいつ等にそんな敬意を示す必要なんて無いよね?なら、何時ものようにあいつらの肉体は研究や街の発展の為と同じように物として扱っただけ…もしかして、軽蔑しちゃった?」
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