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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (86)

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熱風を浴びながら体に魔力が廻ってくるのを待っていると
「ほほぅ、えげつない作戦じゃのぅ」
私の隣と言う最も安全な場所で呑気に戦場を眺めている、やっぱり物見遊山じゃん!
まぁいいけどさ…って、何で爆弾を手に持ってるの?誰だよ渡したの…一番危険な人に渡しちゃだめでしょ?
「この粘土の塊みたいなのが爆弾なんじゃろ?」
「そうだよ、粘土に見える特殊な物質、その中に特殊調合した火薬が幾重となる層となって入ってて、その球の中心に起爆剤となる術式を発動させる魔石が込められていて起爆剤によって爆発する様になってる、それ以外では爆発しないよ、叩きつけた程度じゃ暴発しないっていうか衝撃で爆発させないために衝撃を緩和するための特殊素材を造り上げたんだから」
つっても?起爆剤が誤爆すれば爆発するんだけどね!!迂闊な衝撃はどの道危険なんだけどね!!

頭と大きさが変わらない丸い粘土をぽむぽむと手のひらで叩いてる、それくらいの衝撃じゃ爆発しないからいいけど、やめてね?
それ、ここで爆発したら確実に私もラアキさんも死ぬからね?やめてね?本気でやめてね?
睨みつけると、叩くのは良くないのかと止めてくれる。
「使い方を聞いても良いかの?」
「仕様を聞きたいの?…他言無用だよ?」
神妙な顔で頷いてくれたので爆弾の中身を軽く説明していく

中心に起爆用の術式と発動するために必要な魔力が込められた極小の魔石。
その魔石を発動させるために導火線が表面まで伸びていて起動するための陣と繋がっている。
用意した火薬は前々からある衝撃や火種で爆発する火薬じゃない、特殊な火薬でただ火をつけるだけじゃ爆発しない
起動用の術式から生み出される光から生み出される熱量に反応して爆発する仕組みで、一発目の火薬が爆発すると、その爆発によって連鎖的に爆発する。
初手の火薬が一番爆発の衝撃がすさまじい、たぶん、近距離で爆発したら私が全力を出しても完全に防ぎきれないかもしれないほどの衝撃。
地球で言うところのC4くらいの威力はあるんじゃない?クレイモアくらいかな?まぁ、それを参考にしたんだけどね。
そして、粘土の中には、他にも、可燃性の物質も練り込んでいて爆発によって周囲に飛び散って後々に放つ火の矢によって引火させる、まぁ、いわゆる着火剤だね、固形燃料ってやつ?ぶっちゃけると油の塊みたいなもん、他にも細工があるけど!説明してる時間が足りない!
「ほうほう、爆発するだけが目的じゃないのか…姫ちゃんはえげつないものを作り出したのぅ」
悲しそうな、嬉しそうな、何とも言えない表情をしている。
自分が王を警護していた時代に無くて良かったと考えているのか、これがあれば、息子は生きて帰ってこれたんじゃないのかって考えてそう。
「…それについては何も言えないかな?っで、使い方はね、表面にさ文字が書かれている場所あるでしょ?」
起動用の術式を描いている陣を指さすと、陣が描かれている場所が見える様に爆弾を動かして見つける。
「あるのぅ」
「そこがタイマーになっていて、円形に描かれてるでしょ?その文字をね、魔力を通しながらなぞると爆発する時間を決めることが出来る。目安として一周をなぞるとだいたい4分くらいで起爆、だから、四分の一でだいたい1分くらいかな?」
円形に描かれている起動用タイマー術式は三層になっているので、起爆まで、最大で12分まで設定が出来る。
「なるほどの、のっと!!」
手に持っていた爆弾を森の中へと投げ込み…森の奥から爆発する音が聞こえてくる。
重たいんだけどなぁ、それ、そんな易々と投石機が投げている場所付近まで投げないでよ。
「ふむ、投石機いるかの?」
いるの!!戦士達の手が塞がるでしょ!!
戦う術が乏しい人達が爆弾を投石することで!森から逃げてきた獣達を戦士達が止めをさす流れなの!全員が全員、お爺ちゃんみたいに強いんじゃないんだからね!!
「第三射放て!火の矢!順次放て!!」
呑気なやり取りをしている向こう側では次々と爆弾が投げられ、矢の先端に小さな松明のように油を染み込ませた紐を巻いた矢に火をつけ爆発した場所へ目掛けて数多くの矢が放たれ、投石機からも空中で火が付く様に改良した火炎瓶も投石している。
うん!私も早く次の一手を放たないと!!お爺ちゃんの相手をしている場合じゃないっての!!この状況を良く思わない何かが向かってくる前に!!…んー、魔力が完全に廻ってきてない!
「魔力補充急いで!」
っと声を出すのとほぼ同時に光が魔石に吸い込まれて行き、体に魔力が廻ってくる!!よしよし!!さぁ火の柱をドンドン、森の奥に発生させるよ!!
「もう一発いくよ!!」
詠唱を開始し…発動!!
森の奥から木々の頭よりもより高く火の柱の先がとぐろを巻く様に捻じれながら渦巻き、空に吸い込まれていく…
うん、これが人為的じゃなかったら絶望的な状況だろうね、森が焼ける姿をマリンさんが嫌がるのも無理はないよね。
それもさ、一か所だけじゃなくて、複数の火の柱が生み出されるんだもん、どうやっても消化できないって諦めちゃうよね。
木々の隙間から飛んでくる熱風が程よい熱さを超えようとしている、ってか、超えてるね、確実に。森の中の温度なんて想像も考えたくも無い。
「…ふむ、物凄い熱量じゃのう、遠い場所で生み出されたであろうのに、爆風によって飛んでくる風がサウナよりも熱いわい」
その感想には同感しか言えなくなる。私達よりも前で逃げてきた獣を仕留めている戦士や騎士達は相当熱いだろうから、水分の補給と熱による体調不良が出てきたら下がってもらう様に声を掛けておかないとね。近くで待機している騎士に声を掛け伝令を伝えてもらう。
「術式っていう燃料によって何処か一点でも燃え続けていくと、森全体の温度もあがるし、火によって周囲の水気が蒸発していく、それだけじゃないよ!」
空に向かって指を刺すと「何もないがの?」…うん、見えないね。乾燥剤の粒子が細かすぎたかも
「爆弾の表面には乾燥剤っていうのをまぶすというか、塗るというか…取り合えず塗ってあるんだよね、その粉は非常に小さくて見えにくいかもしれないけれど、それによって森の中に漂う水気も奪ってる!」
「なるほどの…沼地の水気をそれで飛ばすわけじゃ」
そう!爆発して周囲に飛び散って水気を吸って、さらに投下される爆弾による爆風で水気を吸い込んだ乾燥剤が遠くに飛ぶことで確実に森の中に漂う水気を奪っていき、燃えやすくする!!気休め程度だけど無いよりかはマシでしょ?
「んーーー」
爪先を立てて遠くを見ている、何を見ているんだろう?
「…ぉぉ、あんなに燃やそうとしても燃えなかった森から次々と黒煙があがっとるわい!」
煙を見ていたのか。私も空を見上げてみると、空を見ると今までの比じゃない程に煙が昇っている。よく燃えてる証拠!
「うん、後は…いや、やめておこう、予定通り、森を焼こう」
ふと魔が差してしまう。その考えを直ぐに否定する、危険すぎるからね。
何の考えかって?沼地方面に爆弾を投下するっていう危険極まる考え。
そんなの出来るわけがない、だって、カジカさん達が居たら危ないしなぁ…
あちらさんは、燃え広がっていくのを待ってもらう方がいいよね?恐らく右部隊も森から溢れ出てきた敵と乱戦混戦状態になってるだろうし、つっても?作戦は伝令で伝えているから身構えてくれているだろうし、森の手前にシャインスパークを投擲してもらっているから、衝撃波+火+光線による攻撃によって炙り出された敵はボロボロだろうから、此方よりも楽に仕留めれているんじゃないかな?…ただ、未だに此方に人型が来ていないって考えると、向こうに流れている可能性が非常に高いけどね。

それにさ、爆弾を投げてさ、うっかり沼地の中に爆弾が入ったら大惨事だもんね…
爆発によって毒が周囲に飛び散って飛び散った毒が人に降り注いだら…
うん、即死しかねない!やめておこう。短絡的な考えはぽいっと捨ててっと…ん?

今、何か音が?違う音が聞こえた?聴覚強化&特定の周波数をカット、特定の物音をカット…
「・・・・ん?」
随所から聞こえてくる声や爆発音の隙間から大地を駆ける音が聞こえた…他の獣共と違う大地を蹴る音!?それも一つ、じゃない?器用に足音を合わせて一つに見せかけている?色んな音が混ざって判断が難しい!
「各員!最大限警戒!来るよ!!」
音がした方向へ指を刺すと騎士や戦士達が盾を構えて身構える
「さて、わしの出番かの?」
ラアキさんは下がっててって言いたいけれど、言ったところで無駄だろうね、だって、伝わってくるんだよね彼の背中から闘争心が溢れているんだよなぁ
…素直に聞いてくれそうもないし、お願いしようかな?
ラアキさんの背中に視線を向けた直後、金属が激しくぶつかる音が響き渡り視線を其方に向けると
「っほ!よう受け止めた褒めてやるわい!」
金属が奏でる音がした場所へと、私が何か言う前に駆けだしていく…根っからの戦闘狂だよね、彼って。

地面を隆起させちょっとした足場を作って周囲の状況や、飛び掛かってきた人型を目視で確認する。

人型で…えっと、あれは…腕が長いタイプ?この状況で?魔道具持ちですらない?…雑魚だけ?
念のために音を拾う、音がしない?目を強化して周囲を索敵…いない?
一体だけ?おかしい…複数の音が聞こえた様な気がしたけれど?

違和感が拭い切れない以上索敵を止めない!ソナーを打つ!!
……反応が…ある!でも、森の中?木々の間に隠れている?森に潜んでいる?狙いは、誘い込む、とか?…知恵が回るようになってきている、誘っているって考えるべきだよね、この状況なら、ってことは、自爆タイプか?腕が長い奴を先行させて誰かしら掴んで森の中に引きずり込んで自爆タイプに抱き着かせるって魂胆かな?
「ラアキさん!森の中に複数反応あり!誘い込まれないで!」
即座に音声を拡張させる術式を展開し状況を伝えると、手長猿に向かって行ったラアキさんの勢いは落ちることなく突き進んでいく!もう!聞こえてるけど無視してない?私司令官だよ!?
ほら!待ってましたと言わんばかりに腕を伸ばされてる!絡みつかれて連れていかれるよ!?
敵に向かっていくラアキさんを補助するためにどの術式が最も適しているか考えってもう!動きが速い!!
此方の補助を選択し、構築する前に彼は敵の懐に飛び込んでいた、敵からすれば一人でも死へと道ずれにしたい待ってましたと言わんばかりに彼に巻き付こうとするが…激しい音と共に巻きつこうとした腕が天へ向かって跳ねる。
目を疑いたくなる光景、だって、人型だよ?それも腕をとことん強化されている手長猿のだよ?鞭のように撓らせてきた遠心力も加わっている腕を片手剣で上空へと弾いてる…

うそでしょ?手が長いタイプの人型の腕って重く固い、それを弾き飛ばせるの?

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