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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (89)

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貴族と関りがある人もいるんだよ?一応、お母さんだって貴族の出自だし、カジカさんの奥様は貴族だよ?ほら!不穏な会話にカジカさんの表情が曇ってるよ?
腕組んで素知らぬ顔をしているけれど…冷や汗が薄っすらと滲んでいるし、眉をひそめて不安そうな顔してるじゃん!
奥様の家系って確か…うん、王家の派閥なんだからね!奥様の御父様が、だけどね。
奥様自身はどうだっけ?彼女もまた、偉大なる戦士長の事を尊敬しているから、王と共に有るとは思えれないけど、家の繋がりってのは馬鹿に出来ないし王都を拠点としている限り王族批判はお家崩壊に繋がるよね?

とはいえ、カジカさんが抱く夢としては貴族に成りあがって家族を幸せにする?だっけ?だから、王に対して忠誠心は無い、はずだよね?
だとしたら、貴族にさえ、成れたらどうでも良さそうだから、奥様の御父様を案じて不安そうにしてるってことかな?
カジカさんに貴族に成りあがるルートして一番可能性が高かったのが御父様に認められて、末席に加えてもらうのが高いんだよね。
本人に貴族として成し遂げたい強い願いや想いがあるのかと聞いたことがあるんだけど、特に信念があって貴族に成りたいってわけじゃなかった。
思い返してみれば、彼の言葉を分析すると、単純に見栄と言うかプライドっぽいんだよね、愛するお嫁さんに相応しい人に成りたいだけって感じだったかな?ぶっちゃけるとカジカさんに興味があるわけじゃないから、うろ覚えなんだよなぁ…

そんな彼がこの会話を聞いて不安を感じる理由も推察できる。
今、王都と私達が戦争になるのは一番避けたいよね!そうなると、奥様の実家と争うことになるってことだよね?そうなるとどっちの派閥につくのか身の振り方も考えないといけない、武力としては私達の方が圧倒的に有利、でも、家の事を考えると王側に身を委ねないといけない、負け戦とわかっていても…
死にたくないし、家族を不幸な目にあって欲しくないから、そういった不穏な発言は困るってことだよね?うんうん、思考が速くなってきてる!借りた借金無くなってきたのかも?

そんな彼の心象を把握するためにちらっと視線を向けると直ぐに反応が返ってくる。
「吾輩を見ないでほしいのである、吾輩は何も聞こえてこなかったのであるな~、歳を重ねると耳が遠くなってしまうのであるなぁ、それにである、吾輩は、この街にいるただの屈強な戦士であるからして、それ以上でもそれ以下でもないのであるなぁ~」
「そうよね~、年齢を重ねると色んな能力が低下するものよね。それでも、唯一落ちない能力があるわね」
「はは、褒めるな褒めるな、吾輩は何時だって生涯現役であるぞ?棍棒は何時だって衰えること知らず!」
渇いた笑いと共にどうでもいいわっと頭を叩かれてる。
股間を前方に突き出してアピールしないでよ、まったく!
「そっちの話題じゃないわよ、気を使いなさいよね、一応、私は女性よ?」
え?っと不可思議な発言に驚いた素振りを見せているカジカさんの脇を肘で小突いている。
一応、お母さんとしては、もう手遅れだけど、ラアキさんの前ではお淑やかに振舞いたいんだろうね。
「ったく、貴方誇って良いのはそこじゃないでしょ?私が言いたいのは、この街で誰が一番逃げるのが上手?誰が一番生き残る可能性が高い?貴方でしょ?」
うむ、っと頷いている素直に褒めてくれるのが気持ちいのか照れくさそうに鼻頭を触ってる。
「生きる為には何が必要なのか、数多くの死線を潜り抜けてなお、五体満足なのが証拠じゃなくて?」
カジカさんの肩を自身の肩をぶつける様にからかっている。仲いいよね。本当の姉弟みたい
「褒めるな褒めるな。照れるであろう?それに関しては否定できぬのであるなぁ…事実である。多くの人が吾輩の事をそう評価しているのも至極当然!この死の街で最も危険な戦士と言う立場でありながら、長きに渡り、今なお、五体満足で生きている、詩人が歌に残してもおかしくない偉業!であると、自身でも感じているのである」
残念なことに…一部の貴族からは違う意味で英雄扱いで吟遊詩人のネタにされているのは小耳に挟んだことがある。奥様は知らないだろうけどね。
お道化て語っている彼の言葉に真剣に耳を傾けるつもりはない、魔力の流れに意識を向ける、思考加速も徐々に動き出していると感じてはいるけれど、全身に魔力が行き渡っている感じはしないかなぁ…
「若き騎士達が噂しているのを吾輩の耳にまで届き知っているのである。だが、敢えて言わせてもらおうなのである!逃げるという行為は悪ではないのである!!情報を持ち帰り対策を練り敵を完膚なきまでに叩きつぶす事こそ必勝であると!」
うん、そうだね~…そうするように指示だしてるからね~…薄目だった瞳達が徐々に開きつつある。
「…生きる事こそ、生き延びる事こそ…吾輩が唯一出来る恩返しであると心得ているのである、吾輩は、皆の命を守れるのであれば、引くことを覚え困難なミッションを無事生還したのである、そうであるな?姫様よ!」
うん、私は悪いとは思ったこと一度も無いけどね?危険だと判断して撤退してくれたおかげで、取り返しのつかない被害が出なくて助かったこと多々あるし…転移陣だってカジカさんが居なかったら入手できなかったもん、この功績だけでもカジカさんを戦士長にするべきだって声がたくさん出たんだから、本人が辞退したけどね。
〆として私に振ってくる辺り、これ以上お道化るのは難しいと判断したのかな?

まぁ、お陰様で?一瞬だけ危険な気配が漂ったけれども、二人が先の言葉?ジョークに決まってるでしょ?っと雰囲気を切り替えてくれたことには感謝だね!

うん、私じゃ雰囲気を切り替えるのが出来なかったかも?うん、そうだよね。
正直助かる、ラアキさんを制御しきれないから何処かで何かと衝突する恐れがある人だからね。この街に来た時から起こり得る危機、不安材料の一つでもあるんだよね。
彼の中にある野心とは違うかな?思想、理念?信念?からくる想いによって国家転覆、一揆、反逆…そういった人類同士の争いの火種になりかねないんだもん。
「すまぬ、お主らの背景を知っておきながら迂闊な発言をしてしもうたわい」
「僕は何も聞いてませんからね?何をおっしゃっているのかわかりかねます!大師匠、ですが、何かお礼をと言うのであれば、お気に入りをご紹介していただけますと」「ふふ、お義父様、おボケになるのは、まだ早いですよ?ご飯は先ほど食べられましたよね?」
鼻の下を伸ばしただらしない顔をしているカジカさんの言葉を遮る様にお母さんが会話を断ち切る、度が過ぎ始めたからかな?私がそういう話題が得意じゃないの知ってるから、守ろうとしてくれているのか、それとも、お義父様の前でやめろって言いたいのか、どっちだろう?
「はっはっは、そうじゃったかいのー?いかんのー、年のせいか物忘れが激しいわい!」
完全に張り詰めた様な雰囲気が和やかな雰囲気になる。
廻ってきた魔力を搔き集めて聴力を一瞬だけ強化してみて外を探ってみたけれど、幸いにして、周囲に隠者は潜んでいない、はぁ、よかった。ある程度排除しといて!
大国の隠者が私達の動きを見て潜んでいたら今の発言を情けない男に密告されるかもしれないっての!

最初っからいないよね?今はもう情報を得たから離れたって事じゃないよね?
っく…到着時は魔力が無いから探知できていないし、消音の術式も展開できてないんだよなぁ。まぁ、大丈夫、かな?…大丈夫でしょ!!

強化した聴力が直ぐに強化前に戻ってしまう、けれども、感じる。
少しだけ魔力が廻ってくるのを感じる、借金返済が終わりつつあるのかな?
さて、話をある程度戻して!状況を整理しておかないとね!要望を聞くのも司令官としての務めってね!
「えっと、ラアキさんの質問は、あれかな?戦士長と同じ武器が欲しいって事?」
「ああ!最初視た時は鼻で笑って馬鹿にしたもんじゃが、あれの活躍を見て存外悪くないと思っての!」
武器に関しては冷徹に冷酷に対人戦基準で見定めている人が、珍しく興奮している。
っていうか、近い!顔が近い!鼻息が荒いなぁもう、嗅覚を遮断してっと
距離を遠のけるわけにもいかず、近くで鼻息が荒いまま
「あれのコンセプトは粉砕のやつが持っとるヤツじゃろ?」
いつものお年寄りムーブとは違って早口だこと…

彼が行きついた考察、概ね間違いじゃないっていうか合ってる、かな?
敵の強固な皮膚、頑丈な骨、死の大地にいる獣共は天然の鎧を持っている。
そんな相手を相手どるには、人と闘う為に造られた武器だとダメ、あれらを一撃で倒せない
その為に重量を伴った攻撃が必要不可欠、偉大なる戦士長はそれを攻略するために編み出した攻略法の一つとして、各部隊には槌を持った戦士を配備すること。

長年、創意工夫して剣や槍のみで倒す方法も考案され、切磋琢磨する様に訓練し続けてきたけれど、それでも決定力に欠ける、故に、個々の武器が持つ役割を守って連携し敵を倒す仕組みへとたどり着いた。
偉大なる戦士長が作り上げた連携方法はとても理に適っている。
理には適っていたけれど、いくつか、何点か問題点があった。
私は、更に発展する様に磨き、連携方法を増やし柔軟に立ち回れる方法へと洗練しただけ

だって、偉大なる戦士長が組み上げた連携の殆どが、マリンさんやシヨウさんのような特別な人を主軸とした連携が多いんだもん。

特別で特殊な人を主軸にすれば余裕を持って戦えれるよ?でもね、その人たちが欠けたら最後なんだよ…誰も勝てなくなるって全員が理解した瞬間、全ての士気が落ちる…
自分達では勝てないってなるからね、雑魚くらいには易々と勝って貰わないといけないからね。カジカさんと一緒に研鑽を積んできたってわけ。

それでも…強大なる個の力が求められるであろう、今回の聖戦に向けて、切り札を切り札とするために勇気くんが持つバスターソードを作ったんだよね、勇気くんが欲しい!って言うから。王都の鍛冶師には無理難題を言って申し訳ないって思ったよ、ほんっと!
まぁ、結果としては作ってよかったって心の底から思えれるし?良いんだけどね。

…勇気くんが持つ最大で最後の切り札は私を幾度となく噛み殺したヤツにぶちかます為に、常時お披露目するわけにはいかないからね!

…ん?思考が速くなっているのを感じる、弱だけど思考加速が起動し始めているかも?

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