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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (102)

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会議室に入り、鍵をかけ、隠蔽術式を起動した瞬間、お母さんの雰囲気が変わる。その鋭く他者を切り裂く様な視線でわかる。話が早い。起こしてくれたのかな?
「…それで、私に何を願うの?」

声の圧が重たい…威圧感が凄いよ叔母様、人に向けていいプレッシャーじゃないって…
不機嫌そうな叔母様に状況を説明し、して欲しい事をお願いすると

「そう、それくらいなら、構わないわ」
驚いたことにあっさりと…頷いて了承してくれた?不機嫌だったから何か要求されるんじゃないか、断られるんじゃないかって思っていたんだけど、杞憂だったかな?急に起こされたから不機嫌だったのかも?
「道中は私じゃなくてもいいだろうし、必要な時に起こしなさい」
その一言で叔母様の意識が消えていきそうになったので意を決して声を掛ける。このタイミングを逃すと次がいつ来るかわからないから。
「…あとね、これが最後になるかどうかわからないけれど、戦況が戦況だから、その、先に言っておくね?」
消えていく意識が止まりジロっと睨むようにこちらを見てくる、まだ何か用事があるの?っと威圧感を込められている。
叔母様が起きていて尚且つ、隠蔽術式を起動し、誰もいない会議室だからこそ、今が伝えるべき絶好の機会なんだよね
「…」
無言でじとっと睨んでくる。なんか不機嫌なんだよなぁ…なんでだろう?
こういう雰囲気苦手だけどさ、話さなかったらそれはそれで、怒りそうだから言わないと…ぅぅ、圧が怖い…
心の中で何度か深呼吸をして勇気を溜め込む。
「子が育ちました…魂も地下に居るのを確認が取れました、そして、彼が名を欲したので名を与えました」
「会えたの!?ダーリンは!?」
っひ、一瞬で間合いを詰められるわ、表情が怖い…!?目を開いて両肩を掴まれる!?
「地下、地下って言ったわね!行くわよ姪!!」
そのまま首根っこを掴まれて引っ張られていく…自分で歩けます叔母様。
会議室のドアに手をかけ外に出ようとするが出ない?
「名を与えたと言いましたね?」
背筋が凍り付きそうな程、鋭い殺気…今、叔母様を見たらその瞳で心が射貫かれ砕かれそうなので見れない…
「はい、大いなる始祖様から名を拝命し、スピカと…」
ちょっと言い回しが卑怯だけど、これなら、叔母様は納得してくれるはず
「…そう、とても良い名前ですね。貴女が名をつけたと、不安を感じましたがとても素晴らしい名です」
殺気が消えたので恐る恐る視線を向けると、慈母の様に、慈愛溢れた微笑みで頷いてくれている。

良かった…口調からしても聖女としての佇まいを感じる。

扉を豪快に開いて急ぎ足で地下へと駆けだしていく、勿論、私は引きずられたまま。
術式で軽く足を保護してるからいいけどさ…ほんとう、夜中で良かった。
何事かと皆が心配しちゃうじゃん、叔母様も困ったもんだよねー…

引きずられながら空を見上げる、うん、夜空が綺麗~…

現実逃避をしていると、バンっと重たい地下室へと続く扉が開かれる音が聞こえてきたので、自分で立てます、歩けます叔母様っとネックを掴んでいる叔母様の手を叩くが無視される。
はぁっと心の中でため息をつきながら念動力で足を浮かせ階段を下りていく。
真っ暗な地下室に降りると手を離され尻もちをつきそうになるが何とか念動力で体を支える!もう!扱いが雑!!
やれやれだぜっとゆっくりと地面に足をつけて立ち上がると叔母様は地下室の奥へと進んでいく、っていうか、灯り!灯りつけて!危ないよ!?
「だーりん!!すぴか!!お母様が来ましたよ!!かおを…顔をお見せになって!!」
灯りをつけることなく地下室全てに響き渡る様に叫んでる。
声量が大きく、叔母様の声が部屋の隅々にまで響き渡ってる…

でも、何も返事が返ってこない。
そりゃぁ、いきなり叫んだら、スピカも驚いて隠れるよ

灯りをつけてスピカが居るのかどうか意識を向けようとするが、あの時のような不可思議な感覚が伴ってこない。

ん~…駄目だ、感じることが出来ないや…

静まり返る地下室、稼働している魔道具から聞こえてくる音だけが聞こえてくる。
私たち以外から何も音が聞こえてこない。何も感じない、気配が何一つない。

恐る恐る、叔母様の隣に立って覗き込むと表情が徐々に崩れていく、先ほどまでの笑顔が曇っていき、今にも泣き崩れそうな程に皺だらけになると

「…そう、私ではダメなのね、会いたい、会いたいです、私を独りにしないで、何年も何年も母は孤独です、だぁりん、すぴかぁ、母を独りにしないでください、あいたい、あいたいの…」
静まり返る世界に絶望したのか、崩れ落ちる様に膝をつき、両手で顔を包み隠したと思ったら、メソメソとすすり泣く様な声が聞こえてくる
…叔母様って感情が昂ると抑えられない人だから、しょうがないよね。

うーん、どうしようこれっと、ぼんやりと試験管に視線を向けるが何も反応が返ってくることが無い。

此処でじっとしているのも凄く気まずいし、かといって一人にすると何をしでかすか、お母さんが完全に制御してくれたらいいんだけど…感情が昂っている叔母様を制御しきれるとは思えれないんだよなぁ…

頼りの綱であるスピカを感じ取れない。弟が顔を出してくれたら全て丸くおさまるんだけどなぁ…

てっきりさ、私もスピカが顔を出してくれるって思ってたんだけどなぁ?
さっき、慰めなかったから、すねちゃったのかな?
んぅ~お姉ちゃんが悪かったから、叔母様に挨拶して欲しいなぁ…世の中上手い事いかないんだよなぁ~…

視線を彷徨わせながらスピカを探し顔を出してほしいと願ってみるが気配を感じない。
もしかして、何かしらの条件が必要なのかも?

何とかして会わせてあげたいけれど、条件を掴めてないんだよなぁ。
大型魔石に関係するのかな?何だろう?あの部屋のドアを開けたら会えるのかな?

「…行くわよ、時間が無いのでしょう」
視線を彷徨わせていると、背筋が凍り付きそうな声が聞こえてくる。
涙を流しながら冷静で冷淡な声…苛立ちを感じているのだろう
「叔母様、せめて、祈りを捧げてからにしませんか?」
膝をついて叔母様にハンカチを渡し提案すると
「祈り?…そう、そうよね。そうしましょう、それが教会に勤める者として正しい行為ですわね」
涙でくしゃくしゃになってしまっても優しく微笑もうとする。叔母様の中にある教会での側面と、愛に狂った側面、その二つが鬩ぎあっているのかな?
祈りの姿勢を取り始めるので、私も一緒に目を閉じて祈りを捧げる。

目を閉じ真っ暗な世界で、静かに始祖様に祈りを捧げていると…
…あれ?魔力を感じる?叔母様から魔力が溢れ出ている様な?…まぁいいか。

肩を叩かれる?スピカ?いや違う、物理的に叩かれている
「もう、よろしいのですか?」
目を開き叔母様に視線を向けると。何かあったのだろうか?
「はい、行きましょう。今代の聖女様…」
清々しい笑顔?祈りによって清められたのかな?
「ぇ、ええ、参りましょう」
ゆっくりと立ち上がり、階段を登ろうとすると、叔母様が地下室の何処かに向けて頭を下げた後、軽く手を振って階段を登っていく?どんな心境の変化なのだろうか?

階段を登り終え外に出ると少しだけ空が明るくなってきている、朝が近い。
もしかして、時間?時刻によって出てこれないとかそういう条件があるとかかな?
「…お風呂に入る時間くらいはありそう?」
んぉ?声の雰囲気が叔母様からお母さんに変わってる?
「そう、だね。どうせなら、フラさんが起きてくる時間まであと少しだろうから、お風呂入れば丁度くらいじゃない?」
強引にフラさんを叩き起こしても起きて思考がクリアになるまで時間が必要だから、それだったら、お風呂入っていたほうが有意義な時間で尚且つ効率的じゃないかな?
「そうと決まれば綺麗にしましょう」
んん~っと背筋を伸ばして空を見上げている、その瞳から一滴の涙が零れ落ちていく。

何が起きたのか、何があったのか、聞いてみたいっという好奇心が湧き上がる、でも、これは易々と踏み込んではいけない気がする。

月がゆっくりと地の果てに沈もうとしていく中、私達は身を清めるかのように湯に溶け込みお互いの近況を語り合った。

派手な音が左側のセーフティエリアにも届いていたみたいで、静かにしないといけないセーフティエリアの皆が声を抑えて狂喜乱舞していたことを教えてくれた。
それと同時に、音に釣られてきたのか左奥の森から数多くの獣が攻めてきたのをラアキさん部隊が殲滅していたみたいで、セーフティエリアには怪我人が続出していたから大忙しで痛み止めの薬が切れて寝ずに調合していたんだって。

王都騎士団からすれば経験したことが無い戦闘だから怪我人が出るのは致し方ないよね。
困ったことがあるとすれば、王都騎士団が医療班に所属している人達に粉をかけてくるのをどうやって咎めたらいいのかわからないってことくらいらしい
「溜まってんだろうけど、相手を選べっての」
飽きれた声で愚痴を言われてしまう。そっち方面の協力もお願いしてあるから、そっち方面に行くようにっとしか言えないよね、寧ろ、女性がそれを進めて言うのもなぁ、難しいよね~…

男ってほんとに、困った生き物だよね~っと声を揃えて笑っていると近くにいた他の人達も同時に頷いている…まさかと思うけれど、他の部隊でも同じ状況になってる?
…作戦が終わったら、ベビーラッシュかもね…
良い事なんだけど、ちゃんと責任取って家族に迎え入れてよね?一夫多妻制なんだから
孤児はダメだよ?…まぁ、最悪、この街で全て受け止めてあげるけどね!

…ぁ、だから叔母様不機嫌だったのか?そういう視線が纏わりついて嫌悪感が強かったのかも?
…ラアキさんが連れてきたような人達だもんなぁ、そっち方面もアレな人達が多いんだろうなぁ、この街にいる人達であればお母さんにちょっかいを出す人は皆無だけど、王都の人達からすればそういう過去の流れとか知らないもんなぁ…

納得…

勇気くんと宰相に伝えてちょっと釘を刺してもらおうかな?
ラアキさんに声も掛けて…おいても無駄だろうね!貴方が言いますか?って笑い話になりそうだからね!!

お風呂から出るころには太陽が顔をだし世界を照らしてくれている。
お月様も太陽を微笑む様に見上げている。

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