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今代の私は… ④

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僥倖か、運命か、私は…希望に、今代の私が未来へと託した希望を見つけることが出来た。
摩り続けてきた柔らかくも重い太ももから手を離して眉間のしわ伸ばしを終えて自身のお腹の上に置かれていたお母さんの手を握る。
何も握っていない手を目的の場所へと動かす為に、上半身を起こす必要があり腹筋や肩、背中と力を込めて何とか届かせようと力を込めると握った手が求める様に力を込めてしまう。
握られていない手を天に伸ばしてから隣で寝ているお母さんへと伸ばすと意図が通じたのか天を彷徨う手を力強く握ってくれたと思ったら、自身の体へと抱き寄せてくれる。
そのままの勢いを使ってお母さんにしがみつく様に抱き着くと握った手が離されお母さんの手が私の背中に回り優しく我が子を抱擁する様に抱きしめてくれる。

彼女の柔らかい乳房に潜り込む様におでこを進ませる。
良き苦しい何てどうでもいい、彼女に未来があると、希望があると伝えたい

でも、声に出すことはしない、まだ確証を得ていないからぬか喜びは私の信条じゃないもん。

ぐりぐりとおでこを彼女の胸骨に当てて擦り続ける
「ふふ、貴女とこうやってベッドで抱き合って横になるのなんて何年振りかしら、何時までも子供のままってわけにはいかないものね…何か理由があるんでしょう?」
「うん、魔力ちょうだい」
「っふ、やっぱりね…まだ完全で本調子ではないけれど、出来るだけ渡してあげる、受け取りなさい」
抱きしめられた状態で魔力が体の中へと浸透していくのがわかる。
団長の魔力は、貪欲に欲してしまうのに対して、お母さんからの魔力は満たされて行く事によって体の緊張が抜け虚脱し全てを受け入れてしまいたくなる。
人によって魔力の質が違う、その理由なんて簡単、私は数多くの人から魔力を貰って動いている人形、ある意味、魔力の質を語ることが出来る魔道具、魔力ソムリエだもん。

魔力という物質は…心
心とは、祈り、祈りとは魔力…魔力は精神を内包する
心と魔力には強い関係性があり結びつきがある

証明する方法はない。
でも、私の、幾度となく、多くの方から魔力を受け取ってきたからこそ、わかる。
人によって魔力は…質が違う。

それは、魂が違うから?
それは、相手の事をどう思っているから?
それは…

お互いを、どう想い?どう願い?どう…感じているのか。

気が付いてしまう、近しい感覚を。
あぁ、そっか、これもまた、魂の共鳴・・・

同調現象の一つなんだ。
だから、私は、魂の同調を直ぐに会得、できたの、かもしれない。

いまもこうやって
指先を伸ばすように自然と感覚を伸ばしていく
愛する旦那から教えてもらった魂の同調、その感覚を伸ばしていくと

かのじょと つながっている かんかくが ある
これを…心臓が止まるほどの殺気が心を突き刺す。

やっべ!逃げないと!

繋がった先で叔母様と目があってしまったので急いで繋げてしまった感覚を閉じ逃げる

こえぇえ、あの人、常にああやってお母さんに何かが侵入してこないように見張ってるんじゃないのかな?
これだから、ルの力に目覚めた一族は!油断ならねぇ!

驚いた影響もあり脈が速くなってしまったけれど、目の前にある女性の温もりを感じ続けているとすぐに、脈も落ち着き、眠くなるほどに全身の力が抜けリラックスしてしまう。

眠くなる理由はわかる、私の体には心には染み込んでいるんだもん、この柔らかさと香りが傍にあるのはどういうことなのかってね、この二つに包まれちゃったらほら?条件反射的で眠くなるっていうか、落ち着くよね。にへへ。

甘える様にぐりぐりとおでこを動かして擦り付けても動じることなく抱きしめ続けてくれる。
胸骨におでこを擦られるのって意外と痛いんだよ?にへへ。

泥の中もずっと空席だし、きっと、彼も寝ていると信じて彼女の温もりに包まれ続け彼女に包まれているっという感覚がまた、目覚めてからずっと張り詰めていた緊張が抜けていくのがわかる。

たぶん、お母さんと希望と、この私の部屋ってのが揃ったからなんだろうなぁ…

目を瞑って泥の中へと意識を向けると薄っすらと泥の中にある瞳達が開き始める、やっぱり、私の予想は正しいのだと言わんばかりに…

瞳達が目を開き始めたのは単純、体の中に魔力がある程度補充されたからだろうね。
開こうとしていく瞳達を見て小さな疑問が湧き上がる。

そういえば、今代の私は、どうやって泥の中に眠る瞳達と向き合ってきたんだろうか?
「ぁー、もう無理、げんかーい」
ぽんぽんっと背中が叩かれ魔力譲渡法が終わりを告げる、ずっと触れていて欲しい背中に回された手が離れようとする、でも、私は確かめないといけない、心を切り替える
体を起こし私を起き上がらせようとしてくれるのを制止させる。
「お母さんはそのまま寝てていいよ」
これだけの魔力があれば問題ない、多少の我儘は愛する旦那様が何とかしてくれると信じている、し、それに…彼がアレを見つけた時に発生した冷静沈着な私が珍しく感情を昂らせたのだから、動揺に近い心への衝撃を見逃しているとは思えれない。
「・・・どういう意味?」
お母さんの不思議そうな声に口角をあげ意識を泥の中へと向けると
瞳達が目を開き歌を歌ってくれる
多くの合唱に誘われるように?ううん、コンサートが開かれるのだから、その席が空白であるわけがない。

空いた席に一人の人物がゆっくりと座り指揮棒を取り出し、多くの瞳達と目を合わせてから指揮棒をゆっくりと振る、激しくも無く、ゆっくりとゆったりとアンダンテで…

「こういう意味」
抱きしめられた状態から抜けだし、足に力を込めるように意識を向けると合わせてくれる
指揮棒を振るうは妖精の王、歌うは彼に想いを馳せた輝きを失った星々

指揮棒が天を指す様に立てられると私の体はベッドから降り自身の足で地面を踏みしめている。
「あなた」
後ろから声が聞こえてくる、振り返りはしない
「・・・お母さんは、気が付いてるよね?」
うん、繋がったときに感じた叔母様には申し訳ないけれどあの刹那に近い同調で知った、あの時に感じた違和感の答え…

お母さんは今代の私と、過去の私…区別がついている。
それが何を意味するのか、解らない私じゃない。だから、振り返る勇気がない。
指揮棒も振り返れと指示を出すことは無い。

「・・・それは」震えるような声、振り返らない
「うん、泣かないで欲しい、私は…ここ数年ずっと傍に居た私は死んだ」
「・・・」沈黙されど、吐く息が震えている、振り返らない
「そして、過去に死んだ私が今こうやってこの体を動かしている」
「・・・」つばを飲み込む音が聞こえる、ふりかえらない。
「終わりが近いみたい、だからかな?私の一部は死んでしまった」
「・・・」鼻すする音が聞こえた、ふりかえ、らない。
「でもね、過去の私達が協力すれば、動くことが出来る」
「・・・」なにも聞こえてこない、ふりかえら、ない。
「祈りという名の魔力によって、願いという名の奇跡によって私はまだ動くことが出来る」
今、どんな顔をしているのか…振り返り彼女の顔を見る勇気がない。
そのまま、歩くような速さでベッドから離れようとすると後ろから声が聞こえてきた
「何を言っているのか、何を思って言っているのか私には理解できないわね。貴女は貴女、私の大切な娘、ここ数年の記憶を無くしてしまっただけの私の愛する大切な家族よ、何も違いなんて無いわ、愛してるわよ■■■」
その言葉が背中を渡しを通り抜け、泥の奥へと響き渡る。
泥の中の瞳達が大粒の涙を流しながら歌い続ける。

きっと、始祖様が私と繋がっていたら彼もまた拍手し暖かく祝福してくれたんだろうな。

それとは別で…私が感じていた仮説は正しいのだと証明されてしまった。

私はもう、自分自身で魔力を精製できない
だから、泥の中の瞳も目を開かない。

この体は、魔力が無いと動かない。
今こうやって動いているのも誰かの魔力があるおかげ。

そう、私は人の体を模した人形…
動力源は人々の祈り、最後の聖女、人々の祈りを受け止める人形。
それが、私。

一つの魔道具として人々の祈りによって存在することが出来ている。
この世界を救うため、窮地に瀕した人々の願いによって動く人形

であれば、望まれたように動く
それが、魔道具だから。

決意が決まる
覚悟が決まる
勇気が、指揮棒を振るう

救おう、人類を…

希望という歌を、勇気という名のコンサートに合わせてアンダンテで前へ進む。
「っていうか、貴女、あるけ、るの?」
進みながら質問に答える。
「ん?団長から~…あ、そっか、そんな時間は無かったか、魔力を使って肉体を動かしてる、魔力さえあれば私は歩けるよ、ただ、消費が激しいからさ多用することは避けて、いざって言う時まで控えるべきなんだろうけどね」
それならっという、彼女の返事を待つことなく歩き続ける、目的の場所へ

クローゼットを開けると今代の私のコレクションがいっぱい出てくる。
目の前に広がるお宝の山が眩しくて脳が溶けそうになる。

煌びやかで可愛らしくて私好みの綺羅星がやまほど!?

今すぐにでも手に取り眺めたいという湧き上がる衝動を抑える。
全ての服を眺めたいという欲求はまた今度!!今は…

綺羅星を端に寄せてクローゼットの奥にある小さな窪みを見つける。
ぱっとみ、何かをぶつけたような凹み、そんな風に違和感なく溶け込めんでいる。
巧みにぱっと見でこれが鍵だとわからなくなるように偽装してある
でもね、私は知ってるの、それが、ただのへこみじゃないってね、まぁ、先の魔力波でこの先に何があるのか知らなかったら傷かな?っでスルーしちゃいそうだけど

私はね、教えてもらったから
凹みに指先を入れると魔力が流れる構造になっている

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