転生失敗からの異世界消滅の運びとなりました それでもボクは寝続けようかなと思います

二廻歩

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男との再会

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転院先を紹介してもらうつもりがなぜか廃病院へ。
どうやら居所を掴むのはそう簡単ではないらしい。
受付はおろか看板さえない何十年前かに潰れたいわくつきの建物。
心霊スポットにもなっていると加賀が教えてくれた。
とんでもないところを紹介されたもの。
当然中に入るつもりはありません。急いでる時に余計なことに時間は割けない。

「ははは…… やられましたね。しつこいとこうなるんですよ。
女神様はお空にいらっしゃるから分からないでしょうが」
そう言って笑う加賀。まるで他人ごと。もう完全に己を失っているよう。
少々恐怖を感じるほど。これではまったく頼りにならない。
どうすれば? 現世では女神様としての能力が制限されている。
だからこそ協力が不可欠。

失敗したかな? 一旦戻った方が? ですがそんな時間もないし。
今日中に何とかしないと親族が来てしまう……
そうか親族だ! すっかり忘れていました。
うんうん。これなら何とかなるかもしれません。

現世と始まりの場所とでは時間の感覚が異なる。それは異世界とも異なる。
どうやらまだこの世界では転落事故発生から二十四時間経過してない。
異世界の一日がこちらでは約一時間半。
異世界・ザンチペンスタンでは最後の三日間を迎えているところ。
と言うことはここでは約十八時間経過してることになる。
だとすればまだ親族は駆けつけていないかもしれない。
連絡を受けて遠方ならばそれも充分にあり得ます。
転落事故は全国的に大きく取り上げられていたし連絡も行ったでしょう。
だから遠方の親族が今頃駆けつけても何らおかしくありません。

「ここには遠方からはどう行けば? 」
「そうですね。飛び乗ると考えればタクシー。
ですが遠方からではタクシー代はバカにならない。
となると新幹線か飛行機。レンタカーやバスに船」
加賀はすべての選択肢を示す。しかしこれでは絞れない。
もう少し何とかならないでしょうか?

「あなたならどれを選びます? 」
「安全で一番早いのは新幹線かな。飛行機は予約しないといけませんし。
その他のは時間が掛かり過ぎる。でもそれが? 」
男に今度の作戦を伝える。でもこの方法は失敗する確率の方が高い。
しかし教えてもらえない以上もうこの手に掛けるしかない。

「それで新幹線はどこから? 」
「上の方かな。昔の人はよくそこから来てたって」
「上? 要するに北ね」
「そうそう」
「そうそうじゃなくて急ぐの! 」
もう女神様としての慈悲深さは捨てた。

加賀には積極的に動いてもらう。今度の異世界騒動のきっかけを作った張本人。
彼にはそれなりの責任を取ってもらいましょう。それが彼の為にもなる。
遅々と進まない救出計画。それが現実。私たちに降りかかる現実。

急いでタクシーを捕まえ駅へ。
駅にはあふれるばかりの人で動きがとれない。
「あの女神様。ここにいても手掛かりなど…… 」
どうやら全然信用してないらしい。ですがこちらにはとっておきが。
それは愚か者一号さんの臭いの染みついたもの。
「大丈夫。彼の親族が駆けつけます。もうそれに懸けるしかない」
個人情報が理由で居場所がつかめない以上彼の親族を見つけ出すしかない。

これならもっと詳しく聞いておけばよかった。
彼がどこ出身で家族や親戚はどこに住んでいるかなど。
ですがもう遅い。後悔しても始まらない。
「いいですか? 彼と同じ臭いがすればそれが即ち彼の遠い親戚」
すべて予測でしかない。確証はまったくない。
ただこの臭いがまだ残ってるならそれに懸ける。

「ですが女神様。ここを通るとは限らないのでは? それにもう行った後かも」
不安になる加賀。彼にも焦りがあるのでしょう。
確かに彼の気持ちも分かる。でも落ち着いて欲しい。
「そんなことより見つけるんです! 」
もう無理なのでしょうか? 諦めの境地。
臭いがすることはない。当然ですが反応がない。
一時間が経っても無反応。これはやっぱり雲を掴むような話。
女神様ですから雲を掴むのはさほど難しくない。
ただ蜘蛛となると話は別。掴みたいとは決して思わない。

「女神様! もう諦めましょう。いくらやっても無駄ですよ」
加賀の意見は当然。しかし他に打つ手がないのも事実。
もう診断書にサインしているかもしれない。
悪い方向に考えて心配すればキリがない。
まずは深呼吸して精神を統一させましょう。
これで少しは落ち着くはず。

収穫なし。仲町に戻る。
粘ることもできましたがここは新たな作戦を考えますか。
まさかあの人…… 
ついに親族の者が現れたかと思ったら違った。
私をホテルに連れ込もうとした男。

「うわ…… 見つかっちまったか」
男はさも無念と言った表情。捕まる可能性があるから当然でしょうね。
「なぜあなたがここに? 車で来たのでは? 」
どうであれ送り届けてくれたのは彼だった。
最低な人間ですが感謝もしてない訳ではない。
「それが…… 待ち合わせでさ。やっぱり来ないぜ」
どうやらすっぽかされたらしい。モテない男の定め。
可哀想とは思いません。自業自得。天罰が下ったのでしょう。

「まあいいや。あんたも帰るのかい? 」
「いえ…… 実は人を探してるんです」
「そうか。昼間は悪いことをしたな。ついあんたがきれいだから」
謝ってるんだか謝ってないんだか。一体この人はどう言うつもりなのでしょう?
まさかまだこの女神様を狙っている? 

「もういいです。ではごきげんよう」
これ以上この男に関わればロクなことにならない。
無視して相手にしないのが一番いい。ですがそんなこと女神様にできるの?

もしまだ許せないならばいくらでも方法がある。
それ相応の罰を与えればいい。ですがそれは後で。
ただ問題はそれとは別にこの男が懲りずにしつこくしてくるところ。

                    続く
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