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木の棒
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ついに宮殿に入る。
もう逃げられない。姫がいたらお終いだ。
危険な賭け。緊張するな。
「お前ら遅れやがって! 」
嫌味を言いながら近づいてくるのは部隊を仕切る猛者。
誰だっけ? 当然俺は知るはずもない。
「隊長。こいつらの相手するのはよしましょう」
生意気に腰巾着が二匹。うっとうしくて敵わない。弱いくせに態度がでかい。
初めてだから適当に。感じたままを口に出すのはさすがに大人げないよな。
だから代わりに顔と態度に出してみる。
「ああん? 」
「いや何でも…… 」
今はこいつらに構ってるほど暇じゃない。急いで国王様に伝えなければならない。
ここは無難に行こう。俺はそもそも好戦的ではないしな。
どちらかと言えば平和を望むタイプ。
だからなるべく目立たずに大人しくしていようと思う。
「申し訳ありません! 遅れました隊長。しかしこのやる気を見てください」
魔王討伐には人も金もいる。だから役立たずの俺たちが切り捨てられることはない。
でも邪魔者扱いされ続けては居心地が悪い。ここらで実力を見せておくか。
「お前ら隊長の足を引っ張るなよな。ははは! 」
隊長の後ろからしか威張れない情けない奴ら。
「ふふふ…… 」
「笑いやがったなこいつ。勝負しろ! 」
腰巾着の一人が挑発に乗る。まったくアホだな。
「ボクはそんなつもりは…… 」
これ以上の面倒はごめんだ。
「ああん? 今笑っただろうが? 違うか田舎者! 」
あーあ。村を馬鹿にしたらどんな奴も立ち向かうしかない。
それが男であり勇者だ。誇りを失ってはならない。
でも俺は特殊。特別だと言ってもいい。村にいたのは十分かそこら。
だから何と言われても痛くも痒くもない。
「ごめんなさい。許してください…… 」
ひとまずこの世界を消滅させることを謝る。誰も理解してくれないだろうが。
それでも謝る。もはや他人がどうとかじゃない。自分の気持ちの問題だ。
「ははは! 情けない奴だな。俺がその根性を叩き直してやる! 」
調子に乗った取り巻き一名がさらに調子に乗る。
はあ…… 本当に苦労するぜ。
「ボク謝ったじゃないか…… 」
「うるさい。早く掛かってこい! 」
そう言うとキラキラ輝く刀を取り出す。切れ味鋭そう。
「うわ…… ボクちょっと…… 」
もちろん俺は強いはず。でも頭がいいのだ。
ここでは木の棒を取らない。どうせ負けると分かってるからな。
それにたぶん……
「おいどうした? 恐れをなしたか? ははは! 」
勝ち誇る腰巾着。
「おい馬鹿よせ! それ以上は…… 」
「いいから隊長は見ていてくださいって」
隊長が必死に止めるが言うことを聞きそうにない。
本当に困った奴だな。
しかしこいつは俺がどう返そうと関係なかったんだろうな。
気に入らないとその高級そうな武器を振り回す。何とも愚かしい。
「馬鹿! 何をしてる? 早くその刀をしまえ! 」
大慌ての隊長。だがそれでも腰巾着は調子に乗って刀を振り回す。
あーあ残念な奴だな。これで奴も一巻の終わりだ。
どうせ向かって気はしないだろうさ。ただ格好をつけたかっただけだろうからな。
では怖がってる振りでもしますか。
「やめてよ。ボク嫌なんだ」
「ははは! 聞きましたか隊長? こいつはもうこの隊には必要ありませんよ」
馬鹿笑いをする。
「おい何をしてる? 一体何事だ? 」
騒ぎに駆け付けた宮殿警備隊。
当然ながら宮殿内の治安に努めている。
「いえ…… 何も…… 」
隊長はどうにか隠そうと必死。だが奴は勝ち誇る。
「何でもない。この男に稽古をつけていたんだ! 」
「本当だな? 」
「はい。俺の強さを見せつけていたところさ。圧倒的だったよ」
「うむうむ。それでお前は? 」
睨みつける。俺はただ震えてただけだから関係ないよね?
「ボクはそんな大それたことをしたいとも思いません」
素直に答える。そもそも俺のは木の棒だから勝負になるはずがない。
それでも戦おうとするから困ったもの。
「分かった。だったらこいつのみを連れて行け! 」
宮殿警備隊は数名で腰巾着を取り囲みどこかへ連れて行ってしまった。
まあ大体どこに連れて行かれたかは分かるけどね。
「お待ちください! ご容赦願います! 」
隊長がどうにか庇おうとするがそれは無理な話。
国王のいる宮殿で刀を振り回した刃傷沙汰。さすがに見逃せるはずがない。
後で聞いたは話によるとどうやら奴は牢屋に入れられたらしい。
ふふふ…… 自業自得だな。同情もできないよ。
「なあお前大丈夫だったか? 」
トレードの奴まで俺の演技に騙される。
こっちの方が何かとやり易いからそうしてるだけ。
「それよりも国王様謁見は? 」
「それが忙しいそうで待つようにと。寛いでいてくれとさ」
姫との遭遇はどうにか避けられたようだ。
「だったら何か食おうぜ。腹が減ったよ」
こうして宮殿入りした魔王討伐隊。ついに物語は動き出す。
どんなご馳走が待ってるのかな? もうワクワクする。
興奮が止まらない。貧しいから肉なんかめったに食えないからな。
どうやら勇者・ノアの感情が高まる。
もちろん現世ではそこまで貧しくなかった。
ただ寝る暇もないほど忙しかっただけ。
続く
もう逃げられない。姫がいたらお終いだ。
危険な賭け。緊張するな。
「お前ら遅れやがって! 」
嫌味を言いながら近づいてくるのは部隊を仕切る猛者。
誰だっけ? 当然俺は知るはずもない。
「隊長。こいつらの相手するのはよしましょう」
生意気に腰巾着が二匹。うっとうしくて敵わない。弱いくせに態度がでかい。
初めてだから適当に。感じたままを口に出すのはさすがに大人げないよな。
だから代わりに顔と態度に出してみる。
「ああん? 」
「いや何でも…… 」
今はこいつらに構ってるほど暇じゃない。急いで国王様に伝えなければならない。
ここは無難に行こう。俺はそもそも好戦的ではないしな。
どちらかと言えば平和を望むタイプ。
だからなるべく目立たずに大人しくしていようと思う。
「申し訳ありません! 遅れました隊長。しかしこのやる気を見てください」
魔王討伐には人も金もいる。だから役立たずの俺たちが切り捨てられることはない。
でも邪魔者扱いされ続けては居心地が悪い。ここらで実力を見せておくか。
「お前ら隊長の足を引っ張るなよな。ははは! 」
隊長の後ろからしか威張れない情けない奴ら。
「ふふふ…… 」
「笑いやがったなこいつ。勝負しろ! 」
腰巾着の一人が挑発に乗る。まったくアホだな。
「ボクはそんなつもりは…… 」
これ以上の面倒はごめんだ。
「ああん? 今笑っただろうが? 違うか田舎者! 」
あーあ。村を馬鹿にしたらどんな奴も立ち向かうしかない。
それが男であり勇者だ。誇りを失ってはならない。
でも俺は特殊。特別だと言ってもいい。村にいたのは十分かそこら。
だから何と言われても痛くも痒くもない。
「ごめんなさい。許してください…… 」
ひとまずこの世界を消滅させることを謝る。誰も理解してくれないだろうが。
それでも謝る。もはや他人がどうとかじゃない。自分の気持ちの問題だ。
「ははは! 情けない奴だな。俺がその根性を叩き直してやる! 」
調子に乗った取り巻き一名がさらに調子に乗る。
はあ…… 本当に苦労するぜ。
「ボク謝ったじゃないか…… 」
「うるさい。早く掛かってこい! 」
そう言うとキラキラ輝く刀を取り出す。切れ味鋭そう。
「うわ…… ボクちょっと…… 」
もちろん俺は強いはず。でも頭がいいのだ。
ここでは木の棒を取らない。どうせ負けると分かってるからな。
それにたぶん……
「おいどうした? 恐れをなしたか? ははは! 」
勝ち誇る腰巾着。
「おい馬鹿よせ! それ以上は…… 」
「いいから隊長は見ていてくださいって」
隊長が必死に止めるが言うことを聞きそうにない。
本当に困った奴だな。
しかしこいつは俺がどう返そうと関係なかったんだろうな。
気に入らないとその高級そうな武器を振り回す。何とも愚かしい。
「馬鹿! 何をしてる? 早くその刀をしまえ! 」
大慌ての隊長。だがそれでも腰巾着は調子に乗って刀を振り回す。
あーあ残念な奴だな。これで奴も一巻の終わりだ。
どうせ向かって気はしないだろうさ。ただ格好をつけたかっただけだろうからな。
では怖がってる振りでもしますか。
「やめてよ。ボク嫌なんだ」
「ははは! 聞きましたか隊長? こいつはもうこの隊には必要ありませんよ」
馬鹿笑いをする。
「おい何をしてる? 一体何事だ? 」
騒ぎに駆け付けた宮殿警備隊。
当然ながら宮殿内の治安に努めている。
「いえ…… 何も…… 」
隊長はどうにか隠そうと必死。だが奴は勝ち誇る。
「何でもない。この男に稽古をつけていたんだ! 」
「本当だな? 」
「はい。俺の強さを見せつけていたところさ。圧倒的だったよ」
「うむうむ。それでお前は? 」
睨みつける。俺はただ震えてただけだから関係ないよね?
「ボクはそんな大それたことをしたいとも思いません」
素直に答える。そもそも俺のは木の棒だから勝負になるはずがない。
それでも戦おうとするから困ったもの。
「分かった。だったらこいつのみを連れて行け! 」
宮殿警備隊は数名で腰巾着を取り囲みどこかへ連れて行ってしまった。
まあ大体どこに連れて行かれたかは分かるけどね。
「お待ちください! ご容赦願います! 」
隊長がどうにか庇おうとするがそれは無理な話。
国王のいる宮殿で刀を振り回した刃傷沙汰。さすがに見逃せるはずがない。
後で聞いたは話によるとどうやら奴は牢屋に入れられたらしい。
ふふふ…… 自業自得だな。同情もできないよ。
「なあお前大丈夫だったか? 」
トレードの奴まで俺の演技に騙される。
こっちの方が何かとやり易いからそうしてるだけ。
「それよりも国王様謁見は? 」
「それが忙しいそうで待つようにと。寛いでいてくれとさ」
姫との遭遇はどうにか避けられたようだ。
「だったら何か食おうぜ。腹が減ったよ」
こうして宮殿入りした魔王討伐隊。ついに物語は動き出す。
どんなご馳走が待ってるのかな? もうワクワクする。
興奮が止まらない。貧しいから肉なんかめったに食えないからな。
どうやら勇者・ノアの感情が高まる。
もちろん現世ではそこまで貧しくなかった。
ただ寝る暇もないほど忙しかっただけ。
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