転生失敗からの異世界消滅の運びとなりました それでもボクは寝続けようかなと思います

二廻歩

文字の大きさ
47 / 205

助かる方法

しおりを挟む
始まりの場所。
目を覚ますと女神様の浮かない顔が。
「あの…… 何かありましたか? 」
ついアーノ姫のままで答えてしまう。
<あなたにお伝えしなければならないことがあります>
神妙な顔。これはどうやら想像を超える新発見があったらしい。

<実はこの世界は崩壊します>
さも初めてであるかのように。これで三度目では?
「それは聞きました」
<あと七日もありません>
「ハイそうですね」
<終わりなんですよ? >
「そうですね! 」
<髪切った? >
「そうですね! 」
なぜ同じことを繰り返す? まだ迷ってるのかすごく言いにくそう。
どうも遠回りして反応を見てるかのよう。

<どうすれば回避できるかですが…… 一つだけ確実な方法があります>
やった! 何だ問題ないじゃないか。確実な方法があれば恐れることはない。
後はサクッと済ましてのんびり過ごそう。
この世界にも慣れてきた頃だしな。

<一つになるんです>
三つの人格を一つにする。それは前回も聞いた気がする。
「だからその方法を教えてくださいよ」
もう土下座でも何でもするから回避させてほしい。
これはもうボクだけで済む話じゃない。
この世界に生きる多くの者の命が懸かっている。
ふざけられる状況にない。転生失敗しもう後がないのだ。

<落ち着いて聞いてください。三人が一つに戻れる方法が一つだけあります。
ですがそれはあまりに非現実的で衝撃的なのです>
女神様は当然ボクの女神様だ。それと同時に全員の女神様でもある。
この異世界を作ったのも恐らくこの女神様。
それだけに女神様の落胆は辛くて見ていられない。

「長くなりますか? 」
<いえあなたが承知するならすぐにでもはっきりと>
そう言われては返す言葉が見つからない。
沈黙が支配する。

「もう早く答えなさいよ! 」
張りつめた空気の中沈黙を破ったのは妖精だった。
こんな時に急かすんだからな。超重要な決断なんだぞ?
「分かったって! 承知しました女神様。どうぞお教えください! 」
ついに覚悟を決める。
これから何を言われても耐える。それだけさ。
<分かりました。愚かな子羊に幸あれ! ではお伝えします>
女神様も決心がついたらしい。

<確実に戻れる方法。それは…… >
「それは? 」
<二つの人格を葬り去る! >
女神にしては言葉が強めだ。しかし意味不明ではないか?

「どうやって? 」
<しかるべき日にしかるべきやり方で>
女神様はそう言うがとっても抽象的なんですが? もう少し具体的にお願いしたい。
どうやら分かったことはここまでらしい。
しかるべき日がいつを指すのかまだ女神様には分かってないのだとか。
それはまあいいとしてしかるべきやり方が問題だな。

「それはまさか…… 」
妖精の方は閃いたらしい。ボクはちっとも。
「しかるべきやり方…… 」
何度も繰り返してみる。
<これがどう言う意味か分かりますよね? >
しかるべきやり方とはどうやらこの手で殺害せよと言うことらしい。

実にシンプルな答えだ。しかしそんなことがボクにできるのか?
元々しがないサラリーマンで殺しなんかしたこともない。
犯罪だってバレたのは片手で数えられる程度。
おっと…… 余計なことだったかな? もちろん冗談さ。

殺し屋でもないのに無茶言うなよな。
そもそも近づくことも許されないのにどうやって?
実行不可能なことを言われてもただ茫然とするだけ。

<以上です。しかるべき時がいつなのかは分かり次第またお伝えします>
こうして質問も許されずに再び異世界へ。


新たな一日が始まる。
早朝。馬車で田舎へ向かう勇者・ノア。

女神様のお言葉が頭から離れない。
しかるべき時とはいつなんだ?
今宮殿を離れてしまったが本当によかったのだろうか?
くそ! もう何が何だか分からない。頭がこんがらがる。
この世界はもう間もなく消滅する。
それは紛れもない事実らしい。だが回避する方法もあるとのこと。
僅かな可能性に賭けるにしてもまだどうすればいいかよく分かってない。

ボクは一体どうしたらいいのだろう? どうしたら……
恐らくどうすることもできないんだろうな。
ボクには僅かな可能性に賭けられない理由がある。
それは女神様が一番よく知っている。
悪人を処分するのに心が痛むことはない。
だが善人とまでいかないにせよただの人間を処分しろと言うのか?
果たしてそんなことボクにできるのか?
プレッシャーは半端ない。責任も伴うものだ。
ただ目の前のことに集中してればいい類のものではない。
しかるべき時とはいつなんだ? ボクは本当に耐えられるのか?

これが二者択一ならまだいい。しかし両者ともこの手で…… 
そんなのできる訳が…… できるはずがないんだ。
どうする? どうすればいいんだ?

「あーどうしましたか? さっきからブツブツ言ってますが」
おじさんが心配になって声をかける。
彼はこの道三十年以上のベテランで専属ではないがよくお世話になってるそう。

目の前に巨大な川が見えてくる。
「まだ着かないの? 」
「すんません。川が氾濫しちまって遠回りしますね」
おじさんの話ではこの川は雨が降るとすぐに氾濫するのだとか。
だから今までまともに行けた試しがないと笑う。
「分かった。急いでくれ。これは王命なんだ! 」
それだけじゃない。すべては女神令。どうせ言っても無駄なんだろうな?
気が狂ったと思われるだけ。

馬車はぐるっと大回りすることに。
そこに今怪しい影が近づこうとしている。
「おい止まれ! そこの馬車止まれ! 」

まずい盗賊だ! 囲まれた?


                続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...