62 / 205
ダンスパーティー
しおりを挟む
引き続きアーノ姫。
現在魔女尾行中。
暑くもなく寒くもない絶好のハイキング日和。尾行にはもってこい。
少しぐらい歩いてもいいのかな? でも姫様ですから無理は……
そんなことを知ってか知らずか対象はどんどん先へ行ってしまう。
魔女を追いかけて一軒のお屋敷へ。
そこは手入れの行き届いたお洒落な庭園で現在青と黄色のバラが咲き誇っている。
「家の人を呼んで来てくれませんか? 」
メイドが一名対応するのですがどうも話が通じない。
「はい。ここの家の者ですが」
「失礼。メイドさんではなくて? 」
「ここにはメイドはいません。私がこの屋敷の雑用係を任されてるんです」
草取り娘は鎌を高く掲げて胸を張る。
立派だと思います。もう草から生まれた草取り姫と呼んでもいいぐらい。
あるいは草刈り姫でしょうか?
鎌が太陽に反射して煌めく。
それをまさかボクに振り下ろすつもりではありませんよね?
放置すれば血を見ることになる。ここは緩い異世界のはずですが……
「任せるって…… そう言うのをメイドって言うのでは? 」
「違います! 私はここの家の末娘です。ただ私一人母が違って…… 」
草取り姫は会ったばかりのボクに悩みを打ち明ける。
複雑な家庭環境。随分重めの内容。
継母と意地悪な姉から酷い仕打ちを受けてるとか。何て可哀想なのでしょう。
しかしボクにはどうすることもできそうにない。ただ勇気づけるぐらい。
「随分苦労されてるんですね」
「はい。でも今日その苦労が報われるんです」
何と素晴らしい。今日が記念すべき解放日だとか。
ふふふ…… だったら相談するなよと言いたいですが心に留めるだけにする。
だって鎌を持ってるんですもの。抵抗はしない。
ボクも姫様だから苦労が絶えない。でもこの子はその比ではないのでしょうね。
さあ優しい言葉をかけてあげよう。その鎌の餌食になる前に。
「よく今日まで頑張りましたね。それであなたのお名前は? 」
「ツンデーラ。意地悪なお母様とお姉様のお世話になってます」
嫌味だか何だかよく分からない。
屋敷ではなく馬小屋横の離れで一人寝泊りをしてるそう。
「それで今日宮殿でダンスパーティーが…… 」
「はいはい。王子と踊りたいんでしょう? でも連れて行ってくれないと悩んでる」
「あなたはまさか占い師? 」
「いえ…… ただの暇を持て余してるだけの旅の者です」
ちょっと格好をつけてみる。
ツンデーラは王子との幸せな結婚生活を思い描いてるのでしょう。
それがあったからこそ酷い仕打ちにも耐え忍べた。そうに違いありません。
ツンデーラの告白が胸に刺さる。何とかしてあげたい。
こんな風に思ったのはいつ以来?
どちらかと言えば姫ですからするよりもしてもらっている方。
「分かりました。ボクも協力します。どうせ暇ですから」
こんなことしてて本当にいいのかな? まあでも面白そうだからいいよね?
「ありがとうございます! 」
「ではまず王子様に気に入られるように練習してみましょうか」
姫ではあるがすぐに逃げ隠れしたせいで姫らしいことは何一つやって来なかった。
でも男に気に入られるにはどうしたらいいかぐらいは分かる。
まずは王子がどのようなタイプかを知ることが重要。
でもボクだって会ったことないしな…… きちんとアドバイスできるかな?
「いえ王子はいいんです」
ツンデーラはいきなり冷める。どうしたのでしょう? あれだけ喜んでくれたのに。
気でも変わった? その辺りは我がままで姫っぽいからプラス材料?
「王子様に気に入られたいんでしょう? 」
「いいえ! もうあのお婆さんも勘違いしてるんだもんな…… 」
「お婆さんって魔女? 」
まずい。つい口が勝手に? この草取り娘からバレてはこと。
ここはいっそのこと口封じを……
「お知り合いですか? 」
「いえ…… さっき見かけたからもしかしたらと…… 」
適当にごまかす。無理がありますが気にしてる様子もない。
たぶん大丈夫でしょう。口封じの件もなかったことに。
「これは絶対に秘密にしてくださいね」
前置きをする草取り姫。暗に言い触らせと?
仮にそうでも今のボクにはそんなこと……
「もう大げさなんだから。それでツンデーラはどうしたいの? 」
この子は辛い仕打ちを受けておかしくなってしまった。
王子様と結ばれる以上の幸せはないでしょう?
「今夜は意地悪三人が遠い宮殿に。その隙に彼と逃げるつもり。
十二時に教会で待ち合わせてるの」
どうやら駆け落ちするつもりらしい。思ったよりも行動的で考えてもいる。
「それで魔女はどうするって? 」
「何だか勘違いしてていくら言っても大丈夫だから心配するなって」
片手間に始めるからこんなミスをするんでしょうね。
ではボクが代わりに逃げる手伝いを……
「悪いけどあなたにはその魔女の相手をお願いしたいの」
「はあ…… 」
「宮殿で王子とダンス? 冗談じゃない! 私は逃げ出すんだから! 」
本性を現した草取り姫・ツンデーラ。意外にも大人な女性でした。
「分かった。どうせ暇だから代わってあげる」
ダンスパーティーも悪くない。
最近ご馳走にもありつけてませんからね。
クマルスペシャルには飽き飽きしていたところですからちょうどいい。
「ありがとう。では今晩またここに来て! 」
こうして一旦離れることに。
何だかおかしな展開になって来たな。
ボクはどうかな? 魅力的な王子様とその辺の冴えない男。
うーん考えるまでもなく王子様ですよね?
まさかここの王子様って不細工なの? それともとんでもない女好き?
どうであれ今夜会ってみれば分かること。
こうして魔女の行動を観察しつつ夜までのんびり過ごすことに。
続く
現在魔女尾行中。
暑くもなく寒くもない絶好のハイキング日和。尾行にはもってこい。
少しぐらい歩いてもいいのかな? でも姫様ですから無理は……
そんなことを知ってか知らずか対象はどんどん先へ行ってしまう。
魔女を追いかけて一軒のお屋敷へ。
そこは手入れの行き届いたお洒落な庭園で現在青と黄色のバラが咲き誇っている。
「家の人を呼んで来てくれませんか? 」
メイドが一名対応するのですがどうも話が通じない。
「はい。ここの家の者ですが」
「失礼。メイドさんではなくて? 」
「ここにはメイドはいません。私がこの屋敷の雑用係を任されてるんです」
草取り娘は鎌を高く掲げて胸を張る。
立派だと思います。もう草から生まれた草取り姫と呼んでもいいぐらい。
あるいは草刈り姫でしょうか?
鎌が太陽に反射して煌めく。
それをまさかボクに振り下ろすつもりではありませんよね?
放置すれば血を見ることになる。ここは緩い異世界のはずですが……
「任せるって…… そう言うのをメイドって言うのでは? 」
「違います! 私はここの家の末娘です。ただ私一人母が違って…… 」
草取り姫は会ったばかりのボクに悩みを打ち明ける。
複雑な家庭環境。随分重めの内容。
継母と意地悪な姉から酷い仕打ちを受けてるとか。何て可哀想なのでしょう。
しかしボクにはどうすることもできそうにない。ただ勇気づけるぐらい。
「随分苦労されてるんですね」
「はい。でも今日その苦労が報われるんです」
何と素晴らしい。今日が記念すべき解放日だとか。
ふふふ…… だったら相談するなよと言いたいですが心に留めるだけにする。
だって鎌を持ってるんですもの。抵抗はしない。
ボクも姫様だから苦労が絶えない。でもこの子はその比ではないのでしょうね。
さあ優しい言葉をかけてあげよう。その鎌の餌食になる前に。
「よく今日まで頑張りましたね。それであなたのお名前は? 」
「ツンデーラ。意地悪なお母様とお姉様のお世話になってます」
嫌味だか何だかよく分からない。
屋敷ではなく馬小屋横の離れで一人寝泊りをしてるそう。
「それで今日宮殿でダンスパーティーが…… 」
「はいはい。王子と踊りたいんでしょう? でも連れて行ってくれないと悩んでる」
「あなたはまさか占い師? 」
「いえ…… ただの暇を持て余してるだけの旅の者です」
ちょっと格好をつけてみる。
ツンデーラは王子との幸せな結婚生活を思い描いてるのでしょう。
それがあったからこそ酷い仕打ちにも耐え忍べた。そうに違いありません。
ツンデーラの告白が胸に刺さる。何とかしてあげたい。
こんな風に思ったのはいつ以来?
どちらかと言えば姫ですからするよりもしてもらっている方。
「分かりました。ボクも協力します。どうせ暇ですから」
こんなことしてて本当にいいのかな? まあでも面白そうだからいいよね?
「ありがとうございます! 」
「ではまず王子様に気に入られるように練習してみましょうか」
姫ではあるがすぐに逃げ隠れしたせいで姫らしいことは何一つやって来なかった。
でも男に気に入られるにはどうしたらいいかぐらいは分かる。
まずは王子がどのようなタイプかを知ることが重要。
でもボクだって会ったことないしな…… きちんとアドバイスできるかな?
「いえ王子はいいんです」
ツンデーラはいきなり冷める。どうしたのでしょう? あれだけ喜んでくれたのに。
気でも変わった? その辺りは我がままで姫っぽいからプラス材料?
「王子様に気に入られたいんでしょう? 」
「いいえ! もうあのお婆さんも勘違いしてるんだもんな…… 」
「お婆さんって魔女? 」
まずい。つい口が勝手に? この草取り娘からバレてはこと。
ここはいっそのこと口封じを……
「お知り合いですか? 」
「いえ…… さっき見かけたからもしかしたらと…… 」
適当にごまかす。無理がありますが気にしてる様子もない。
たぶん大丈夫でしょう。口封じの件もなかったことに。
「これは絶対に秘密にしてくださいね」
前置きをする草取り姫。暗に言い触らせと?
仮にそうでも今のボクにはそんなこと……
「もう大げさなんだから。それでツンデーラはどうしたいの? 」
この子は辛い仕打ちを受けておかしくなってしまった。
王子様と結ばれる以上の幸せはないでしょう?
「今夜は意地悪三人が遠い宮殿に。その隙に彼と逃げるつもり。
十二時に教会で待ち合わせてるの」
どうやら駆け落ちするつもりらしい。思ったよりも行動的で考えてもいる。
「それで魔女はどうするって? 」
「何だか勘違いしてていくら言っても大丈夫だから心配するなって」
片手間に始めるからこんなミスをするんでしょうね。
ではボクが代わりに逃げる手伝いを……
「悪いけどあなたにはその魔女の相手をお願いしたいの」
「はあ…… 」
「宮殿で王子とダンス? 冗談じゃない! 私は逃げ出すんだから! 」
本性を現した草取り姫・ツンデーラ。意外にも大人な女性でした。
「分かった。どうせ暇だから代わってあげる」
ダンスパーティーも悪くない。
最近ご馳走にもありつけてませんからね。
クマルスペシャルには飽き飽きしていたところですからちょうどいい。
「ありがとう。では今晩またここに来て! 」
こうして一旦離れることに。
何だかおかしな展開になって来たな。
ボクはどうかな? 魅力的な王子様とその辺の冴えない男。
うーん考えるまでもなく王子様ですよね?
まさかここの王子様って不細工なの? それともとんでもない女好き?
どうであれ今夜会ってみれば分かること。
こうして魔女の行動を観察しつつ夜までのんびり過ごすことに。
続く
0
あなたにおすすめの小説
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる