転生失敗からの異世界消滅の運びとなりました それでもボクは寝続けようかなと思います

二廻歩

文字の大きさ
68 / 205

限界ギリギリ 幼馴染だからいいよね?

しおりを挟む
引き続き勇者・ノアのターン。
現在幼馴染と二人っきりで登山の真っ最中。
「あれま。お客さんでないかい? 」
苦行と化したのんびり温泉旅。
幼馴染の我がままもあってすべての荷物を持つ羽目に。
そんな時後方から人の声が。
どうやら宿屋の者が偶然通りかかったらしい。

「まさかあんたらお客さんかい? 今日は泊りで? 」
「ハイそうです」
元気いっぱいの田舎育ちの幼馴染。彼女にとっては軽めのハイキング。
でもこっちはそうもいかない。重い荷物を抱えての登山。
笑顔など浮かべようがない。
「そうかい。だったらこっちだよ。ついて来な」
ラッキー! これで地獄から解放される。
重くて仕方なかったんだよね。手は痛いし足は違和感があるし。
せっかくの国王からのお暇を頂いたのにこの惨状。
なぜこうなってしまったのかボクにもよく分からない。

早く着かないかなと思ってたんだよね。
または姫か魔王様にでもチェンジすればと思っていた。
でも肝心な時には入れ替われずにまったく役に立たない。
これってファンタジーじゃないの?
もう少しだけでも楽であって欲しい。過酷な旅はこの世界観には相応しくない。

「ほら早く来てよね! もうみっともない! 」
散々な言われよう。でもいい。どれだけ罵られようと構わない。
これで解放されるのだから。
「では宿まで案内しますね」
そう言うと二人はボクを置いて先に行ってしまった。
冗談でしょう? 非情過ぎる。お客さんはまだここにいますよ。

十分後どうにか宿を発見。
まったくどうなってるんだろう。
宿に着くなりあの女はボクを引っ張って行こうとするしさ。
「ちょっと待ってくれって! もう疲れたよ」
本当は反論する気力もないが放っておくと何をされるか分からないからな。
ここは強めに言っておこう。

「ほら温泉に行くよ! 」
こちらの意見は一切聞かず無理やり従わせようとする。
「温泉ぐらい一人で行けよ…… 」
別に二人で行く意味などない。ゆっくり自分のペースで入ればいい。
もちろん本気ではないんだけど疲れからどうしても我慢できなくなってしまう。
「何か言った? 」
うわ…… 機嫌がすこぶる悪い。これは反抗しない方がよさそうだ。
「いや…… 何だか寒くないか? 」
「ううん全然。さあ行きましょう」
人の話をまったく聞かず否定しかしない困った幼馴染。

「でも着替えも荷物もまだでさ…… 」
荷物は部屋まで運んでくれるそう。
だったらもっと前に言ってよね。ここから部屋なら大した距離じゃないじゃないか。
もうボク限界なんですけど。

急いで支度をし後を追いかける。
ごねてもよかったんだけど。ボクも男だから見たくない訳じゃない。
本来なら幼馴染と言えばもう嫌と言うほど見て来てるはず。
ただボクに限っては新鮮な体験。さあ行ってみますか。

「ほら夕日きれいでしょう? 」
ここから見る夕日がとても素敵だと教えてもらった。
何だ…… 急いでた目的はこれか?
確かにきれいだ。でもこの夕日も後どれくらい見れるのかな……
おっといけない。何を悲観的になってるんだ? 消滅を阻止すればいいだけさ。

「きれいだ! 本当にきれいだよ! 」
「ありがとう…… 」
そう言って恥ずかしそうに俯く。
いや違う。きれいなのは夕日であって君じゃない。
まさかこんな絶景美が見られるとは思わなかった。
心が洗われる。だからとても感謝してる。でもだからってきれいなはずないだろ?
「さあ夕日も沈んだことだしそろそろ行きましょうか? 」
手を繋いで仲良く一緒に天然温泉へ。

天然温泉は貸し切り状態。
そうか今は町からの団体さんも僅かだと言ってたっけ。
やったね! これで思う存分満喫できるぞ。
「ねえ知ってる? ここって雪女が出るんだって。地元では有名らしいの」
ボクを怖がらそうとはかわいい奴め。でもボクはそんな手には引っ掛からない。
雪女などいるはずないじゃないか。

「雪女! 」
「ぎゃああ! 」
「いや! 抱き着かないでってばもう! 」
そう言うが満更でもない様子。
「済まない! 」
一応謝っておくか。後が怖いしな。
「ではそろそろ入りましょうか」

やっぱりそうか。ボクをまだ幼馴染のノアだと思ってるな。
事実そうなんだけど。でもちょっと違うんだよな。
肉体的にはそうでも精神的には違うと言うかちょっと難しい。
精神的には独立した存在とでも言えばいいんだろうか?

「待ってくれ! 念のために温度を測ろう」
大体でいい。手を入れてみる。ちょっとした時間稼ぎ。
うわ熱い。これは火傷レベル。五十度かそこらだろう。六十度行ってたりして。

ではかき混ぜますか。
「そこら辺に混ぜる棒みたいなのはない? 」
「そんなの持ってきてないって! だったらこれはどう? 」
プラチナソードを見る。
おいおいこれはまずいだろ? 肌身離さず携帯したもの。
国王からの頂きものでもあるのでさすがに粗末には扱えない。

「ちょっとこれはまずいって…… 」
「大丈夫。この程度でどうにかならないでしょう? 」
そう言うと躊躇うことなく投入。
うわあああ! 何てことをしやがる。
勇者の魂だと言うのに困ったなもう。溶けて使いものにならなくなったらどうする?
こうしてかき混ぜ棒となったプラチナソードで湯加減を調整する。
さあこれくらいでいいだろう。ちょっと熱いぐらいが適温さ。

うん…… 待てよ。
これってまさか…… 必死に考えないようにしてたけどかなり危険な状況では?
どうしたらいいんだ? このまま身を任せるしかないの?
幼馴染と二人きりでお風呂。しかも開放感抜群の天然温泉と来てる。
もうボクたちの前には遮るものなど何もない。

「では入りましょうか」
そう言って躊躇なく脱ぎだす。
いや待ってくれ…… ボクはどうすればいい?
「ほら早く脱ぐの! 」
うおおお…… もうどうにでもなれ!
興奮が止まらない。うん興奮? これってまさか……
またいつものパターンらしい。



                続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...