転生失敗からの異世界消滅の運びとなりました それでもボクは寝続けようかなと思います

二廻歩

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逃げ隠れ追跡劇

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その頃宮殿では。勇者・ノアのターン。
「どうした改まって」
「今魔王は隠れ家を離れどこかへと向かっております。
今こそ魔王軍をせん滅させるチャンスなのでは? 」
どこかとはもちろんロイド山だが言えるはずがない。
国王はうんうんと頷くと続けるように促す。
「何も奴らが戻って来るのを待たなくてもよろしいのでは? 国王様ご命令を! 」
今叩かなければ本当の平和は訪れない。
魔王様やモンスターに怯えて暮らす時代はもう終わった。
今こそ全兵力を挙げてモンスター壊滅に動くべきだろう。
勇者であり隊長のボクが動く時。

いい加減隊長としての実力を見せつけないと怪しまれるからな。
もちろん本気じゃない。でもそれを悟られてはならない。
後は国王の気持ち次第。仮に感化されて王命がでたとしてもどうにでもなる。
魔王様も姫もロイデン村に向かっておりボクが動いても接触の心配はない。
だから初めて積極的に動けるチャンス。今こそ行動すべき。
ただころころ立場や意見を変えては信用を失う。

「それは無理だな。姫が行方不明になっている。
下手に手を出し姫を危険な目に合わせてはなるまい」
国王は思いの他慎重だ。前のような豪快さが見られない。
ボクが旅で離れていた時のような強引さが消えた。

何度も強調するが今は魔王様は別にしてもアーノ姫は魔女と登山中。
危険はまったくない。あるとすれば魔王様に姫がばったり出会うぐらい。
それはボクにはどうすることもできない。

「しかし国王様…… 」
「よい。それ以上はいい。今はそうっとしておいてやろう」
 冷静で消極的な国王。どうしてしまったのだろう?
姫を思うあまり守りに入ったか? まさかね。
「しかし…… 」
納得がいかない。せっかくのチャンスをみすみす棒に振るなんて。
「隊長。お前には重要な任務を与えてるではないか」
その辺はまだはっきりしないので濁すつもりでいたが国王は忘れてないらしい。
「姫との再会の件ですね? 現在難航しておりまして…… 」

姫と国王様を会わせるにはいくつもの障害がある。
一つ目としてボク自身であると言うこと。遭遇のリスクもある。
二つ目として姫も国王様もこの国にはなくてはならない存在。
特に危険な地域や見知らぬ土地に足を踏み入れるのは避けたい。

国王様は会いたい。一目見たいとだけ。
だが危険を冒してまで再会させることにどれだけの意味があるのか?

「それよりもお前の同郷の幼馴染をぜひ紹介してくれないか? 」
話が進みそうにないので幼馴染の話へ移る。
こっちとしても助かる。
「はい喜んで! 」
ブシュ―が宮殿に押し掛けた件が国王の耳にまで。
どうやらウロチョロしてうっとうしいとまでは思っていないらしい。

「それからだが…… 」
今後を話し合うことに。
国王は姫に会いたい一心で色々と画策した。
それをボクが悉く反対してるものだからいい気はしてないのだろう。
ボクだってできるなら国王の望みを叶えてやりたいよ。でも状況が状況だからな。
今は一日でも早くロイデン村にいる愚か者の片割れを捉えて女神様の元へ。
姫様との件はそれからでも遅くはない。


ロイド山。
九合目から頂上にかけて。
ようやく頂上が見えた。間もなくロイデン村と言うところで邪魔が入る。
再びのモンスター。
いくらこちらに魔王様がついていても事情を知らないモンスターには敵とも餌とも。
行方不明中の姫が目の前にとなれば魔王様の貢物として捕まるのは目に見えてる。
ああどうしたらいいでしょう? こちらに気づかなかったはずがないのです。

「姫! 早くそのステッキを寄越しやがれ! 」
大慌ての魔女が言葉を間違える。
「それを言うならお渡しくださいでしょう? 」
きれいで上品な言葉を心掛ける。それが姫。
仮に魔女だろうと一緒にいる時は守ってもらいます。
「そんなことより早く! 」
足の負担軽減にとただの杖として使っていた。
「もう仕方ないな。ほらこれを。それよりも隠れた方がよくなくて? 」
と言っても見渡してもどこにも隠れる場所などない。

どうしよう? まずいどうしよう。また伏せる?
パニックになる。もし見つかれば魔王様と出会ってしまう。
それだけは絶対に避けなければならないのに引き寄せられるように接近す。

「おいこっちに誰かいなかったか? 」
「気のせいだろ? 」
「いや絶対にいた! 」
「しょうがねえな。よし確認するかな」
モンスターが下りてくる。
まずいどうしよう? 隠れるところも逃げる暇もない。

魔女がステッキを振ると大木が出現。
急いでその裏に隠れる。
「どうだ! いたか? 」
「おかしいな…… どこにも見当たらない」
「ははは! やっぱりお前の見間違いだよ。情けない奴だな」
「そうかな…… いたような気がしたんだが。どうする念のために報告するか? 」
「バカか? そんなことしてみろ! 魔王様の逆鱗に触れる」
「それもそうだな。だったら問題なしにしておくか」
モンスターは行ってしまった。

完全に姿が見えなくなったところで木の陰から姿を見せる。
「ふう危なかった。ありがとう」
「ははは…… お助けキャラとして当然のことをしたまでさ」
魔女が再びステッキを振ると大木がきれいさっぱり消えた。

何だかんだ言いながら防波堤となって守ってくれた。
「さあ一定の距離を取りながら追いかけますよ」
「ウソ? もう戻った方が? 」
「ほら早く! 見失うだろう」
急いで追い駆けろと。しかしここはひとまず落ち着いて待った方が。
我慢できずに先に行ってしまう魔女。
言うことも聞かず急ぎ過ぎてせっかちなのはお年寄り特有のもの。

もう一人にしないで!

                  続く
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