転生失敗からの異世界消滅の運びとなりました それでもボクは寝続けようかなと思います

二廻歩

文字の大きさ
121 / 205

急接近! 近すぎる二人の関係

しおりを挟む
引き続きアーノ姫のターン。
仕方ない次…… 
「ねえお姉さん。困ってることがあったら僕が…… 」
大人びた口調と態度。
さっきから気にはなっていたがどうもすべてを知ってるような。
「あなたまさか…… 」
「うん…… ボクはまだ子供だよ。難しい話は分からない」
追及しようとするがうまくかわされる。とてもただの子供には思えない。
そんな子がいるとするならそれは間違いなく我々が追い求めていた愚か者。
中々尻尾を掴ませてくれない慎重で大人びた男の子。

「ねえ一緒に来てくれない。絶対に悪い様にしないからさ」
子供相手に何を言ってるのでしょう?
格好悪いし情けないこと。でも目の前の獲物を狩らずにどうする?
今は姫ではなく崩壊を止めようとする一人の勇者として臨む。

どうにかしてこの子を連れ帰れたらな。
ただこの子自身に自覚がない場合も。
無意識に乗り移ってるとしたらどうすれば…… 
それでも心を鬼にして女神様に引き渡すべきでしょうか? 
どうすればいい? 悩みは尽きない。
でも急がないと魔王軍がやって来て厄介なことに。
ここはどうにか説得するしかない。

見つけたはいいがこれからどうすれば?
「そうだ。君のことを探してる人がいるんだけどな」
ボクは一体何をしてるのでしょう? 幼い子供を連れ去ろうとしてる?
いくら本当の姫様ではなくてもこれは決してやってはならないこと。

「お邪魔しますよ。ああ姫! こんなところに? 探したんだからね」
まずい。タイミング悪く魔女に。いやちょうどいいのか?
「この子が例の…… 」
これでいい。魔女は不老不死の実を求めてやって来た。
そのついに愚か者探しにも協力してもらっている。
判断は彼女に任せることに。

「本当かい? こんな年端も行かない坊やがね」
「恐らく…… ただ確証はまったくありません」
聞かれないように声を抑えて。

「どうしたのきれいなお姉さん? 」
男の子とは言えもう一人前。女性の扱いに慣れている。
彼もボクと同じように現世からの逃亡者。この異世界では異質な存在。
しかも片割れは魔王様に囚われどこかへ閉じ込められている。

「一緒に行こうか? 」
「うん。いいよ」
無邪気だ。本当に彼がこの世界を消滅させようとしてる破壊者なの?
ただ何も知らずに生きているだけのようにも。

こうして二人目を無事に確保。
これからどうするかを現在考え中。
魔女にすべて任せるか? 
魔王軍に捕まらずに村人にも疑われず。果たしてそんなことができるの?
ボクは当然魔王様とご対面はご法度。決して出会ってはいけない。
引き渡しもできやしない。ここはフーツにでも……

勝手に連れて行く訳にも行かないのでひとまず母親に挨拶。
「ちょっと何なの? ホラ来るんじゃない! 」
トラブル発生? 一体何が?


その頃魔王様は……
「化け物こっちだよ! ほらぼうっとしないで」
子供は正直だな。でもこれではロクな大人にならない。
いつの間にか性格が変わったと言う男の子を紹介してもらうことに。

「いや待て! そっちは…… 」
「ほら早く! あの家の子だからさ」
男の子が指し示した家はさっきまでアーノ姫が。恐らく今でも……
「ボグ―! ボグ―! ボグ―! 」
ボグ―の三連発で威嚇する。これで恐怖で足が竦んで動けないだろう。
魔王様と大人の怖さを思い知るがいい。

「おじさん。ふざけないで。こっちは真面目に案内してあげてるんだからさ」
情けないことに引っ張られていく。
「しかし…… 」
「ほら魔王様。何を我がまま言っておられるのですか? 」
何も知らない手下に両腕を取られる。
まったく最近のモンスターは礼儀がなってない。
これでは子供が真似してしまうではないか。

「ほら行きますよ魔王様」
有無を言わせずに噂の男の子の元へ。
まずい。まずいぞこれは。消滅の危機まで残り五十メートルを切った。

「ボグ―! ボグ―! ボグ―! 」
「はいはい魔王様。喜びの雄たけびは早いですよ。まだ分からないですからね」
「知ってるわ! それよりもフーツを待つべきでは? 」
「いえ。ここは早いところ済ませてしまいましょう」
こうして絶体絶命のピンチを迎える。

「うわ嫌だ! やめてくれ! 」
「往生際が悪いですよ魔王様」
まずい。逃げ切れない。
「おばさんあの…… 」
さっきまで話していた男の子の母親。
「ああ遊びに来たんだね。うん? あんたらは誰だい? 何しに来た? 」


その頃アーノ姫は……
「どうしよう? どうしよう? 」
ただ慌てるのみで何も解決策が思いつかない。
「ほら落ち着きな! 食い止めるから姫は奥に」

「裏口ならそっちだよ」
男の子はやはりただ者ではなさそう。考えを先回りして協力してくれる。
「ありがとう。ほら一緒に行きましょう」
「ううん」
首を振る。どうやら自分は残るそう。

「何を言ってるの? 」
「お姉さんだけでも逃げて。僕は大丈夫だから」
そうやって格好つける。でも魔王軍に囚われたらどんな仕打ちを受けるか。
「ほら姫様! この子は構わずに逃げて! 」
魔女が後を引き受けると。男の子も守って見せると。これなら安心か。

ドンドン
ドンドン
魔王軍が来襲。開けなければ叩き壊す勢い。
これは脅しか? でも頭が悪いので本気とも取れる。
「分かりました。ではこの子の世話をお願いしますね」
「大丈夫だって! 任せておきな! 」
忍びありませんがこれも消滅回避には仕方ないこと。
裏口から脱出を図る。
これで魔王様とご対面することはないでしょう。

危機は去った。
急いでロイデン村を後にする。


その頃魔王様は手下に押される形で突入。
「よしその者を捕まえろ! 」
手下が止めるのも聞かずに暴走を始める。
怯えた男の子。その隣では女性の姿が。

「お前は誰だ? 」
「失礼だね。私はアーノ姫だよ」
無理がある。その見た目では村の年寄りにしか見えない。
「嘘を吐くな! アーノ姫はもっと若くて美しいだろうが! 」
手下は囮で変わり身の魔女を追及する。

「失礼だね! アーノ姫だって言ってるだろう? それで何の用だい? 」
「そうだった。男の子を…… 」
「待て! 引き上げるぞ! 婆さん後を頼んだ! 」
手下を制して命令する。さすがにこれでは従わない訳には行かない。
「魔王様…… それでよろしいのですか? 」
「ほら帰るぞ! ぐずぐずするな! 」
すべては自分の我がまま。もう充分だ。
例の愚か者は魔女に任せておけばいい。

任務完了。村を去ることに。


                     続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...