紅心中 男女五人による愛と冒険と過去とミライ(学園編)

二廻歩

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合宿一日目

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バックパックを背負ってビニール袋を掴むとそのままホームへ。
乗り換えまで十分あるのでトイレを済ます。

ここで行っておかないと後悔することになる。
部長も言っていたっけ。これから終点まで一時間ほど。
その間に行きたくなったら僅かな時間で済ますしかない。
だがそれは決してお勧めしない。
トイレを探してる間にタイムアップ。電車は無情にも出発してしまう。
多少なら待ってくれるだろうが俺たちはなじみでもなければ地元民でもない。
ただここのトイレもお世辞にもきれいとは言えないが。
うーん。これは改善点。去年から思っていたことだが。
まあどこも同じようなものだからどのみち我慢するしかないか。

後三分と言うとところでまだアイミと陸が戻ってこない。
まったくあいつらはどこに?
ハンドタオルを手にノロノロ歩いてくるアイミ。
「お前一人か? 陸の奴は見なかったか? 」
「さあ? 興味ないから」
まずいな。このままだと本当に奴を置いていくことになる。
仕方ない。面倒だけど探すか。

常にトラブルメイカーで何かと問題を起こす忙しない陸。
どうせ奴のことだから…… うわ…… 鳥に餌をやってやがる。
想像を遥かに超えていく。何がどうなったら鳥に餌を?
あれはカラス? こっちはハト? 
奴は鳥人間にでもなったか?

「あははは! 」
ダメだ。餌をやるのに夢中で気づかない。
またしても遅刻する気か? 
「陸! 早く! 早く! 」
急かすもまったく反応しない。このままでは本気で乗り遅れるぞ。
当然その責任は俺に。奴の世話係を任されてるからな。

「急げ! 」
部長の一喝に驚き餌をバラまいて大慌て。
今更拾ってる暇はない。ここは餌あるいは陸をそのままにして出発するしかない。
「うわ待ってくれって! 乗り遅れる! 」
訳の分からないことして駆け込み乗車する困った奴。車掌は呆れ顔。

ハアハア
ハアハア
どうにか息を切らしながらも飛び乗った。
ギリギリセーフだから文句はない。
ただ団体行動には向いてないと改めて認識。
「まったく何をやってるんだよ? 」
「悪い悪い。時間があったからつい餌を」
一応は反省してるようなのでこれ以上は追及しない。
それにしても危なかったな。
これはもう説教ものだな。たぶん俺もつき合わされることになる。

列車は海沿いを走り出した。
大体一時間ほどを費やす。
さらにバスに乗って三十分。去年お世話になった民宿が見えてくる。

部長の親戚が経営するお世辞にもきれいとは言えない築四十年のお宿。
そろそろ建て替えの時期だろうな。あちらこちらに傷みが見られる。
去年陸が暴れてできた穴は完全に塞がっている。
引っ掻き傷でもないからさすがにマスキングテープでごまかすのは無理。
ガムテープで応急処置していたところを埋めたらしい。
うんきれいに修復されている。
まあ民宿だからな。いくらボロくても客室だからそこは神経質にもなる。

しかし何であの時陸の奴は暴れたんだっけ?
あの時俺は熟睡していて…… 当時の部長に叩き起こされたのを覚えている。
だから奴がなぜ暴れたのか? 原因不明。いくら聞いても教えてはくれない。
未だにその時のことを話したがろうとはしない陸。どうせ興奮したんだろうがな。
こんな大トラブルを起こしておきながら今年も受け入れるのだから頭が下がる。
いくら親戚だからって拒否してもいいのに。
 
午後からさっそく海に。
一日目は自由行動。
泳がなくても別に構わない。のんびり砂浜で寝そべっていてもいい。
マリンスポーツに繰り出すのもあり。
海の家に入り浸りでもいい。
とにかくサマー部らしい活動をする分には何も言われない。
ただ危険なことはしないようにと。

俺たちはホエールウォッチングに繰り出す。
宿の船を使ってクジラの群れを追いかける。男のロマンだ。
「部長どうです? 」
「いや全然見えない」
ポイントを知っているのでついて来たのだがどうやら逸れているらしい。
もっと南に移動したと見るべきだろう。
初日からあまりについてない。地元のダイバーに聞いておけばよかったかな?

「おいそろそろ波が高くなってきた。今日は諦めて次の機会にしよう」
これでは明日や明後日も無理そうだな。
だとしたら来年以降も無理かもしれないな。完全な無駄骨?
「もう少し待ってみましょうよ。クジラの大群が見られるかも」
どうにか粘るも部長はこれ以上は危険だと頑として譲らない。
仕方ないので今回だけは部長の言う通りに。

「そうだ部長。例の件どうなりました? 」
「ああサプライズで提案する」
「いや事前に伝えておいた方がいいですって。サプライズは危険ですよ」
「おいおいつまらないことを言うなよ。さあ戻るぞ」

夕方から雨が降りだしてきた。これは上空との温度差によるものだと考えられる。
海上ではしけるし嵐になれば耐えるしかない。
夕立ちでいつ大雨になるか分からない怪しい空模様。
もはやクジラどころではないな。
ここは急いで宿に戻ることに。

「あらもう帰ってきたのかい? 」
驚いた様子のおばさん。タオルで出迎える。
「ホラ濡れただろ? 」

こうして無事に一日目の予定を終える。
  
                   続く
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