紅心中 男女五人による愛と冒険と過去とミライ(学園編)

二廻歩

文字の大きさ
52 / 62

存在するとは?

しおりを挟む
七月は合宿もあった。
サマー部に相応しいマリンスポーツにサプライズの肝試し。
肝試しは部長たちの悪ノリで盛り上がったがやり過ぎの感も。
俺の記憶ではその後失踪した部長。現在も行方不明中のはず。
それなのに病院に来ていた不思議。
異世界に取り込まれたとばかり思っていたが現世に戻ってこられたらしい。
何てね…… 確か翌朝には姿を見せていたっけ。
部長は人騒がせなんだよな。

ビーチバレーを楽しんでいたはずなのにいつの間にか病院に担ぎ込まれていた。
その間中おかしな夢。特に幼い頃の夢を見ていた。
振り返ればこんな感じ。

もう夏休みも一か月を切った。
今日は何をしようかな?
いやそうじゃない。もう決まってるじゃないか。
母さんはもう忘れてると思ってホッとしてるようだがそうはいかない。
計画通りに行こう。

あれから五年。ミライが言っていた期限を迎える。
話によると祭りは八月末に行われる。
タイムリミットが過ぎればミライは無理やり結ばれてしまう。
それがそのおかしな村の風習であり村民が守るべき絶対的な掟。
詳しくは聞けなかったけれどお相手はどこぞの金持ちあるいは地元の支配者。
それか権力者。村長かもしれない。
そんな王にも近い存在がミライのお相手となる。
しかもそいつはミライだけでなく多くの女性と。
このまま行けばミライはその王のものになってしまう。
それだけは絶対に阻止。それがあの日あの場所にいた俺の運命であり役目だから。
俺は全力で彼女を守る。そして俺たち二人は結ばれるんだ。

このことを陸にぼかして相談した。完全に思い出したのは入院してる時。
それまでは断片的な記憶しかなかった。それが辛くて辛くて。
俺は一体なぜこんな大事なことを忘れていたのか? 情けなく思う。
夢と過去の記憶。
奴の理解力では難しいだろうが俺の妄想ではないとだけ理解してくれた。
奴も協力すると格好をつけていたが今のところ何一つ動きはない。
まあそこまで期待はしてない。ただ俺の味方してくれればそれでいい。

ふう…… いつの間にかボウっとしていた。
俺が怪我したことで父さんに会いに行く計画は振り出しに。
ダメだ。このままでは間に合わない。強引に進めなければ。
一度は許可を得たこと。決して危ない訳でもない。
遅くてもお盆までにはミライの元へ。
俺が行ってどうなるか分からないが何もせずには諦められない。

「なあそれってお前の夢じゃないのか? 」
最初は陸も半信半疑だった。
「そんなことない! これは夢なんかじゃない! 現実の話なんだ! 」
何度も何度も粘り強く説得する。
「悪い。信じてない訳じゃないんだぜ…… でも確証がないだろう? 」
陸の奴めこんな時に正論吐きやがって。
ただ確証がないって使ってみたかっただけじゃないのか?

「現実なんだ! 全部現実なんだ! 」
「でも…… お前親父さんと別れて落ち込んでいたろ?
そのせいでおかしな夢…… 幻を見るようになったんじゃないのか? 」
「そんなはずあるか! すべて現実なんだ! 」
「でも誰なんだその子は? 名前は? 場所は? いつの話なんだ? 」
奴に追及されても何一つ答えられない。どうして? 俺が間違ってるのか?

「俺は正しい! 夢なんかじゃない! 彼女は存在するんだ! 」
「おいおい落ち着けって! 大丈夫。本当に存在すれば問題ないからよ」
奴に励まされる。何だか情けないな。でも陸はいい奴だから。
そうこれが最初に相談した時の反応。でもほぼ理解せずに適当に答えたんだろうな。
最初はまったく信じてくれない陸を恨みさえした。
でも冷静になってよく考えれば当然の反応だよな。

存在すれば問題ないか。
存在するって何だろう? 俺が存在すると信じればそれでいいのか?
存在って見えること? 聞こえること?
俺の中には父さんは存在する。でもあれから会ってない。
それでも一度も会ってない人間を存在してると言えるのか?
確かに父さんが存在するのは間違いないんだけれど。それでも何だかな。
俺には目の前にいて話せる人間こそが存在するだと思うんだけどね。
記憶の中にとか心の中にとかって表現もあるけれどそれはどうも違う気がする。

おっともうこんな時間か? 考えごとはお終い。
陸のところに行くとしよう。 
同じ町内でたまに遊びに行くこともある親友であり仲間。
それが陸だ。頭は俺よりも悪いのでいろいろと助かってる。
こんなこと言うとまるで俺は悪い人間のように思われるかもしれない。
それは分かってるんだ。でも助かってるのは事実でそう意味では感謝してる。
俺がどんなにミスしようと勉強ができなかろうと奴がそれを上回るからな。
下回ってくれると言った方が表現としては適切なのかな?

呼び鈴を鳴らす。
いつもだったら待ち切れずにすぐに飛んでくる。
カメラでもついてるのか? 見えないのにな。
一度確認してみたがどうやら俺の鳴らし方は独特だから一発で分かるのだそうだ。
嘘を吐けと言うが癖があるからそれを直さないと攻略されると真顔で言うからな。
いつもふざけたことしてるのに顔はなぜかふざけてない。
だから奴はいつも真面目。真面目にふざけてるんだろう。

高校からは多少大人にはなったがそれでもあれだから。
俺なんか部長から世話係を任されられた。
暴れさせるな。しっかり見ておけと。
猛獣じゃないんだからそこまで言わなくても……

あれ? 飛び出してこない。まだ寝てる?

                   続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写と他もすべて架空です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...