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噂話
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素直で可愛らしいヴィーナ。
お姉様に時折見せていたが私には決して……
いつも不機嫌でワガママなお嬢様だった。
でも今はどうでしょう? 素直で打たれ弱い女の子。
だから守ってあげたいと本気で思う。悩みを解決してやれたらと。でも……
ごめんなさい。ごめんなさいヴィーナ。
あなたの悩みを取り除いてあげられない。
もうセピユロスと幸せになると決めた。
遅すぎる。遅すぎるのよヴィーナ。
そんな顔をしないで。私の決意が揺らいでしまう。
もっといつものように不機嫌でワガママで生意気なヴィーナでいて。
「ほら顔を上げなさい。詳しく話して」
相談に乗る振りをする。
ああ裏切り続ける私をお許しください。
「メイドたちが噂してた。セピユロスが夜な夜な通っているのを見たと」
ヴィーナの告白。それは衝撃的なものだった。
何とか冷静さを装うもどうしても強引になってしまう。
「見間違いじゃないの。気にすることないわ」
「一人だけじゃない! 何人も見たって…… 」
「たぶん勘違いよ。いい加減なんだから」
「勘違い…… 本当に? 」
「ええ。誰が言ったんです? 」
「だから女の子たち…… 」
ヴィーナもその辺のことは心得ているよう。
名前を言えば処分されると分かっているから濁した。
事実がどうであれ根も葉もない噂を流すメイドをそばには置いておけない。
私は何と言ってもここの絶体権力者。ご主人様なのですから。
この屋敷を支配する者であり責任者でもあるご主人様。
やはり処分は免れない。速やかに遂行すべき。
トラブルの芽は早めに摘むのがいいですからね。
「まあ誰でもいいわ。どこに通ってると? 」
問い詰めずに話を聞く。
「それが…… 教えてくれない」
私たちの関係にヴィーナはまだ気づいてないらしい。
「分かりました。それとなく聞いてみますのでこれ以上悩むのはよしなさい」
「誰のところに通っているか聞きだすつもり? 」
ヴィーナはまだ拘っている。
セピユロスが夜な夜などこへ通おうとどうでもいい。
真実は闇に葬るべきだ。
「お母様? 」
まだ気にかけてるよう。
所詮は噂話に過ぎない。これ以上真面目に答えるのも馬鹿馬鹿しい。
「心配しないで。聞きだしてももちろん処分しません」
ただ噂の出所は突き止める必要がある。
「ほらぼうっとしてないで手伝うのです」
ヴィーナの頭の中から噂を取り除かねば。
急がなくては噂好きのメイドたちの格好の餌食となってしまう。
最悪なのはそれで真実を知ってしまうこと。
ごまかしようがない。
「ハイハイ」
横柄な態度のヴィーナ。
相談してすっきりしたのか元気を取り戻したよう。
相談相手は選びましょう。私にはこの手の話はさすがに荷が重い。
とにかく絶体絶命の危機は乗り切った。
ただヴィーナが近づき過ぎれば真実に辿り着く恐れもある。
それは彼女にとって大変つらいことになるでしょう。
当然私も巻き込まれることに。
噂とはどこまでも噂でしかない。決して真実などではない。
仮に噂が真実だったとしても必要以上に近づいてはいけない。
説得が功を奏したのか大人しく作業に戻るヴィーナ。
飾りつけを終え後は国王様を待つだけ。
「あのご主人様…… 」
ノートを片手にメイドが駆けて来た。
国王を招待するとあってびっちりと書き込まれたノート。
そつなく進行させるのには重要なもの。
「それで歓迎の意味も込めてやってはどうかと…… 」
元々国王主催のパーティーで披露するつもりだったがまあ余興するのも悪くない。
「私は良いのですが…… ボノが」
そう肝心のボノが居ない。
この余興は一人ではできない。二人が力を合わせてようやく完成する。
「いかかが致しましょうか? 」
「分かりました。そのように調整お願いします」
よく考えもせずについ勢いで。安請け合いしてしまったかしら?
後悔してももう遅い。
恥ずかしい格好に恥ずかしい思いをしなければならない。
我が家に伝わる伝統的なもの。
いつかはヴィーナにも継承してもらうことになる。
それがこの家に生まれた者の宿命。
子から孫へ。伝わっていくもの。
「ご主人様セピユロスさんが戻ってきました! 」
新人メイドの声。
セピユロスはボノと狩猟に出かけたはず。
今流行のスポーツハンティング。
決して褒められた趣味ではない。
ボノは色々と言い訳して正当化するが結局は残酷なゲーム。
野蛮で美しくない。紳士のお遊びには相応しくない。
セピユロスの帰還が意味するものとは?
崩壊の足音が近づいて来る。
もう誰にも止められない。
続く
お姉様に時折見せていたが私には決して……
いつも不機嫌でワガママなお嬢様だった。
でも今はどうでしょう? 素直で打たれ弱い女の子。
だから守ってあげたいと本気で思う。悩みを解決してやれたらと。でも……
ごめんなさい。ごめんなさいヴィーナ。
あなたの悩みを取り除いてあげられない。
もうセピユロスと幸せになると決めた。
遅すぎる。遅すぎるのよヴィーナ。
そんな顔をしないで。私の決意が揺らいでしまう。
もっといつものように不機嫌でワガママで生意気なヴィーナでいて。
「ほら顔を上げなさい。詳しく話して」
相談に乗る振りをする。
ああ裏切り続ける私をお許しください。
「メイドたちが噂してた。セピユロスが夜な夜な通っているのを見たと」
ヴィーナの告白。それは衝撃的なものだった。
何とか冷静さを装うもどうしても強引になってしまう。
「見間違いじゃないの。気にすることないわ」
「一人だけじゃない! 何人も見たって…… 」
「たぶん勘違いよ。いい加減なんだから」
「勘違い…… 本当に? 」
「ええ。誰が言ったんです? 」
「だから女の子たち…… 」
ヴィーナもその辺のことは心得ているよう。
名前を言えば処分されると分かっているから濁した。
事実がどうであれ根も葉もない噂を流すメイドをそばには置いておけない。
私は何と言ってもここの絶体権力者。ご主人様なのですから。
この屋敷を支配する者であり責任者でもあるご主人様。
やはり処分は免れない。速やかに遂行すべき。
トラブルの芽は早めに摘むのがいいですからね。
「まあ誰でもいいわ。どこに通ってると? 」
問い詰めずに話を聞く。
「それが…… 教えてくれない」
私たちの関係にヴィーナはまだ気づいてないらしい。
「分かりました。それとなく聞いてみますのでこれ以上悩むのはよしなさい」
「誰のところに通っているか聞きだすつもり? 」
ヴィーナはまだ拘っている。
セピユロスが夜な夜などこへ通おうとどうでもいい。
真実は闇に葬るべきだ。
「お母様? 」
まだ気にかけてるよう。
所詮は噂話に過ぎない。これ以上真面目に答えるのも馬鹿馬鹿しい。
「心配しないで。聞きだしてももちろん処分しません」
ただ噂の出所は突き止める必要がある。
「ほらぼうっとしてないで手伝うのです」
ヴィーナの頭の中から噂を取り除かねば。
急がなくては噂好きのメイドたちの格好の餌食となってしまう。
最悪なのはそれで真実を知ってしまうこと。
ごまかしようがない。
「ハイハイ」
横柄な態度のヴィーナ。
相談してすっきりしたのか元気を取り戻したよう。
相談相手は選びましょう。私にはこの手の話はさすがに荷が重い。
とにかく絶体絶命の危機は乗り切った。
ただヴィーナが近づき過ぎれば真実に辿り着く恐れもある。
それは彼女にとって大変つらいことになるでしょう。
当然私も巻き込まれることに。
噂とはどこまでも噂でしかない。決して真実などではない。
仮に噂が真実だったとしても必要以上に近づいてはいけない。
説得が功を奏したのか大人しく作業に戻るヴィーナ。
飾りつけを終え後は国王様を待つだけ。
「あのご主人様…… 」
ノートを片手にメイドが駆けて来た。
国王を招待するとあってびっちりと書き込まれたノート。
そつなく進行させるのには重要なもの。
「それで歓迎の意味も込めてやってはどうかと…… 」
元々国王主催のパーティーで披露するつもりだったがまあ余興するのも悪くない。
「私は良いのですが…… ボノが」
そう肝心のボノが居ない。
この余興は一人ではできない。二人が力を合わせてようやく完成する。
「いかかが致しましょうか? 」
「分かりました。そのように調整お願いします」
よく考えもせずについ勢いで。安請け合いしてしまったかしら?
後悔してももう遅い。
恥ずかしい格好に恥ずかしい思いをしなければならない。
我が家に伝わる伝統的なもの。
いつかはヴィーナにも継承してもらうことになる。
それがこの家に生まれた者の宿命。
子から孫へ。伝わっていくもの。
「ご主人様セピユロスさんが戻ってきました! 」
新人メイドの声。
セピユロスはボノと狩猟に出かけたはず。
今流行のスポーツハンティング。
決して褒められた趣味ではない。
ボノは色々と言い訳して正当化するが結局は残酷なゲーム。
野蛮で美しくない。紳士のお遊びには相応しくない。
セピユロスの帰還が意味するものとは?
崩壊の足音が近づいて来る。
もう誰にも止められない。
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