なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

文字の大きさ
98 / 125

メイド館

しおりを挟む
お屋敷からの命がけの脱出。
チャウチャウに続いて窓からジャンプ。
もちろん柿の木までは届かずにお尻から地面に着地。
「おい音がしたぞ。回れ回れ! 」
出入り口に詰めていた警備の者が走って来る。
ここで捕まっては元も子もない。
木登りは幼い頃に少々。柿の木も何度か。今はさすがに無理なので草陰に身を隠す。
「居たか? 」
「ダメです。見つかりません」
大騒ぎするだけしてすぐ行ってしまった。
助かった! でもこれではもしもの時に役に立たない。改善すべきでしょう。
ただそのおかげで助かったので何とも複雑。

さあゆっくり慎重にそれでいて急ぐ。
深呼吸して心も落ち着いた。
大丈夫かな? 夜行性の獣が襲ってきたらひとたまりもない。
大蛇に丸飲みされたらお終い。
暗いものだからつい恐ろしいことばかり想像してしまう。
実際すぐ近くに目を覚ましたばかりの獣たちが徘徊してるとどうしても。
彼らは決してご主人様の言うことを聞かない。

ガサガサ
ガサガサ
草木が風によって揺れる音?
きゃああ!
つい悲鳴を上げるがすぐに掻き消された。
にゃああ!
「何だチャウチャウじゃない。まったく驚かせないでよ」
こうして第一関門突破。
急いでメイド館へ。

ここにはメイドの他にエイドリアスから逃れて来た者たちの住処にもなっている。
チャウチャウ! チャウチャウ!
着いてこいと言ってるように聞こえる。
取り敢えず用意してあった帽子と白装束で変装。
これで男か女かも分からなくなったでしょう。
後は気付かれたら黙って下を向けばいい。
そうすれば勝手に勘違いしてくれるでしょう。
この白装束はエイドリアスの正装。
セピユロスのご両親から頂いたもの。
次の機会にはこの服でとお願いされた。
まさかこんな事態になるとは夢にも思わなかったですが。

運は決して悪くない。
ご主人様は強運の持ち主でなくてはなりませんからね。
エイドリアン!
エイドリアスの民。そうセピユロスも誇り高き者。

メイド館には小さい頃以来行っていない。
小さい頃は勝手に遊び場にしていた。新人メイドとお友達になることも。
あの頃はよく通っていたっけ。でもすぐにお母様に見つかってメイド共々絞られた。
懐かしい思い出。あれは何年前だったかしら。
その頃の記憶を頼りにセピユロスが閉じ込められている場所を探す。

メイド館には男が一人目を光らせている。
メイド館とは言われてるもののもちろん男もいる。
八割がメイドで二割が使用人。
今日は使用人の一人が出入り口に。屈強な男で力では到底敵いそうにない。
ただそんな時はご主人様として振舞えば問題ないでしょう。
夜遅くまでご苦労様。ちょっとお邪魔させてもらいますよ。

揺動部隊が突っ込む。
「ああ、また今日も来やがったなこの化け猫! 」
チャウチャウが引っ掻き回す。
猫を追いかけて見張りは姿を消した。
さすがはチャウチャウ。分かってらっしゃる。
メイド館を正面から堂々と中に入る。
ご主人様ですからね当然ですよ。何か問題ありますか?
誰に言うでなく呟く。
それにしてもいくらエイドリアスの方がいるとは言えただのメイド館。
見張りを立てるほど治安が悪化してるの?
まさかセピユロス奪回を恐れてのこと?
まあ何にせよメイド館までやってこれたのですから細かいことはいいでしょう。

手掛かりを求めて辺りを探る。
間もなく四時。
急がなくては日の出までに間に合わない。
セピユロス…… セピユロス……
真夜中だからか人の気配を感じられない。
このままでは時間切れになる。
せっかくここまで来たのにそれは嫌。
どこです。一体どこに?
セピユロス…… ああセピユロス…… 
心の中で張り裂けるほどの大声を上げる。
ああ、出来るなら大声で叫びたい。
でも気付かれたらお終い。そのプレッシャーからつい声が震える。
「セピユ…… セ…… 」
闇の喧騒に声が掻き消される。
念じるのも難しい。

メイド館は二階だけでなく地下もある。
一番適してるのは地下の奥の部屋。
陽の光の当たりにくいジメジメした部屋が怪しい。
階段で降りようとしたその時だった。
「あなたは? 」
ついに気づかれた? もうこんな時に。でもよく考えればまだ何もしてない。
私はまだただのご主人様。
「何をしてるのですか? 」
当然か。こんな明け方にコソコソしてれば誰でも警戒する。
絶体絶命のピンチ。

             続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...