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選ぶ側

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哀れな追放者。神に見放れし者。

「神様どうすればよろしいのでしょうか? 」

「この光に触れなさい。さすればお主の腰痛肩こり頭痛が改善されるであろう」

「あの神様。私はまだそのような年でもありません。お戯れはおやめください」

「ホッホホ…… これは一本取られた」

笑ってごまかす元神の情けない姿。

「再度尋ねます。どうすればよいのですか? 」

「迷える子羊よ。神に供えるのです。食べ物がいい。柔らかいと助かる。

ガムやキャラメルは受け付けない。歯に悪いのでな」

「あの師匠。冗談はそれくらいで。どうしたらいいか聞いてるんですよ」

「フンそんなことも分からぬか? 今までの修行を振り返ってみろ。

どうじゃ分かったであろう」

一度たりとも修行をつけてもらったことがない。

この爺さんはまったくふざけてばかり。

いい気なものだ。自分はのほほんと外野から高みの見物。

俺がどうなろうと知ったこっちゃない。

もはや本当に神なのかも疑わしい。

ずっと前から疑わしい。

初めて会った時から疑わしい。


「さっきから何を? 俺は即死チートをどうにかしたいんです」

「ではこのお札を貼りなさい。

これで今までの流れに逆らい必ずやいい方向に傾くであろう」

「お札? 本当に効くんですか? 」

「神を疑うと言うのか? この愚か者めが! 」

「へいへい。分かりましたよ。信じますって」

神との会話を終え再び狂乱の宴へ。


追放官さまのお出ましだ。

「今からお前らには役立たずを三名選んでもらいたい。お前が中心になって決めろ」

久しぶりの決定権を得る。

これはお札のおかげ? さっそく効果が表れたようだ。

後はこれで役立たずを三人選ぶだけでいい。

簡単だ。

まずはお前とお前。

いつも口うるさい隣の村の奴。前から気に入らなかったんだよな。

排除っと。

すぐに二人は決まる。

だが最後の一人が問題。

さすがにウエスティンを選ぶのは可哀想だ。

明らかに適任者だが仲間は売れない。

となるとそれ以外の奴。

しかし決め手がない。選んで恨まれてもなあ……

誰がいいかな。誰でもいいからこそ選べない。

皆拮抗している。

ウーン。困ったなあ。目でも瞑って決めるか?


「おいまだか? 早くしろ! 」

追放官はイライラし始めた。

しょうがない適当に。

だが誰も目を合わせてくれない。

ちょっと合ったと思ったら視線を逸らす。

左に右に。上に下に。

ある奴は明後日の方向に。


くそ決め切れない。

どうしていつも俺はこうなんだ?

優柔不断と罵られるのがオチだと言うのに。

村ではその手のことは一度も経験しなかった。

上の者に引っ張ってもらっていた。

今だって楽勝と言いながら前の奴について行くだけ。

俺が決めなければ他の者が決めるだけ。

恨まれる筋合いはない。

うーんでも……

よしこいつだ。こいつにしよう!

第三番目の追放者は……


ゴーン。

鐘が鳴る。

初めて聞く気がする。

ゴーン。

再び鳴り響く鐘の音。

嫌な予感がする。

ああ。どうしたのだろう。


パンパン。

追放官が腰を上げる。

「残念だが時間切れだ! 」

うおおお!

嬉しさの余り大声を上げる候補者たち。

「どう言うこと…… 」

「まったくお前には失望した。せっかく選ばせてやったのに残念だよ」

この場合どうなるのか。まさかね……

「では規則により選び切れなかったお前が行くことになる。いいな? 」

追放官から思いもよらない一言。

「お前ってまさか…… 」

「そうだ。お前だ。お前に行ってもらう。最後の追放者はアモ―クスお前だ! 」

「それはないよ」

もはや聞く耳を持たない。

「さあ皆の者寛ぐがいい。お前ら三人はこっちに来い! 」

せっかく回避するチャンスを優柔不断だったばかりにみすみす逃してしまう。

「ほらしっかり歩け! 」

お守りが意味をなさない。こんなのあり?

非情になり切れなかった俺と常に非情な追放官。

選ぶ側も決して楽ではない。


「では君たちにはここで散ってもらう」

俺? やっぱりダメだった。

またしても取り残されてしまった。

絶望してなどいられない。

ここは素早く切り替える。

後から迫る化け物をエスケープでかわしワープゾーンへ行けばいい。

もう五回以上は来た。

だから他の奴と違って勝手は分かっている。

ただ逃げる。それだけ。

シンプルなだけに危険もあるが問題ない。

十分警戒して逃げる。

二匹の化け物は一見仲が悪そうに見える。

だが捕食の時は信じられないようなコンビネーションを見せる。

二人は助からない。

彼らを囮にいや守り切れずにワープゾーンに。

再度意識を失う。

                続く
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