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劇は劇でも
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男がサーマに迫ろうとしている。
しつこい酔っぱらい。
酒場には珍しくないタイプの困った奴。
サーマの力の見せ所。
どうこの危機を乗り越えるか?
「ウエスティン! 」
ウエスティンは震えるばかり。恐怖で声も出ないらしい。
それでも勇者か? 本当に姫をお守りする勇者なのか?
今姫を助けずにいつ助けるんだ。
ウエスティンはやはり当てにならないか。自力で切り抜けてくれサーマ。
「いい加減にしてよ! 」
我慢しきれずにサーマが切れる。まあ当然だね。
うわあ…… 始まってしまった。酒場の騒乱。
「へへへ…… いいぞ! いいぞ! やれ! やれ! 」
「アモ―クス何言ってるの! この人しつこいんだから」
そうだった…… ついつい酒とここの雰囲気に呑まれてしまった。
俺は何てことを…… くそ! いやそんなこと考えてる時じゃない。
姫をお守りしなくては。
「師匠お願いします」
「うむ。そこの若者よ。大志を抱け」
ダメだこれは。完全に酔ってる。師匠は使い物にならない。
「サーマ逃げて! 」
「もう情けないんだから! 」
カラン
カラン
酒場に一人のマントを被った男がやって来た。
「おっと何をしているのかな? 」
マントをつけたふざけた野郎が間に立つ。
マント野郎は酔っぱらいの腕を取ると捩じ上げる。
「痛てて…… 何しやがる! 」
うん。見とれるほどのいい男。もしや五人目の勇者の登場か?
「師匠。俺もこんな風になりたい」
「いやだからお前だってできたはず」
酔っぱらいはふざけやがってと啖呵を切る。
この後はお待ちかねの決闘。
「西部劇みたいだ」
「そうじゃな従者よ。お主もガンマンに憧れるか? 」
「いえ世代が違います」
「うーむ。それはもっともじゃ」
カラン
カラン
音が鳴り悪役の登場。
「おいお前! 俺の弟分に何してやがる! 」
見ただけでちびりそうな凶悪な面。それ以上に悪臭が俺の鼻を狂わす。
「師匠? 」
「済まぬ…… 儂にはこの異臭攻撃にはちょっと…… 」
「いや師匠の攻撃魔法で懲らしめてやってください」
「それは臭い…… いや違った。できない! 」
「出し惜しみしてたらやられますよ」
「いやこの攻撃魔法は魔王及び手下のモンスターまたは操られている獣。
または化け物。たたの獣だって鳥獣保護法で守られてるものは攻撃できない。
自動的に無効化してしまう。だからできん! 」
「では人間には無理だと? 」
「ああ獣にしか見えんが奴とて人間。無理じゃ」
「ではアップラッチは? 」
「同じだ。残るはアイテムぐらいだが今は貴重品入れの中」
悪役の後には手下が控えている。逃げようもない。
「表に出ろ! ヘンテコ野郎! 」
「フンいいですよ。決闘でもしましょうか」
「おう! 言いやがったな! 望むところだ! 」
血が騒いだのか悪役が吠える。
「フンいいでしょう」
格好良いマントの男と悪役の髭もじゃ悪臭男が争っている隙を突き宿屋に戻る。
その後血の雨が降ったのは言うまでもない。
「あれ決闘見なくていいんすか? 」
「ああ世界が違い過ぎる」
「世界? 」
「あっちは西部劇。こっちは○○う劇。格が違い過ぎる」
それはいくら何でも言い過ぎでは……
「ジャンルがあまりにも違い過ぎて着いていけんわ」
今夜お邪魔するつもりだったが断念して早めに寝ることに。
四人部屋を確保。
本来ならサーマ姫をこの輩から遠ざけるべきだがさすがに一人にはできない。
一番良いのは俺とサーマ姫の二人部屋だがそれでは文句が出る。
あーあ。もう一人ぐらい可愛い女の子がいるといいんだけど。
くじ引きで寝る場所を決める。
「やった! 」
窓際がサーマ。隣が何と俺。その隣が師匠。入口にウエスティン。
「師匠は年ですから入口の方が良かったのでは? 」
「心配するでない。尿漏れの心配はいらない。儂を誰だと思っておる?
それよりも早く寝るぞ。明日も早いんじゃからな」
神の秘儀。スーパースリーピング。
一瞬で眠りにつく。
「ねえサーマ。あの男はどうだったの? 」
「ええ。良い人だと思う。でも相手はまともに勝負してはくれない連中よ」
「では命を落とすと? 」
「ええ。残念だけど。これも運命」
「そうか本当に残念だね。それよりもあの酔っぱらい何か言ってなかった? 」
「止めて! もうあの男の話は思い出したくもない。
嫌らしい目で見るだけじゃなくて隙を見て触ろうとしてくるんだから寒気がする」
この手の男には免疫が無いらしい。まあ当然か。お姫様だもんね。
収穫なし。
せっかくサーマが頑張っても意味がない。
「それよりもあのお爺さん。本当に信じられる? 」
「師匠? 元神だからそれはもちろん…… 」
「だから神ではなく元神なんでしょう? 」
「そう言えばリザも疑ってたっけ…… 」
「もう寝ましょう。アモ。アモでいいでしょう」
「ああ好きに呼んで。姫様は何とお呼びしたらよろしいですか? 」
「ええ…… サーマでいい。サミーでも可」
「じゃあサミー。これからよろしく」
「ええ。一緒に探しましょう。私たちの未来を」
何か意味深な言い方。照れてしまう。
「おやすみ。サミー」
「おやすみ。アモ」
眠れぬ夜を過ごす。
続く
しつこい酔っぱらい。
酒場には珍しくないタイプの困った奴。
サーマの力の見せ所。
どうこの危機を乗り越えるか?
「ウエスティン! 」
ウエスティンは震えるばかり。恐怖で声も出ないらしい。
それでも勇者か? 本当に姫をお守りする勇者なのか?
今姫を助けずにいつ助けるんだ。
ウエスティンはやはり当てにならないか。自力で切り抜けてくれサーマ。
「いい加減にしてよ! 」
我慢しきれずにサーマが切れる。まあ当然だね。
うわあ…… 始まってしまった。酒場の騒乱。
「へへへ…… いいぞ! いいぞ! やれ! やれ! 」
「アモ―クス何言ってるの! この人しつこいんだから」
そうだった…… ついつい酒とここの雰囲気に呑まれてしまった。
俺は何てことを…… くそ! いやそんなこと考えてる時じゃない。
姫をお守りしなくては。
「師匠お願いします」
「うむ。そこの若者よ。大志を抱け」
ダメだこれは。完全に酔ってる。師匠は使い物にならない。
「サーマ逃げて! 」
「もう情けないんだから! 」
カラン
カラン
酒場に一人のマントを被った男がやって来た。
「おっと何をしているのかな? 」
マントをつけたふざけた野郎が間に立つ。
マント野郎は酔っぱらいの腕を取ると捩じ上げる。
「痛てて…… 何しやがる! 」
うん。見とれるほどのいい男。もしや五人目の勇者の登場か?
「師匠。俺もこんな風になりたい」
「いやだからお前だってできたはず」
酔っぱらいはふざけやがってと啖呵を切る。
この後はお待ちかねの決闘。
「西部劇みたいだ」
「そうじゃな従者よ。お主もガンマンに憧れるか? 」
「いえ世代が違います」
「うーむ。それはもっともじゃ」
カラン
カラン
音が鳴り悪役の登場。
「おいお前! 俺の弟分に何してやがる! 」
見ただけでちびりそうな凶悪な面。それ以上に悪臭が俺の鼻を狂わす。
「師匠? 」
「済まぬ…… 儂にはこの異臭攻撃にはちょっと…… 」
「いや師匠の攻撃魔法で懲らしめてやってください」
「それは臭い…… いや違った。できない! 」
「出し惜しみしてたらやられますよ」
「いやこの攻撃魔法は魔王及び手下のモンスターまたは操られている獣。
または化け物。たたの獣だって鳥獣保護法で守られてるものは攻撃できない。
自動的に無効化してしまう。だからできん! 」
「では人間には無理だと? 」
「ああ獣にしか見えんが奴とて人間。無理じゃ」
「ではアップラッチは? 」
「同じだ。残るはアイテムぐらいだが今は貴重品入れの中」
悪役の後には手下が控えている。逃げようもない。
「表に出ろ! ヘンテコ野郎! 」
「フンいいですよ。決闘でもしましょうか」
「おう! 言いやがったな! 望むところだ! 」
血が騒いだのか悪役が吠える。
「フンいいでしょう」
格好良いマントの男と悪役の髭もじゃ悪臭男が争っている隙を突き宿屋に戻る。
その後血の雨が降ったのは言うまでもない。
「あれ決闘見なくていいんすか? 」
「ああ世界が違い過ぎる」
「世界? 」
「あっちは西部劇。こっちは○○う劇。格が違い過ぎる」
それはいくら何でも言い過ぎでは……
「ジャンルがあまりにも違い過ぎて着いていけんわ」
今夜お邪魔するつもりだったが断念して早めに寝ることに。
四人部屋を確保。
本来ならサーマ姫をこの輩から遠ざけるべきだがさすがに一人にはできない。
一番良いのは俺とサーマ姫の二人部屋だがそれでは文句が出る。
あーあ。もう一人ぐらい可愛い女の子がいるといいんだけど。
くじ引きで寝る場所を決める。
「やった! 」
窓際がサーマ。隣が何と俺。その隣が師匠。入口にウエスティン。
「師匠は年ですから入口の方が良かったのでは? 」
「心配するでない。尿漏れの心配はいらない。儂を誰だと思っておる?
それよりも早く寝るぞ。明日も早いんじゃからな」
神の秘儀。スーパースリーピング。
一瞬で眠りにつく。
「ねえサーマ。あの男はどうだったの? 」
「ええ。良い人だと思う。でも相手はまともに勝負してはくれない連中よ」
「では命を落とすと? 」
「ええ。残念だけど。これも運命」
「そうか本当に残念だね。それよりもあの酔っぱらい何か言ってなかった? 」
「止めて! もうあの男の話は思い出したくもない。
嫌らしい目で見るだけじゃなくて隙を見て触ろうとしてくるんだから寒気がする」
この手の男には免疫が無いらしい。まあ当然か。お姫様だもんね。
収穫なし。
せっかくサーマが頑張っても意味がない。
「それよりもあのお爺さん。本当に信じられる? 」
「師匠? 元神だからそれはもちろん…… 」
「だから神ではなく元神なんでしょう? 」
「そう言えばリザも疑ってたっけ…… 」
「もう寝ましょう。アモ。アモでいいでしょう」
「ああ好きに呼んで。姫様は何とお呼びしたらよろしいですか? 」
「ええ…… サーマでいい。サミーでも可」
「じゃあサミー。これからよろしく」
「ええ。一緒に探しましょう。私たちの未来を」
何か意味深な言い方。照れてしまう。
「おやすみ。サミー」
「おやすみ。アモ」
眠れぬ夜を過ごす。
続く
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