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タイムリミットは一年
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第二世界 北の果ての村。
一泊百万レスは高すぎたが近くに宿は無い。
ぼったくり価格とは言えお世話になるしかない。
ひとまず宿でゆっくり。
「ねえアモ―はどうする? 」
「そうだな。ゆっくりここで春を待つよ」
「のんびりするしかないか。温泉あるといいな」
「ははは…… そうだね」
俺も早く拷問の傷を癒したい。出来たらサミーと一緒に。
でもまだ許してないだろうな。
「二人ともまずいですよ。一泊百万レスの高級宿。すぐに破産するよ」
ウエスティンの汗が復活。
「大丈夫だって。金が無くなったらモンスターを倒せばいい。
百万レスぐらいすぐすぐ」
「でも計算するとさ…… 」
ウエスティンが俺の苦手な算数を持ち出してきた。
これは何も言えねえ。
「心配性だな。ねえ師匠? 」
「うむ…… 」
「どうしたの怖い顔して? 」
「うむ…… 」
爺は繰り返すばかり。聞いてるんだか聞いてないんだか。
「師匠も温泉好きでしょう? 春になるまでのんびりと行きましょう」
「馬鹿者! たわけたことをぬかすな! 」
「師匠? 」
「もう我慢してよね。お爺さん。アモに当たらないの」
「我慢? それは危険過ぎる」
「危険? どこが? 」
「それはほれ…… 」
はっきりしない。らしくない爺を問い詰める。
「分かった! 分かった! 話してやるわ。後悔しても知らんぞ! 」
爺は今まで隠していた真実を語ることに。
「実はな…… この世界、いやどの世界も神である儂はいくらでも居られる。
だがお前らはそうもいかない。一年以内に帰れねば二度と元の世界には戻れん。
そう言う決まりがある」
「師匠。そんな話聞いてないっすよ」
「ああ今話したからな。じゃがどうにもならん」
「でもそれだったらここでゆっくりして次の世界で取り戻せばいいのでは? 」
「いやそれは難しい。難易度はどんどん上がる。
悠長にここに留まれば時間切れは目に見えている。
少なくても一ヶ月でこの世界を抜け出さないと厳しい」
「では一旦違う世界に行き戻ってくるのはどうでしょう? 」
ウエスティンは時に思いもよらない提案をする。
「それはルール違反。それに一旦入ればクリアするまで次の世界は開かん」
「他に隠してることは? 白状しなさい! 」
「いや…… 無いかの…… 」
「ウソつかない! 」
サーマの追及を逃れられはしない。
「分かった分かった。これは冗談ではないのでよく聞くがいい」
神の啓示。
それは理不尽なものであった。
元の世界に戻る期限は一年以内。
だが元の生活に戻るにはその半分、六か月以内に戻る必要がある。
「確かにお前たちは元の世界を嫌がっていた。だが一生故郷に戻れないこともある。
それどころか六か月以内に戻らねばまったく別の人間に生まれ変わることになる。
決して平坦ではないぞ」
らしくなく真剣に語る元神の爺。
「ちょっと待って! 一年以内ならどうであれ戻れるんでしょう? 」
サーマはすがるように返事を待つ。
「ああ、だが人間とは限らん。獣か虫か植物さえあり得る。
モンスターや魔王なんかにもなれるから試す価値はなくもない」
神の告白。それは衝撃的な物だった。
「うわあああ! どうしよう。どうしよう」
ウエスティンが慌てふためく。
真冬だと言うのに汗が大量に噴き出る。
止めどなく流れる汗が我らの現状を物語っている。
「お父様…… 」
そう口にしてから上の空のサーマ姫。
いきなり現実を突きつけられ放心状態。
それは俺も同じだ。
「師匠。何か手はないんですか? 」
「済まない。もはやギャグを言う余裕もない。
儂は元神。だからこれは覆せない事実だと知っている」
「それで残り時間は? 」
「残り五か月を切った」
「ちょっとどうしてそうなるの? そんなに経ってない! 」
「元の世界の時間とは限らない。ここは高速の世界。
一日は二十四時間だが三日にも四日にもなる。
現時点で一ヶ月が経った計算になる。
急ぐのだ。元の世界に戻りたければ一つの世界は一ヶ月で切り抜けるのだ! 」
「ではゆっくりしていられませんね師匠」
「ああそう言うことだ。済まない。儂が付いていながら情けない。
時間の進みは世界によって違う。
ここはたぶん一週間以内にクリアできれば問題ないはず」
らしくない元神の爺さんの落ち込みよう。
やはり楽な世界ではなかった。
神が落としたルーレット探しの旅。
暗雲が立ち込めた四人に待ち受ける未来。
それは結局のところ地獄なのかもしれない。
即死モード回避旅は正念場を迎える。
続く
一泊百万レスは高すぎたが近くに宿は無い。
ぼったくり価格とは言えお世話になるしかない。
ひとまず宿でゆっくり。
「ねえアモ―はどうする? 」
「そうだな。ゆっくりここで春を待つよ」
「のんびりするしかないか。温泉あるといいな」
「ははは…… そうだね」
俺も早く拷問の傷を癒したい。出来たらサミーと一緒に。
でもまだ許してないだろうな。
「二人ともまずいですよ。一泊百万レスの高級宿。すぐに破産するよ」
ウエスティンの汗が復活。
「大丈夫だって。金が無くなったらモンスターを倒せばいい。
百万レスぐらいすぐすぐ」
「でも計算するとさ…… 」
ウエスティンが俺の苦手な算数を持ち出してきた。
これは何も言えねえ。
「心配性だな。ねえ師匠? 」
「うむ…… 」
「どうしたの怖い顔して? 」
「うむ…… 」
爺は繰り返すばかり。聞いてるんだか聞いてないんだか。
「師匠も温泉好きでしょう? 春になるまでのんびりと行きましょう」
「馬鹿者! たわけたことをぬかすな! 」
「師匠? 」
「もう我慢してよね。お爺さん。アモに当たらないの」
「我慢? それは危険過ぎる」
「危険? どこが? 」
「それはほれ…… 」
はっきりしない。らしくない爺を問い詰める。
「分かった! 分かった! 話してやるわ。後悔しても知らんぞ! 」
爺は今まで隠していた真実を語ることに。
「実はな…… この世界、いやどの世界も神である儂はいくらでも居られる。
だがお前らはそうもいかない。一年以内に帰れねば二度と元の世界には戻れん。
そう言う決まりがある」
「師匠。そんな話聞いてないっすよ」
「ああ今話したからな。じゃがどうにもならん」
「でもそれだったらここでゆっくりして次の世界で取り戻せばいいのでは? 」
「いやそれは難しい。難易度はどんどん上がる。
悠長にここに留まれば時間切れは目に見えている。
少なくても一ヶ月でこの世界を抜け出さないと厳しい」
「では一旦違う世界に行き戻ってくるのはどうでしょう? 」
ウエスティンは時に思いもよらない提案をする。
「それはルール違反。それに一旦入ればクリアするまで次の世界は開かん」
「他に隠してることは? 白状しなさい! 」
「いや…… 無いかの…… 」
「ウソつかない! 」
サーマの追及を逃れられはしない。
「分かった分かった。これは冗談ではないのでよく聞くがいい」
神の啓示。
それは理不尽なものであった。
元の世界に戻る期限は一年以内。
だが元の生活に戻るにはその半分、六か月以内に戻る必要がある。
「確かにお前たちは元の世界を嫌がっていた。だが一生故郷に戻れないこともある。
それどころか六か月以内に戻らねばまったく別の人間に生まれ変わることになる。
決して平坦ではないぞ」
らしくなく真剣に語る元神の爺。
「ちょっと待って! 一年以内ならどうであれ戻れるんでしょう? 」
サーマはすがるように返事を待つ。
「ああ、だが人間とは限らん。獣か虫か植物さえあり得る。
モンスターや魔王なんかにもなれるから試す価値はなくもない」
神の告白。それは衝撃的な物だった。
「うわあああ! どうしよう。どうしよう」
ウエスティンが慌てふためく。
真冬だと言うのに汗が大量に噴き出る。
止めどなく流れる汗が我らの現状を物語っている。
「お父様…… 」
そう口にしてから上の空のサーマ姫。
いきなり現実を突きつけられ放心状態。
それは俺も同じだ。
「師匠。何か手はないんですか? 」
「済まない。もはやギャグを言う余裕もない。
儂は元神。だからこれは覆せない事実だと知っている」
「それで残り時間は? 」
「残り五か月を切った」
「ちょっとどうしてそうなるの? そんなに経ってない! 」
「元の世界の時間とは限らない。ここは高速の世界。
一日は二十四時間だが三日にも四日にもなる。
現時点で一ヶ月が経った計算になる。
急ぐのだ。元の世界に戻りたければ一つの世界は一ヶ月で切り抜けるのだ! 」
「ではゆっくりしていられませんね師匠」
「ああそう言うことだ。済まない。儂が付いていながら情けない。
時間の進みは世界によって違う。
ここはたぶん一週間以内にクリアできれば問題ないはず」
らしくない元神の爺さんの落ち込みよう。
やはり楽な世界ではなかった。
神が落としたルーレット探しの旅。
暗雲が立ち込めた四人に待ち受ける未来。
それは結局のところ地獄なのかもしれない。
即死モード回避旅は正念場を迎える。
続く
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