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マッドサイエンシスト
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ついに宿屋の主人を追い詰める。
「いつ気付いた? 」
「おかしいと思ったのよね」
サーマの推理が炸裂する。
「村を二つも回って観光客はおろか村の者誰一人とも会わないんだから。
会ったのは宿の主人だけ。あとはさっきの女」
一人三役。際の村主人兼果ての村主人兼マッドサイエンシスト。
「それでどう言うつもり? からかってるの? 」
「ははは…… どうでしょう? 」
はぐらかす男。
「まあまあ。ここは俺に任せろ」
サーマの代わりに男を追及する。
「俺たちをどれだけコケにするつもりだ。神の天罰が下るぞ! 」
脅しをかける。
「申し訳ない。出来心で。君たちを騙してる自覚はあった。ただ暇だったからつい」
「暇だと? いくら暇だからってして良いことと悪いことがある」
「ははああ! この通りです。お許しください」
男は土下座を始める。
「止さんかみっともない! 」
土下座で何とかしようとする浅はかさ。
もちろん他に選択肢がなければ受け入れるが。だがこちらにも考えがある。
「無駄な時間を過ごしたのだ。その代償を払ってもらう。さあ指出せや! 」
爺さんが吠える。
異世界新聞の投稿がスルーされたことでいつにも増して苛立っている。
爺さんだけではない。ウエスティンも最近のツキの無さにキレている。
見た目は至って普通だが汗の量で判断できる。
サーマも慣れない長旅で疲れているせいかイライラしてばかり。
「さあ落とし前をつけてもらおうか? 」
四人で寄って集って脅しをかける。
立派な冒険者像からかけ離れて行く。
ただの輩でしかない。
それもすべて焦りから。残り六か月しかないのだ。
一日だって無駄にはできない。
そこに来て一人三役でからかう暴挙。
決して許されるものではない。
「さあ手を出すのじゃ! 」
「ちょっとやり過ぎずじゃない? 」
冷静さを取り戻し説得するサーマ姫。
「そうっすよ師匠。いくら何でもかわいそうですよ」
「僕もそう思います」
ウエスティンまで反対に回る。
さあ間もなく和解。許される気配だが……
四人が話し合っている隙にゆっくりゆっくり逃げ出そうとする下衆な男。
「馬鹿者が! 」
ついに爺の堪忍袋の緒が切れる。
「いや…… ははは! つい癖で…… 」
笑ってごまかそうとする主人。ちっとも懲りてない。
「ではお仕置きじゃ! さあ手を出すがいい! 」
もはや弁解の余地はない。
「さあ回せ」
「はああ? 」
「このルーレットを回せ! 」
一瞬何が何だか分からずに固まるがすぐに元に戻る。
危機を脱したと勘違いした男は言われるまま運命のルーレットを回す。
果たして数字は?
もちろん八にしか止まらない。
種も仕掛けもない。
ただ八にしか止まらない欠陥品。
我々は残りの七つのルーレットを探す旅に出ている訳で当然と言えば当然。
「八か。うん良かろう。許そう」
「ありがとうございます」
男は何度も土下座を繰り返す。
多少は懲りただろう。
「ではこれで…… 」
「おい待て! 」
爺に引き止められる。
「まだ何か? 」
「お前は博士でもあるのだろ? 」
「はい。博士号は持ってます」
「では研究しているのだな? 」
「ええ、人工的にモンスターを生み出す研究を行っています。
ラボを見学なさりたければいつでもどうぞ。大歓迎です。
暇な時に観光客をからかいつつ宿屋の主人もしています。趣味みたいなものですね」
「それだけではないな? 」
「はあまあ…… 色々とサービスを…… 」
「馬鹿者! ぼったくりした上にいい加減な情報で情報料まで取ったろ? 」
「ははあ! 」
神はすべてお見通し。
「では懺悔するのだ。良いな? 」
「はい。すべて正直にお話しします」
うーん。すっきりとした。
男の告白は続く。
「おっと違う。違う。脱線してしまった。知りたいのはお主についてだ」
「今はモンスター学を研究してます」
「それはどこの大学で? 」
ハイスペックな男に興味を示すサーマ姫。
まさか嘘だよね?
「サミー」
「ちょっとぐらいいいでしょう? 」
「異世界大学の工学科です」
「何だあそこか」
サミーは大きくため息を吐く。
「あれ知ってるの? 」
「ええ。大学とは名ばかり。マッドサイエンシストが五割」
「そうすると残りは? 」
「ただの馬鹿。異世界大学ですから」
どうやら異世界大学は皆の知られているとこらしい。
だとすれば我々の世界に存在することになる?
いや世界共通なのかもしれない。
見学を勧められるが丁重にお断りする。
勇者には不要なもの。
算数もできない者には工学科は無理がある。
何はともあれ博士までたどり着いた。
ずる賢く当てになりそうにない男だがいないよりはマシか。
協力を求める。
続く
「いつ気付いた? 」
「おかしいと思ったのよね」
サーマの推理が炸裂する。
「村を二つも回って観光客はおろか村の者誰一人とも会わないんだから。
会ったのは宿の主人だけ。あとはさっきの女」
一人三役。際の村主人兼果ての村主人兼マッドサイエンシスト。
「それでどう言うつもり? からかってるの? 」
「ははは…… どうでしょう? 」
はぐらかす男。
「まあまあ。ここは俺に任せろ」
サーマの代わりに男を追及する。
「俺たちをどれだけコケにするつもりだ。神の天罰が下るぞ! 」
脅しをかける。
「申し訳ない。出来心で。君たちを騙してる自覚はあった。ただ暇だったからつい」
「暇だと? いくら暇だからってして良いことと悪いことがある」
「ははああ! この通りです。お許しください」
男は土下座を始める。
「止さんかみっともない! 」
土下座で何とかしようとする浅はかさ。
もちろん他に選択肢がなければ受け入れるが。だがこちらにも考えがある。
「無駄な時間を過ごしたのだ。その代償を払ってもらう。さあ指出せや! 」
爺さんが吠える。
異世界新聞の投稿がスルーされたことでいつにも増して苛立っている。
爺さんだけではない。ウエスティンも最近のツキの無さにキレている。
見た目は至って普通だが汗の量で判断できる。
サーマも慣れない長旅で疲れているせいかイライラしてばかり。
「さあ落とし前をつけてもらおうか? 」
四人で寄って集って脅しをかける。
立派な冒険者像からかけ離れて行く。
ただの輩でしかない。
それもすべて焦りから。残り六か月しかないのだ。
一日だって無駄にはできない。
そこに来て一人三役でからかう暴挙。
決して許されるものではない。
「さあ手を出すのじゃ! 」
「ちょっとやり過ぎずじゃない? 」
冷静さを取り戻し説得するサーマ姫。
「そうっすよ師匠。いくら何でもかわいそうですよ」
「僕もそう思います」
ウエスティンまで反対に回る。
さあ間もなく和解。許される気配だが……
四人が話し合っている隙にゆっくりゆっくり逃げ出そうとする下衆な男。
「馬鹿者が! 」
ついに爺の堪忍袋の緒が切れる。
「いや…… ははは! つい癖で…… 」
笑ってごまかそうとする主人。ちっとも懲りてない。
「ではお仕置きじゃ! さあ手を出すがいい! 」
もはや弁解の余地はない。
「さあ回せ」
「はああ? 」
「このルーレットを回せ! 」
一瞬何が何だか分からずに固まるがすぐに元に戻る。
危機を脱したと勘違いした男は言われるまま運命のルーレットを回す。
果たして数字は?
もちろん八にしか止まらない。
種も仕掛けもない。
ただ八にしか止まらない欠陥品。
我々は残りの七つのルーレットを探す旅に出ている訳で当然と言えば当然。
「八か。うん良かろう。許そう」
「ありがとうございます」
男は何度も土下座を繰り返す。
多少は懲りただろう。
「ではこれで…… 」
「おい待て! 」
爺に引き止められる。
「まだ何か? 」
「お前は博士でもあるのだろ? 」
「はい。博士号は持ってます」
「では研究しているのだな? 」
「ええ、人工的にモンスターを生み出す研究を行っています。
ラボを見学なさりたければいつでもどうぞ。大歓迎です。
暇な時に観光客をからかいつつ宿屋の主人もしています。趣味みたいなものですね」
「それだけではないな? 」
「はあまあ…… 色々とサービスを…… 」
「馬鹿者! ぼったくりした上にいい加減な情報で情報料まで取ったろ? 」
「ははあ! 」
神はすべてお見通し。
「では懺悔するのだ。良いな? 」
「はい。すべて正直にお話しします」
うーん。すっきりとした。
男の告白は続く。
「おっと違う。違う。脱線してしまった。知りたいのはお主についてだ」
「今はモンスター学を研究してます」
「それはどこの大学で? 」
ハイスペックな男に興味を示すサーマ姫。
まさか嘘だよね?
「サミー」
「ちょっとぐらいいいでしょう? 」
「異世界大学の工学科です」
「何だあそこか」
サミーは大きくため息を吐く。
「あれ知ってるの? 」
「ええ。大学とは名ばかり。マッドサイエンシストが五割」
「そうすると残りは? 」
「ただの馬鹿。異世界大学ですから」
どうやら異世界大学は皆の知られているとこらしい。
だとすれば我々の世界に存在することになる?
いや世界共通なのかもしれない。
見学を勧められるが丁重にお断りする。
勇者には不要なもの。
算数もできない者には工学科は無理がある。
何はともあれ博士までたどり着いた。
ずる賢く当てになりそうにない男だがいないよりはマシか。
協力を求める。
続く
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