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恐怖の夜
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親切なおばさんの家で一泊。
コソコソ
コソコソ
「おいアモ―クスや一緒にトイレに行かんか? 」
「またトイレですか? 一人で行ってくださいよもう。何度目? 」
「つれない奴め。ではサーマはどうじゃ? 」
「私は良いから早く行きなさい。もう眠れないでしょう! 」
爺は怖がって一人でトイレに行こうとしない。
「よし従者よ付いて参れ! 」
ウエスティンを誘うがもはや寝てしまっている。
あれだけ歩き回れば当然で起きる気配がない。
「うーん困ったの」
「師匠。一人で行ってください」
「フン! 薄情な奴らじゃ」
どうやら夜が怖いらしい。
これもペガサス症候群の影響が少なからずある。
「おい婆さん。一緒に行かぬか? 」
ついに禁断の手を使う。
泊めてもらい風呂も食事も寝床も用意してくれた親切な女性。
そんなおばさんに一緒にトイレとはどう言う神経をしているのか?
「いいよ。いいよ。好きにしな」
これしか言わなくなった。
まさか言葉が通じないのか?
爺はお言葉に甘えてトイレ同伴を頼む。
同伴は本来えらく高くつくものだが相手が承諾すれば大丈夫。
ただ人によってランクがあり大枚を叩くこともある。
こればかりは出たとこ勝負。一か八かの世界。
実に奥が深い。
爺さんは本当に運がいい。
観光客歓迎の旗を出している手前要求できないのだ。
「済まんのう」
「いいよ。いいよ。好きにしな」
ブリブリ、ハマチ……
豪勢な海の幸を頂いたせいか小ではなく大を豪快に。
「うむ。いい気持ちじゃ。どうじゃ婆さんも付き合わんか? 」
「いいよ。いいよ。好きにしな」
調子に乗って過剰な要求をする困った爺さん。
「済まんがついでに流しといてくれるか。どうも使い方が分からんでな」
大変失礼な爺さん。まさかくそを流さずに放置。
その処理をおばさんに任せるなんて正気の沙汰ではない。
「いやあ本当に助かったわ」
「いいよ。いいよ。好きにしな」
「他に喋れんのかい! 」
失礼極まりない爺は調子に乗る。
「きれいにできたね。これで少しは良いんじゃないか」
何と要望にしっかり答えてくれる。
今までは面倒臭くて繰り返していたのだろう。
ただの口癖とも取れるが。
結局くその始末まで任す爺。
「出るものは仕方ないがその処理ぐらいできないと。いいよ。いいよ。好きにしな」
同伴に続いてアフタ―までフォローする心優しき世話好きのおばさん。
よく見れば随分お年を召している。これはもうお婆さんでも構わないだろう。
一宿一飯の恩義もありどう返すべきか……
もちろん爺はそんなこと一ミリも考えていない。
モーモーモー
皆が眠りについた丑三つ時。
ロウソクを頭に巻き鋭く光るものを手に近づく者が。
悪夢の時間。汗はじっとり。もはや体が冷たい。異常を知らせている?
「おい起きろ! 婆さんがやばいぞ! 」
「もう師匠。若者ぶってまったく。眠いんですから起こさないで」
「そうじゃな。儂としたことがははは…… 寝るかの」
布団をかぶって震えながら寝ることにする。
「ちょっと二人とも気は確か? 」
サーマも異変に気付いたようだ。
ドンドン
ドンドン
風が強まる。
ドンドン
ドンドン
あれおかしいな。おばさんが外へ向かう。
これで一時的に助かった。
だがまだ危機は脱してない。この状況が続けば最悪の展開が……
「師匠。こんな時こそ魔法を」
「それは無理だ。人間には効かない。お主とて分かってることではないか! 」
果たして人間? 物の怪の類では?
「ではどうしろと? 」
「喚くでない! 今策を練っておる。うーん。やはり現実逃避するのが良かろう」
「諦めないで師匠! 」
お婆さんが戻って来た。
あれ一人じゃない?
三、四…… 七人。
白装束の七人組が目の前に迫る。
これはピンチ。
まさかただのおばさんにやられるとは冒険者失格。
「御祓い給え! 鎮まり給え! 」
だがおばさんは動きを止めない。
地獄と化したおばさんの家。
そう言えばここの爺さんはどうしたのだろう?
こんな時に素朴な疑問が生まれる。
一種の現実逃避。もはや目の前の現実を直視できないでいる。
白装束の者たちはついに歌い出した。
これはまさしく危機的状況。
俺たちを肴に踊り明かすつもりだろう。
その隙に逃げたいが窓が開かない上に非常口も見当たらない。
裏口は完全に塞がれている。
さあどうしたらいい?
やはり現実逃避するしかないのか?
「師匠! 人間ではありません。老女は間違いなく化け物。
俺たち食われちまいますよ! 」
「何…… 物の怪の類とな? ならば攻撃魔法が使えるぞ」
「そう言えばそうか。ラッキー! でもトラウマになりそう」
「こういう時の為にお主に授ける。これを咥えて叫べ! 」
「はあ…… いつの間に」
「いいから早くせい! 」
「仕方なく巻き物を咥える」
神から与えられしチート。その威力や如何に?
続く
コソコソ
コソコソ
「おいアモ―クスや一緒にトイレに行かんか? 」
「またトイレですか? 一人で行ってくださいよもう。何度目? 」
「つれない奴め。ではサーマはどうじゃ? 」
「私は良いから早く行きなさい。もう眠れないでしょう! 」
爺は怖がって一人でトイレに行こうとしない。
「よし従者よ付いて参れ! 」
ウエスティンを誘うがもはや寝てしまっている。
あれだけ歩き回れば当然で起きる気配がない。
「うーん困ったの」
「師匠。一人で行ってください」
「フン! 薄情な奴らじゃ」
どうやら夜が怖いらしい。
これもペガサス症候群の影響が少なからずある。
「おい婆さん。一緒に行かぬか? 」
ついに禁断の手を使う。
泊めてもらい風呂も食事も寝床も用意してくれた親切な女性。
そんなおばさんに一緒にトイレとはどう言う神経をしているのか?
「いいよ。いいよ。好きにしな」
これしか言わなくなった。
まさか言葉が通じないのか?
爺はお言葉に甘えてトイレ同伴を頼む。
同伴は本来えらく高くつくものだが相手が承諾すれば大丈夫。
ただ人によってランクがあり大枚を叩くこともある。
こればかりは出たとこ勝負。一か八かの世界。
実に奥が深い。
爺さんは本当に運がいい。
観光客歓迎の旗を出している手前要求できないのだ。
「済まんのう」
「いいよ。いいよ。好きにしな」
ブリブリ、ハマチ……
豪勢な海の幸を頂いたせいか小ではなく大を豪快に。
「うむ。いい気持ちじゃ。どうじゃ婆さんも付き合わんか? 」
「いいよ。いいよ。好きにしな」
調子に乗って過剰な要求をする困った爺さん。
「済まんがついでに流しといてくれるか。どうも使い方が分からんでな」
大変失礼な爺さん。まさかくそを流さずに放置。
その処理をおばさんに任せるなんて正気の沙汰ではない。
「いやあ本当に助かったわ」
「いいよ。いいよ。好きにしな」
「他に喋れんのかい! 」
失礼極まりない爺は調子に乗る。
「きれいにできたね。これで少しは良いんじゃないか」
何と要望にしっかり答えてくれる。
今までは面倒臭くて繰り返していたのだろう。
ただの口癖とも取れるが。
結局くその始末まで任す爺。
「出るものは仕方ないがその処理ぐらいできないと。いいよ。いいよ。好きにしな」
同伴に続いてアフタ―までフォローする心優しき世話好きのおばさん。
よく見れば随分お年を召している。これはもうお婆さんでも構わないだろう。
一宿一飯の恩義もありどう返すべきか……
もちろん爺はそんなこと一ミリも考えていない。
モーモーモー
皆が眠りについた丑三つ時。
ロウソクを頭に巻き鋭く光るものを手に近づく者が。
悪夢の時間。汗はじっとり。もはや体が冷たい。異常を知らせている?
「おい起きろ! 婆さんがやばいぞ! 」
「もう師匠。若者ぶってまったく。眠いんですから起こさないで」
「そうじゃな。儂としたことがははは…… 寝るかの」
布団をかぶって震えながら寝ることにする。
「ちょっと二人とも気は確か? 」
サーマも異変に気付いたようだ。
ドンドン
ドンドン
風が強まる。
ドンドン
ドンドン
あれおかしいな。おばさんが外へ向かう。
これで一時的に助かった。
だがまだ危機は脱してない。この状況が続けば最悪の展開が……
「師匠。こんな時こそ魔法を」
「それは無理だ。人間には効かない。お主とて分かってることではないか! 」
果たして人間? 物の怪の類では?
「ではどうしろと? 」
「喚くでない! 今策を練っておる。うーん。やはり現実逃避するのが良かろう」
「諦めないで師匠! 」
お婆さんが戻って来た。
あれ一人じゃない?
三、四…… 七人。
白装束の七人組が目の前に迫る。
これはピンチ。
まさかただのおばさんにやられるとは冒険者失格。
「御祓い給え! 鎮まり給え! 」
だがおばさんは動きを止めない。
地獄と化したおばさんの家。
そう言えばここの爺さんはどうしたのだろう?
こんな時に素朴な疑問が生まれる。
一種の現実逃避。もはや目の前の現実を直視できないでいる。
白装束の者たちはついに歌い出した。
これはまさしく危機的状況。
俺たちを肴に踊り明かすつもりだろう。
その隙に逃げたいが窓が開かない上に非常口も見当たらない。
裏口は完全に塞がれている。
さあどうしたらいい?
やはり現実逃避するしかないのか?
「師匠! 人間ではありません。老女は間違いなく化け物。
俺たち食われちまいますよ! 」
「何…… 物の怪の類とな? ならば攻撃魔法が使えるぞ」
「そう言えばそうか。ラッキー! でもトラウマになりそう」
「こういう時の為にお主に授ける。これを咥えて叫べ! 」
「はあ…… いつの間に」
「いいから早くせい! 」
「仕方なく巻き物を咥える」
神から与えられしチート。その威力や如何に?
続く
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