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神殿 ゴールドカードを掲げよ!

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ついに神とご対面。

「師匠! 俺やりました! 」

興奮が止らない。散々酷い目に遭わされたジャスラを退治した。

今ようやく本当の意味で勇者になった気がする。

「うむそれでこそ儂が見込んだ男。さあ進むがいい。

この世界は人間が立ち入れない聖域となっている。

何と言っても神の森。お主が初めてじゃ」


どうにか辿り着いた神が住まう場所。

即ち神殿。

まるで雪で出来てるかのように真っ白な神殿。

「師匠? 」

「どうした怖気づいたか? さあこっちじゃ。付いて参れ」

さすがは元神だけあり詳しい。これならいくら方向音痴の爺でも大丈夫だろう。


「あれリザ…… いつの間にかリザが」

「うむ。残念じゃがこれも運命」

全部知っていながら敢えて触れようとしない爺。

爺は一体何を隠してるのか?

さすがにおかしい。一体この聖地フォレストで何が起こっているのか?

「師匠。俺どうしたら…… 」

気持ちの整理がつかない。


ウエスティンがいなくなって悲しかった。

同郷で旅を共にした仲間だった。

ウエスティンが従者としていてくれたから爺も安心してた部分もある。


続いてサーマまでいなくなってしまった。

もう居ても立ってもいられない。

将来を誓い合った仲と勝手に思っているが。

そのサーマがいなくなった。

心にぽっかりと穴が空いたような喪失感。


サーマはなぜ消えてしまったんだ?

もしサーマがこのまま姿を見せなければ俺たちの旅が終わってしまう。

もう王子も魔王も意味をなさない。

俺たち役立たずが真の意味で役立たずになってしまう。

それは嫌だ。俺にはもう何もない。

チートだって旅が終われば消えるだろう。

ああ、俺はどうしたらいい?

サーマ姫護衛作戦は意味がなくなってしまう。

だから少なくてもサーマだけは守らなければならなかった。

でも守れなかった。勇者失格だな。

なぜだ? 手を離したつもりはないのに。

俺が油断したあまりサーマを守れなかった。

そしてついにリザまでがいなくなってしまった。


もうどうすることもできずに下を向く。

「気を落とすでない。これも運命じゃ」

爺は落ち込む俺を励ましてくれる。でも出来るなら仲間を元通りにしてくれないか。

それくらい元神の爺なら出来るはずだ。

「サーマ…… リザ…… ウエスティンも…… 」

俺一人では到底運命に立ち向かえない。

仲間なくしてどう戦えと言うんだ?


神殿。

「師匠入り口はどこでしょう? 」

「うん? お前には見えぬか。それは不便じゃな」

呑気な爺。元神の爺にとっては住み慣れた居心地のいい世界なのだろう。

さっきから不謹慎にも良く笑っている。

タガが外れたとも言えるしペガサス症候群が再発したともとれる。

「ほれ、ぐずぐずしてないでそのゴールドカードを掲げよ」

ぴかっと光ると光線が一点に注がれる。

「ほれお主も見えたじゃろ? お前たち人間は不便じゃな。

こんなことせずとも見えると思うがな」

ゴールドカードが導いてくれる。

爺の後に続いて恐る恐る神殿の中へ。


「どうじゃな立派じゃろ? 」

「いえ何も見えませんが…… 」

「おいおいこの芸術的な数々が見えないと言うのか? 」

爺と俺とでは次元が違う。

いつも同じものを見ているようで少しずつ違っていた。

神の目って奴かもしれない。

ただ爺が面白がって嘘をついてる可能性も否定できないのが厄介。

あの真剣な表情。時折見せるまともとな爺の姿。

うーんどっちだ?


「通行証を! 」

鋭い牙に醜悪な面。全体が毛むくじゃらな獣のような男。

まさかモンスター?

「おう久しぶりじゃな。元気しておったか? 」

「老神様! これはどのようなご用件でしょうか? 」

男の慌てよう。落ち着きがない。

「いや神に会いに来た」

用件を伝える。

「それはまさか…… 」

どうも歓迎されてないようだ。ここでもまた何か悪さをしたのかな?


「会わせられないと言うのか? 」

「いえ滅相もございません。ただ再びあのようなことをされては困ります」

「困る? 儂が前回何をしたと言うのだ? 申してみよ! 」

随分強気だ。どうせ悪さしたに決まってる。もう忘れたのか?

「その…… 恐れながらおくそをお漏らしになられた」

丁寧にオブラートに包んだ言い方だが結局いつもの野ぐそ。

ただそれが間に合わずに漏らしたと言うクレーム。

結局どの世界でも似たように迷惑をかけるとんでも爺。

トラブルメーカーの爺が脱糞すると言う平常運転。

何の意外性もない。日常って奴だ。



                 続く
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