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神と元神
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聖地・フォレストは常に霧に覆われている。
この霧が晴れることはない。
もしあるとすれば聖地・フォレストに異変が起きた時だけだ。
一歩進めば二度と戻って来れない恐ろしい世界。
それだけではない。邪な心を見破られれば天罰が下る。
決して居心地のいいところとは言えない。
「しかし遅い。遅すぎる! まったく何をしてるのじゃ! 」
これで何度目だよ。本当に困った爺だ。
怒っても無駄だって。待てないのかなあ。
確かに遅い気もするが。
そもそも神様にそう簡単にお会いできると思ってる方がどうかしてる。
「ううう…… 」
「どうしました師匠? 」
「いやその何だ…… 」
この感じはまさか十八番のおくそ?
「師匠我慢して! ここで漏らしたら会ってくれませんよ」
「いやそれは大丈夫じゃが。そうだトイレを借りよう」
ここは人はもちろん獣も化け物もあらゆるものを受け付けない神聖な場所。
それ故聖地・フォレストと呼ばれている。
ここには神官が見た限り一名。それ以外にもいると考えるが神を加えても多くない。
だからトイレは一か所で事足りるだろう。
トイレは神殿の奥の方にあるに違いない。爺の発言からも推測できること。
「師匠我慢しないで危なくなったら言ってください」
こんな爺でも元神。神殿にフリーパスな上あの恐ろしい神官にも認識されている。
、
一つも信用できない爺だが実際神としての力を見せつけられれば納得するしかない。
それに俺にはもう頼れるのはこの爺しかいない。残っていない。
ほんの少し前までは五人全員揃っていた。だから皆で助け合えていた。
でも今はどうだろう? 爺の暴走を止めるのがやっと。
助け合う余裕などない。
うう…… あの頃が懐かしい。
俺は一体ここで何をしているのだろう?
仲間を犠牲にしてまで得られるものなどあるのか?
第五世界までの緩さが消え聖地・フォレストの非情さが際立つ。
ついにこの世界の本当の恐ろしさを知ることになる。
だが知った頃にはもう遅かった。
どうにもならずにまるで神隠しのように姿を消す。
まずウエスティンが消えサーマがいなくなった。
いつの間にかリザまでが姿を見せなくなった。
いつ俺の番が回ってくるかと思うと居ても立っても居られない。
だからここで大人しくしてるのも相当なプレッシャー。
「もう我慢出来ん! 」
爺が立ち上がった。ついに我慢の限界のようだ。
確かに遅すぎる。一体何時間待たせる気なのか?
本当に俺たちは神に会えるのか?
いや待てよ。会ってどうする。よく考えれば俺は神に会いたい訳ではない。
あくまでルーレット。六個目のルーレットを探しに来たのだ。
どこだ? 一体どこにルーレットがあるのか?
果たして俺の目で見えるのか?
いやしくも人間である俺がルーレットを探し出せるのか?
そう考えたら余計に居ても立っても居られなくなってきた。
「付き合いますよ師匠」
「そうかお主も限界か。よし一緒にやるとしよう」
どうやら爺の言動から野ぐそをする気らしい。
俺がその仲間入りするのを喜んでくれている。
だがそのお誘いには乗れない。
俺にもプライドがある。神からどんな罰を受けるか分かったものではない。
それにまだおくそも出ないことだし。
「ではレッツゴー! 」
爺はこの状況でも気にせずにおくそに励む。
俺はこの極限状況で心を無にする。
何も考えない。何も思わない。
爺がどうなろうと知ったことではない。
神から元神への説教と天罰。
その奇跡の瞬間に立ち会えるやもしれない。
とてもレアな体験をすることになる。
「うぐぐ…… おくそじゃ! そこをどけ! 」
我慢しきれずにお尻に手を当てた爺は正面突破を試みる。
「ああ老神様。お久しぶりです」
ついに神登場。
「ちょっと何やってるんですか? 大人しく待ってるように言ったのに」
神官が呆れる。
「お元気で何よりです」
「おうお主もな。それよりもトイレを貸してくれんか? 」
慌てて連れて行く神官。
俺はついて行くべきか留まるべきか?
師匠置いて行かないで!
「ゴホン! それであなたは誰ですか? 」
ついに神様とご対面。
怪しまれてる様子だがここに来れるのは限られた者だけ。
怪しかろうと問題ない。選ばれし者なのだから。
俺が誰か百も承知の癖に敢えて聞く。侮れない。
さすがは神様。惹きつけるものがある。
爺とは全然違う。比べものにならない。
「私は勇者アモ―クス。
爺…… いえ師匠でもなかった元神のお供として参りました。どうぞよろしく」
自己紹介を終え本題に入る。
続く
この霧が晴れることはない。
もしあるとすれば聖地・フォレストに異変が起きた時だけだ。
一歩進めば二度と戻って来れない恐ろしい世界。
それだけではない。邪な心を見破られれば天罰が下る。
決して居心地のいいところとは言えない。
「しかし遅い。遅すぎる! まったく何をしてるのじゃ! 」
これで何度目だよ。本当に困った爺だ。
怒っても無駄だって。待てないのかなあ。
確かに遅い気もするが。
そもそも神様にそう簡単にお会いできると思ってる方がどうかしてる。
「ううう…… 」
「どうしました師匠? 」
「いやその何だ…… 」
この感じはまさか十八番のおくそ?
「師匠我慢して! ここで漏らしたら会ってくれませんよ」
「いやそれは大丈夫じゃが。そうだトイレを借りよう」
ここは人はもちろん獣も化け物もあらゆるものを受け付けない神聖な場所。
それ故聖地・フォレストと呼ばれている。
ここには神官が見た限り一名。それ以外にもいると考えるが神を加えても多くない。
だからトイレは一か所で事足りるだろう。
トイレは神殿の奥の方にあるに違いない。爺の発言からも推測できること。
「師匠我慢しないで危なくなったら言ってください」
こんな爺でも元神。神殿にフリーパスな上あの恐ろしい神官にも認識されている。
、
一つも信用できない爺だが実際神としての力を見せつけられれば納得するしかない。
それに俺にはもう頼れるのはこの爺しかいない。残っていない。
ほんの少し前までは五人全員揃っていた。だから皆で助け合えていた。
でも今はどうだろう? 爺の暴走を止めるのがやっと。
助け合う余裕などない。
うう…… あの頃が懐かしい。
俺は一体ここで何をしているのだろう?
仲間を犠牲にしてまで得られるものなどあるのか?
第五世界までの緩さが消え聖地・フォレストの非情さが際立つ。
ついにこの世界の本当の恐ろしさを知ることになる。
だが知った頃にはもう遅かった。
どうにもならずにまるで神隠しのように姿を消す。
まずウエスティンが消えサーマがいなくなった。
いつの間にかリザまでが姿を見せなくなった。
いつ俺の番が回ってくるかと思うと居ても立っても居られない。
だからここで大人しくしてるのも相当なプレッシャー。
「もう我慢出来ん! 」
爺が立ち上がった。ついに我慢の限界のようだ。
確かに遅すぎる。一体何時間待たせる気なのか?
本当に俺たちは神に会えるのか?
いや待てよ。会ってどうする。よく考えれば俺は神に会いたい訳ではない。
あくまでルーレット。六個目のルーレットを探しに来たのだ。
どこだ? 一体どこにルーレットがあるのか?
果たして俺の目で見えるのか?
いやしくも人間である俺がルーレットを探し出せるのか?
そう考えたら余計に居ても立っても居られなくなってきた。
「付き合いますよ師匠」
「そうかお主も限界か。よし一緒にやるとしよう」
どうやら爺の言動から野ぐそをする気らしい。
俺がその仲間入りするのを喜んでくれている。
だがそのお誘いには乗れない。
俺にもプライドがある。神からどんな罰を受けるか分かったものではない。
それにまだおくそも出ないことだし。
「ではレッツゴー! 」
爺はこの状況でも気にせずにおくそに励む。
俺はこの極限状況で心を無にする。
何も考えない。何も思わない。
爺がどうなろうと知ったことではない。
神から元神への説教と天罰。
その奇跡の瞬間に立ち会えるやもしれない。
とてもレアな体験をすることになる。
「うぐぐ…… おくそじゃ! そこをどけ! 」
我慢しきれずにお尻に手を当てた爺は正面突破を試みる。
「ああ老神様。お久しぶりです」
ついに神登場。
「ちょっと何やってるんですか? 大人しく待ってるように言ったのに」
神官が呆れる。
「お元気で何よりです」
「おうお主もな。それよりもトイレを貸してくれんか? 」
慌てて連れて行く神官。
俺はついて行くべきか留まるべきか?
師匠置いて行かないで!
「ゴホン! それであなたは誰ですか? 」
ついに神様とご対面。
怪しまれてる様子だがここに来れるのは限られた者だけ。
怪しかろうと問題ない。選ばれし者なのだから。
俺が誰か百も承知の癖に敢えて聞く。侮れない。
さすがは神様。惹きつけるものがある。
爺とは全然違う。比べものにならない。
「私は勇者アモ―クス。
爺…… いえ師匠でもなかった元神のお供として参りました。どうぞよろしく」
自己紹介を終え本題に入る。
続く
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