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おお愛しのサーマ姫 

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自称サーマ姫のおば…… お姉さんを怒らせてしまった。

これはまずいことをしたかな?

「おい入りやがれ! 」

抵抗虚しく牢屋に閉じ込められる。

しかしなぜここに牢屋が?

「ふふふ…… ここは昔罪人の墓場だったのさ。

今じゃ金の採掘所として知られて多くの人が訪れる観光地。

だが昔は本当に恐ろしいところだったのさ」

見張りが二人つけられた。その一人が脅して俺をからかっている。

性格の悪い野郎だ。

金貨はまだあることだしどうにか金で転んでくれないかな?


「なあ俺はこの後どうなっちまうんだ? 」

「さあな。このままここで暮らせばいいさ」

馬鹿笑いを始める。

「まさか…… 追放されたりしないよな? 」

「はあ? 疑いが晴れない限り村には帰せない」

「ちょっと待て! あの怪物は? 」

「はあどの怪物だよ? 脅かしてもそうは行かんぞ! 」

どうやらジャスラの脅威は取り除かれたようだ。

これで心置きなく追放が出来ると言うもの。

村に帰らされるのは屈辱だが食われるよりはマシだ。

「ほら大人しくしてろ! 」

なぜか牢屋に閉じ込められる非常事態。

それにしてもなぜウエスティンがいないのか?

サーマ姫はなぜあそこまで姿を変えたのか?

晩飯を終えると忙しいと言ってもう相手してくれなくなった。

ベビーモードはどうしたのだろう? これでは即死モードと変わらないじゃないか。

あの物凄く辛いんですけど……

これは爺の呪い?


一時間すると辺りが急に騒がしくなった。

「お待ちください! 大変危険です! 」

もう誰が誰やら。近づく影。

真っ暗で何が起きてるのかよく分からない。

「近づいてはいけません! 凶暴です! 」

俺が凶暴? 抵抗もしてないし大声も上げてない。

見張りをからかってさえいない。

大人しく従っている。情けないがそれが現実。


「良いのです」

「しかし危険過ぎます姫! サーマ姫! 」

うんサーマ姫? 聞き違え? サーマ? いやあのおばさん?

どっちだ? でもこの声はたぶん……

「あなた方は下がってなさい。これは命令です! 」

何が起きている? サーマ姫って本当に本当?

足音と共に影が近づいて来る。


「アモ! 大丈夫? 」

「その声はまさかサーマ姫? 」

「うん。私サーマよ」

「サミー! 」

「アモ! 」

やっぱりサーマだ。でもこれは一体どういうこと?

もうさっぱり理解できない。

俺は俺で。サーマはサーマ姫でそれでもおばさんだしもう何が何やら?

頭が混乱するばかり。


カチャカチャ
ガチャガチャ

鍵を開けついに解放される。

「ほらこっちに! 」

「サーマ姫何をなさいます。これはあなたの為に…… 」

さすがに見張りもただ口を咥えて見守ってる訳にはいかない。

「困ります。どうぞお止めください! 」

見張りたちは立場上強く言えない。姫を怒らせては追放させられてしまうからだ。

ただもうジャスラはいない。

だから悪趣味な真夜中のショーが開催されることはない。

ただお役御免となり故郷に帰さられるだけ。

即死モードでもないのだからそれ以上の心配はない。

「黙りなさい! そこを退きなさい! 」

見張りは言うことを聞くしかない。


「こっちよアモ。ついてきて」

「サーマ…… 」

「ほら早く! 」

手を引かれ光の漏れる方へ。

そもそもがここはルピアから離れた場所。

こんなところにポツポツと家があるのは不思議な感じがする。

その一つに入っていく。

もちろんここは宿屋ではなく無人となり何年も経過した廃屋のようなところ。

それだけに近寄りがたい。

昼間は別に気になるほどではないが夜にそれも入るとなると勇気がいる。

なぜサーマはこんなところへ?

まさか没落したとか?

あの自称サーマ姫に地位を奪われたか?


中に入るとそれは地獄でした。

埃だらけで咳が止まらない。

いつ崩れるか分からない建物。

床に大量な砂。

その辺には当然虫が這いまわっておりそれを捕食しようとクモが巣を張る。

蛇の姿も見られる。

とても人が住めるようなところではない。


「アモ―クス! やっぱりアモ―クスじゃないか! 」

男が抱き着いて来る。

うん誰だっけ? 薄暗いせいか声の特徴もなく目立たない存在。

「初めまして」

「アモ―クス! 僕だよ! 僕! 」

誰だこいつ? 護衛隊の一人なのは分かったが誰だっけ。

うーん。ここまで思い出しかかってるんだけどな。

「同郷のウエスティン。忘れたの? 」

何だウエスティンか。さっきまで覚えてたのに忘れるとは本当に存在感が無い。

汗が垂れてなければ判別つかない。

感動的な再会なはずなのにどうしても気持ちが乗っていかない。

さすがはウエスティン。本領発揮だな。


「ははあ! ウエスティン様よくぞご無事で! 心配しておりました」

あれ何でこんなによそよそしいのか自分でも謎。

「どうしたのアモ―クス。頭でも打ったの? 」

笑いながら冗談を言う。

だが俺は知ってる。彼がウエスト王子だと言うことを。

それを知ってるのは俺の他には爺だけ。

どうやらウエスト王国は第一王子が行方不明で第二王子が権力を握っているようだ。

ウエスティンはその権力争いに敗れたと見ていい。

内部抗争により裏切りに遭い生まれてすぐに暗殺されそうになった。

そこを助けたのがあの爺さん。そして本当の意味で助けたのは俺と言う訳だ。

だからやはり俺はただの嘘つきではなかった。


ウエスト王国とはサーマ姫のお届け先。

要するにウエスト王国第二王子こそがサーマの結婚相手。

俺たちはその護衛隊。


                   続く
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