ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

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ヤマダ

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マジシャンの指摘により山田さんに疑惑の目が向けられる。
ここは話を引き取るとしよう。
「第一の被害者の隣であるあなたなら当然自分の鍵でいつでも侵入可能。
違いますか山田さん? 」
ついに真犯人候補が見つかった。
「ちょっと待ってください。それは今実験したから気付いたこと。
私はそんな大それたことはしていません」
いかにも不愉快だと言った表情を浮かべ自らに掛けられた疑いを完全否定する。
当たり前だが素直に吐きはしない。それが人間と言う者。
「しかしこれは紛れもない事実なんですよ」
「だから今まで気付かなかったと言ってるでしょう。
探偵さんさえ気付かないものを自分が気付けるはずがない! 」
くそ…… 痛いところを突いて来る。探偵は探偵でも明後日探偵なんだぞ。
威厳も実力もない。いや未知数だ。
はっきり言って助手の足を二人で引っ張ってる自覚もある。
そんな情けない探偵を比較対象にしてどうする。
「まだ粘りますか山田さん? 」
ここで追及を緩めてはいけない。
「いえ認めます。確かに自分の鍵を使えば被害者の部屋に忍び込めたでしょう。
しかしそれは私が偶然この部屋を宛がわれたからに過ぎないんですよ」
逆に山田さんに覆せない事実を指摘されてしまう。
そうこのトリックが成立するには確実に隣の部屋を確保することが絶対条件。

「あの…… ガイドさん。部屋はどのように決めていたのですか? 」
一応は確認を取る。彼の言い分もある訳だから。
「はい、順番です。一番先に到着されたのが第一の被害者の海老沢さんです。
その次が山田さんで間を空かずに第二の被害者のミサさん。黒木さんと続きます。
部屋割りは早い者順に決めて行くので当然選べるわけではありません」
「では偶然だと? 」
「はい。早い者順は誰にも知らせていません」
これでは選ぶ余地がない。もし好きな部屋を勝手に選べるならまだ有り得たが……
本当にただの偶然。彼でなくてもそれこそお婆さんでもマジシャンでも同じこと。
誰であれ疑われること間違いなし。
偶然被害者の隣の部屋になっただけに過ぎない。
不運にも最悪の部屋を引き当てたことになる。
やはり運に頼るようでは推理とは言えない。確実性がなくては話にならない。

「分かりました山田さん。あなたを信じます」
最有力候補とは言え探偵として証拠もなしに山田さんをこれ以上追及できない。
確実な証拠が見つかるまでは気にかける程度。冤罪の恐れもあるのだから。
「ちょっと待てよ探偵さん! それでも殺害出来たのは奴だけなんだ。
ここは一つ閉じ込めるのはどうだ? 」
危険排除の動きを見せるのは奈良。龍牙も同意。
鑑定士が状況を見守る。おそらく賛成だろう。
そこにマジシャンも加わる。
「この男が怪しいことに変わりはない」
偶然だろうと犯行可能な者がいる以上疑うのが当たり前だと。
しかし温厚で人のよさそうな山田さん。人を殺すようなタイプには見えないが。
話ではミサさんからのアプローチも断っていたそうだし潔癖なところがある。
果たして彼が本当に人を殺したのか? それも二人も。
一人は好意を寄せられていた相手。
うーん。やはり考えにくい。

「そうだ。それに第二の被害者とも関係があるじゃないか! 」
奈良は容赦がない。これはおそらく嫉妬からくるもの。
自分はモテずに彼だけ言い寄られたのが我慢ならないのだろう。
この話はガイドさんや小駒さんに黒木辺りから仕入れた情報。
「よしこいつを閉じ込めようぜ皆! 」
奈良が山田さんの腕を強引に掴む。
「うわあちょっと…… 待って…… 」
奈良と龍牙が山田さんを無理矢理部屋に押して行く。
奈良は本気らしい。龍牙は仕方なくと行った感じ。
「済みません。済みません」
龍牙が謝っているのはなぜか? 
「分かりました。不本意ですが皆さんがそうおっしゃるなら従いましょう」
最終的には納得し自分からドアを閉める山田さん。
こうして山田さんを閉じ込めることに。
それでは物足らずに開かないようにドアの前に椅子と机を持ってこさせる。
バリケードを作る徹底ぶり。
「うんこれでいい」
開かないかの確認をし準備完了。

これで一人の力では開けられなくなった。
「バスが来るまで大人しくしてるんだな。ははは…… 」
奈良が勝ち誇ったように笑い声を上げる。
皆反対しないし障害物を取り除こうともしない。
「もうしょうがないね」
お婆さんも諦め気味。まあネチネチ言ってもさすがに自分の命の方が大切。
これは誰もが納得する結論。

「分かりました。真犯人が動けないならばもう事件は起こらないはずです」
休むように促す。
我々も部屋に戻り事件を振り返ることに。

                     続く
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