永遠のトナラー 消えた彼女の行方と疑惑の隣人

二廻歩

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お隣さん

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今日は真向いの家に引っ越し業者の車が何台もやって来た。
どうやら越してきたらしい。

ふう落ち着く。
「お前も本当に暇じゃな。こんな爺さんに会いに来るんだからな」
憎まれ口を叩く暇仲間の爺さん。嬉しい癖に素直じゃない。
もう少し優しくしてくれてもいいじゃないか。困った爺さんだな。
「いえお隣さんですから気になりまして」
「まあ確かにお隣さんと言えばそうだが…… 」
新居を紹介したお爺さんの部屋でお茶をご馳走してもらっている。
本当にお茶だけ。せんべい一つ出さない偏屈爺さんだがここはお茶だけで十分。
日頃の愚痴を聞いてあげるのもご近所付き合いって奴だ。

「腰はどうですか? 」
「ああリュウマチが酷くてな。年には敵わん。ははは…… 」
そう言って腰をさする。
俺としても本来ならこんな爺さんの話相手になってやるほど暇ではない。
今日はお隣さんが引っ越してくることになってることもあり様子を見に来た。
どんな人が来るか心配よりも楽しみが勝っている。
爺さんともこれから長くなる訳だし彼女の為にも交流するのも悪くない。

ピンポン
ピンポン
「おうやって来たか」
挨拶にやって来たと玄関に駆けて行く。
どうやら今度もこのお爺さんの紹介らしい。
一体どれだけの紹介料を懐に入れたんだろう。
美味しい商売でありちょっとした小遣い稼ぎでもある。
これは一度やりだしたら止まらないだろうな。
ただ善良な爺さんの振りして儲けてると思うと少しだけ許せない気持ちになる。
美味い手ではある。

「これつまらないものですが」
定番のタオルセット。
「お二人ですか? 」
「いやいや孤独な老人の一人暮らしさ。前にも話したろ? 」
上がるように勧めるもまだ用があると辞退するお隣さん。
引っ越し作業は忙しいもの。爺さんに構うほど暇な奴は居ない。
俺だってまだ…… 嫌なことを思いだした。うわ面倒臭いな。
嫌なことは先送りする主義。

うん…… この人どこかで会ったような。見たような。
「それでこちらは息子さん? 会いに来られた? 」
「いやいやただの他所者さ。無関係じゃ。それよりもどこからだったかな? 」
お爺さんはまだ俺のことを認めてくれない。
お隣同士仲良くしようと思ったのに。頑固なんだから。
それとも新しいお隣さんがやって来て寂しくなくなったので俺は用済みとか?
「はあそうですか。実は近くからなんです。それでは」
どおりで常連さんと話が合っていた訳だ。
俺と同じでただの新入りではなく近くから。
何か事情があって家族で引っ越して来たのかもしれない。
あまりその辺のことは詮索すべきではない。プライベートだしな。
爺さんは興味津々の様子。一度聞いてるはずなのに忘れたらしい。
ちなみに俺たちは結婚する為だけどね。ああめでたい。
今の環境を変えたくないので隣の市ぐらいがちょうどいい。

「ちょっと待って! 俺には? 」
挨拶の品は出来れば食べ物が良い。肉とか果物とか。
高級なのじゃなくていい。たくさんあると助かる。
だが気持ちの問題でもある訳で贅沢は言ってられない。
何と言っても頂くのだから。
「はい? 申し訳ありませんが用意してませんよ」
この男は爺さんを大事にするつもりらしいがお隣さんは俺なんだからな。
こちらをより大事にすべきではないのか? まったく困った親父だ。

「あの…… 」
「ああ、あなたは銭湯でお会いした方ですね」
そう一週間前に銭湯で偶然一緒になり迷惑を被った。
まさかこの男が俺の家のお隣さん? 人の話を聞かず隣に寄って来る迷惑親父。
こんなところで再会するとは何て運命的なんだろう。
少々この先が思いやられるが気さくに話し掛ける親父ならまだマシな方か。

「ではこれで」
今回は爺さんがいる手前しつこくしてこなかった。多少は弁えてるらしい。
奥さんと娘さんがいるそうで。これなら彼女も喜ぶだろう。

この後も続々と引っ越してくるとのこと。
お隣さんが増えたら騒がしくなるがこれも仕方ないこと。
静かなのもいいが賑やかなのも捨てがたい。

もう用は済んだ。さあ彼女の元へ戻ろう。



                   続く
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