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お爺さんとカン

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第二章

朝一番に出発。
昼はアル―のおむすびとたくあんで凌いだ。
当てもなく歩くこと丸一日。

さすがに疲れた。
どうしよう。
村に戻るべきか。
先に進むべきか。

とりあえず寝床を確保しなくては。

野生動物のうめき声が上がる。
狼だろうか。
熊だろうか。
これはぐずぐずしていられない。

うん? あれは何だ。

真っ暗闇に浮かぶ影。

人間?
とりあえず後を追いかける。

「すみません! 」
大声で存在を知らせる。
間違えて撃たれては敵わない。

男であった。

「ああ、驚いた。こんなところで人に会うとは何年ぶりだわ」
「おじさんはここに住んでいるの? 」
「ああ、もうこの村に住む者は俺一人になっちまった」

思っていたよりも声がかすれている。
見た目は暗くて良く分からなかったがおじさんと言うよりはお爺さんと言った感じ。

一人で暮らしている分若々しい。
髭はもじゃもじゃなんだけどね。

「一晩泊めてもらえませんか? 」
「俺の家か? 面倒は御免だ」
「お願いします。困ってます」

「分かったよ。俺の家は無理だけどこの辺りには人が住んでいない。
好きなとこに泊まりな。手入れされていないボロ屋でよければな」

笑いながら歩き出し、住み家に入っていく。

ラッキー。
運よく寝床を確保した。
これは幸先が良い。

「ちょっとおじさん! 」
「食い物? 知らねいよ! 自分で何とかしな! 」

「ここはどこ? 」
「どこってお前。そんな事も知らないのか! 」
何も言えねえ。
「ここはイーストドコダさ。何年も前に廃墟となった村さ」

「俺しか住んでねい! ゆっくりしていきな」

「あのそれから…… 」
「まだ何か用か? 最後にしてくれ! もう寝るんだからよ」
「えっと。あのー。手紙を書きたいのですが」
「それなら近くにポストがある。勝手に探しな! 」

思いっ切り締められる。

まあいい。最高ではないが最悪でもない。
普通だ。いやラッキーだ。
プラス思考。プラス思考。

ボロ屋の中でも一番マシと思われる家を住み家にする。

真夜中の大掃除。
大量の埃を掃き寝床の周りを拭き、何とか形を整える。

アル―元気かな?
寂しさがこみ上げるが何とか堪える。

横になる。
歩き続けた疲れからかすぐに眠りにつく。

一日目の冒険は無事に終了。

朝。

「おい! おい! 」
「うん? 」
「起きろ! 起きろ! 」
「ううん? アル―? えへへへ」
「早く起きんか! 気色悪い! 」

「おはようございます。 うん? 」
「おはよう。眠れたか? 」
「ええ、ぐっすりと」
「よし。朝飯にしよう」

爺さん特製の漬物とみそ汁。御飯にデサートの梨。

「豪勢ですね」
「黙って食べろ! 」

三杯お代わりし腹を満たす。

「それでお前はこの後どうする? 」
「さあ? 」
「何! 答えられないのか! 」
「だって…… 村を追い出されただけだから」
「言い訳はいい! 早く決めろ! 」

「えっと。まずチートを授かろうかと」
「はあ? 」
「神様が与えしチートですよ」
「そんな伝説は知らん! しかし目標があるならそれをひたすら進めばよい! 」

「へい! 」

癖が直らない。
失礼だっただろうか。

「よし、行くがよい! 」
「でもどこに行けばいいのか…… 」
「しっかりしろ! 」
「へい! 」

「町に出るのはどうだ」
「町ですか? 」
「そうだ。いくらか情報があるだろう」
町ねえ。

「この村を出たら一本道をひたすら進め!
ドコダシティーに繋がっている」

「ドコダシティーか。よしそこに行ってみるか。
ありがとうおじさん」

「お前名前は? 」
「カンです」

「そうか。カンよ。分からない事が有ったり用があったら戻ってくるがいい。
お前の住み家はそのままにしといてやる」

出発。

「ではまたいつか」

「うん。行くがいい若者よ。
冒険者の心を持て! 」

「へい! 」

歩き出す。

手紙
拝啓アル―様

お元気ですか。
あれから一日が経ちました。
長いようで短い感覚です。
何とかやっています。
これからドコダシティーを目指します。
そこは見たこともない大都市だということです。
今からワクワクしています。
あちらでも手紙を書く機会があると思います。
その時にまた詳細を報告します。
それでは。
カンより。

第二章 完

                      続く

登場人物紹介
カン この物語の主人公

サウスドコダ出身
リサイクル卿の嫡男
父 行方不明
道順 サウスドコダからイーストドコダへ
ドコダシティーを目指す
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