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温泉郷 ビリビリに破かれた大切な物
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ドコダ山を越え温泉郷に入る。
ドンドン!
一番近くの家を無遠慮に訪問する。
「誰かいませんか? 」
「何だい? 」
不機嫌なおばさんが姿を現した。
横には小さな男の子が不思議そうにこちらを見る。
「何か用かい? こっちは忙しんだ早くしな! 」
「すみません。お話を伺えませんか」
プラスティ―に任せる。
「ああ観光客かい。それで何が聞きたいのお嬢さん? 」
「ここは温泉郷ですか? 」
「ああそうだよ。道にでも迷ったのかい」
「ええ。どこに伺えばよろしいでしょうか? 」
「泊まりたいのなら宿がある。三軒先がそう。それから奥まで行ってごらん立派な旅館があるよ。それからただで泊めてくれる家も何軒かあるから当たるといいよ」
「温泉はありますか? 」
「ああ、旅館に行ってごらん。泊まらなくても無料で入れる。それからねえ少し歩くけど外れに天然の温泉があるんだ。あんたらが温泉好きならお勧めだよ。他にはあるかい。ないならもうこれくらいで」
男の子が笑っている。
観光客が珍しいのだろうか。
「最後に一つ」
付け加える。
「この辺りにポストはありませんか? 」
「ああそれなら旅館にあったと思うよ。まあこの辺で使う人はあまりいないがね」
貴重な情報を得た。
とりあえず三軒先に行ってみる。
ボロボロの佇まい。外から見ただけでは分からないが休業しているのか薄暗い。
「いらっしゃい! 」
老婆がいつの間にか立っていた。
「お客さん。お泊りですかね? 」
「ハイ。やってるの? 」
「うーん。まあ何とかね。今はオフシーズンだからお客さんが少ないでしょう。
だから力は入れてないんだよ。食い物も我慢して喰えば喰えないことはないしね。
ヒヒヒ…… 冗談冗談」
不気味な笑みでどうぞと言ってくる。
今晩はここでいいか……
プラスティ―に肩を掴まれる。
「私はここはちょっと…… 」
「ワガママ言わないでくれよ」
ブツブツ
「お客さんどうしました? 」
「お願いします! 」
「では…… ぎゃあ! 猫? 」
「ええ、ペットのボトルです。ご挨拶なさい」
「ニャア! 」
「すみませんお客様。大変申し上げにくいのですがここはペットのご利用はできません。もう少し行ったところに大きな旅館があります。どうぞそちらへ」
断られてしまった。
まあ確かにペットは連れて行くのが躊躇われる。
特に猫は床や壁を引っ掻くので汚れたり傷ついたりして迷惑がかかる。
もう旅館の一択となった。
歩き出す。
「ああよかった。あそこは何か出そうだもの」
「気にしすぎだよ。プラスティ―は神経質だな」
「どっちでもいいすから飯にしましょうや」
パックは食事にありつければそれでいいと思っているようだ。
集落を奥に進む。
見えてきた。この集落で一番大きな建物。
落ち着いた雰囲気の外観。
建て替えたばかりなのかピカピカ輝いている。
さっきのと比べるのも悪いがここで正解だろう。
中はどうなっているのだろうか。
「いらっしゃい。ようこそお越しくださいました」
若女将が挨拶に出てくる。
いくつだろうか? 着物姿が輝いている。
「こらカン! あんたも! 」
プラスティ―が嫉妬する。
「デレデレしちゃって最低! 」
若女将は忙しいのか仲居に後を任せる。
「三名様ご案内」
「あのー、猫は大丈夫? 」
「ええ、当旅館では何の問題もありません。ただ気をつけてくださいね。傷つけた場合弁償させられるかもしれません。後はお客様次第です」
一通りの説明をして去って行く。
「あー疲れた! 」
「自分もっす」
「よし昼にしよう」
近くの食堂に入る。
名物のブタを使った創作料理が人気。
三人は迷うことなく頼む。
あっと言う間に完食する。
「ああ旨かった! 」
「もう食べられないっす! やっぱブタ最高! 」
「もう寝ないの! そんなところで」
パックはどこでも寝る男。
「あれ……何してるのカン? 」
「ちょっとね。今のうちに手紙を書こうと思って」
要点をまとめた走り書き。
「まさか? 」
「うん。アル―が心配してると思うから」
「もう! 」
「あん、あんたらどこから来なすった? 」
隣の席のおじさんが話しかけてきた。
「山の向こうからです」
「じゃあサウスドコダ辺り」
「ええ、まあ」
「俺も前はあの辺に住んでたんだ。ここはいいとこだよ」
話が長くなりそうなので適当に流すプラスティ―。
「今はオフシーズンだがもう少ししたら山々が色づき紅葉目当ての観光客も増えてくるはずだ」
「温泉もありますよね」
「そうだ。そうだ。年に一度の書き入れ時さ。まあ俺は商売やってる訳じゃねいから関係ないがな。まあそん時はうるさくて敵わんがな。はっはは! 」
「それはそれは」
とにかく話を合わせる。
「うんで。お前さん方は何用で来なすった? 観光じゃねいだろ。言ってみろ? 」
プラスティ―が黙ってしまったのでリーダーである俺が代わる。
「俺らは神々の森に行きたいんだ! 」
「神々の森? 」
恍けた表情から何かあると踏んだ。
「知っているんでしょう? おじさんも」
「何のことか…… そうだ野暮用があったんだ。それじゃこの村を楽しんでいってくれな」
そそくさと出て行ってしまった。
怪しい。なぜ教えてくれない?
店の者にも聞いてみたが分からないそうだ。
店を後にする。
行くところもないので旅館に戻ることにした。
「まずい! 」
「どうしたのカン。忘れ物? 」
「手紙を出すのを忘れた」
「何だそんなこと。それなら私が出してあげる」
「そう、助かるよ」
投函をプラスティ―に任せ一休み。
ビリビリ
愛しのアル―へ
お手紙を出すのがずいぶん遅くなりました。
元気にしていますか。
ドコダシティーの支払いの件無事に終えたでしょうか。
そうそう仲間ができました。
嫉妬深いプラスティ―と腕力が取り柄のパック。
それからペットのボトル。
皆私を支えてくれます。
不満や不安が無いかと言ったら嘘になりますが楽しく旅を続けています。
今は登山を終え温泉郷に滞在しています。
数日はここに居るので何かありましたら手紙を下さい。
カンより
追伸
また一緒にお風呂に入るのを楽しみにしています。
ビリビリ
グシャグシャ
「まったくふざけるんじゃないわよ! 誰がこんな手紙送ってやるものか!
ふん。もうバカにして! 」
「おーい。プラスティ―。出してきてくれた? 」
「ええ、まあ…… 」
慌てて後ろに残骸を隠す。
「ありがとう。さあ座って」
今後のことを話し合う。
「兄貴! どうしましょう? 」
「どうしようかなあ。プラスティ―は案ある? 」
パックと横になって寛ぐ。
「あんた達! やる気あるの! 」
「ええ? だって手がかりもないしさあ…… 」
「今日は疲れたっす」
「それでどうするカン? 」
「うーん。まだ情報が足りてない。明日も引き続き収集に当たろう」
「少しはリーダーらしくなってきたわね」
「どうしたの? 機嫌が良くないけど」
「何でもない! 温泉にでも行こうっと」
プラスティ―はそう言うと出て行ってしまった。
「おいパック! 」
「自分は寝てます。兄貴も行ってきてください」
グウ!
「そう、留守番よろしく」
大浴場に向かう。
プラスティ―の姿を捉えた。
何か揉めているようだ。
「ええ? 貸し切り? 」
「そうです。あと一時間は入れません。良かったら天然の露天風呂を案内しますが」
旅館を出て五分もしない場所にある。
「プラスティ―! 」
「カン。今は無理みたい。あと一時間は我慢してだって」
「そうか残念だな…… 戻るか」
「私はちょっと用があるから先に戻ってて! 」
プラスティ―の様子がおかしい。何かを隠している?
後をつけることにした。
続く
ドンドン!
一番近くの家を無遠慮に訪問する。
「誰かいませんか? 」
「何だい? 」
不機嫌なおばさんが姿を現した。
横には小さな男の子が不思議そうにこちらを見る。
「何か用かい? こっちは忙しんだ早くしな! 」
「すみません。お話を伺えませんか」
プラスティ―に任せる。
「ああ観光客かい。それで何が聞きたいのお嬢さん? 」
「ここは温泉郷ですか? 」
「ああそうだよ。道にでも迷ったのかい」
「ええ。どこに伺えばよろしいでしょうか? 」
「泊まりたいのなら宿がある。三軒先がそう。それから奥まで行ってごらん立派な旅館があるよ。それからただで泊めてくれる家も何軒かあるから当たるといいよ」
「温泉はありますか? 」
「ああ、旅館に行ってごらん。泊まらなくても無料で入れる。それからねえ少し歩くけど外れに天然の温泉があるんだ。あんたらが温泉好きならお勧めだよ。他にはあるかい。ないならもうこれくらいで」
男の子が笑っている。
観光客が珍しいのだろうか。
「最後に一つ」
付け加える。
「この辺りにポストはありませんか? 」
「ああそれなら旅館にあったと思うよ。まあこの辺で使う人はあまりいないがね」
貴重な情報を得た。
とりあえず三軒先に行ってみる。
ボロボロの佇まい。外から見ただけでは分からないが休業しているのか薄暗い。
「いらっしゃい! 」
老婆がいつの間にか立っていた。
「お客さん。お泊りですかね? 」
「ハイ。やってるの? 」
「うーん。まあ何とかね。今はオフシーズンだからお客さんが少ないでしょう。
だから力は入れてないんだよ。食い物も我慢して喰えば喰えないことはないしね。
ヒヒヒ…… 冗談冗談」
不気味な笑みでどうぞと言ってくる。
今晩はここでいいか……
プラスティ―に肩を掴まれる。
「私はここはちょっと…… 」
「ワガママ言わないでくれよ」
ブツブツ
「お客さんどうしました? 」
「お願いします! 」
「では…… ぎゃあ! 猫? 」
「ええ、ペットのボトルです。ご挨拶なさい」
「ニャア! 」
「すみませんお客様。大変申し上げにくいのですがここはペットのご利用はできません。もう少し行ったところに大きな旅館があります。どうぞそちらへ」
断られてしまった。
まあ確かにペットは連れて行くのが躊躇われる。
特に猫は床や壁を引っ掻くので汚れたり傷ついたりして迷惑がかかる。
もう旅館の一択となった。
歩き出す。
「ああよかった。あそこは何か出そうだもの」
「気にしすぎだよ。プラスティ―は神経質だな」
「どっちでもいいすから飯にしましょうや」
パックは食事にありつければそれでいいと思っているようだ。
集落を奥に進む。
見えてきた。この集落で一番大きな建物。
落ち着いた雰囲気の外観。
建て替えたばかりなのかピカピカ輝いている。
さっきのと比べるのも悪いがここで正解だろう。
中はどうなっているのだろうか。
「いらっしゃい。ようこそお越しくださいました」
若女将が挨拶に出てくる。
いくつだろうか? 着物姿が輝いている。
「こらカン! あんたも! 」
プラスティ―が嫉妬する。
「デレデレしちゃって最低! 」
若女将は忙しいのか仲居に後を任せる。
「三名様ご案内」
「あのー、猫は大丈夫? 」
「ええ、当旅館では何の問題もありません。ただ気をつけてくださいね。傷つけた場合弁償させられるかもしれません。後はお客様次第です」
一通りの説明をして去って行く。
「あー疲れた! 」
「自分もっす」
「よし昼にしよう」
近くの食堂に入る。
名物のブタを使った創作料理が人気。
三人は迷うことなく頼む。
あっと言う間に完食する。
「ああ旨かった! 」
「もう食べられないっす! やっぱブタ最高! 」
「もう寝ないの! そんなところで」
パックはどこでも寝る男。
「あれ……何してるのカン? 」
「ちょっとね。今のうちに手紙を書こうと思って」
要点をまとめた走り書き。
「まさか? 」
「うん。アル―が心配してると思うから」
「もう! 」
「あん、あんたらどこから来なすった? 」
隣の席のおじさんが話しかけてきた。
「山の向こうからです」
「じゃあサウスドコダ辺り」
「ええ、まあ」
「俺も前はあの辺に住んでたんだ。ここはいいとこだよ」
話が長くなりそうなので適当に流すプラスティ―。
「今はオフシーズンだがもう少ししたら山々が色づき紅葉目当ての観光客も増えてくるはずだ」
「温泉もありますよね」
「そうだ。そうだ。年に一度の書き入れ時さ。まあ俺は商売やってる訳じゃねいから関係ないがな。まあそん時はうるさくて敵わんがな。はっはは! 」
「それはそれは」
とにかく話を合わせる。
「うんで。お前さん方は何用で来なすった? 観光じゃねいだろ。言ってみろ? 」
プラスティ―が黙ってしまったのでリーダーである俺が代わる。
「俺らは神々の森に行きたいんだ! 」
「神々の森? 」
恍けた表情から何かあると踏んだ。
「知っているんでしょう? おじさんも」
「何のことか…… そうだ野暮用があったんだ。それじゃこの村を楽しんでいってくれな」
そそくさと出て行ってしまった。
怪しい。なぜ教えてくれない?
店の者にも聞いてみたが分からないそうだ。
店を後にする。
行くところもないので旅館に戻ることにした。
「まずい! 」
「どうしたのカン。忘れ物? 」
「手紙を出すのを忘れた」
「何だそんなこと。それなら私が出してあげる」
「そう、助かるよ」
投函をプラスティ―に任せ一休み。
ビリビリ
愛しのアル―へ
お手紙を出すのがずいぶん遅くなりました。
元気にしていますか。
ドコダシティーの支払いの件無事に終えたでしょうか。
そうそう仲間ができました。
嫉妬深いプラスティ―と腕力が取り柄のパック。
それからペットのボトル。
皆私を支えてくれます。
不満や不安が無いかと言ったら嘘になりますが楽しく旅を続けています。
今は登山を終え温泉郷に滞在しています。
数日はここに居るので何かありましたら手紙を下さい。
カンより
追伸
また一緒にお風呂に入るのを楽しみにしています。
ビリビリ
グシャグシャ
「まったくふざけるんじゃないわよ! 誰がこんな手紙送ってやるものか!
ふん。もうバカにして! 」
「おーい。プラスティ―。出してきてくれた? 」
「ええ、まあ…… 」
慌てて後ろに残骸を隠す。
「ありがとう。さあ座って」
今後のことを話し合う。
「兄貴! どうしましょう? 」
「どうしようかなあ。プラスティ―は案ある? 」
パックと横になって寛ぐ。
「あんた達! やる気あるの! 」
「ええ? だって手がかりもないしさあ…… 」
「今日は疲れたっす」
「それでどうするカン? 」
「うーん。まだ情報が足りてない。明日も引き続き収集に当たろう」
「少しはリーダーらしくなってきたわね」
「どうしたの? 機嫌が良くないけど」
「何でもない! 温泉にでも行こうっと」
プラスティ―はそう言うと出て行ってしまった。
「おいパック! 」
「自分は寝てます。兄貴も行ってきてください」
グウ!
「そう、留守番よろしく」
大浴場に向かう。
プラスティ―の姿を捉えた。
何か揉めているようだ。
「ええ? 貸し切り? 」
「そうです。あと一時間は入れません。良かったら天然の露天風呂を案内しますが」
旅館を出て五分もしない場所にある。
「プラスティ―! 」
「カン。今は無理みたい。あと一時間は我慢してだって」
「そうか残念だな…… 戻るか」
「私はちょっと用があるから先に戻ってて! 」
プラスティ―の様子がおかしい。何かを隠している?
後をつけることにした。
続く
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