ジミート チート神を探して神々の森へ 追放されし三人の勇者故郷を救え!

二廻歩

文字の大きさ
26 / 47

新キャラ フォックス

しおりを挟む
静まり返った聖域ジミートに突如響く咆哮。

鳴き声がする。
ボトルではない何か得体の知れない獣が威嚇している。

ボトルも負けじと張り上げる。

音が徐々に離れて小さくなっていく。

「ボトル! 」
心配になったプラスティ―が叫ぶ。

どこまで追いかけるのか?
追いかけっこはまだ続いている?

ウ―!
シャアア!

ボトル優勢?
謎の獣も負けてはいない。
しかし分はボトルにあるようだ。

鳴き声が迫ってきた。
はっきりと争う音。

近い! すぐそこだ!

うがああ!
ボトルが追い詰める。

見えた!

「お助け? 」
うん? いや聞き違えだろう。
しかし何かを発したのだ。

ボトルの強烈な追い込みによって姿を現す。
黄色と白の体毛。

尻尾がある。
特徴から狐だと判断できる。

獣の正体は狐。

本当に狐なのか?

「お助け! 」

明らかに言葉を発している。
我らの言葉を発している。

「お助け! 」

ボトルはなおも追いかけ回す。

二匹の獣は横を通り過ぎて行く。

「ボトル! 」
慌ててプラスティ―が呼び止める。

ボトルは興奮した様子で戻ってきた。

ボトルの迫力に負け狐も目の前までやってくる。

「お前らなんてことをしやがる! 」
口の悪い狐。態度も性格も良くない。

普通にしゃべっている狐。

言葉を発する違和感はそのふてぶてしい態度によって打ち消される。

なぜ言葉を操れのか。疑問は残るものの少しの間話を聞いてやることにする。

「俺様はフォックスだ。ジミート唯一の生き物。
えらいんだぞ! 」

「あらあらようやく姿を現したらと思ったら威張り散らすんだから」
「おい女! 口の利き方に気をつけろ! フォックス様と呼べ! 」

「はいはい。それでフォックス様。なぜ今まで姿を現さなかったのですか? 」
「ふん。様子を見ていたのだ。お前らはただのガキだ。この場にふさわしくない。立ち去るがよい! 」

「兄貴。どうします? 食っちまいましょうか」
「いや、待て! ジミートを紹介してもらうまで待て」

「仕方がねい。ではこれを使いましょう」
パックは油揚げを置く。

餌で釣る作戦。

果たしてうまくいくのか?

「いいかよく聞け! お前らはゴミだ! ガキだ! クズだ! 」

言いたい放題。

プラスティ―の我慢も限界。

「へっへへ。俺は偉いんだ。尊敬しろ! 」
狐はどんどんエスカレートしていく。

「まったく近頃の奴は俺様を何だと思っていやがるのか。
情けない! 本当に情けない!
狐様。フォックス様だぞ! 」

「はっははは。うん。ううん? 」
ようやく気付いたらしい。

クンクン

旨そうな臭い。
狐は涎を垂らす。

「これは俺様の大好物の油揚げ!
お前ら気が利くな」

狐は迷いなく油揚げの方へ。

「うおおお! 」
久しぶりの油揚げに嬉しさがこみ上げる。

「頂きまーす」

「おおっと」
パックが拾い上げる。

お預けを喰らった狐はパックを睨み、恨み節。
「何をしやがる! 」 

「ははは。あげてもいいんだけどなあ」
「早く食わせろ! 何年ぶりだと思っているんだ! 」

狐は怒り狂う。

「まあ待ってくれよ。これをただでやるわけにはいかない」
「おい女! こいつを説得しろ! 」
「嫌! 」

「何? ではそこのお前! この馬鹿を何とかしろ! 」
「俺? まったく本当に生意気な奴だな。もういいから食っちまえパック! 」

「おい! 何を言ってやがる! ふざけやがって! 」

「頂きまーす」
パックは口に持っていく。

「パック! 」
そこでストップ。

「どうしました兄貴? 」 
「待て! 」
「へい」

「いいかフォックス。最後のチャンスだ。この油揚げをやる代わりに俺らをジミートの所まで案内しろ! 」

「うぐぐぐ。うーん」

「そんな悪い条件でもないだろ。お前はここの番人。
そして案内役でもある。まだ不満でもあるのか」

狐は悩むばかりで返事をしない。
強引に進める。

「よし仕方ない。パック食べろ! 」
「や…… 止めろ! 」
「よし案内するな? 」
「ちっ! 分かったよ。負けたぜ」

「よし食っていいぞ」
「待ってました! 」

何年ぶりかの油揚げ。
嬉しそうに頬張るフォックス。
大好物を押さえられてはどうにもならない。

油揚げを平らげた狐は満足そうに笑う。

取引成功。

「よしついて来い! 案内してやる」

フォックスが仲間になった。

ついに道が開けた。
ジミート探索本格始動。

「まずは…… 」
フォックスは改めて自己紹介をする。

「俺はカン」
「私はプラスティ―よ」
「パックだ」

「でこいつがボトルか…… 」

追いかけ回された嫌な記憶が蘇る。

「まあいい。俺について来い! 」

「静かにしてろよ! 特にそこのデカイの! 」
「パックだ! 」

「ほらゆっくり歩け!
足音を立てるな!
息を止めろ!
考えるな!
その獣をどうにかしろ! 」

大声で喚き散らすフォックス。

「あなたねえ! 」
「女。静かにしろ! 守らないなら案内しないぞ! 」
「足元を見るフォックス」

プラスティ―は怒りで震える。
パックが臨戦態勢。

「いいかお前ら! フォックス様に従え! 従わなければここまでだぞ! 」

「プラスティ―! パック! 」
「兄貴? 」
「カン? 」
二人を落ち着かせる。

「冷静に冷静に」
「分かってるわよ」

「そこ静かに! まったく何度も繰り返させるな! 」

「もう限界ですぜ兄貴! 」
「おい待て! 」

パックの表情が険しくなった。

「ちっ! 言うことを聞け! 」

プラスティ―はボトルを元の寝床に戻し狐から遠ざける。

歩き続ける一行。

先頭の狐。カン。プラスティ―と続きパックが最後尾。

いきなり歩みを止める狐。

ついにジミートとご対面?

              続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

処理中です...