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すべてを脱ぎ捨てて プラスティ―に迫る危機

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次へ。
次のジミート探し。

チート選考は難航。
カンたち三人は狐の仲介を受けるが決して満足のいく物が見つからない。

どうすればいい?

「おい! まだ選べないのか? 」
「だって…… ねえカン? 」
「うん。目当てのチートでは無いからなあ」

狐は呆れる。

「よし分かった。とっておきのチートを紹介してやろう。
着いて来い! 」

コンコン
コンコン

第五ジミートは期待大。

「我はジミート。我のチートは不老長寿なり。
即ちアンチエージング」

「この太古から伝わる美容オイルを塗ればたちまち十歳は若返る。
保証付きだ。
もちろん老けないだけでなく寿命もその分長くなる夢のようなチート」

「いい! これいい! 」 
「待ってくれ! プラスティ―は充分若いだろ? それに目的のチートとかけ離れている」
「でも…… 」
「かけ離れ過ぎっす」

「民衆を導くんだろ? それがシャーマンの務め」
「分かってる。だけどもったいないなあ…… 」

「パックはどうする? 」
「自分は若返りにも長寿にも興味がありません」

「おい! いいのか? まったくどれだけ欲深い奴らなんだ」
狐はブツブツ文句を言いだした。

第五ジミートもパス。
その後もパスが続く。

狐は怒り出す。

「おい! いい加減にしろ! なぜ選ばない? 」

「だって…… 」
「いまいち決め手に欠けると言うか…… 」
「もっとすごいのがあると思っちまって…… 」

「まったく仕方ない。
これ以上は付き合いきれない。お前らの要望に合わせる。
本当は禁止されているが致し方ない」

「サービスだ。
好きなチートを言え! 」

狐は根負けした。

優柔不断がプラスに働いた。

カンたちの勝利?

「好きなチートを言え! 連れてってやる! 」

「俺は…… 」
「私はね…… 」
「自分はまだ…… 」

「順番だ。一人ずつ言っていけ! 」

「まずは俺から。賢くなりたい。賢者のチートを」
「よし分かった。着いて来い! 」

聖域ジミートを奥へ。
ランクが上位のジミートを集めた地域へ走り出す。

どうやらエリアによってランクやレベルが違うらしい。
最初のジミートは下の方に位置していたようだ。
だからチートもそれなりでしかない。
今度のは極上のチートに違いない。

「よしここだ」

コンコン
コンコン

「我はジミート。我のチートは知能なり。
知能を高め民から尊敬される賢者となれ! 」

「我がチートを欲するか? 」

「はい! お願いします。ジミート様」
「よろしい。では受け取るがよい! 」

狐が補足する。

「いいか。高度なチートは危険や試練が伴う。
その覚悟はあるか? 」

「はい! あります」

「よしではさっそく試練だ」
「まずは服を脱げ! 」

「ええ? 」
「ためらうでない! チートは欲しくないのか? 」
「分かりました」

全てを脱ぎ捨てる。

「きゃあ! 」
プラスティ―が後ろを向いた。

「待て! 下は葉っぱで隠せ! 」
言われた通り大事なところを隠す。

「兄貴! 尊敬します! 」

「バカじゃないの! 」
プラスティ―は着いていけない。

だが彼女にももう間もなく……

「これを食せ! 」
赤いリンゴのような実を差し出す。

「これは? 」
「いいか。この実を十個食うのだ! 」

まったく何が何だか。

無我夢中で頬張る。

リンゴよりも小粒で食べやすい。
ミニリンゴと言ったところか。

腹に溜まることもなくあっと言う間に完食。

もうリンゴはいいや。

試練を乗り越えチートを授かる。

カンは知能が急激にアップした。賢さが身についた。

狐が満足そうに話す。

「よくやった。これでお前も賢者の仲間入りだ。
賢者にふさわしいように日々精進するように!
日頃の言動にも気をつけろ! もう人に頼るな! 」

狐を通し有難いお言葉を頂く。

「さあ次だ! 」

狐が張り切り始めた。

ようやくチートを仲介することに成功した。
カン以上に嬉しいのだろう。

軽やかに駆ける。

「おっと。通り過ぎるところだったぜ」

「女! 次はお前だったな」
「ええ、民衆を導くチートがあればいいんだけど」
「慌てるな。ここがお前の目的の場所だ」

コンコン
コンコン

伝達する。

「我はジミート。我のチートは地図なり。
即ち世界の全てを把握するもの」

「我がチートを欲するか? 」

「地図? 何それ? 」

補足する。

「女よよく聞け! 導くには世界の隅々まで知らなくてはいけない。
その上で村人たちを適切な時期に適切な場所に導くのだ。
シャーマンとしてこの上ない幸せであろう」

「確かにそうなんだけど…… 」
「不満か? 」

「チートが地図って言うのがしっくりこなくて…… 」

「この地図は神々の作成したそれは有難い品物だ。
大変な力が込められている」

「もし要らぬと言うならそれでも構わない」
「もう。要らないなんて一言も。頂戴いたしますよ」

「では地図のチートを授けるとしよう」

巨大なカップを差し出す。

「良いか。これを飲み干せ。さすれば地図のチートを授かることができよう」

「これ? 大丈夫なの? 」
「信頼せよ! 一気に飲み干せ! 」

「本当に本当? 」

プラスティ―はなかなか踏み出せない。
得体の知れない飲み物を一気に飲み干すとあって抵抗があるのだろう。

「自分が代わりに」
「ダメだパック! 邪魔をしてはいけない」
「でも兄貴…… 」

「プラスティ―の問題だ。
「その通り。女早く飲み干さぬか! 」
 
「でも…… どうしよう…… 」

「毒など入ってないわ! 時間がないぞ。
教えてやる。もう変更はできない。
従ってこのチートを得れなければ終わりだ! 」

「分かった! 分かったわよ。飲み干せばいいんでしょう? 」

プラスティ―は意を決する。

「それじゃあ飲むわよ」

目を瞑り、得体の知れない飲み物に口をつける。

「これでチートが…… 」

しかし無情にも時間が迫る。

ターイムアップ。

「ちょっと待って! 」
「誰が待つか! 自分で決めたこと」

「でも…… 」
「言い訳はいい。時間は過ぎたお前は失格だ! 」

「ええ? 」
「それどころかお前はこの場所にふさわしくない立ち去れ! 」
「お願い! フォックスさん」

「今はジミートの代わりとして語っている」

「カン! パック! 」

「おいおい。頼るな自分の責任だろ。もう遅いんだよ! 」

プラスティ―は力なく崩れ落ちる。

「おい。プラスティ―! 大丈夫か?  」

受け止める。そして慰めてやる。

プラスティ―は下を向いたまま無言を通す。

立ち直れるか?

「まあ。最後のチャンスをやらないこともないがな」

狐はいやらしい笑みを浮かべる。

                続く
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