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危険なセミ取り
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先週末息子とセミ取りに。
つき合わされたのだが取り方を知らないから苦労した。
アミと虫かごぐらい自分で用意して欲しいよな。仕方なく虫取りグッズを購入。
「ほらセミさんだぞ。どうだ格好いいだろう? 」
ここまでお膳立てしても自ら取りに行こうとしない我が息子。
気持ち悪いって何だよ? セミはセミだろう?
「どうした? 捕まえたいんだろう? 」
「近づけないで! ぼく虫嫌いなんだ! 」
こうしてなぜか息子の代わりにセミを捕まえ家に戻ってきたのが三日前。
それから不思議な現象に巻き込まれるようになった。
一昨日はただ変な噂が流れただけだが。
金属バットを持った少年が徘徊してるから気をつけろと。
何でも聞いたところによるとおじさんとおばさんを探しているのだとか。
人騒がせもいいところ。真夜中に金属バット持って徘徊する理由が分からない。
何はともあれご近所中の噂。妻も怖いわねえとただ噂を垂れ流すだけ。
本当に見たのか本人に直接問えば近所の奥さんが金属が擦れる音を聞いたとか。
バットを振り下ろす現場に出くわしたんだとか。
でもそれは一瞬で消えたから訳が分からないとあやふやな返答。
昨日は勘違い男の違法取り立て。
「ああん? 早く出んかい! いくら借りてると思ってるんじゃボケが! 」
ガラの悪いチンピラ風の男がピンポンを連打し玄関のドアを叩き続ける暴挙に。
お隣さんも助けるどころか様子見。恐怖の瞬間は続く。
「済みませんが人違いですよ。我が家の平穏を壊さないでくれませんか? 」
「何ねえワレ? ははは…… 済まんのう。最近の若人は厳しくていかんね」
ガラの悪いチンピラが捨て台詞を吐いて去っていく。
こうしてどうにか危機は乗り切った。
「パパ怖いよう」
息子が泣きついて放そうとしない。妻も腰が抜けたと涙ぐむ。
俺だって実際は足が震えて仕方がない。何なんだあいつは?
「しかし迫力あったな。人違いは本当に迷惑だ」
「てっぺい? 」
息子は名刺の名前を何度も繰り返す。最近の新たな遊びだ。
「これはおもちゃじゃないよ。それとセミはもう放してあげようよか」
分かったのかただ首を振る。
「疲れたわね。さあお茶にしましょうか」
嫌なことを忘れるには甘いものがいい。
「これは美味いな。買ったのか? 」
「いえ。祖母の手作り。ホラ寄ったって言ったでしょう?
「それにして本当に美味いなこのおはぎ。甘すぎず何個でも行ける。もう一個!」
「それはダメ! この子がイタズラして…… 辛いでしょう? 最近酷いんだ」
「ははは…… 辛いぞ! 食い物を粗末にするな! 」
「はーい」
「もう甘いんだから。それとやっぱり早く出してあげましょう。煩くて敵わない」
「おいおい風流だろう? この泣き声を聞くと夏を感じるだろう? 」
「どこが? 何だか凄くイライラするの。不安を掻き立てられるのよ」
「ははは…… 大げさだな。でもそうだな一緒に明日にでも」
現在。
「おーいお土産を買ってきたぞ」
「ああパパ。今日は早いんだね。それは? 」
「ケンタのチキン。安かったからついお持ち帰りしたんだ」
「お持ち帰り? 」
そう言ってもうすでに咥えている。
「お持ち帰りだ。ホラ手を洗えっての! ママは? 」
冷める前に食べようと思ったのにな。
「それがさあママってば醤油が切れてるの忘れて飛び出して行っちゃった」
買いに行った? まさかご近所から?
令和の今にそんな昭和みたいな真似しないか。
うん…… チラシ?
「ああそれ見て飛び出していったんだ。タダなんだって」
チラシには地元で作った醤油をタダで差し上げますとなっている。
怪しいがどうも善意らしい。
どうせママのことだから勧誘されてもはっきりいらないと言うだろう。
「それにしても遅いな。よしチキンは後だ。
ママが帰って来るまでにこのセミを帰そう」
「うん。分かった。ママも嫌がってたから」
こうして二人でママを探しつつセミを放しに近くの公園に。
ポツポツ
ポツポツ
小雨が降りだした。
うん気持ちいい。自然のシャワーかな? それにしても今夜は蒸すな。
「よしそろそろ放そうか」
こうしてセミを逃がしてやる。
「あれ二人ともどうしてここに? 」
醤油瓶を持ったママが車から降りて来た。
運転手は渋いおじさん。まさかまさかの不倫。俺よりも随分年だろう?
「実はね…… 」
例の件の話を聞きたいとパトカーに。
エアコンが効いていて快適だったそう。
どうやら誤解だったらしい。醤油瓶を持って不倫するはずないか。
翌日。今度は可愛らしい女の子。
引っ越しの挨拶に来たとご丁寧に。
「気をつけた方がいいですよ。セミを大切にしないと呪われますよ」
後ろに何か隠し持ってる。かばん? まさか金属バット? 斧とか?
「はあ? その話をどこで? 元の場所に戻しましたから平気です」
「嘘だ! 」
「本当ですって」
「嘘だよ! 」
「だから本当だって! しつこいな」
「どうして嘘を吐くのかな…… 」
まずい。イカレタ隣人が引っ越してきた。
「ではこれで」
強引に扉を閉め事なきを得る。
日曜日。
身の回りに降りかかったおかしな出来事はセミの祟りだったのか?
その後は何事もなく平穏に過ぎて行った。
今日は年に一度の地域のお祭り。家族水入らずでお祭りへ。
きゃああ!
会場に悲鳴が響き渡る。
どうやらまだ終わっていなかったらしい。
そして今年も再び惨劇は起こったのだった。
<完>
つき合わされたのだが取り方を知らないから苦労した。
アミと虫かごぐらい自分で用意して欲しいよな。仕方なく虫取りグッズを購入。
「ほらセミさんだぞ。どうだ格好いいだろう? 」
ここまでお膳立てしても自ら取りに行こうとしない我が息子。
気持ち悪いって何だよ? セミはセミだろう?
「どうした? 捕まえたいんだろう? 」
「近づけないで! ぼく虫嫌いなんだ! 」
こうしてなぜか息子の代わりにセミを捕まえ家に戻ってきたのが三日前。
それから不思議な現象に巻き込まれるようになった。
一昨日はただ変な噂が流れただけだが。
金属バットを持った少年が徘徊してるから気をつけろと。
何でも聞いたところによるとおじさんとおばさんを探しているのだとか。
人騒がせもいいところ。真夜中に金属バット持って徘徊する理由が分からない。
何はともあれご近所中の噂。妻も怖いわねえとただ噂を垂れ流すだけ。
本当に見たのか本人に直接問えば近所の奥さんが金属が擦れる音を聞いたとか。
バットを振り下ろす現場に出くわしたんだとか。
でもそれは一瞬で消えたから訳が分からないとあやふやな返答。
昨日は勘違い男の違法取り立て。
「ああん? 早く出んかい! いくら借りてると思ってるんじゃボケが! 」
ガラの悪いチンピラ風の男がピンポンを連打し玄関のドアを叩き続ける暴挙に。
お隣さんも助けるどころか様子見。恐怖の瞬間は続く。
「済みませんが人違いですよ。我が家の平穏を壊さないでくれませんか? 」
「何ねえワレ? ははは…… 済まんのう。最近の若人は厳しくていかんね」
ガラの悪いチンピラが捨て台詞を吐いて去っていく。
こうしてどうにか危機は乗り切った。
「パパ怖いよう」
息子が泣きついて放そうとしない。妻も腰が抜けたと涙ぐむ。
俺だって実際は足が震えて仕方がない。何なんだあいつは?
「しかし迫力あったな。人違いは本当に迷惑だ」
「てっぺい? 」
息子は名刺の名前を何度も繰り返す。最近の新たな遊びだ。
「これはおもちゃじゃないよ。それとセミはもう放してあげようよか」
分かったのかただ首を振る。
「疲れたわね。さあお茶にしましょうか」
嫌なことを忘れるには甘いものがいい。
「これは美味いな。買ったのか? 」
「いえ。祖母の手作り。ホラ寄ったって言ったでしょう?
「それにして本当に美味いなこのおはぎ。甘すぎず何個でも行ける。もう一個!」
「それはダメ! この子がイタズラして…… 辛いでしょう? 最近酷いんだ」
「ははは…… 辛いぞ! 食い物を粗末にするな! 」
「はーい」
「もう甘いんだから。それとやっぱり早く出してあげましょう。煩くて敵わない」
「おいおい風流だろう? この泣き声を聞くと夏を感じるだろう? 」
「どこが? 何だか凄くイライラするの。不安を掻き立てられるのよ」
「ははは…… 大げさだな。でもそうだな一緒に明日にでも」
現在。
「おーいお土産を買ってきたぞ」
「ああパパ。今日は早いんだね。それは? 」
「ケンタのチキン。安かったからついお持ち帰りしたんだ」
「お持ち帰り? 」
そう言ってもうすでに咥えている。
「お持ち帰りだ。ホラ手を洗えっての! ママは? 」
冷める前に食べようと思ったのにな。
「それがさあママってば醤油が切れてるの忘れて飛び出して行っちゃった」
買いに行った? まさかご近所から?
令和の今にそんな昭和みたいな真似しないか。
うん…… チラシ?
「ああそれ見て飛び出していったんだ。タダなんだって」
チラシには地元で作った醤油をタダで差し上げますとなっている。
怪しいがどうも善意らしい。
どうせママのことだから勧誘されてもはっきりいらないと言うだろう。
「それにしても遅いな。よしチキンは後だ。
ママが帰って来るまでにこのセミを帰そう」
「うん。分かった。ママも嫌がってたから」
こうして二人でママを探しつつセミを放しに近くの公園に。
ポツポツ
ポツポツ
小雨が降りだした。
うん気持ちいい。自然のシャワーかな? それにしても今夜は蒸すな。
「よしそろそろ放そうか」
こうしてセミを逃がしてやる。
「あれ二人ともどうしてここに? 」
醤油瓶を持ったママが車から降りて来た。
運転手は渋いおじさん。まさかまさかの不倫。俺よりも随分年だろう?
「実はね…… 」
例の件の話を聞きたいとパトカーに。
エアコンが効いていて快適だったそう。
どうやら誤解だったらしい。醤油瓶を持って不倫するはずないか。
翌日。今度は可愛らしい女の子。
引っ越しの挨拶に来たとご丁寧に。
「気をつけた方がいいですよ。セミを大切にしないと呪われますよ」
後ろに何か隠し持ってる。かばん? まさか金属バット? 斧とか?
「はあ? その話をどこで? 元の場所に戻しましたから平気です」
「嘘だ! 」
「本当ですって」
「嘘だよ! 」
「だから本当だって! しつこいな」
「どうして嘘を吐くのかな…… 」
まずい。イカレタ隣人が引っ越してきた。
「ではこれで」
強引に扉を閉め事なきを得る。
日曜日。
身の回りに降りかかったおかしな出来事はセミの祟りだったのか?
その後は何事もなく平穏に過ぎて行った。
今日は年に一度の地域のお祭り。家族水入らずでお祭りへ。
きゃああ!
会場に悲鳴が響き渡る。
どうやらまだ終わっていなかったらしい。
そして今年も再び惨劇は起こったのだった。
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