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明後日探偵の事件簿 四号室の住人
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明後日探偵が行く。
ついに待望の依頼があった。
今回の依頼人は風変わりなお爺さん。
近所からは頑固者で少々融通が利かずに嫌われている。
おかしなことを言って周りを呆れさせてもいるそう。
「それであなたは高名な探偵だと伺いましたが」
お茶を一口つけて話を始める依頼人。
「いえ私は助手です。探偵は少々遅れておりまして。
必ず来ると思いますのでお待ちください。それでご依頼の内容は? 」
またいないよあの先生たちは。
どうしていつも先に行くと言ってどこかへ消える訳?
ただの助手では相手だって迷惑だろう?
とりあえず先に話を聞くとしよう。
「それが…… 所有しているアパートで変な噂がありまして。
とにかく見てくれませんか? 」
隣接するアパートのオーナらしい。家賃収入だけでも…… 相当な金持ちだな。
築三十年は経過したボロボロのアパート。
建て替えや取り壊しの話もあるが頑として受け入れてない。
ではさっそくお邪魔する。
ドアを開けると異様な雰囲気が漂う。これは間違いなくいるな。
単身世帯用のボロアパート。和室の畳は波を打っていて時代を感じる。
開けっ放しなのかどこからともなく風が。
キッチンは使用されてないせいかきれい。だが冷蔵庫は変な音を立てている。
お風呂は黒ずみとカビだらけ。トイレも似たような惨状。
これが先日引っ越したと言うか失踪した男の部屋。104号室だ。
間取りはどこも同じなのでこれで充分だそう。
「はあ…… それでどのようなご用件でしょうか? 」
もうそろそろお暇したいな。
「実は出ると言うんじゃ。ほれ例の奴が」
「まさか幽霊? 」
「そうそう。日が暮れると出ると噂が立って困っている。どうにかならんか? 」
現在の時刻は午後四時四十四分。うわ…… 見てしまった。
「具体的には噂の真相を確かめてそのからくりを解き明かせと」
「まあそうだな…… 」
どうも爺さんははっきりしない。どうしたと言うのだろう?
午後六時。早めに夕食を済ませ準備万端。逃げる用意も万端。
一時間が過ぎた頃に突然音が。
「ああ…… 先生たちはどちらに? ずっと繋がらないから…… 」
「悪い。つい反対方向に。今からだと間に合わないから今回は一人でお願い」
またかよ? ほぼいつもじゃないか。都内だから大丈夫だと思ったのに。
「ダメですよ。早く来てくださいよ」
「そうも行かないんだ。こっちも事件でな。やはり巻き込まれ型らしい」
「うわちょっと待って…… 」
ダメだ。話も聞かずに切ってしまった。いつものことだから諦めているが。
依頼人は怒るだろうな。
「どうしました? 」
「申し訳ありません。急病で…… 」
「頼りにならん! もういい。あんたに頼むとしよう」
どうやら機嫌を損ねたらしい。当然か。
緊張をほぐすためにトイレへ。
ふう落ち着く。それにしても助手に任せる探偵がどこにいるんだよ?
愚痴ってるとトイレットペーパーが回転し始める。
全部巻き取るとカラカラと音を立てついには芯が飛んで行ってしまう。
ダメだ。これは本物だ。
急いで落ちた紙で尻を拭き出る。
見えてはいけないものが部屋に。
ろくろ首に河童。落ち武者にのっぺらぼうにかまいたちまで。
少々多すぎる気も。
「ははは! 愉快でしょう? 元気なんだこの子たちは」
まるで孫を見て喜ぶお爺さん。常軌を逸している。
もはやトリックとか推理の入る余地はない。探偵の領分を超えている。
もしどうしても解決したければ京極堂を連れて来るしかない。
「あの…… トリックも推理もなく本当にお化けの棲む幽霊アパートでは?
まさかこの化け物たちが見えないってことはありませんよね? 」
ろくろ首が絡みつこうとする。落ち武者が睨みつける。
河童が優雅にきゅうりを平らげ踊っている。
「もちろん見えている。だから困っているんだ。どうにか言い訳できないか? 」
嘘…… お化け騒動のトリックを暴いて犯人をあぶり出すんじゃないのか?
てっきりそれが依頼内容だと思ったが違ったらしい。
「頼むよ。借り手がつかないんだ。変な噂が流れないようしてくれないか」
借り手はつかないがお化けは憑いてると。うーんどうしたらいいのかさっぱり。
「では一つ。それは不可能です。正直が一番。借主にきちんと告知してください。
あなたには告知義務があります。
その上でそれでもいいと言う鈍感な方を募集すればいいんです」
ここはさすがに厳しく言わないといけない。
売買であろうと賃貸であろうと信用が第一。
売主や借主に不当な契約を迫ってはいけない。
善意無過失な債務者を保護する必要がある。
「探偵風情が何をと思ったが確かにそうですな。
ただ立て直しは難しいので幽霊アパートとして貸し出そうかと思います」
「いえ助手ですから…… 」
どうやらオーナーは説得に応じて改心してくれたらしい。
これで一件落着。
半年後。
通称幽霊アパートは人気を博し満室となった。
よかったよかった。
「おめでとう。君の活躍があってこそだよ」
探偵を連れて例のアパートへ。
「そうですかね? 」
「どうだろう…… 中に入ってみないか? 」
「遠慮します! 」
まったく冗談じゃない。誰がこんな本物の幽霊アパートに行くもんか。
「ははは…… 冗談冗談。よし中へ」
「結構です! 」
<完>
ついに待望の依頼があった。
今回の依頼人は風変わりなお爺さん。
近所からは頑固者で少々融通が利かずに嫌われている。
おかしなことを言って周りを呆れさせてもいるそう。
「それであなたは高名な探偵だと伺いましたが」
お茶を一口つけて話を始める依頼人。
「いえ私は助手です。探偵は少々遅れておりまして。
必ず来ると思いますのでお待ちください。それでご依頼の内容は? 」
またいないよあの先生たちは。
どうしていつも先に行くと言ってどこかへ消える訳?
ただの助手では相手だって迷惑だろう?
とりあえず先に話を聞くとしよう。
「それが…… 所有しているアパートで変な噂がありまして。
とにかく見てくれませんか? 」
隣接するアパートのオーナらしい。家賃収入だけでも…… 相当な金持ちだな。
築三十年は経過したボロボロのアパート。
建て替えや取り壊しの話もあるが頑として受け入れてない。
ではさっそくお邪魔する。
ドアを開けると異様な雰囲気が漂う。これは間違いなくいるな。
単身世帯用のボロアパート。和室の畳は波を打っていて時代を感じる。
開けっ放しなのかどこからともなく風が。
キッチンは使用されてないせいかきれい。だが冷蔵庫は変な音を立てている。
お風呂は黒ずみとカビだらけ。トイレも似たような惨状。
これが先日引っ越したと言うか失踪した男の部屋。104号室だ。
間取りはどこも同じなのでこれで充分だそう。
「はあ…… それでどのようなご用件でしょうか? 」
もうそろそろお暇したいな。
「実は出ると言うんじゃ。ほれ例の奴が」
「まさか幽霊? 」
「そうそう。日が暮れると出ると噂が立って困っている。どうにかならんか? 」
現在の時刻は午後四時四十四分。うわ…… 見てしまった。
「具体的には噂の真相を確かめてそのからくりを解き明かせと」
「まあそうだな…… 」
どうも爺さんははっきりしない。どうしたと言うのだろう?
午後六時。早めに夕食を済ませ準備万端。逃げる用意も万端。
一時間が過ぎた頃に突然音が。
「ああ…… 先生たちはどちらに? ずっと繋がらないから…… 」
「悪い。つい反対方向に。今からだと間に合わないから今回は一人でお願い」
またかよ? ほぼいつもじゃないか。都内だから大丈夫だと思ったのに。
「ダメですよ。早く来てくださいよ」
「そうも行かないんだ。こっちも事件でな。やはり巻き込まれ型らしい」
「うわちょっと待って…… 」
ダメだ。話も聞かずに切ってしまった。いつものことだから諦めているが。
依頼人は怒るだろうな。
「どうしました? 」
「申し訳ありません。急病で…… 」
「頼りにならん! もういい。あんたに頼むとしよう」
どうやら機嫌を損ねたらしい。当然か。
緊張をほぐすためにトイレへ。
ふう落ち着く。それにしても助手に任せる探偵がどこにいるんだよ?
愚痴ってるとトイレットペーパーが回転し始める。
全部巻き取るとカラカラと音を立てついには芯が飛んで行ってしまう。
ダメだ。これは本物だ。
急いで落ちた紙で尻を拭き出る。
見えてはいけないものが部屋に。
ろくろ首に河童。落ち武者にのっぺらぼうにかまいたちまで。
少々多すぎる気も。
「ははは! 愉快でしょう? 元気なんだこの子たちは」
まるで孫を見て喜ぶお爺さん。常軌を逸している。
もはやトリックとか推理の入る余地はない。探偵の領分を超えている。
もしどうしても解決したければ京極堂を連れて来るしかない。
「あの…… トリックも推理もなく本当にお化けの棲む幽霊アパートでは?
まさかこの化け物たちが見えないってことはありませんよね? 」
ろくろ首が絡みつこうとする。落ち武者が睨みつける。
河童が優雅にきゅうりを平らげ踊っている。
「もちろん見えている。だから困っているんだ。どうにか言い訳できないか? 」
嘘…… お化け騒動のトリックを暴いて犯人をあぶり出すんじゃないのか?
てっきりそれが依頼内容だと思ったが違ったらしい。
「頼むよ。借り手がつかないんだ。変な噂が流れないようしてくれないか」
借り手はつかないがお化けは憑いてると。うーんどうしたらいいのかさっぱり。
「では一つ。それは不可能です。正直が一番。借主にきちんと告知してください。
あなたには告知義務があります。
その上でそれでもいいと言う鈍感な方を募集すればいいんです」
ここはさすがに厳しく言わないといけない。
売買であろうと賃貸であろうと信用が第一。
売主や借主に不当な契約を迫ってはいけない。
善意無過失な債務者を保護する必要がある。
「探偵風情が何をと思ったが確かにそうですな。
ただ立て直しは難しいので幽霊アパートとして貸し出そうかと思います」
「いえ助手ですから…… 」
どうやらオーナーは説得に応じて改心してくれたらしい。
これで一件落着。
半年後。
通称幽霊アパートは人気を博し満室となった。
よかったよかった。
「おめでとう。君の活躍があってこそだよ」
探偵を連れて例のアパートへ。
「そうですかね? 」
「どうだろう…… 中に入ってみないか? 」
「遠慮します! 」
まったく冗談じゃない。誰がこんな本物の幽霊アパートに行くもんか。
「ははは…… 冗談冗談。よし中へ」
「結構です! 」
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