世界は100人でできている カテゴライズシンドローム 絶望と希望の交差する場所

二廻歩

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緑子 その正体は?

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はあはあ
はあはあ
ご主人様に報告に向かう。
前方に二人の影。

「おいどうしたお前ら? そんなに慌てて」 
「あの実はですね…… 」
「待て待て。客人が来ておる後にせんか! 」
余程の人物なのだろうか?
いつも誰に対しても威圧的な爺だがビクビクしている。
丁寧な対応。
「失礼しました。また後で」
「いいよ。君たちにも話を聞きたい」
「はい? 」
「それで私どもにどのようなご用件で? まさか…… 」
「いえいえ。ご心配なく。ただ人を探しておりまして。ご協力願います」
ご主人様はしきりに汗を拭いている。
陰で悪さをしているとの噂は本当だったのかもしれない。
「そうでしたか」
安堵のため息を吐く。
「おい! お前らも挨拶せんか! 」
「あの…… 」

謎の訪問客。
男は懐から妙なものを出した。
「私はこう言う者だ」
「警察? 」
「ああ。今指名手配中の凶悪犯を追っている。もちろん氏名も顔もまだ分かっていないが…… 」
「これを見てくれないか」
紙を取り出す。そこには人の顔が描かれていた。
はっきりとは分からないが奴に似ている。いや、間違いない奴だ!
「ああ! 」
「どうした? 見覚えがあるのか? 」
「ええっと…… 」
「あいつだよ! あいつ! 」
「こら! 」
「だって…… 兄ちゃん…… 」
「君たち。知っていることがあったら話してくれ。
ここの者たちが危ない」
「いいかい。この男はいや断定はできないがこの人物は我々の包囲網を突破し逃亡している。早く捕まえなければ。お願いだ協力してくれ。時間がない! 」
「今夜またことを起こすかもしれない。これ以上罪を重ねさせるわけにはいかない」
「先回りして確保せねば」
男はまくし立てる。

「どうする兄ちゃん? 」
「俺は何も…… 」
「馬鹿野郎! しっかりお話しせんか! 話したら待遇改善してやるわ! 」
「本当? 」
「おい騙されるな! 」
「嘘はつかん! 儂だって狙われるかもしれん」
「うーん」
「特別に金だって弾む」
「へい。分かりやした! 」
逃亡者に傾きかけていた情が戻される。
やはり人は現金なのだ。
犯罪者に同情は禁物。詳しく話すことに。

「そうか分かったよ。協力に感謝する」
全てを話した。
「今はもういないんだね? 」
「ええ。食って寝て行っちまいました」
「どこに行ったか心当たりはないかい? 」
「いえ特には…… 」
「そうだ夜祭があるって教えたよ。兄ちゃんが」
「おい。俺のせいかよ」
「だって…… 」
「喧嘩はよさんか! こいつらが本当に申し訳ありません」 
「いえいえ。貴重な情報助かります」
「もう他に無かったな? お前ら! 」
「ええ。もうこれ以上」
「ではこれで。また何かありましたらご協力ください」
そう言うと男は駆けて行った。
奴が捕まるのも時間の問題。
罪を犯した者はその罪の重さから決して逃れられない。
ダメなものはダメ。
しかし……
俺たちは正しかったんだろうか?
本当に正しかったんだろうか?

夜祭。
人。人。人。
村では考えられないような人の多さに感動。でももう十分だ。
吐き気がする。
慣れない人混みに四苦八苦。

「ちょっと三郎さん」
緑子は不機嫌になっている。
「どうしたの? さっきから元気が無いよ」
「あなたが! 」 
「俺が? 」
「さっきからチラチラと他の女を見てるんですもの」
「誤解だよ。別にそんなつもりはないよ。
ただほら俺、田舎もんだろ。つい見とれちゃうんだ」
「やっぱり見てるじゃない! 」
「いや違うって! 待ってよ! 」
甘いもの好きの彼女の為に綿あめ、リンゴ飴にチョコバナナ。それからかき氷を買ってご機嫌をとる。
「もうお腹一杯」
食べ残した余りを代わりに片付けてやる。
うう……
若干の腹痛。
大丈夫。じっとしていれば問題ない。
「どうしたの顔色が悪いようだけど」
「ははは…… 何でもない」
せっかくのぞみと何か食おうと思っていたがもう無理だろうな。
それにしてものぞみの奴ちゃんと旅館に戻っているか?
頭の片隅には残しておかなくては。すまんのぞみ。
「のぞみって誰よ! 」
無意識につぶやいていたようだ。これはまずい。下手な言い訳をせずに話すか。
「村の子だよ」
「私とどっちが大事なのよ! 」
「いや男の子だし。比べるものでもないよ」
「冷静ね。でもそれは男の子がいいって意味? 」
「馬鹿な! 俺は君しか…… 」
うふふ……

ふと視線が泳ぐ。気づかれたか?
男女五人組が目に入った。
一人は変な笑い方で果てしなくしゃべっている少女。
隣に控え目に頷いている少女。参加者なのか一人だけ正装だ。
その隣には男。後ろ手に何かを持っているがここからではよく見えない。
その男に抱き着いて歩いている帽子をかぶったかわいらしい女の子。
後ろからその姿を妬ましそうに睨む少女。
計五人の団体さん。
地元の子だろうか。
「もうちょっと! 聞いてるの? 」
「ううん? 」
「また見てたでしょう! まさかあんな子供に興味があるの? 」
「まさか。少し気になったんでね」
「やっぱり見てた! 普通そこは否定するところよ! 」
「良いじゃないか。少しぐらい」
「もう知らない! 私、手を洗ってくる」
ベタベタの手が気になるのかはたまた本当に愛想が尽きたのか?
「待ってくれよ緑子さん! 」
振り返ることもなく行ってしまった。
怒らせてしまったか?
しょうがない。この辺りで暇をつぶすか。
まったくこれだから…… 
ふう……
ため息を吐く。
俺が悪いのかい?
緑子さん……

                           <続>

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