97 / 104
フラジールからの手紙
しおりを挟む
再びマウントシーへ。
「ただいまブリリアント。待っていてくれたのか? 」
「当たり前じゃないですか大河さん。でも帰ってこないんじゃないかと…… 」
主人の帰りを待つ子犬のように尻尾を振る。
「馬鹿な…… 俺を信じろ」
つい抱きしめたくなるが堪える。
「私…… いえ何でもありません」
「済まないブリリアント。心配かけたな」
寂しそうな表情につい堪えきれず抱きしめる。
「大河さん…… 私まだ…… 」
「済まん。つい…… 」
気まずい雰囲気。
「助手だから…… 助手だから待っていてくれたのか? 」
「はい」
無邪気だ。ただ無理に明るく振る舞ってる気がして辛い。
「それで何か分かったか? 」
一応は成果を聞いてみる。
これが俺とブリリアントの日常。
こうすることで落ち着くようだ。それは俺も変わらない。
「そうですね。館内ではこれと言って特に動きは…… 」
引っ掛かる言い方だが慎重なのだろう。彼女らしい。
もう脅威は去った。それは間違いない。
元々裏切者だったフラジールももういない。
元凶の翼も闇の中。
あそこに落ちては助からない。
奇跡的に助かったとしても守り神の住処。
生き残る確率は限りなくゼロに近い。
俺たちは勝利したんだ。
マウントシーを魔の手から守ったのだ。
もちろん俺たちは非力で勝機は無かった。
守り神が味方しなければどうなっていたか……
こうしてマウントシーに再び平穏が訪れた。
今更何があると言うのか。
フラジールの件は残念だがそれはまた別問題。
「もう調べる必要もないしな…… 」
「いえ大河さん。それがまだ…… 不穏な動きがあります」
ブリリアントの情報は正確。だとすればまたこの地に危機が迫っていることになる。
だが果たしてそんなこと有り得るのか?
明日はもう祭り本番。これ以上のゴタゴタがあってたまるか。
「何だって…… それは本当か? 」
「副村長反対派によるマウントシー襲撃計画をキャッチしました。
情報によると今夜。ですから早く大河さんに知らせようと…… 」
「今夜? まさか冗談だろ」
「はいもう間もなくかと。とにかくお伝えしなければと帰りを待っていた次第です。
本当にもう時間がありません。すぐにでも準備願います」
「一応確認するが事実なのか? 」
「はい、残念ながら確かな情報です。何と言っても反対派の一人から聞いた話。
これ以上ない情報。信憑性はかなりのものかと」
「うん? 聞いたってどういうことだ」
「実はハッピー先生に相談に来たんですよ。それをちょっと耳にしまして」
罪の意識からか恥ずかしそうに下を向く。
「ああ盗み聞きね。まったくお前って奴は…… 俺にはするなよな」
「はい」
元気に答えるが守る気はさらさらないな。
「そうだハッピー先生が…… 何でも至急話しておきたいことがあるそうです」
「分かった。他の者は? 」
少女たちが気がかりだ。
ブリリアントアは意外にもタフ。
今回だって冷静に情報収集をしている。
特に心配なのはエレン。まだ立ち直れてない気がする。
「やはり気になりますか。もう皆さん寝てしまいましたよ」
遅すぎたか。まあ今日は疲れただろうからゆっくり眠るといいさ。
明日は祭り本番。さすがに出席しない訳にはいかないだろう。
俺も早くゆっくりしたい。残念ながら出来そうにないが。
「そうか。ご苦労だったなブリリアント」
「ああ待ってください。大河さんから預かっていた手紙をお返ししないと」
慌てた様子のブリリアント。
「手紙って…… フラジールのか? 気が重いな。代わりに読んでくれないか」
「はい。では会議室に行きましょう」
気が乗らないがじっくり聞くことに。
「いいか感情を込めずに淡々と読んでくれ」
注文を付ける。
「はあ…… 」
大河へ。
許してほしい。
もうそれだけしかありません。
許してほしい。
あなたを利用したことを。
許してほしい。
あなたを苦しめたことを。
許してほしい。
皆に嘘をついたことを。
許してほしい。
ハッピー先生を騙していたことを。
許してほしい。
ブリリアント、シンディー、ドルチェ、エレンにアリアを裏切り続けたことを。
大河。あなたとの関係はあの時証明されたと思います。
二人が愛し合った事実は変わらない。
たとえあなたにその気がなかったとしても私は嬉しかった。
それだけで本当に本当に幸せでした。
最後に私の息子のユー君を頼みます。
マウントシーに平和と希望を。
あなたの岬アリアより。
前野フラジール。
「アリア…… 」
「大河さん? 」
「済まない。フラジール…… 」
「大河さん。大丈夫ですか大河さん? 」
「ああ…… 行くぞ」
「まさか…… どこへ? 」
「決戦の舞台へ」
「はい」
こうして最後の戦いへ。
続く
「ただいまブリリアント。待っていてくれたのか? 」
「当たり前じゃないですか大河さん。でも帰ってこないんじゃないかと…… 」
主人の帰りを待つ子犬のように尻尾を振る。
「馬鹿な…… 俺を信じろ」
つい抱きしめたくなるが堪える。
「私…… いえ何でもありません」
「済まないブリリアント。心配かけたな」
寂しそうな表情につい堪えきれず抱きしめる。
「大河さん…… 私まだ…… 」
「済まん。つい…… 」
気まずい雰囲気。
「助手だから…… 助手だから待っていてくれたのか? 」
「はい」
無邪気だ。ただ無理に明るく振る舞ってる気がして辛い。
「それで何か分かったか? 」
一応は成果を聞いてみる。
これが俺とブリリアントの日常。
こうすることで落ち着くようだ。それは俺も変わらない。
「そうですね。館内ではこれと言って特に動きは…… 」
引っ掛かる言い方だが慎重なのだろう。彼女らしい。
もう脅威は去った。それは間違いない。
元々裏切者だったフラジールももういない。
元凶の翼も闇の中。
あそこに落ちては助からない。
奇跡的に助かったとしても守り神の住処。
生き残る確率は限りなくゼロに近い。
俺たちは勝利したんだ。
マウントシーを魔の手から守ったのだ。
もちろん俺たちは非力で勝機は無かった。
守り神が味方しなければどうなっていたか……
こうしてマウントシーに再び平穏が訪れた。
今更何があると言うのか。
フラジールの件は残念だがそれはまた別問題。
「もう調べる必要もないしな…… 」
「いえ大河さん。それがまだ…… 不穏な動きがあります」
ブリリアントの情報は正確。だとすればまたこの地に危機が迫っていることになる。
だが果たしてそんなこと有り得るのか?
明日はもう祭り本番。これ以上のゴタゴタがあってたまるか。
「何だって…… それは本当か? 」
「副村長反対派によるマウントシー襲撃計画をキャッチしました。
情報によると今夜。ですから早く大河さんに知らせようと…… 」
「今夜? まさか冗談だろ」
「はいもう間もなくかと。とにかくお伝えしなければと帰りを待っていた次第です。
本当にもう時間がありません。すぐにでも準備願います」
「一応確認するが事実なのか? 」
「はい、残念ながら確かな情報です。何と言っても反対派の一人から聞いた話。
これ以上ない情報。信憑性はかなりのものかと」
「うん? 聞いたってどういうことだ」
「実はハッピー先生に相談に来たんですよ。それをちょっと耳にしまして」
罪の意識からか恥ずかしそうに下を向く。
「ああ盗み聞きね。まったくお前って奴は…… 俺にはするなよな」
「はい」
元気に答えるが守る気はさらさらないな。
「そうだハッピー先生が…… 何でも至急話しておきたいことがあるそうです」
「分かった。他の者は? 」
少女たちが気がかりだ。
ブリリアントアは意外にもタフ。
今回だって冷静に情報収集をしている。
特に心配なのはエレン。まだ立ち直れてない気がする。
「やはり気になりますか。もう皆さん寝てしまいましたよ」
遅すぎたか。まあ今日は疲れただろうからゆっくり眠るといいさ。
明日は祭り本番。さすがに出席しない訳にはいかないだろう。
俺も早くゆっくりしたい。残念ながら出来そうにないが。
「そうか。ご苦労だったなブリリアント」
「ああ待ってください。大河さんから預かっていた手紙をお返ししないと」
慌てた様子のブリリアント。
「手紙って…… フラジールのか? 気が重いな。代わりに読んでくれないか」
「はい。では会議室に行きましょう」
気が乗らないがじっくり聞くことに。
「いいか感情を込めずに淡々と読んでくれ」
注文を付ける。
「はあ…… 」
大河へ。
許してほしい。
もうそれだけしかありません。
許してほしい。
あなたを利用したことを。
許してほしい。
あなたを苦しめたことを。
許してほしい。
皆に嘘をついたことを。
許してほしい。
ハッピー先生を騙していたことを。
許してほしい。
ブリリアント、シンディー、ドルチェ、エレンにアリアを裏切り続けたことを。
大河。あなたとの関係はあの時証明されたと思います。
二人が愛し合った事実は変わらない。
たとえあなたにその気がなかったとしても私は嬉しかった。
それだけで本当に本当に幸せでした。
最後に私の息子のユー君を頼みます。
マウントシーに平和と希望を。
あなたの岬アリアより。
前野フラジール。
「アリア…… 」
「大河さん? 」
「済まない。フラジール…… 」
「大河さん。大丈夫ですか大河さん? 」
「ああ…… 行くぞ」
「まさか…… どこへ? 」
「決戦の舞台へ」
「はい」
こうして最後の戦いへ。
続く
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる