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選べ-3
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「あれ、言ってなかったっけ?私、ここにお金を盗みにきたのよ?」
「……え?ど、どういうこと?」
「お前、ここの職員じゃないのか!?」
「ええ。職員じゃないわ。この服だって偽物よ。」
「じゃ、じゃあお前一体何者なの?」
「……どうやら、改めて自己紹介したほうが良さそうね。」
アリスは立ち上がり、胸を張ってこう言った。
「私はアリス!……人々を苦しめる悪しきものどもからまるで鮮やかな蝶が舞うような華麗な手口で金を盗み取る、気高き怪盗……怪盗アリスよ!」
「は、はぁ……。」
な、なんだコイツ。か、怪盗だって?
動揺しているアキバを取り置いて、アリスは得意げに話す。
「怪盗アリスよ!アリス。あなたも名前ぐらいは聞いたことがあるんじゃない?」
「え、いや、ないけど……。」
その瞬間、アリスの動きがピタッ、と止まった。
…………コォ~というエアコンの音が静かに響く。…ああ、この暖かい風とともにこの固まった空気を流してくれないだろうか……。
「ま、まぁ、それはさておき!」
パン!と手を叩き、アリスがやけに明るい空気で喋り始めた。気のせいか、そんな彼女の目が少しウルウルしている気がした。……適当に話合わせたほうがよかったかな。
「と、とりあえず、私はここに仕事をしにきたのよ!」
「仕事って、盗み?」
「そう!目当てはここの運営資金よ。各方面の有力者たちがデスゲームの運営のためにこぞって献金した莫大な金!それがここにあるの!」
「え?でもそういうのって仮想通貨とかでやるんじゃないのか?なんかネットで見たことあるぞ。仮想通貨だったら銀行口座に入ってるわけだから、盗むもなにもできなくないか?」
彼女は俺の素朴な疑問に対し、チッチッチ、と言って指を振る。
「仮想通貨だなんて古いわ。最近は違うのよ。『前は』アキバが言ったみたいに、仮想通貨で取引してたんだけど、逆に仮想通貨での裏取引が横行しすぎて、規制が厳しくなっちゃったのよ。だから、今は逆に現金の方が抜け目ってわけ。あぁ~、全く、これだから素人は。」
アリスはアキバを見下ろし、これまでにないぐらいの嬉しそうな声で饒舌に喋っている。
コイツ、ここぞとばかりに裏社会マウントをとってきたな……。さっきはあんなにシュンとしてた癖に。態度が明らかに露骨すぎる……というか普通にイラァッ、とくるな。
アキバは今にも溢れんばかりの怒りを喉あたりで堰き止め、少しアリスを睨みながら話を逸らす。
「ここに莫大な現金があることはわかった。で、それが今回の話となんの関係があるんだ?」
「よくぞ聞いてくれた!そう、さっき言った通り、私は運営資金を盗みたいのよ。そして、身分を偽装したりとか、いろいろと裏工作をして、ようやく島に上陸した。しかし!そこで奴らの邪魔が入った!」
な、なんか説明に芝居が入ってきたな……。聞いてるのがだるいけど、またしょげられるとめんどくさいから放っとこ。
「DEDの奴らの襲撃のせいで私の計画は全てパァになってしまった……。ああ、嘆かわしいっ、なんと嘆かわしいことかっ。この崇高な目的を持った私の邪魔をするなど、あってはならないというのに……」
……そもそも『人の金盗む』っていう目的のどこが崇高なんだよ。
「そして、さらに私はこの使えない男とともに逃げた先でデスゲームをする羽目になってしまった……。」
なっ、使えない男だと………。いや、乗ったら負けだ、抑えよう。と言うか早くコイツの説明終わってくれないかな。
「しかしっ!ここでなんと!私は死の運命を乗り越え、生き延びることに成功したのだ!」
「うん、それで?」
「なんかノリ悪いわね……。まあいいわ。」
アリスは少しトーンを落として話し続ける。
「しかも、デスゲームの運営が制圧されたってことは、今この島にあるお金は無防備な状態のはず。DEDがお金を見張っていたとしても、おそらく警備も少ないし、運営から奪取するよりははるかに楽だわ。つまり!これは大きなチャンスなのよ!こんなチャンス、逃すわけないでしょ!」
「は、はぁ…‥なるほど。」
俺はアリスに押され気味になりながら返事をする。
「それに、今のタイミングを逃したらもうこのお金を盗むことはできなくなるわ。チャンスは今しかないの!」
「……なるほど、お前が金を狙っていることはよくわかったよ。」
「そう、ならよかったわ。」
「でも、俺はやらないぜ。」
「……え?」
「そりゃそうだろ。誰が好き好んでリスクを取るんだよ。俺は脱出できればそれでいい。」
「え、ちょっと、はぁ?本気で言ってるの?」
「当たり前だろ!って言うかなんで逆に俺がその話に乗ると思ったんだよ。」
アキバの思いもよらない態度に動揺したアリスは、
「ぐぬぬぬ……。」
と言いながら目を閉じて少し前のめりで腕を組む。そして、
「……も、もちろんお金は山分けするわよ。」
「金の問題じゃねぇ。」
「前金あげる!」
「いらねぇ。」
「好きなもの買ってあげる!」
「だからいらん!」
「じゃあ、協力してくれたら私が願いをなんでも一つ叶えてしんぜよう!」
「な、なんでも………?」
一瞬アキバの目が輝いた。だがアキバの理性がその欲を食い止める。
「い、いや、命には変えられねぇ!やっぱりダメだ!」
「し、しぶとい……。」
「ふん!この俺様のビビり度を舐めるな!ハイリスクハイリターンなんかより少しでも生存確率の高い方で俺は行くぜ!」
「せ、生存率の高い方、ね……。なるほど……」
そう言うと、アリスは黙り込んでしまった。
ついに万策尽きたのだろうか。まあいい。もうこの女と俺は関係ないからな。
「じゃ、そういうことで俺はこの話降りるわ。なんだかんだ今までありがとうな。俺は一人で安全に脱出させてもらう。」
といい、アキバは立ち上がった。その時、
「あら、どうやって逃げるのかしら?」
というアリスの問いを耳にし、アキバはピタッ、と体を止めた。
「ここからの脱出ルートは知ってるの?施設から出れたとして、一人で本土に戻れるの?ここは本土からそこそこ離れた『島』よ?」
「そ、それは……。」
「そもそもこの部屋から出て生き残れるかしらね?相手は特殊部隊よ?」
「う、うぐ……。」
アキバはなにも言い返せずにアリスを見る。
「だ、だったら投降するまでだ。」
「投降が認められるとでも?言ったでしょ?あいつら標的に対しては血も涙もない連中よ?」
「でも、だからといって金なんかのためにデカいリスクを負うわけには……。」
「あら、この話、あなたにとってもメリットあるものだと思うのだけれど。」
「な、なんだと?」
「……え?ど、どういうこと?」
「お前、ここの職員じゃないのか!?」
「ええ。職員じゃないわ。この服だって偽物よ。」
「じゃ、じゃあお前一体何者なの?」
「……どうやら、改めて自己紹介したほうが良さそうね。」
アリスは立ち上がり、胸を張ってこう言った。
「私はアリス!……人々を苦しめる悪しきものどもからまるで鮮やかな蝶が舞うような華麗な手口で金を盗み取る、気高き怪盗……怪盗アリスよ!」
「は、はぁ……。」
な、なんだコイツ。か、怪盗だって?
動揺しているアキバを取り置いて、アリスは得意げに話す。
「怪盗アリスよ!アリス。あなたも名前ぐらいは聞いたことがあるんじゃない?」
「え、いや、ないけど……。」
その瞬間、アリスの動きがピタッ、と止まった。
…………コォ~というエアコンの音が静かに響く。…ああ、この暖かい風とともにこの固まった空気を流してくれないだろうか……。
「ま、まぁ、それはさておき!」
パン!と手を叩き、アリスがやけに明るい空気で喋り始めた。気のせいか、そんな彼女の目が少しウルウルしている気がした。……適当に話合わせたほうがよかったかな。
「と、とりあえず、私はここに仕事をしにきたのよ!」
「仕事って、盗み?」
「そう!目当てはここの運営資金よ。各方面の有力者たちがデスゲームの運営のためにこぞって献金した莫大な金!それがここにあるの!」
「え?でもそういうのって仮想通貨とかでやるんじゃないのか?なんかネットで見たことあるぞ。仮想通貨だったら銀行口座に入ってるわけだから、盗むもなにもできなくないか?」
彼女は俺の素朴な疑問に対し、チッチッチ、と言って指を振る。
「仮想通貨だなんて古いわ。最近は違うのよ。『前は』アキバが言ったみたいに、仮想通貨で取引してたんだけど、逆に仮想通貨での裏取引が横行しすぎて、規制が厳しくなっちゃったのよ。だから、今は逆に現金の方が抜け目ってわけ。あぁ~、全く、これだから素人は。」
アリスはアキバを見下ろし、これまでにないぐらいの嬉しそうな声で饒舌に喋っている。
コイツ、ここぞとばかりに裏社会マウントをとってきたな……。さっきはあんなにシュンとしてた癖に。態度が明らかに露骨すぎる……というか普通にイラァッ、とくるな。
アキバは今にも溢れんばかりの怒りを喉あたりで堰き止め、少しアリスを睨みながら話を逸らす。
「ここに莫大な現金があることはわかった。で、それが今回の話となんの関係があるんだ?」
「よくぞ聞いてくれた!そう、さっき言った通り、私は運営資金を盗みたいのよ。そして、身分を偽装したりとか、いろいろと裏工作をして、ようやく島に上陸した。しかし!そこで奴らの邪魔が入った!」
な、なんか説明に芝居が入ってきたな……。聞いてるのがだるいけど、またしょげられるとめんどくさいから放っとこ。
「DEDの奴らの襲撃のせいで私の計画は全てパァになってしまった……。ああ、嘆かわしいっ、なんと嘆かわしいことかっ。この崇高な目的を持った私の邪魔をするなど、あってはならないというのに……」
……そもそも『人の金盗む』っていう目的のどこが崇高なんだよ。
「そして、さらに私はこの使えない男とともに逃げた先でデスゲームをする羽目になってしまった……。」
なっ、使えない男だと………。いや、乗ったら負けだ、抑えよう。と言うか早くコイツの説明終わってくれないかな。
「しかしっ!ここでなんと!私は死の運命を乗り越え、生き延びることに成功したのだ!」
「うん、それで?」
「なんかノリ悪いわね……。まあいいわ。」
アリスは少しトーンを落として話し続ける。
「しかも、デスゲームの運営が制圧されたってことは、今この島にあるお金は無防備な状態のはず。DEDがお金を見張っていたとしても、おそらく警備も少ないし、運営から奪取するよりははるかに楽だわ。つまり!これは大きなチャンスなのよ!こんなチャンス、逃すわけないでしょ!」
「は、はぁ…‥なるほど。」
俺はアリスに押され気味になりながら返事をする。
「それに、今のタイミングを逃したらもうこのお金を盗むことはできなくなるわ。チャンスは今しかないの!」
「……なるほど、お前が金を狙っていることはよくわかったよ。」
「そう、ならよかったわ。」
「でも、俺はやらないぜ。」
「……え?」
「そりゃそうだろ。誰が好き好んでリスクを取るんだよ。俺は脱出できればそれでいい。」
「え、ちょっと、はぁ?本気で言ってるの?」
「当たり前だろ!って言うかなんで逆に俺がその話に乗ると思ったんだよ。」
アキバの思いもよらない態度に動揺したアリスは、
「ぐぬぬぬ……。」
と言いながら目を閉じて少し前のめりで腕を組む。そして、
「……も、もちろんお金は山分けするわよ。」
「金の問題じゃねぇ。」
「前金あげる!」
「いらねぇ。」
「好きなもの買ってあげる!」
「だからいらん!」
「じゃあ、協力してくれたら私が願いをなんでも一つ叶えてしんぜよう!」
「な、なんでも………?」
一瞬アキバの目が輝いた。だがアキバの理性がその欲を食い止める。
「い、いや、命には変えられねぇ!やっぱりダメだ!」
「し、しぶとい……。」
「ふん!この俺様のビビり度を舐めるな!ハイリスクハイリターンなんかより少しでも生存確率の高い方で俺は行くぜ!」
「せ、生存率の高い方、ね……。なるほど……」
そう言うと、アリスは黙り込んでしまった。
ついに万策尽きたのだろうか。まあいい。もうこの女と俺は関係ないからな。
「じゃ、そういうことで俺はこの話降りるわ。なんだかんだ今までありがとうな。俺は一人で安全に脱出させてもらう。」
といい、アキバは立ち上がった。その時、
「あら、どうやって逃げるのかしら?」
というアリスの問いを耳にし、アキバはピタッ、と体を止めた。
「ここからの脱出ルートは知ってるの?施設から出れたとして、一人で本土に戻れるの?ここは本土からそこそこ離れた『島』よ?」
「そ、それは……。」
「そもそもこの部屋から出て生き残れるかしらね?相手は特殊部隊よ?」
「う、うぐ……。」
アキバはなにも言い返せずにアリスを見る。
「だ、だったら投降するまでだ。」
「投降が認められるとでも?言ったでしょ?あいつら標的に対しては血も涙もない連中よ?」
「でも、だからといって金なんかのためにデカいリスクを負うわけには……。」
「あら、この話、あなたにとってもメリットあるものだと思うのだけれど。」
「な、なんだと?」
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