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19話 飛獣

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「さあ、そろそろ魔法研究所へ向かおう」

アークはそう言って、踵を返した…

まさにその時!

「あっ‼︎」

と、何人かの生徒たちが空を指差して青ざめた。

何事かとそちらの方を全員振り向くと、

「あれは…⁈…まさか飛獣⁉︎

しかもかなり大きい‼︎」

「こっちに向かって来てるぞ‼︎ 早く逃げろ‼︎」

「キャー!!」

生徒たちは恐怖の中、悲鳴を上げながら散り散りに逃げ始めた。

この国で飛獣は今まで一度も出たことはない。

資料で学ぶだけで、この国では陸上に現れる魔物の討伐しかしていなかった。

そのため、下の魔道士たちは飛獣の存在に気づいていない。

山二つを覆うほどの巨大なその飛獣が飛ぶ方向は、王都の方角を向いている。

このまま取り逃せば大変なことになると思ったアークは、覚悟を決めた目になる。

「フェリス、…やれるか?」

「はい、大丈夫だと思います」

2人の王子は鋭い目で飛獣を見ながらも、冷静に判断した。

「エレナ!マーガレット!離れるな!俺たちが何とかする!」

アークは、飛獣から目を離さないよう、2人にそう叫ぶと、

「は、はいっ」

と、2人は同時に返事をし、固唾を飲んで見守った。

アークはエレナとマーガレットに聞こえないよう、静かにフェリスに声をかける。

「フェリス…あれ、レベル5だよな?見た事ないから多分だけど…」

「ええ…恐らく、そうでしょうね」

フェリスはここに飛獣がいることに疑問を覚えながらも、冷静に答えた。

「じゃあ、お互い全力だな?

俺が雷で撃ち落とすから、電気を帯びているうちにお前の水か氷で頼む」

「わかりました」

「よし、じゃあ、いくぞ!」

アークは目を閉じて、祈るように上を見上げた。

すると、空が急に真っ暗になり、ビカビカと空で電流がぶつかり始める。

飛獣の真上が真っ暗になった時、

ドオオオオオオン

と地面を割るような音を鳴り響かせながら、
巨大な稲妻の柱が飛獣の上に落ち、

莫大な電流の衝撃を受けて意識を失った飛獣が、真っ逆さまに落ち始めた。

あちこちから生徒の叫び声が聞こえ、

下の魔道士も音に気付いて、呆気にとられながらこちらを見ている。

落ちながらもまだ息はありそうな飛獣を、

フェリスが手の先から噴出させた大きな水の塊の中に閉じ込め、

未だ電流が全身を包む飛獣を感電させながら、ゆっくりと下に降ろす。

降ろした頃には息絶えた飛獣を、フェリスは氷の中に閉じ込めると、魔道士にあとは頼むと言うように、手を振って合図をした。

魔道士たちは王子たちに礼をし、飛獣を受け取ると、研究所へ運ぶ準備をした。

「ふうっ、何とかなったな。かなり魔力は使い果たしたが、とりあえずみんなが無事で何よりだ」

と、アークはほっとした。

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