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32話 優しい嘘
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——コンコン
……
——コンコン
……
学園寮のマーガレットの部屋の扉を何度ノックしても返事がないので、居るかどうかわからないが、エレナはひとまず声をかけてみた。
「マーガレット?私よ、エレナ。
今日から学園に出て来たの。それなのにあなたがいないからびっくりしちゃって」
……
「…こんなところまで押し掛けてしまってごめんなさい。マーガレットと少し話がしたいんだけど、…だめかな?」
……ガチャ
少しだけ開けた扉の向こうから、マーガレットが小さく顔を覗かせた。
「…エレナ1人?」
警戒した表情をするマーガレットに何だかわからないがドキリとしたエレナは、
「え?ええ1人よ?」
と、緊張して答えた。
「…どうぞ、入って?」
エレナが1人なのを確認すると、マーガレットは扉をしっかり開いて、エレナを中へ案内した。
こんなに警戒していたのは、この前から学園の教師たちが、入れ替わり立ち替わり何度も部屋へ来て、マーガレットに授業を受けに来るよう説得に来ていたからだった。
多少失敗はあっても、王族に継ぐほどの魔力量をもつマーガレットを、このまま学園は手放すわけにはいかなかった。
部屋に入っても不安そうな顔をしているマーガレットを見て、エレナは思わずそっと抱きしめた。
「マーガレット、1人で苦しい思いをさせてごめんなさい。私ったら、今まで何も知らなかったなんて、本当に情けないわ」
「エレナ…違う、全部私が悪いのよ…
未熟なのに魔力量だけはやたら多くて…
…私はただの危険な爆弾と変わらない。
自分で自分がこわいのよ…
エレナにも大変な迷惑をかけてしまって。
私、…どうお詫びしたらいいか…」
マーガレットの頬に静かに涙が伝う。
「何言ってるの!マーガレット!あなたは爆弾なんかじゃないし、未熟なのはまだ1年目なんだから、みんなそうよ。だからこの学園で学んでるんじゃない。
それに、聞いて?マーガレット。
私ちょっと恐いんだけど…新しい魔法が開花したかも知れないの。
この魔法なら、あなたのそばにいればいつでもあなたの暴走を止められるわ!
だから心配しないで戻ってきて!お願いよ、マーガレット!」
エレナはマーガレットの顔を覗き込んで、懇願した。
「…新しい魔法?」
エレナの身に何か起きたのかと思うと、自分のことどころではなくなったマーガレットの目の涙は引いていた。
「ええ、よくわからないけど、魔法研究所の所長さんが言うには、無効化の魔法と言って、魔法を無効にする魔法なんですって。
だから、あの時もマーガレットの出した火が消えてなくなったでしょ?」
エレナはマーガレットを元気づけようと、わざと得意気に言ってみせた。
「エレナ!そういうことだったの⁈すごい!そんな魔法があるなんて!」
「そうなのよ!だからね?私が一緒なら恐くないでしょ?」
思うように発動できるかはわからなかったが、とにかくマーガレットに自信を取り戻して欲しくて、エレナはそう言った。
その言葉を聞いて、マーガレットは小さく頷くと、
「…わかった。ありがとうエレナ。私…明日からちゃんと学園に行くわ。こんなことしてても仕方ないものね」
そう言ってエレナに微笑んだ。
「そうそう、その意気よ!マーガレットがいないとほんとにつまらないんだから!
あーあ、私も今日はこのままサボっちゃお。ふふっ」
「エレナったら」
二人は顔を見合わせて笑い合い、その後も色々話を楽しみながら、エレナは下校時刻までマーガレットの部屋で過ごして、また明日ね、と別れを告げた。
校門の方へ行くと、アークがずっとエレナを心配して待っていてくれたようで、2人はいつも通り王家の馬車で一緒に帰った。
帰り道、マーガレットが明日から来てくれそうだと伝えたら、アークは一緒になってとても喜んでくれて、その気持ちがエレナにはとても嬉しかった。
……
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……
学園寮のマーガレットの部屋の扉を何度ノックしても返事がないので、居るかどうかわからないが、エレナはひとまず声をかけてみた。
「マーガレット?私よ、エレナ。
今日から学園に出て来たの。それなのにあなたがいないからびっくりしちゃって」
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「…こんなところまで押し掛けてしまってごめんなさい。マーガレットと少し話がしたいんだけど、…だめかな?」
……ガチャ
少しだけ開けた扉の向こうから、マーガレットが小さく顔を覗かせた。
「…エレナ1人?」
警戒した表情をするマーガレットに何だかわからないがドキリとしたエレナは、
「え?ええ1人よ?」
と、緊張して答えた。
「…どうぞ、入って?」
エレナが1人なのを確認すると、マーガレットは扉をしっかり開いて、エレナを中へ案内した。
こんなに警戒していたのは、この前から学園の教師たちが、入れ替わり立ち替わり何度も部屋へ来て、マーガレットに授業を受けに来るよう説得に来ていたからだった。
多少失敗はあっても、王族に継ぐほどの魔力量をもつマーガレットを、このまま学園は手放すわけにはいかなかった。
部屋に入っても不安そうな顔をしているマーガレットを見て、エレナは思わずそっと抱きしめた。
「マーガレット、1人で苦しい思いをさせてごめんなさい。私ったら、今まで何も知らなかったなんて、本当に情けないわ」
「エレナ…違う、全部私が悪いのよ…
未熟なのに魔力量だけはやたら多くて…
…私はただの危険な爆弾と変わらない。
自分で自分がこわいのよ…
エレナにも大変な迷惑をかけてしまって。
私、…どうお詫びしたらいいか…」
マーガレットの頬に静かに涙が伝う。
「何言ってるの!マーガレット!あなたは爆弾なんかじゃないし、未熟なのはまだ1年目なんだから、みんなそうよ。だからこの学園で学んでるんじゃない。
それに、聞いて?マーガレット。
私ちょっと恐いんだけど…新しい魔法が開花したかも知れないの。
この魔法なら、あなたのそばにいればいつでもあなたの暴走を止められるわ!
だから心配しないで戻ってきて!お願いよ、マーガレット!」
エレナはマーガレットの顔を覗き込んで、懇願した。
「…新しい魔法?」
エレナの身に何か起きたのかと思うと、自分のことどころではなくなったマーガレットの目の涙は引いていた。
「ええ、よくわからないけど、魔法研究所の所長さんが言うには、無効化の魔法と言って、魔法を無効にする魔法なんですって。
だから、あの時もマーガレットの出した火が消えてなくなったでしょ?」
エレナはマーガレットを元気づけようと、わざと得意気に言ってみせた。
「エレナ!そういうことだったの⁈すごい!そんな魔法があるなんて!」
「そうなのよ!だからね?私が一緒なら恐くないでしょ?」
思うように発動できるかはわからなかったが、とにかくマーガレットに自信を取り戻して欲しくて、エレナはそう言った。
その言葉を聞いて、マーガレットは小さく頷くと、
「…わかった。ありがとうエレナ。私…明日からちゃんと学園に行くわ。こんなことしてても仕方ないものね」
そう言ってエレナに微笑んだ。
「そうそう、その意気よ!マーガレットがいないとほんとにつまらないんだから!
あーあ、私も今日はこのままサボっちゃお。ふふっ」
「エレナったら」
二人は顔を見合わせて笑い合い、その後も色々話を楽しみながら、エレナは下校時刻までマーガレットの部屋で過ごして、また明日ね、と別れを告げた。
校門の方へ行くと、アークがずっとエレナを心配して待っていてくれたようで、2人はいつも通り王家の馬車で一緒に帰った。
帰り道、マーガレットが明日から来てくれそうだと伝えたら、アークは一緒になってとても喜んでくれて、その気持ちがエレナにはとても嬉しかった。
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