断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴

文字の大きさ
24 / 72

24 何をメロメロに?

「ちょっと遠出をして大物と戦わなければならなくなってね。戦闘服を作って欲しいの。今までは全部白色だから目立つでしょ?だから、目立たない色の戦闘服をお願いしたいの」

『良いぞ。そうじゃのぉ・・・。黒の糸と白の糸と赤の糸がよいのぅ。あと、ワリスノールの葉とダキアの玉とオーフェリアの鉱石じゃ』

 変わったモノを言われたダキアの玉。あるのはある。あれはなにも効能がないだたの赤い石だ。ダキア地方で取れるただの赤い石。装飾品に用いられるものだ。

 不思議に思いながらもテーブルの上に出す。

「糸が足りないようなら、新しく紬ぐ」

『大丈夫じゃ。足りるのじゃ』

 笑いながらフェーリトゥールはそう言っているが、その笑いが私にはニヤニヤと何か悪巧みをしている顔をしているように思えてしまった。

「フェーリトゥール。何かおかしなことを考えている?」

『銀の、任せるのじゃ!』

 自信満々に小さな胸を張って言うフェーリトゥールに私は不安が頭をよぎってしまう。

『さぁさぁ、歌うのじゃ!絶対的強者の歌がよいのぅ』

 なにそれ!勇者王の歌を歌っちゃうぞ。いや、あれはあれで恥ずかしい。

 少し考えて、声に魔力を乗せる。


 絶対的強者なんて居るはずはない。いるとすれば物語の中のみ。大きすぎる力は強敵者がいるときは持て囃される。だけど、平和な時はそのような力は人々の心に不安を与え脅威となるため、その者は権力者によって排除される。
 物語の勇者と呼ばれた者達のその後の末路は描かれないことが多い。彼らは強敵を排除した後どうなったのか。物語は記さず、歴史に埋もれた彼らの末路は闇の中。

 私が「白銀の聖女」という者に祀り上げられていたことから抜け出すにはいい機会だったのだろう。あのまま良いように使われていれば、きっとそのうち私に剣を向けられていただろうから。



 フェーリトゥールによって作られた衣服が私の目の前にある。これはちょっとない。今までフェーリトゥールのセンスを疑ったことはなかった。だけどこれはない。

「フェーリトゥール。これは戦闘服といわないよね」

『銀の。よく見てみるとよい。見慣れた軍服じゃろ?』

 確かに見覚えのある軍服であることは認める。私の目の前にいる人物をみる。上着のデザインが全く同じだ。ただ色が黒にも赤にも見える布地となっている。問題は······

「フェーリトゥール。なぜ、短パンニーハイになった?」

『銀の。以前、絶対領域について説明してくれたではないか』

 私は頭を抱えてしまった。したよ確かにそんな話をした記憶はある。だけどそれは知り合いが奇抜なメイド服でご主人様をメロメロにしたいと言っていたので、フェーリトゥールに頼んで作ってもらったことはあった。ミニスカニーハイのメイド服。

 だけど、私の戦闘服に取り入れないでほしかった。私に何をメロメロにしろというのだ。魔物か?
 まぁ、上着が膝までの長さまであるからいいのか?いや、このデザインだとあまり関係がないな。

『銀の、妾が作った服を着てくれぬのか?』

 フェーリトゥールが悲しそうな顔をしながら私の顔を覗きこんできた。これはフェーリトゥールの好意だ。喜んで受け取らなければならない。··········くっ。前世でも短パンなんて子供の頃しか着たことがない。

「フェーリトゥール。あ、ありがとう。嬉しいよ」

 私は心の中で涙を流しながらお礼を言う。歓喜の涙ではない羞恥の涙だ。

『そうじゃろ。そうじゃろ』

 小さい体をえっへんとそらしながら、偉そうにしているその姿を見て、私は諦めの境地で項垂れてしまった。
 項垂れている私の前でニヤリと笑っているフェーリトゥールがいることを私は知る由もなかった。


 私はご飯を作ると言って席を立つ。アレを着るしか私には選択肢がないのだろうかと考えながら、フラフラと台所へ向かっていく。

 アレを着ないとなると、聖女然とした清楚な軍服しかない。しかし、それを着てしまうと私が白銀の聖女と言いふらしながら歩いているようなものだ。

 それに今回、領地に向かう前に王都によっておきたい。どうしても確認しておかなければならないことがある。

 着るしかないのかなぁ。



 翌朝、眠りと覚醒の間の微睡みの中、私は今日はここを立たなければならないなぁと思いながら寝返りを打とうとするが、体が動かない?
 あれ?遠征中だった?
 遠征中はテント生活だった。テントの外まで転がることが多発したので、女性騎士に捕獲されて寝かされていたのだ。

 目を開けると·····赤い色が視界を占める。どうやら私を捕獲していたのは、女性騎士ではなく、居候だった。
 おかしい。昨日も治癒の陣を常時発動しながら長椅子で眠ったはず。

 私の寝相はどこまで悪いのだろう。いや、流石に2日続けてはおかしすぎる。何がおこっているのだろう。

感想 4

あなたにおすすめの小説

夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?

里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。 そんな時、夫は陰でこう言った。 「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」 立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。 リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。 男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。 *************************** 本編完結済み。番外編を不定期更新中。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!

山田 バルス
恋愛
 この屋敷は、わたしの居場所じゃない。  薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。  かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。 「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」 「ごめんなさい、すぐに……」 「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」 「……すみません」 トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。 この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。 彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。 「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」 「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」 「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」 三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。  夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。  それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。 「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」  声が震える。けれど、涙は流さなかった。  屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。 だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。  いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。  そう、小さく、けれど確かに誓った。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

婚約破棄される前に、帰らせていただきます!

パリパリかぷちーの
恋愛
ある日、マリス王国の侯爵令嬢クロナは、王子が男爵令嬢リリィと密会し、自分を「可愛げのない女」と罵り、卒業パーティーで「婚約破棄」を言い渡そうと画策している現場を目撃してしまう。 普通なら嘆き悲しむ場面だが、クロナの反応は違った。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

兄の婚約解消による支払うべき代償【本編完結】

美麗
恋愛
アスターテ皇国 皇帝 ヨハン=シュトラウス=アスターテ アスターテ皇国は周辺国との関係も良く、落ち着いた治世が続いていた。貴族も平民も良く働き、平和で豊かな暮らしをおくっている。 皇帝ヨハンには 皇妃に男の子が一人 妾妃に女の子が一人 二人の子どもがある。 皇妃の産んだ男の子が皇太子となり 妾妃の産んだ女の子は降嫁することが決まっている。 その皇女様の降嫁先だった侯爵家の とばっちりを受けた妹のお話。 始まります。 よろしくお願いします。