番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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28章 穢れと鬼

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「『レベリオン』?そんな者にあったことはねぇ」

 イゾラの中では。鬼化を教えた者の姿を脳裏に映しているのだろう。
 シェリーとは視線が合わなかった。

「ラース様曰く、モルテ王に接触したときは、教会をまとめる者の姿をしていたようです。そして、その姿で初代聖女に接触しました。姿なんて関係ないのですよ」
「モルテ王ってあれか?殺しても死なねぇってやつだろう」
「まぁ、正確にはモルテ王になる前に接触したようですね」
「初代聖女ってことは、魔人になったやつだろう?」
「え?」
「違うのか?」

 イゾラがおかしなことを口にした。
 いや、何も問題はないのだ。それが真実なのだから、何も問題はない。
 だが、それは人の世界の史実ではない。
 初代聖女はエルフ族が常識なのだ。

「合っていますが、その知識はどこからえたのですか?」
「ああ、元々ここに……宝玉があった場所に魔物が湧き出てくる洞窟があったんだ。そこの最深部に宝玉と歴史というものが刻まれていた。誰が刻んだかは知らねぇがな」

 その言葉にシェリーは目を見張った。

「魔女の実験とはそういうことですか」
「あ?なんだそりゃ?言っておくが残ったのは宝玉だけだ。それ以外は全て吹き飛んでしまったからな」
「魔導王とエルフの王の戦いの余波ですよね。それはわかっています。そのダンジョン……魔物が出てくる穴には何か役目がありましたか?」
「戦士の試練だ。その最深部にたどり着き、そこに刻まれてたものを認識できた者が、この島の王になる決まりがあった」
「王の試練ではなく?」
「ん?言われればそうなのだが、戦士の序列がそれで決まるからな」

 内容的にはラース公国にあるダンジョンに近い。ラースの大公になるための試練。
 最深部には人神ではなく、世界の真実が刻まれていた。
 そして、ダンジョンが出現すると世界の浄化が促進されるという実験も兼ねられていたのかもしれない。

 大魔女エリザベートによる、孤立した島で空島の核が与える影響と、ダンジョンがこのに地に与える影響を実験していたのかもしれない。
 そして、黒を纏うものたちが、なぜこの島にたどり着いたのかという歴史を刻み込んだのだろう。

 それにより、外に対する警戒を持つようにと。

「では、イゾラさんは、最後の王ですね」
「あ?もう、ここは俺の島じゃねぇよ」

 試練によって決められた最後の王。
 だが、イゾラはこの地は己の守る地ではないと口にした。

「本当は炎王が言うべきなのでしょうが、彼は口にしないでしょうね」

 シェリーはそう言って視線をイゾラからここから見える世界に目を向けた。

「ここから見える島の姿や海や空はそれほど大きくは変わっていないでしょう?世界は変化を望みながら、不変を好むところがありますからね」
「すっげー変わっているが?」

 シェリーの言葉には少し無理がある。
 イゾラがいた頃には、眼下に広がる街並みは無かったのだ。
 その時点で大きく変わってしまっている。

「それは変革者の炎王の力ですね。でも大きな目で見れば、山も海も空も千年前とほとんど変わりませんよ。まぁ、私の所為で空島が逆走していますが」
「いったい何が言いたいんだ?全然わからねぇぞ。はっきりと言え」

 イゾラが苛立ちを顕にしながら言う。
 回りくどいことを口にするなと。

「私は聖女の役目として、魔王を命をかけて倒します」
「シェリー。それは俺達が……」
「カイルさんは黙っていてください。私は彼らに期待など一切していません」

 シェリーのツガイたちには、何も期待していないという態度に変わりはなかった。
 自分一人で、魔王を倒すと。

 ただ、そこにカイルが排除されていた。
 超越者のカイルに力不足とは言い難いというものあるからだろう。

「それ以外に手が回るかと言えば、難しいのが現状でしょう。鬼王イゾラ。貴方をここまで陥れたモノに一矢報いたくありませんか?」

 シェリーは、レベリオンの始末をイゾラに任せようとしている。
 だから、鬼王という地位をイゾラに押し付けようとしているのだ。扱いやすいようにだ。

「陥れたってなんだ?俺は今ここにいる。聖女の言う通りに動く道理はねぇな」

 イゾラ自身がただ力を得ただけと思っていれば、他者に陥れられたとは認識していない。
 そして、シェリーのいうとおりに動く必要もない。

「何か目的があれば、貴方の中にある虚無感をなくせるかもという提案ですよ。別に強制はしません」

 シェリーは断られたが、それも織り込み済みだったのだろう。
 居場所がないというイゾラに、目的を与えたかっただけだった。

「それにこの件はモルテ王と剣聖にも提案するつもりなので、どちらでもいいです。彼らはこの世界でも屈しの強者ですから」

 そう、シェリーが言葉にした瞬間、イゾラから息がままららないほどの威圧が発せられた。

 シェリーの腕を掴んでいたアフィーリアは、息の仕方を忘れてしまったのように喉を押さえながら、口をパクパク動かしている。

「それは俺がえぇと言っているのか?」
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