892 / 893
28章 穢れと鬼
878
しおりを挟む
「モルテ神様が私のために……なんと慈悲深い御方なのだ」
そう言って天井を見上げて祈るように手を組んでいるのは、もちろんモルテ王である。
「失策でしたけどね」
感動しているモルテ王に、現実を突きつけるシェリー。
やはり、モルテ王のような存在は簡単には存在できないということだ。
「恐らく、このままだとアイラさんの死に、世界の理から外れたモルテ王が引っ張られるという現象が起こるので、それを避けたかったのでしょうね」
大魔女の死と同じだ。
世界の理から外れた魔女は、三千年という時を生きた。しかし番に囚われてしまったがために、その魔女生に幕を下ろすことになったのだ。
死の神モルテは、不死の王の死を許しはしなかった。だから、その番であるアイラに死の祝福を受け入れない加護を与えたのだ。
王の死は、この国の崩壊と同意義だからだ。
「なぁ。すっげー気味が悪い声が聞こえてきたのが、神っていうんじゃねぇよな?」
モルテ王が神に祈っているにも関わらず、それをぶち壊すような言葉が聞こえてきた。
もちろんイゾラである。
「イゾラ。言葉を選べ」
炎王がそう諌めるも、イゾラの言葉は止まらない。
「あの光の女神っていうヤツも胡散臭かったが、今の声のヤツを神と崇めるようなヤツか?嫌な感じがビシビシきたが?」
「まぁ、死の神ですし。それで本題に入ってよろしいですか?」
シェリーはイゾラのことは放置することにしたらしい。いや、炎王に視線を向けたので、制御するようにということなのだろう。
その視線を受けた炎王は、思いっきり首を横に降っている。制御できていたら、今まで困ることはなかったという感じだ。
「うん。ヴィーネが兄鬼の側に座っている。だから、おかわりちょうだい」
何かを悟ったヴィーネが空中から炎王に向かって両手を出している。片手には空になった巨大アイスのカップを持ってだ。
いや、ただ単にアイスのおかわりが欲しかっただけかもしれない。
アイスを手にしたヴィーネは、長椅子にあぐらをかいている、イゾラの隣に座った。
「ちっ!」
舌打ちをするイゾラ。やはり、イゾラはヴィーネのことは苦手意識があるようだ。
「それで、アイラと同じ時を生きるにはどうすればいい?」
「え?それを聞くのですか?」
モルテ王は真面目にシェリーに質問をしてきた。それは不老の部分のことを聞いているのだろう。
「協力をしていただけるのであれば、案は出させていただきます」
「協力しよう」
「即答!いや、モルテ王!内容を聞いたほうがいい。絶対に!」
即答するモルテ王に炎王がつっこむ。
どう考えても内容が非常識だからだ。
「私は白き神の名において黒き聖女と契約している。断る理由はない」
「佐々木さん。何をやっているんだ!」
「それは、あのクソ神の仕業なので、私のせいではありません」
シェリーは古代契約術にて、モルテ王と契約している。それも白き神をとおしてだ。
これ以上強固な契約はないだろう。
「それで頼みたいことはですね……」
「エルフの王族と龍人の因縁を使うということですか」
シェリーの提案に応えたのはレガートスだった。この時代のことになるとモルテ王の記憶には残っていないからだ。
「そこに我が君が止めにはいると……相手は融通が利かないレイグレシア・シュエーレン猊下ですよ。それぐらいで引きますか?」
レガートスは融通が利かないと言っているが、言い換えるとプライドが高いと言っているに過ぎない。
他の国賓がいる場で喧嘩を売られて、相手が簡単に引くのかということだ。
確かに、オリバーがボコボコにしたのは、限られたものしか目にしていなかった。
ユーフィア・ナヴァルがエルフ族を殲滅したのも、他に目にしたものがいなかった。
だが、もし多くの人の目があった場合、プライドの高いエルフ族として、引くことはないだろうとレガートスは予想をしている。
「例えば、この世界の強者をランキングをつけるとすれば、どうでしょう?」
「佐々木さん。何の話をしているのだ?」
「種族的に強者の竜人族。神の加護の重ねがけにより力を得たグローリア国の王族。世界に影響を与える種族の龍人族。女神の愛により人神であるラースの大公……魔人。神と魔女から創られた死の王。自分の思い通りにすべてを変えていくシュロス王。これだけの者たちがいる場で、ことを荒立てようとする馬鹿ではないと私は思いますが?」
シェリーが次々に言葉にする者たちは、世界でもトップクラスの力を持っていると言っていい。ラースの大公であるミゲルロディア以外は超越者なのだ。
しかしミゲルロディアも魔人化したことで、超越者となんら変わりない存在となっている。
「くくくくく……あのシュロス王まで表に出すつもりか。ここまで揃えたのなら、剣聖も招待するといい」
モルテ王は笑いながら、旧知の仲である剣聖ロビンも招待するといいと言い出した。
ロビンを招待するということは、必然的に魔人ラフテリアもついてくることになる。それはお披露目パーティーどころではなくなるだろう。
「え?ラフテリア様は力を抑える気がないから駄目ですよ」
モルテ王の提案をシェリーはバッサリと切ったのだった。
そう言って天井を見上げて祈るように手を組んでいるのは、もちろんモルテ王である。
「失策でしたけどね」
感動しているモルテ王に、現実を突きつけるシェリー。
やはり、モルテ王のような存在は簡単には存在できないということだ。
「恐らく、このままだとアイラさんの死に、世界の理から外れたモルテ王が引っ張られるという現象が起こるので、それを避けたかったのでしょうね」
大魔女の死と同じだ。
世界の理から外れた魔女は、三千年という時を生きた。しかし番に囚われてしまったがために、その魔女生に幕を下ろすことになったのだ。
死の神モルテは、不死の王の死を許しはしなかった。だから、その番であるアイラに死の祝福を受け入れない加護を与えたのだ。
王の死は、この国の崩壊と同意義だからだ。
「なぁ。すっげー気味が悪い声が聞こえてきたのが、神っていうんじゃねぇよな?」
モルテ王が神に祈っているにも関わらず、それをぶち壊すような言葉が聞こえてきた。
もちろんイゾラである。
「イゾラ。言葉を選べ」
炎王がそう諌めるも、イゾラの言葉は止まらない。
「あの光の女神っていうヤツも胡散臭かったが、今の声のヤツを神と崇めるようなヤツか?嫌な感じがビシビシきたが?」
「まぁ、死の神ですし。それで本題に入ってよろしいですか?」
シェリーはイゾラのことは放置することにしたらしい。いや、炎王に視線を向けたので、制御するようにということなのだろう。
その視線を受けた炎王は、思いっきり首を横に降っている。制御できていたら、今まで困ることはなかったという感じだ。
「うん。ヴィーネが兄鬼の側に座っている。だから、おかわりちょうだい」
何かを悟ったヴィーネが空中から炎王に向かって両手を出している。片手には空になった巨大アイスのカップを持ってだ。
いや、ただ単にアイスのおかわりが欲しかっただけかもしれない。
アイスを手にしたヴィーネは、長椅子にあぐらをかいている、イゾラの隣に座った。
「ちっ!」
舌打ちをするイゾラ。やはり、イゾラはヴィーネのことは苦手意識があるようだ。
「それで、アイラと同じ時を生きるにはどうすればいい?」
「え?それを聞くのですか?」
モルテ王は真面目にシェリーに質問をしてきた。それは不老の部分のことを聞いているのだろう。
「協力をしていただけるのであれば、案は出させていただきます」
「協力しよう」
「即答!いや、モルテ王!内容を聞いたほうがいい。絶対に!」
即答するモルテ王に炎王がつっこむ。
どう考えても内容が非常識だからだ。
「私は白き神の名において黒き聖女と契約している。断る理由はない」
「佐々木さん。何をやっているんだ!」
「それは、あのクソ神の仕業なので、私のせいではありません」
シェリーは古代契約術にて、モルテ王と契約している。それも白き神をとおしてだ。
これ以上強固な契約はないだろう。
「それで頼みたいことはですね……」
「エルフの王族と龍人の因縁を使うということですか」
シェリーの提案に応えたのはレガートスだった。この時代のことになるとモルテ王の記憶には残っていないからだ。
「そこに我が君が止めにはいると……相手は融通が利かないレイグレシア・シュエーレン猊下ですよ。それぐらいで引きますか?」
レガートスは融通が利かないと言っているが、言い換えるとプライドが高いと言っているに過ぎない。
他の国賓がいる場で喧嘩を売られて、相手が簡単に引くのかということだ。
確かに、オリバーがボコボコにしたのは、限られたものしか目にしていなかった。
ユーフィア・ナヴァルがエルフ族を殲滅したのも、他に目にしたものがいなかった。
だが、もし多くの人の目があった場合、プライドの高いエルフ族として、引くことはないだろうとレガートスは予想をしている。
「例えば、この世界の強者をランキングをつけるとすれば、どうでしょう?」
「佐々木さん。何の話をしているのだ?」
「種族的に強者の竜人族。神の加護の重ねがけにより力を得たグローリア国の王族。世界に影響を与える種族の龍人族。女神の愛により人神であるラースの大公……魔人。神と魔女から創られた死の王。自分の思い通りにすべてを変えていくシュロス王。これだけの者たちがいる場で、ことを荒立てようとする馬鹿ではないと私は思いますが?」
シェリーが次々に言葉にする者たちは、世界でもトップクラスの力を持っていると言っていい。ラースの大公であるミゲルロディア以外は超越者なのだ。
しかしミゲルロディアも魔人化したことで、超越者となんら変わりない存在となっている。
「くくくくく……あのシュロス王まで表に出すつもりか。ここまで揃えたのなら、剣聖も招待するといい」
モルテ王は笑いながら、旧知の仲である剣聖ロビンも招待するといいと言い出した。
ロビンを招待するということは、必然的に魔人ラフテリアもついてくることになる。それはお披露目パーティーどころではなくなるだろう。
「え?ラフテリア様は力を抑える気がないから駄目ですよ」
モルテ王の提案をシェリーはバッサリと切ったのだった。
13
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。
ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。
魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。
そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。
ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。
妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。
侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。
しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。
もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。
そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。
そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。
「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」
そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。
かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが…
※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。
ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。
よろしくお願いしますm(__)m
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで
ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。
だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。
「私は観る側。恋はヒロインのもの」
そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。
筋肉とビンタと回復の日々。
それなのに――
「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」
野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。
彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。
幼馴染ヴィルの揺れる視線。
家族の温かな歓迎。
辺境伯領と学園という“日常の戦場”。
「……好き」
「これは恋だ。もう、モブではいたくない」
守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、
現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。
これは――
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。
※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。
※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。
※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる