番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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28章 穢れと鬼

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「モルテ神様が私のために……なんと慈悲深い御方なのだ」

 そう言って天井を見上げて祈るように手を組んでいるのは、もちろんモルテ王である。

「失策でしたけどね」

 感動しているモルテ王に、現実を突きつけるシェリー。
 やはり、モルテ王のような存在は簡単には存在できないということだ。

「恐らく、このままだとアイラさんの死に、世界の理から外れたモルテ王が引っ張られるという現象が起こるので、それを避けたかったのでしょうね」

 大魔女の死と同じだ。
 世界の理から外れた魔女は、三千年という時を生きた。しかし番に囚われてしまったがために、その魔女生人生に幕を下ろすことになったのだ。

 死の神モルテは、不死の王の死を許しはしなかった。だから、その番であるアイラに死の祝福を受け入れない加護を与えたのだ。

 王の死は、この国の崩壊と同意義だからだ。

「なぁ。すっげー気味が悪い声が聞こえてきたのが、神っていうんじゃねぇよな?」

 モルテ王が神に祈っているにも関わらず、それをぶち壊すような言葉が聞こえてきた。
 もちろんイゾラである。

「イゾラ。言葉を選べ」

 炎王がそう諌めるも、イゾラの言葉は止まらない。

「あの光の女神っていうヤツも胡散臭かったが、今の声のヤツを神と崇めるようなヤツか?嫌な感じがビシビシきたが?」
「まぁ、死の神ですし。それで本題に入ってよろしいですか?」

 シェリーはイゾラのことは放置することにしたらしい。いや、炎王に視線を向けたので、制御するようにということなのだろう。

 その視線を受けた炎王は、思いっきり首を横に降っている。制御できていたら、今まで困ることはなかったという感じだ。

「うん。ヴィーネが兄鬼の側に座っている。だから、おかわりちょうだい」

 何かを悟ったヴィーネが空中から炎王に向かって両手を出している。片手には空になった巨大アイスのカップを持ってだ。
 いや、ただ単にアイスのおかわりが欲しかっただけかもしれない。

 アイスを手にしたヴィーネは、長椅子にあぐらをかいている、イゾラの隣に座った。

「ちっ!」

 舌打ちをするイゾラ。やはり、イゾラはヴィーネのことは苦手意識があるようだ。

「それで、アイラと同じ時を生きるにはどうすればいい?」
「え?それを聞くのですか?」

 モルテ王は真面目にシェリーに質問をしてきた。それは不老の部分のことを聞いているのだろう。

「協力をしていただけるのであれば、案は出させていただきます」
「協力しよう」
「即答!いや、モルテ王!内容を聞いたほうがいい。絶対に!」

 即答するモルテ王に炎王がつっこむ。
 どう考えても内容が非常識だからだ。

「私は白き神の名において黒き聖女と契約している。断る理由はない」
「佐々木さん。何をやっているんだ!」
「それは、あのクソ神の仕業なので、私のせいではありません」

 シェリーは古代契約術にて、モルテ王と契約している。それも白き神をとおしてだ。
 これ以上強固な契約はないだろう。

「それで頼みたいことはですね……」



「エルフの王族と龍人の因縁を使うということですか」

 シェリーの提案に応えたのはレガートスだった。この時代のことになるとモルテ王の記憶には残っていないからだ。

「そこに我が君が止めにはいると……相手は融通が利かないレイグレシア・シュエーレン猊下ですよ。それぐらいで引きますか?」

 レガートスは融通が利かないと言っているが、言い換えるとプライドが高いと言っているに過ぎない。
 他の国賓がいる場で喧嘩を売られて、相手が簡単に引くのかということだ。

 確かに、オリバーがボコボコにしたのは、限られたものしか目にしていなかった。

 ユーフィア・ナヴァルがエルフ族を殲滅したのも、他に目にしたものがいなかった。

 だが、もし多くの人の目があった場合、プライドの高いエルフ族として、引くことはないだろうとレガートスは予想をしている。

「例えば、この世界の強者をランキングをつけるとすれば、どうでしょう?」
「佐々木さん。何の話をしているのだ?」
「種族的に強者の竜人族。神の加護の重ねがけにより力を得たグローリア国の王族。世界に影響を与える種族の龍人族。女神の愛により人神であるラースの大公……魔人。神と魔女から創られた死の王。自分の思い通りにすべてを変えていくシュロス王。これだけの者たちがいる場で、ことを荒立てようとする馬鹿ではないと私は思いますが?」

 シェリーが次々に言葉にする者たちは、世界でもトップクラスの力を持っていると言っていい。ラースの大公であるミゲルロディア以外は超越者なのだ。

 しかしミゲルロディアも魔人化したことで、超越者となんら変わりない存在となっている。

「くくくくく……あのシュロス王まで表に出すつもりか。ここまで揃えたのなら、剣聖も招待するといい」

 モルテ王は笑いながら、旧知の仲である剣聖ロビンも招待するといいと言い出した。

 ロビンを招待するということは、必然的に魔人ラフテリアもついてくることになる。それはお披露目パーティーどころではなくなるだろう。

「え?ラフテリア様は力を抑える気がないから駄目ですよ」

 モルテ王の提案をシェリーはバッサリと切ったのだった。
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