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21章 聖女と魔女とエルフ
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シェリーは薬草を鞄の中にしまうと、陽子の隣まで足を進め陽子の手が消えている空間に同じ様に手を突っ込む。
腕らしき物に当たったので、スキルを使って思いっきり手前に引いてみると、炎王がバランスを崩しながら何もなかった空間から出てきた。
陽子の力では龍人を動かすことはできなかったのだが、流石に『聖者の正拳』スキルには坑がいようがなかったようだ。
炎王は草が生えた地面に両手を付いた姿でシェリーと陽子を見ていた。
「先日はありがとうございました。とても助かりました」
シェリーは炎王を見下ろしながら、感謝を述べているが感謝の意が全く感じられない態度だ。炎王は立ち上がって土を払い、ため息を吐きながら言う。
「はぁ。今度は何だ」
「言いたいことはあるのですが、その前にその身に纏っている穢れはなんですか?」
シェリーは炎王を見る目を細めながら、炎王の周りに付いている黒いモヤを見る。数日前に会った時はその様な黒いモヤは身に纏っていなかった。
どうやら炎王自身からの物ではなく穢れがある場所に行ったのか、穢れを持つ人物と接触しかたのどちらかなのだろう。
「穢れ?」
炎王は首を傾げながら、シェリーの言葉を繰り返す。穢れと言うものに覚えがないのか、穢れと言うものがわからないのか。
「人の憎悪の塊と言えばいいでしょうか。炎王自身ではないようですが、その様にまとわり付くというのはあまりありませんね」
そう言いながら、シェリーは炎王の周りに纏わりついていた黒いモヤを手を振るだけで浄化した。
「でも、おかしいですね。炎国には魔樹があるのに」
シェリーのその言葉に炎王は『ああ』と声を漏らす。
「穢れだったか?心辺りはある。それ治すために薬草をもらいに来たんだ」
穢れが薬草で治る?それは初めて聞いたことだとシェリーは考えるが、オリバーはその辺りは専門では無いので知らないだけかもしれないと思うことにした。
「そうですか」
「そうそう、スヴュート草をよく頼まれるんだよね」
陽子がニコニコと笑いながらシェリーに教えてくれる。
スヴュート草。確か解毒薬にもちいられる薬草の一つだ。それに浄化作用があると言われればそうなのかもしれない。シェリーにとって必要ない物なので気にしたことはなかった。
「で、佐々木さんが用があるって聞いたけど何だ?」
シェリーは後ろにいるリオンに目線だけ合わし、炎王に口を開こうとすれば、先に炎王がリオンのところに行き
「どうした?」
と声を掛けた。ここ数日でリオンのポッキリ折れた自尊心を治せるかどうかはわからないが、添え木ぐらいは施してくれるだろうか。
「初代様。私は・・・」
リオンの言葉が止まってしまった。少し離れた方がいいだろうと思いシェリーは陽子を連れて木々の間を歩き出した。その後ろからはカイルが付いて来ている。
「鬼くんは迷走中かな?」
「どうですかね」
陽子の言葉にシェリーは適当に答える。シェリーにとってリオンがこのまま歩みを止めようが進もうが邪魔さえしなければどうでもいい。
「昨日の出来た穴を覗いて固まっていたもんね。ははっ、豹の兄ちゃんはどうやったらこんな穴ができるか試行錯誤しているみたいだけど」
オルクスが裏庭から戻って来ないと思っていたら、そんな事をしているようだ。同じものを見て呆然と見ていたリオンと再現をしようとしているオルクス。それが彼らの性格の違いを表しているのだろう。
「どうやったらアレができるかか」
後ろから黙って付いてきていたカイルがポソリと言葉を漏らした。
「竜の兄ちゃんならどうする?」
陽子は振り返り後ろ向きで進みながらカイルに聞く。聞かれたカイルは考えるように斜め上を見ながら唸っている。
「うーん。そうだね。力技だけじゃ無理だよね。だけど普通の炎の魔術だけじゃ地面は溶けないし、地面をえぐることはできないから・・・地面を凍らせて強化して思いっ切り叩き割ればいけるかな?」
「おお、地面を凍らすね。ササッちはどう?」
陽子はシェリーにも聞いてみる。シェリーはチラリと後ろ向きに歩いている陽子と見て、どうでもいい事のように抑揚なく答える。
「魔力を圧縮して叩きつける」
シェリーの言葉に陽子はシェリーの方に向き
「魔力の圧縮かー。それなら納得」
と理解を示し、カイルはシェリーの横に並ぶように歩き、聞いてきた。
「魔力の圧縮ってどういう事?」
「魔術の威力を上げたければ同じ術でも魔力量を多めに消費するのと同じですよ。ある程度の流れを持つのが魔術だとすれば、流れを断ち高位魔術を発動する魔力量を拳の大きさまでに小さくまとめたものが圧縮という感じです。」
腕らしき物に当たったので、スキルを使って思いっきり手前に引いてみると、炎王がバランスを崩しながら何もなかった空間から出てきた。
陽子の力では龍人を動かすことはできなかったのだが、流石に『聖者の正拳』スキルには坑がいようがなかったようだ。
炎王は草が生えた地面に両手を付いた姿でシェリーと陽子を見ていた。
「先日はありがとうございました。とても助かりました」
シェリーは炎王を見下ろしながら、感謝を述べているが感謝の意が全く感じられない態度だ。炎王は立ち上がって土を払い、ため息を吐きながら言う。
「はぁ。今度は何だ」
「言いたいことはあるのですが、その前にその身に纏っている穢れはなんですか?」
シェリーは炎王を見る目を細めながら、炎王の周りに付いている黒いモヤを見る。数日前に会った時はその様な黒いモヤは身に纏っていなかった。
どうやら炎王自身からの物ではなく穢れがある場所に行ったのか、穢れを持つ人物と接触しかたのどちらかなのだろう。
「穢れ?」
炎王は首を傾げながら、シェリーの言葉を繰り返す。穢れと言うものに覚えがないのか、穢れと言うものがわからないのか。
「人の憎悪の塊と言えばいいでしょうか。炎王自身ではないようですが、その様にまとわり付くというのはあまりありませんね」
そう言いながら、シェリーは炎王の周りに纏わりついていた黒いモヤを手を振るだけで浄化した。
「でも、おかしいですね。炎国には魔樹があるのに」
シェリーのその言葉に炎王は『ああ』と声を漏らす。
「穢れだったか?心辺りはある。それ治すために薬草をもらいに来たんだ」
穢れが薬草で治る?それは初めて聞いたことだとシェリーは考えるが、オリバーはその辺りは専門では無いので知らないだけかもしれないと思うことにした。
「そうですか」
「そうそう、スヴュート草をよく頼まれるんだよね」
陽子がニコニコと笑いながらシェリーに教えてくれる。
スヴュート草。確か解毒薬にもちいられる薬草の一つだ。それに浄化作用があると言われればそうなのかもしれない。シェリーにとって必要ない物なので気にしたことはなかった。
「で、佐々木さんが用があるって聞いたけど何だ?」
シェリーは後ろにいるリオンに目線だけ合わし、炎王に口を開こうとすれば、先に炎王がリオンのところに行き
「どうした?」
と声を掛けた。ここ数日でリオンのポッキリ折れた自尊心を治せるかどうかはわからないが、添え木ぐらいは施してくれるだろうか。
「初代様。私は・・・」
リオンの言葉が止まってしまった。少し離れた方がいいだろうと思いシェリーは陽子を連れて木々の間を歩き出した。その後ろからはカイルが付いて来ている。
「鬼くんは迷走中かな?」
「どうですかね」
陽子の言葉にシェリーは適当に答える。シェリーにとってリオンがこのまま歩みを止めようが進もうが邪魔さえしなければどうでもいい。
「昨日の出来た穴を覗いて固まっていたもんね。ははっ、豹の兄ちゃんはどうやったらこんな穴ができるか試行錯誤しているみたいだけど」
オルクスが裏庭から戻って来ないと思っていたら、そんな事をしているようだ。同じものを見て呆然と見ていたリオンと再現をしようとしているオルクス。それが彼らの性格の違いを表しているのだろう。
「どうやったらアレができるかか」
後ろから黙って付いてきていたカイルがポソリと言葉を漏らした。
「竜の兄ちゃんならどうする?」
陽子は振り返り後ろ向きで進みながらカイルに聞く。聞かれたカイルは考えるように斜め上を見ながら唸っている。
「うーん。そうだね。力技だけじゃ無理だよね。だけど普通の炎の魔術だけじゃ地面は溶けないし、地面をえぐることはできないから・・・地面を凍らせて強化して思いっ切り叩き割ればいけるかな?」
「おお、地面を凍らすね。ササッちはどう?」
陽子はシェリーにも聞いてみる。シェリーはチラリと後ろ向きに歩いている陽子と見て、どうでもいい事のように抑揚なく答える。
「魔力を圧縮して叩きつける」
シェリーの言葉に陽子はシェリーの方に向き
「魔力の圧縮かー。それなら納得」
と理解を示し、カイルはシェリーの横に並ぶように歩き、聞いてきた。
「魔力の圧縮ってどういう事?」
「魔術の威力を上げたければ同じ術でも魔力量を多めに消費するのと同じですよ。ある程度の流れを持つのが魔術だとすれば、流れを断ち高位魔術を発動する魔力量を拳の大きさまでに小さくまとめたものが圧縮という感じです。」
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