番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

文字の大きさ
837 / 893
28章 穢れと鬼

823

しおりを挟む
「うぉ!カイル!本気でボールを凍らせて投げてくるな!」
「当てれば良いのだろう?当てれば?そのまま永久に動かなくなれば良い」
「だから、獣化すると感覚がズレるって言っているのに!前に出過ぎだ!ゴラァ!」
「はい。赤ワンコ君。外」
「フォッフォッフォッ」
「いやー楽しいなぁ」

「二人ぐらいしか楽しんでいませんが、参加したいのならしてきていいですよ」

 シェリーは紙に書いたメモを見ながら、別の紙に何かを書き出している。
 これは恐らく、炎王が創った魔術で隙間を縫うように構築できるか、書き出しているのだろう。

「いや……まぁ……ものは言いようでな」

 すでに脱落者がいるコート内を見ながら言う炎王。そもそも一瞬しか姿を見せなかった者もいる現状だ。

 カイルとシュロス対クロードとイスラの構図となっている。

「人外の運動会とかあれば、こんな感じになるんだろうなぁと」
「龍人族の炎王が何を言っているのです?それから、ココの部分が不明です」
「ああ、それはだな」

 紙に日本語で書き加える炎王。

「何をいちゃついている」

 そこに、冷気をまとったカイルが戻ってきた。

「竜の兄ちゃん。外に出たから負けだよ!」
「ヨーコさん。俺はムカつく奴らを仕留めたからそれでいい」

 そう、カイルは始まって早々、味方であるリオンと敵陣にいるスーウェンを一撃で仕留めたのだ。

「シュロス君。これはシュロス君の説明が下手っていうことだね」
「なんでだよ!わかりやすくていいだろう!」

 相手にボールを当てれば良いという言葉だけでは、敵陣にいるものでも味方の陣にいるものでも構わないということになる。

 だから、カイルは文句を言わずに、シェリーの側を離れて参戦したのだ。
 過去の英雄と戦っても、何も身になっていない者たちに向かって、イライラ感をぶつけたのだ。

「いや。遊びの中に戦いの要素を入れるのはいいと思うな」

 だが、人の姿に戻ったクロードはシュロスの提案に対して、一定の評価をしたようだ。

「気を張っていた時よりも、動きは良かった。竜人の攻撃をあいつは数回避けただろう?」

 それは地面と一緒に凍りついているオルクスのことだ。なんだかんだと、カイルの投げる殺人的なボールを避けていたのだ。

「たぶん。あいつは、こういう教え方の方が伸びるぞ」
「では、クロードさん。担当をお願いします」
「は?いやに決まっているだろう!」

 クロードは自分で提案するも、即答で否定する。そもそも死人であるクロードが、オルクスのために毎回召喚されるのかという問題がある。

「遊びの中に戦いなど意味があるのかね?」
「楽しむ方が伸びるっていうやつだろう?」

 シェリーの書いたメモを見ながらいうオリバー。そう、カイルは炎王に対して怒っているが、その同じテーブルには傍観者のオリバーもいるのだ。
 決して二人っきりではなかった。

 そしてカイルと言えば、他の番たちを仕留めて、満足した表情でシェリーを抱きかかえている。シェリーが居た場所に座っているのだ。
 そう、死んだ魚の目をしたシェリーをだ。

「まぁそれなら、俺の方で何とかするから、佐々木さん。俺のお願いを聞いてくれないか?」

 炎王はシェリーの番たちの戦力向上に一役買うので、代わりに己の願いを聞いて欲しいと提案する。

「聞くだけならいいですよ」
「うっ……その目で言われると、本当に聞いて終わりそうじゃないか」

 死んだ魚の目をしたシェリーがそう言えば、言葉のままで終わってしまいそうなほど、生気を感じなかった。

「え?俺が叶えてやってもいいぞ!」
「シュロス君は、被害が拡大するから駄目」

 シュロスがいるとややこしくなると判断した陽子は、シュロスの首根っこを背後から掴んだまま地面に潜り始めた。

「いやー!地下の第三帝国に引きずり込まれるー!」
「うるさい!地下に第三帝国なんて無いよ!」
「キモい鎧どもに追いかけられるー!」
「シュロス君と変わんないよ」
「酷い」

 騒がしいまま地面の下に連行されたシュロスの姿を見て、引きつった顔をするクロード。

「第三帝国は否定したのに、キモい鎧は否定しないのか?」

 そんな言葉を残してクロードは消え去った。

 シェリーが何も言っていないので強制解除させられたのだろう。
 これは炎王の願いを叶えろという白き神の威ともとれる。

 そのことに舌打ちをするシェリー。

「シュピンネ族の御仁も居なくなったことだし、俺も地下に戻るか」

 そう言ってシェリーのメモを回収して、オリバーは立ち上がった。

 これはシュピンネ族の術の件はオリバーに任せていいということなのだろう。
 いや、シェリーのスキル創造では行き詰まり、魔術では賄えない複雑さだったということだ。

 そして、先程の騒がしさと打って変わり、冷気が漂い静かになった。この場にいるのは、シェリーとカイルと炎王のみとなった。

 いや、地面と共に凍りついた者たちも居たのだった。

しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。 ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。 魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。 そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。 ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。 妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。 侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。 しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。

悪役令嬢はヒロイン(♂)に攻略されてます

みおな
恋愛
 略奪系ゲーム『花盗人の夜』に転生してしまった。  しかも、ヒロインに婚約者を奪われ断罪される悪役令嬢役。  これは円満な婚約解消を目指すしかない!

存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれた5人兄弟の真ん中に生まれたルクレツィア・オルランディ。彼女は、存在感と取り柄がないことが悩みの女の子だった。 そんなルクレツィアを必要ないと思っているのは母だけで、父と他の兄弟姉妹は全くそんなことを思っていないのを勘違いして、すれ違い続けることになるとは、誰も思いもしなかった。

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!

seo
恋愛
 血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。  いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。  これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。 #逆ハー風なところあり #他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

処理中です...