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444 深淵の闇から見つめる目
私は暗闇に佇んでいた。いや、浮かんでいる?
頭上に太陽の聖痕を掲げているにも関わらず、闇は光を喰らい何も存在しなかった。
違う。何かいる。
気配というには薄い存在が、周りにいるような気がする。
しかし、これって神父様の転移からこぼれ落ちたってことなのかな?それだと、私はルディの腕を掴んでいたので、ルディを道連れにしていないとおかしい。
私の手は何も掴まず、ただ空に触れているのみ。
いや、これが世界の意志であるなら、この状況もあり得るのだろう。
何故なら、私が放つ光に浮かび上がってきたのは、多くの女性たちだ。それも頭上に聖痕を掲げている。
私を囲うように存在しているのだ。多くの聖女たちの目、目、目、目。
その視線は私に向けられているものの、生きているようには思えなかった。
「私はあなた達の仲間入りはしないよ」
いつかは、この暗い深淵の世界に引っ張られてくるのかもしれない。だけど、それは今ではない。
『お……ん……ぉ』
え?何か言っているんだけど?
あの太陽の王のように意志を持ったままここに存在するわけ?
最悪。
『王の……ぉ』
王?私が聖痕の力を奪ったから、もうここにはいないよ。
……あれ?今、思ったけど。
ここにシェーンを連れてこれば、もっとマシに月の聖痕が扱えるようになるんじゃないの?
『王の降臨を』
王の降臨?地下から這い上がってくるわけでなく、王の降臨?
『王の降臨こそ、世界を救う』
神の降臨ではなく、王の降臨?
それが世界を救う?
あの獅子王が言っていた最後の仕掛けの話?
「ちょっと、話ができる人でもいないわけ?」
意志があるというよりも、目的の為に存在していると言い換えた方がいいのかもしれない。
しかし誰も反応しない。黒狐の王妃か最初の月の聖女がこの中にいるのかと思ったのだけど、いなさそう。
黒狐の王妃であれば、私をこの深淵に縛り付けるべく、黒い鎖を放ってくると思うからね。
(ア……ュ!)
だとすると、歴代の聖女たちは、私に何かを伝えたくて、この場に引き止めたのかもしれない。
(アンジュ!)
でも『王の降臨』という言葉だけを連呼されてもさっぱりわからない。
王とは別の意味を持つとか?
「アンジュ!」
「うわっ!」
突然左手が引っ張られ、明るい場所に連れ出された。
「眩しいー!」
「お前の聖痕が眩しいんだ!」
はっ!あまりにもの暗さに、めいいっぱい光るように太陽の聖痕を調整していたのだった。
ファルの声に慌てて光るのを抑え、ぼんやりと光るように調整した。
この太陽の聖痕って、何気に使用者の私が被害を受けるよね。
「それで、ここはどこ?」
見覚えがない室内だった。どこかの応接室?
私の視界には、商談でもするような華美でない応接セットが映り込む。
強いて言うなら、第十二部隊の駐屯地にお邪魔したぐらいの、整然とした室内だった。
「第十一部隊の駐屯地の一つだ」
私を捕獲しているルディが教えてくれた。うん。ちょっと内臓がでそうなぐらいぎゅうぎゅうに捕獲しないで欲しいな。
「ルディ。痛い。取り敢えず床に下ろして欲しい」
というか、私はルディに捕獲されて他の人達の姿が見えない。
横目で見えるのが、応接セットだけなのだ。
「さっきみたいに突然消えたらどうするんだ」
駄目だ。これ、またルディが魔王様に戻ってしまった。
だから、私の所為じゃないんだよ。
「ほら、それは引っ張られたからだね。歴代の聖女たちにね」
「それは本当のことですか?」
私の言葉に反応したのは、神父様だった。……ごめん。私はルディの母親の顔は知らないよ。
「なんというか。虚空をみている亡霊に囲まれていたっていう感じ?もう、恐怖だよね」
私は聖女たちが言葉を発したことは言わなかった。言えば神父様が常闇の中に行く気がしてしまったからだ。
初恋をこじらすと本当にヤバいよね。
「それじゃ、早速。下見にでも行く?」
そのまま常闇に行ってもらえるのであれば、それに越したことはない。
「その前にアンジュ。レクトフェール第十一部隊長への術を解いてやってくれないか?」
ファルに言われたけど、だから何処に誰がいるのか私にはわからないのだよ。
その前に、ここに第十一部隊長さんがいるわけ?
私を捕獲している魔王様の胸板をバシバシと叩く。いい加減に解放しろと。
そして、解放され辺りを見渡した私は内心頭を抱えたくなった。
床にへばりつきながらも、私のことをガン見している白い隊服を着ている人がいることに。
「取り敢えずヤる?」
「アンジュちゃん。その前に術を解いてあげた方がいいわよ」
「そうだよ。アンジュ。リュミエール神父の実験につきあわされていたのだからね」
私は見た者を始末しようと言ったのに、リザ姉とロゼは、神父様の実験台になった第十一部隊長さんに同情していたのだった。
頭上に太陽の聖痕を掲げているにも関わらず、闇は光を喰らい何も存在しなかった。
違う。何かいる。
気配というには薄い存在が、周りにいるような気がする。
しかし、これって神父様の転移からこぼれ落ちたってことなのかな?それだと、私はルディの腕を掴んでいたので、ルディを道連れにしていないとおかしい。
私の手は何も掴まず、ただ空に触れているのみ。
いや、これが世界の意志であるなら、この状況もあり得るのだろう。
何故なら、私が放つ光に浮かび上がってきたのは、多くの女性たちだ。それも頭上に聖痕を掲げている。
私を囲うように存在しているのだ。多くの聖女たちの目、目、目、目。
その視線は私に向けられているものの、生きているようには思えなかった。
「私はあなた達の仲間入りはしないよ」
いつかは、この暗い深淵の世界に引っ張られてくるのかもしれない。だけど、それは今ではない。
『お……ん……ぉ』
え?何か言っているんだけど?
あの太陽の王のように意志を持ったままここに存在するわけ?
最悪。
『王の……ぉ』
王?私が聖痕の力を奪ったから、もうここにはいないよ。
……あれ?今、思ったけど。
ここにシェーンを連れてこれば、もっとマシに月の聖痕が扱えるようになるんじゃないの?
『王の降臨を』
王の降臨?地下から這い上がってくるわけでなく、王の降臨?
『王の降臨こそ、世界を救う』
神の降臨ではなく、王の降臨?
それが世界を救う?
あの獅子王が言っていた最後の仕掛けの話?
「ちょっと、話ができる人でもいないわけ?」
意志があるというよりも、目的の為に存在していると言い換えた方がいいのかもしれない。
しかし誰も反応しない。黒狐の王妃か最初の月の聖女がこの中にいるのかと思ったのだけど、いなさそう。
黒狐の王妃であれば、私をこの深淵に縛り付けるべく、黒い鎖を放ってくると思うからね。
(ア……ュ!)
だとすると、歴代の聖女たちは、私に何かを伝えたくて、この場に引き止めたのかもしれない。
(アンジュ!)
でも『王の降臨』という言葉だけを連呼されてもさっぱりわからない。
王とは別の意味を持つとか?
「アンジュ!」
「うわっ!」
突然左手が引っ張られ、明るい場所に連れ出された。
「眩しいー!」
「お前の聖痕が眩しいんだ!」
はっ!あまりにもの暗さに、めいいっぱい光るように太陽の聖痕を調整していたのだった。
ファルの声に慌てて光るのを抑え、ぼんやりと光るように調整した。
この太陽の聖痕って、何気に使用者の私が被害を受けるよね。
「それで、ここはどこ?」
見覚えがない室内だった。どこかの応接室?
私の視界には、商談でもするような華美でない応接セットが映り込む。
強いて言うなら、第十二部隊の駐屯地にお邪魔したぐらいの、整然とした室内だった。
「第十一部隊の駐屯地の一つだ」
私を捕獲しているルディが教えてくれた。うん。ちょっと内臓がでそうなぐらいぎゅうぎゅうに捕獲しないで欲しいな。
「ルディ。痛い。取り敢えず床に下ろして欲しい」
というか、私はルディに捕獲されて他の人達の姿が見えない。
横目で見えるのが、応接セットだけなのだ。
「さっきみたいに突然消えたらどうするんだ」
駄目だ。これ、またルディが魔王様に戻ってしまった。
だから、私の所為じゃないんだよ。
「ほら、それは引っ張られたからだね。歴代の聖女たちにね」
「それは本当のことですか?」
私の言葉に反応したのは、神父様だった。……ごめん。私はルディの母親の顔は知らないよ。
「なんというか。虚空をみている亡霊に囲まれていたっていう感じ?もう、恐怖だよね」
私は聖女たちが言葉を発したことは言わなかった。言えば神父様が常闇の中に行く気がしてしまったからだ。
初恋をこじらすと本当にヤバいよね。
「それじゃ、早速。下見にでも行く?」
そのまま常闇に行ってもらえるのであれば、それに越したことはない。
「その前にアンジュ。レクトフェール第十一部隊長への術を解いてやってくれないか?」
ファルに言われたけど、だから何処に誰がいるのか私にはわからないのだよ。
その前に、ここに第十一部隊長さんがいるわけ?
私を捕獲している魔王様の胸板をバシバシと叩く。いい加減に解放しろと。
そして、解放され辺りを見渡した私は内心頭を抱えたくなった。
床にへばりつきながらも、私のことをガン見している白い隊服を着ている人がいることに。
「取り敢えずヤる?」
「アンジュちゃん。その前に術を解いてあげた方がいいわよ」
「そうだよ。アンジュ。リュミエール神父の実験につきあわされていたのだからね」
私は見た者を始末しようと言ったのに、リザ姉とロゼは、神父様の実験台になった第十一部隊長さんに同情していたのだった。
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