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445 よくできた偽物ですよね?
「別に放置でいいと思うよ。一日経てば解ける仕様だし」
この状況を望んだのは神父様だし、神父様を怒らせた第十一部隊長さんが悪い。
そう、初恋をこじらせた神父様の逆鱗に触れたからだ。
「アンジュ。解除していいですよ。案内人は必要ですからね」
神父様から解除が命じられた。
ああ、案内人ね。別に第十一部隊長さんでなくてもいいような気がするけど。
「それから、先程の話を詳しく聞きたいですね」
神父様は第十一部隊長さんへのお仕置きよりも、私の身に起こった聖女たちの話に興味津々らしい。だから私はルディの母親の顔は知らないよ。
「聞きたいって言われても直ぐにルディに引っ張られたから、私には何もわからないよ……解除」
神父様に言われたので、金縛り中の第十一部隊長さんを解除する。
第十一部隊長さんは痺れて動けなかったので、手を握って開いてを繰り返して動くことを確認していた。
「ルディ。私は自分で歩きたいかな?」
「駄目だ」
「……ほら、神父様がルディ用の鎧を持って来てくれているし、身につけた方がいいんじゃないのかな?」
第十一部隊長さんが私の頭上から目を離さないことを横目に、私はルディに言った。
私がルディを食堂の裏に連行して、ルディの言い分を聞いていたので、ルディは未だに鎧をまとっていないのだ。
「アンジュから目を離すと消えてしまうじゃないか」
「……消えないからね」
私から目を離すと、不安症候群になってしまっているルディをどうしたものかと、私は頭を抱える。
先程の転移で私だけ別のところに引っ張られたので、余計に悪化していると思われた。
さっきのは不可抗力だからね。
「これはよくできた偽物ですね」
その言葉に視線を向ければ、私の方に伸ばされている手があった。偽物?もしかして太陽の聖痕のことを言っている?
だけど、第十一部隊長さんの手が私に届くことはなかった。
「レクトフェール第十一部隊長。貴殿が触れていい御方ではない」
ヴァルト様が夜と夜明けの色が混じった剣身を第十一部隊長さんの首元に突きつけいる。
そして、いつの間にか背後に回り込んだ神父様に腕を掴まれていた。
「レクトフェール。天使の聖痕に触れて、ただで済むと思っているのですか?」
そうだね。たぶん綺麗サッパリと灰になると思うよ。まさに天使になれるだろうね。
それに人の聖痕に故意に触れてはいけないって、神父様が教えていたのにね。
「レクトフェール。アンジュに触れればぶっ殺す」
ルディの言葉は、別の何かが混じっているよね。
この悪化した私がいないと不安症候群をどうしたものか。
それから、本物か偽物かの真偽は私個人としては偽物でいいのだ。だから私からは何も言わない。
「レクトフェール。この聖騎士の聖痕が、アンジュが太陽の聖女である証明ですよ」
神父様は左手で第十一部隊長さんの腕を抑えているので、右手の手袋の指先を咥えて外した。
その右手の甲には、太陽の聖痕をデフォルメしたような紋様が焼き付いている。
「だから、安易に触れることなど許されないのです」
「何を言っているのです。本物の太陽の聖女は、王族の手の届かないところで保護しているのですよ」
ああ、玉藻御前のことだろうね。
聖女シェーンが言っていたように、玉藻御前は貴族たちをうまく騙しているらしい。人に取り入ることが長けた玉藻御前だ。人々が望んでいる姿を取っているのだろう。
そして、王族から聖女を切り離そうとしている貴族たち。まぁ、表に出ている王様が偽物だとわかっているから、そのような態度なのだろうね。
第十一部隊長さんは敵側だとシェーンが言っていたので、押し問答をするのは時間の無駄というもの。
私は頭上の聖痕を掴み左目に入れる。こうやって出ているから面倒なことを言われるのだ。
「偽物でいいよ。いや、それでいい。神父様。案内人は別の人でいいんじゃない?夜になったら面倒だし」
冬だから日の入りは早い。偵察に行くにしても、早いほうがいい。それに怪神と遭遇でもしてしまえば、そのまま戦闘に移行することになるしね。
「第十一部隊にはキルクスの者は配属されていないのですよ。唯一レクトフェールのみなのです」
ああ、神父様がお願いという名の命令を出せるのが第十一部隊長さんだけということなのか。
だったら、別に人に頼らなくていいんじゃない?
私は左手を振る。
「青嵐。『けいもう』はここからどっちの方向で距離はどれぐらいなの?」
すると青い髪の武将っぽい姿をした青年が、両手を頭上で合わせて礼をとった姿で現れた。
……そんな姿で現れたのは初めてだけど、どういう意味なのかな?
『主様。怪神はここより北に五里ほどです』
五里!換算ができないよ!茨木ヘルプ!
私は首だけ茨木に向ける。
ヘビどもに距離を換算を茨木から教えてもらわないと使えない。
「二キロメルですね。アンジュ様」
「すぐそこの歩ける距離じゃない。ほら行くよ。第十一部隊長さん、お邪魔しました」
ルディの肩を叩いて私を下ろすように促すも、ルディは私を抱えたまま、部屋を出ていく。
「レクトフェール。あれほど自分の目で物事を判断しなさいと言ってきましたのに、残念ですね。本当に残念です」
背後から聞こえる、抑揚のない神父様の声。その声にルディの隣を歩いているファルが挙動不審者のように鎧をガチャガチャと音をたたせていた。
第十一部隊長さんは、神父様の地雷をぶち抜いたのだから仕方がないよね。
この状況を望んだのは神父様だし、神父様を怒らせた第十一部隊長さんが悪い。
そう、初恋をこじらせた神父様の逆鱗に触れたからだ。
「アンジュ。解除していいですよ。案内人は必要ですからね」
神父様から解除が命じられた。
ああ、案内人ね。別に第十一部隊長さんでなくてもいいような気がするけど。
「それから、先程の話を詳しく聞きたいですね」
神父様は第十一部隊長さんへのお仕置きよりも、私の身に起こった聖女たちの話に興味津々らしい。だから私はルディの母親の顔は知らないよ。
「聞きたいって言われても直ぐにルディに引っ張られたから、私には何もわからないよ……解除」
神父様に言われたので、金縛り中の第十一部隊長さんを解除する。
第十一部隊長さんは痺れて動けなかったので、手を握って開いてを繰り返して動くことを確認していた。
「ルディ。私は自分で歩きたいかな?」
「駄目だ」
「……ほら、神父様がルディ用の鎧を持って来てくれているし、身につけた方がいいんじゃないのかな?」
第十一部隊長さんが私の頭上から目を離さないことを横目に、私はルディに言った。
私がルディを食堂の裏に連行して、ルディの言い分を聞いていたので、ルディは未だに鎧をまとっていないのだ。
「アンジュから目を離すと消えてしまうじゃないか」
「……消えないからね」
私から目を離すと、不安症候群になってしまっているルディをどうしたものかと、私は頭を抱える。
先程の転移で私だけ別のところに引っ張られたので、余計に悪化していると思われた。
さっきのは不可抗力だからね。
「これはよくできた偽物ですね」
その言葉に視線を向ければ、私の方に伸ばされている手があった。偽物?もしかして太陽の聖痕のことを言っている?
だけど、第十一部隊長さんの手が私に届くことはなかった。
「レクトフェール第十一部隊長。貴殿が触れていい御方ではない」
ヴァルト様が夜と夜明けの色が混じった剣身を第十一部隊長さんの首元に突きつけいる。
そして、いつの間にか背後に回り込んだ神父様に腕を掴まれていた。
「レクトフェール。天使の聖痕に触れて、ただで済むと思っているのですか?」
そうだね。たぶん綺麗サッパリと灰になると思うよ。まさに天使になれるだろうね。
それに人の聖痕に故意に触れてはいけないって、神父様が教えていたのにね。
「レクトフェール。アンジュに触れればぶっ殺す」
ルディの言葉は、別の何かが混じっているよね。
この悪化した私がいないと不安症候群をどうしたものか。
それから、本物か偽物かの真偽は私個人としては偽物でいいのだ。だから私からは何も言わない。
「レクトフェール。この聖騎士の聖痕が、アンジュが太陽の聖女である証明ですよ」
神父様は左手で第十一部隊長さんの腕を抑えているので、右手の手袋の指先を咥えて外した。
その右手の甲には、太陽の聖痕をデフォルメしたような紋様が焼き付いている。
「だから、安易に触れることなど許されないのです」
「何を言っているのです。本物の太陽の聖女は、王族の手の届かないところで保護しているのですよ」
ああ、玉藻御前のことだろうね。
聖女シェーンが言っていたように、玉藻御前は貴族たちをうまく騙しているらしい。人に取り入ることが長けた玉藻御前だ。人々が望んでいる姿を取っているのだろう。
そして、王族から聖女を切り離そうとしている貴族たち。まぁ、表に出ている王様が偽物だとわかっているから、そのような態度なのだろうね。
第十一部隊長さんは敵側だとシェーンが言っていたので、押し問答をするのは時間の無駄というもの。
私は頭上の聖痕を掴み左目に入れる。こうやって出ているから面倒なことを言われるのだ。
「偽物でいいよ。いや、それでいい。神父様。案内人は別の人でいいんじゃない?夜になったら面倒だし」
冬だから日の入りは早い。偵察に行くにしても、早いほうがいい。それに怪神と遭遇でもしてしまえば、そのまま戦闘に移行することになるしね。
「第十一部隊にはキルクスの者は配属されていないのですよ。唯一レクトフェールのみなのです」
ああ、神父様がお願いという名の命令を出せるのが第十一部隊長さんだけということなのか。
だったら、別に人に頼らなくていいんじゃない?
私は左手を振る。
「青嵐。『けいもう』はここからどっちの方向で距離はどれぐらいなの?」
すると青い髪の武将っぽい姿をした青年が、両手を頭上で合わせて礼をとった姿で現れた。
……そんな姿で現れたのは初めてだけど、どういう意味なのかな?
『主様。怪神はここより北に五里ほどです』
五里!換算ができないよ!茨木ヘルプ!
私は首だけ茨木に向ける。
ヘビどもに距離を換算を茨木から教えてもらわないと使えない。
「二キロメルですね。アンジュ様」
「すぐそこの歩ける距離じゃない。ほら行くよ。第十一部隊長さん、お邪魔しました」
ルディの肩を叩いて私を下ろすように促すも、ルディは私を抱えたまま、部屋を出ていく。
「レクトフェール。あれほど自分の目で物事を判断しなさいと言ってきましたのに、残念ですね。本当に残念です」
背後から聞こえる、抑揚のない神父様の声。その声にルディの隣を歩いているファルが挙動不審者のように鎧をガチャガチャと音をたたせていた。
第十一部隊長さんは、神父様の地雷をぶち抜いたのだから仕方がないよね。
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