聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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60 暗闇の中心

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『どうでもいい。確かにどうでもいいでしょう。しかし、私達が貴方を殺して、異界というモノを蹂躙する選択肢もあるのではないのですか?』

 そう言って、茨木童子が刀を振るってきた。と、同時に酒呑童子も大太刀を私に向けて振るってくる。

 その攻撃を紙一重で避け、茨木童子に向かって行き一突き。しかし、避けられ、背後からの大太刀を弾き返し、正面からの刀を蹴ること軌道を変える。

『テメー。俺たち二人に本気で勝てると思っているのか?』

 酒呑童子の体が一回り大きくなった気がした。その背後が陽炎のように揺らめきだす。

「『思っているけど?』」

『クハハハ!笑わせてくれる!』

 酒呑童子は今まではお遊びだったと言わんばかりに、威圧感が増していく。そして、瞬間移動したかのように私の目の前に現れ、大太刀を振り切っていた。私はそれを太刀で受け止めず、体を反らすことで避けた。その大太刀が地面に触れた瞬間、辺り一帯を巻き込んで爆発した。
 あ、なんだか脳裏に〇〇無双の雑魚キャラが空を飛んでいく姿が映し出されてしまった。
 その爆発の中、私は平然と立っている。私の結界はこれぐらいじゃビクともしない。

 爆発をモロに食らったはずの私が平然としている事に酒呑童子は、口を歪めて笑った。その笑っている酒呑童子に太刀を振るう···いや、大きく距離を取りその場から離れた。先程まで炎の森に囲まれていたが、今は氷の世界に様変わりしていた。酒呑童子の側には美人の茨木童子が微笑んで立っている。

 炎と氷か。本当に彼らは相反する存在のようだ。何故、そんな者達が共にいるのだろう。

 私は、太刀を構えるが、唐突にとてつもない恐怖が襲いかかってきた。目の前の二人の鬼も恐怖の根源を見ている。

「アンジュ。勝手な行動をするなと言っていたよな」

 魔王様が降臨してしまった。
 言われていたよ?言われていたけれど···ほら、ねぇ?

「確かに聖騎士団の敷地は4キロメルに渡るが、まさかその高度から飛び降りることはないよな」

 あ、転移の腕輪のことか!すっかり頭から抜けていた。

「あ。ごめん」

 私はジリジリと後ずさりをする。

「ごめんだぁ?本当に思っているのか?」

 思っているよ?で、その抜いた刀は誰に向けるつもりなのかな?私なのかな?
 魔王様を鎮めるアイテムは何処かに転がっていないものか。辺りを見渡しても黒ずんだ木々があるばかりで、その間を赤と青の色が駆けて行く姿が見えるのみ。
 は!ちょっと待って!彼らを野放しにするのは危険過ぎる。

「『ちょっと待ちなさいよ!何で逃げてるの!』」

 私は彼らの後を追う。

『こっち来るな!どう見てもアレはテメーに怒っていただろ!』

 酒呑童子。言葉がわからないのによくわかったね。

「『私は元々、常闇から出てきたモノを討伐するために来たのだから、あなた達を逃がすわけないでしょ!』」

 そう言って、酒呑童子と茨木童子に背後に付く。決してルディから逃げているわけではない。

『それなら、あの者を始末してから来て下さい』

 は?ルディを始末?いやいやいやいや。王族に何かすれば、首が飛ぶのは私の方だ。

「『王族を始末するなんて、私に死ねって言ってる?』」

『テメー。俺たちを殺そうとしておいて、その言い草は何だ!』

 まぁ、そうなんだけどね。流石の私も権力というものには逆らえない矮小な人間だ。

「何を仲良さそうに話をしてるんだ?」

「ひっ!」
『うぉ!』
『!!』

 いつの間にかルディが私の横を並走していた。因みに今の速さは鬼の彼らが暴走していた速さだ。普通の人が出せる速さではない。

「仲は良くないよ?さっきまで殺し合っていたからね」

 私はきちんと否定しておく。魔王様の降臨で殺し合いは逃走へと変更されてしまったけれど。

「その割には、俺には理解出来ない言葉で意志の相通ができているみたいだが?」

 言葉がわからないのは仕方がないよね。彼らは異界から来たのだから。

「それは、常闇から出てきたモノだから仕方がないよね。いきなり良くわからない状況になっていたようだったから、説明をしてあげてたぐらいだよ?」

「それが仲がいいと言わずに何というんだ?」

 そう言いながら、ルディは私に手を伸ばしてきた。今の魔王様に捕まると私の命の危険性を感じ、重力の聖痕を使って移動する。
 そう、目の前の巨体に重力の支点を置き、筋肉質の体に張り付く。

『テメー!何をしやがる!』

「『私の命の危険性を感じたので』」

『逆に俺の命の危険性が増したぞ!』

『さっさと貴女が、恐怖の根源の犠牲になればいいのです!』

 酷い、私が生贄になればいいと言わんばかりだ。この鬼畜が!あ、彼らは鬼だった。

 突然、辺りが暗転した。
 何も見えない。私は酒呑童子の背に掴まっているのに、その酒呑童子さえ見ることができない。
 酒呑童子はあまりにもの暗闇に歩みを止め、立ち止まってしまった。

 はぁ。これはやっぱり私が悪いのだろうか。

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