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第9話 少し落ち着け
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私は王族専用の控室で、あの時のことを反省している。あれは襲ってくる水竜を片手で捻り潰す、ヤバイヤツ認定されるべきだったと。
ああ、ここには居ない私の護衛の声の空耳が聞こえてきた。
『そういうことじゃない』
『相変わらず残念な感じですね』と。
今では彼らは、三十代のいいおっさんになっている。あれから十二年経っているからな。
私が一人反省会を開いていると、部屋の奥の扉が開きそこから、フルプレートアーマーを脱いだジオが現れた。
あれから十二年も経てば、背もぐんと伸びて、王妃様似の王子はキラキラ度がアップしている。
この学園ではとてもモテている……らしい。まぁ、学園指定の紺色の制服……大分カスタマイズされて原型はとどめていないが、似合っている。
私は見慣れてしまっているのと、酷く心配されるので、過保護な兄みたいな感覚になってしまっていた。
あれだな。幼い頃から婚約者でいると男女のドキドキ感より、家族的な感覚になってしまうのが、こういう制度の欠点でもあるな。いや、それが目的だからいいのか。
「イーリア!」
何か焦った感じで、ジオに駆け寄ってこられた。どうしたのだろうか?
「寝ていないと駄目じゃないか!」
私は長椅子の上で押し倒され、ジオの顔が近づいてきた。
……まつげ長いな。それにしても、なぜ押し倒されているのだ?
そしてコツンと、おでこにジオのおでこが当たる。
「……イーリアの体温が感じられない!」
「馬鹿か? さっきまで剣を振っていたジオの方が体温が高いに決まっているだろう?」
昔はお嬢様言葉を頑張っていたが、限界を感じた私は、王子をバカ呼ばわりするほど、無礼なヤツになっていた。
「ま……まさか! 水を被ったために、低体温症に!」
「いや、凍りつく池に落ちたわけじゃない。少し落ち着け」
このやり取りをしながらも、ジオは私のおでこから離れない。いい加減に離れて欲しい。
「殿下。節度をもった行動をしてくださいと、いつも言っていますよね」
ジオの侍従から苦言が出てきた。
この格好は、ジオからキスされているように見えてしまう。
因みに幾人かジオの侍従が居たものの、彼しか残らなかった。いや、元々ジオの護衛騎士だったザイルがジオの身の回りの世話をするのに一番適していたということだった。
「ザイル!」
ジオは侍従の名を呼んで、身を起こす。はぁ、やっと離れてくれた。そして私も身を起こす。
ジオは私の水竜に食われた偽装事件をきっかけに、本気で鍛えるようになり、見た目ではわからないが、かなり筋肉質だ。はっきり言って重い。
そして時々絞め殺されるのかと思うぐらいに、抱きつかれるので、鍛えるのもほどほどにしてほしい。
「あの聖女とか言う奴は誰だったか?」
聖女? そんな人がいるの?
「ベルメール男爵家からガリーペルラ侯爵家の養女になった方ですね」
「殺していいよな」
「駄目ですよ」
人殺しは駄目だ。誰か知らないけど、聖女というぐらいだから、魔力より聖力がとても多い人なのだろう。
「イーリアに敵意を持った時点で、始末するべきだ。それに聖女とか言ってもイーリアほど聖女にふさわしい者はいない」
「あ、そういうのは勘弁」
ん? 私に敵意ということは、さっきのレモン色の髪の女生徒か……あれ? でも校章が高位貴族を示すものじゃ無かったけど?
しかし、私に面倒なことを、やらそうとしないで欲しい。確かに母親の家系が聖女の家系らしいけど。
「はぁ。殿下、サルヴァール公爵令嬢は普通の令嬢と違うのは、誰もが認めておいでです。神の声を聞けるのは誰もできません」
いや、だから電波系令嬢じゃないと何度も否定しているのに! このザイルはジオと初めて会った時から居るから、そんなことは知っているはずなのに!
そのとき、この控室に扉をノックする音が響き渡った。
ジオに二回戦の再戦をするように説得するため、誰かが訪ねてきたのかな?
侍従のザイルが出入り口に向かっていく。
「聖女はやりたい人がやればいい」
「イーリアはそう言うと思っている。でも、イーリアは治癒魔術も完璧だし」
「ジオが騎士団長に挑んで行って、ボロボロにされたから、練習台にはよかった」
「結界術も完璧だし」
「ジオが修業だと言ってダンジョンに挑むから安全地帯の確保の訓練にはなった」
「浄化の魔術も国一番と言っていいだろう?」
「ジオがダンジョンマスターぶっ殺すと言って、グールや屍鬼やレイスが徘徊する上階の古城の中を突っ走るから、それは上手くもなる」
「……全部、俺のためだな」
「言い換えると、そうとも言える」
そうとも言えるが、これはジオの異常さを表していると言っても良かったのだった。
ああ、ここには居ない私の護衛の声の空耳が聞こえてきた。
『そういうことじゃない』
『相変わらず残念な感じですね』と。
今では彼らは、三十代のいいおっさんになっている。あれから十二年経っているからな。
私が一人反省会を開いていると、部屋の奥の扉が開きそこから、フルプレートアーマーを脱いだジオが現れた。
あれから十二年も経てば、背もぐんと伸びて、王妃様似の王子はキラキラ度がアップしている。
この学園ではとてもモテている……らしい。まぁ、学園指定の紺色の制服……大分カスタマイズされて原型はとどめていないが、似合っている。
私は見慣れてしまっているのと、酷く心配されるので、過保護な兄みたいな感覚になってしまっていた。
あれだな。幼い頃から婚約者でいると男女のドキドキ感より、家族的な感覚になってしまうのが、こういう制度の欠点でもあるな。いや、それが目的だからいいのか。
「イーリア!」
何か焦った感じで、ジオに駆け寄ってこられた。どうしたのだろうか?
「寝ていないと駄目じゃないか!」
私は長椅子の上で押し倒され、ジオの顔が近づいてきた。
……まつげ長いな。それにしても、なぜ押し倒されているのだ?
そしてコツンと、おでこにジオのおでこが当たる。
「……イーリアの体温が感じられない!」
「馬鹿か? さっきまで剣を振っていたジオの方が体温が高いに決まっているだろう?」
昔はお嬢様言葉を頑張っていたが、限界を感じた私は、王子をバカ呼ばわりするほど、無礼なヤツになっていた。
「ま……まさか! 水を被ったために、低体温症に!」
「いや、凍りつく池に落ちたわけじゃない。少し落ち着け」
このやり取りをしながらも、ジオは私のおでこから離れない。いい加減に離れて欲しい。
「殿下。節度をもった行動をしてくださいと、いつも言っていますよね」
ジオの侍従から苦言が出てきた。
この格好は、ジオからキスされているように見えてしまう。
因みに幾人かジオの侍従が居たものの、彼しか残らなかった。いや、元々ジオの護衛騎士だったザイルがジオの身の回りの世話をするのに一番適していたということだった。
「ザイル!」
ジオは侍従の名を呼んで、身を起こす。はぁ、やっと離れてくれた。そして私も身を起こす。
ジオは私の水竜に食われた偽装事件をきっかけに、本気で鍛えるようになり、見た目ではわからないが、かなり筋肉質だ。はっきり言って重い。
そして時々絞め殺されるのかと思うぐらいに、抱きつかれるので、鍛えるのもほどほどにしてほしい。
「あの聖女とか言う奴は誰だったか?」
聖女? そんな人がいるの?
「ベルメール男爵家からガリーペルラ侯爵家の養女になった方ですね」
「殺していいよな」
「駄目ですよ」
人殺しは駄目だ。誰か知らないけど、聖女というぐらいだから、魔力より聖力がとても多い人なのだろう。
「イーリアに敵意を持った時点で、始末するべきだ。それに聖女とか言ってもイーリアほど聖女にふさわしい者はいない」
「あ、そういうのは勘弁」
ん? 私に敵意ということは、さっきのレモン色の髪の女生徒か……あれ? でも校章が高位貴族を示すものじゃ無かったけど?
しかし、私に面倒なことを、やらそうとしないで欲しい。確かに母親の家系が聖女の家系らしいけど。
「はぁ。殿下、サルヴァール公爵令嬢は普通の令嬢と違うのは、誰もが認めておいでです。神の声を聞けるのは誰もできません」
いや、だから電波系令嬢じゃないと何度も否定しているのに! このザイルはジオと初めて会った時から居るから、そんなことは知っているはずなのに!
そのとき、この控室に扉をノックする音が響き渡った。
ジオに二回戦の再戦をするように説得するため、誰かが訪ねてきたのかな?
侍従のザイルが出入り口に向かっていく。
「聖女はやりたい人がやればいい」
「イーリアはそう言うと思っている。でも、イーリアは治癒魔術も完璧だし」
「ジオが騎士団長に挑んで行って、ボロボロにされたから、練習台にはよかった」
「結界術も完璧だし」
「ジオが修業だと言ってダンジョンに挑むから安全地帯の確保の訓練にはなった」
「浄化の魔術も国一番と言っていいだろう?」
「ジオがダンジョンマスターぶっ殺すと言って、グールや屍鬼やレイスが徘徊する上階の古城の中を突っ走るから、それは上手くもなる」
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