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第8話 バレてる?バレていない?
「いつものテラス席にしますか?」
私の背後からここに居ないはずの人物の声が……。
恐る恐る振り返れば、私を見下ろす赤い目が……ストーカーです!!
え? いつから? 馬車を降りたときは御者以外は誰もいなかった。
そう、貴族街の近くだったので、あまり一般庶民は近づかないのです。
くっ! ハイテンションで店の表に飾ってある商品を眺めていたので、私が気づいていない可能性が高いです。
そして手を取られて路地から一段高くなっているテラス席に連れて行かれてしまいました。
席は元からテラス席にしようと思っていたので文句はないのですけどね。
私は向かい側に腰を下ろすレクスを睨みつけます。
生成りのシャツにダークブラウンのベストを着て、同色のトラウザーを履いている姿は、威圧感たっぷりの団長と同一人物とは思えません。
恐らく右目の眼帯を隠すように前髪を流しているので、威圧感が抑えられているのでしょう。
あと、用があるなら明日でいいではないですか。
「可愛いですね。とても似合っていますよ。そう言えばマルトレディル伯爵には二人の子供がいらっしゃいましたね」
はっ! そうです。今の私は普通の令嬢の格好をしているではないですか!
それなのに何故、レクスが背後霊のようにいたのですか!
この流れ絶対にバレているではないですか。
そうです。もう父に責任を押し付けましょう。言い出した本人が責任を取るべきです。
「最近王都の治安がいいとは言えず、姉のご令嬢のドレスを借りて変装されますと、攫われる可能性がありますので、避けたほうがいいと思いますよ」
ん? バレていない?
父を知っているので、そっくりな私がその姉だと気づいていない。良し!
でも、なんだか解せない。
やはり胸なのですか? 基準は胸なのですか?
「王都の治安が悪いのですか?」
取り敢えず、話の方向を逸らしましょう。
「そうですね。昔は騎士団が治安維持に努めていたそうですが、今は警邏隊があり、そこが治安維持をしていますからね。まぁ色々あるのですよ」
「え? あの書かされた大量の書類の中に警備に関することがありましたよ」
「それは貴族街と王城に対する警備です」
あ、確かにそうでした。
書類の不備があったので、休暇は無しと言いにきたわけではないようです。
だったら、何の用でここまで団長とあろう方が来られたのでしょう。
「それで、私に何の用ですか? わざわざ気配を消して、つきまとっていたのですよね」
「気配を消していたのは、昔からのクセなので申し訳ありません」
知っているわよ。
王家の影を担うのがファングラン公爵家ですからね。昔から背後霊のように居るのは止めて欲しいと言っていたはずです。
「それから、あまりにも隊長が可愛らしくはしゃいでいる姿を見て、声をかけるタイミングが……」
……は……恥ずかしいです。私、そんなにはしゃいでいたのですか?
「それで、用件は何ですか?」
「私も隊長から剣のご指導をいただきたく、お時間が空いたときにお願いしたいと思っていたのです」
で、ストーカーをしていたと。
逆! それ逆ですから!
団長が従騎士の私に剣の指導をするのであれば、わかりましたと頷きましょう。
従騎士に指導される団長の姿など、他の騎士に見せられないではないですか!
私は思わず頭を抱えます。
いい加減に敬語を直して欲しいです。
従騎士は団長の指導は行いません。
どう言えば理解してくれるのでしょうか。
「ご歓談中失礼します」
あら? ウエイトレスではなく、店のマスターが注文を聞きに来ました。
二十年も経てば白髪が増えて、マスターの貫禄が増していますわね。
「いつもご贔屓にしていただき、ありがとうございます。ファングラン騎士団団長様」
え?こんな下町の店に通っていますの? 公爵家の方が?
「ご注文はお決まりでしょうか?」
あ、そう言えばメニュー表を開いていませんでした。
「珈琲で。マルトレディル、好きな物を頼むといいですよ」
これは団長の奢りということですね。それであれば……。
私はメニュー表をマスターのほうに向けて、指でさし示します。
「ここからここまでください。あと飲み物は珈琲でお願いします」
「これはこれは、珍しく騎士団団長様がご令嬢を連れて来られたと思っていましたら、そうですか。裏メニューでプリンアラモードがあるのですがいかがですか?」
「それもいただきます。お皿は一つにまとめて欲しいです」
「承知いたしました」
マスターは機嫌良く店の中に戻って行きました。
今からケーキ全種類用意してプリンアラモードを作るというのに、どうされたのでしょう。はっ! 金払いがいい団長がいるからですか。
「昔は隊長に良く奢っていただきましたが、隊長にお返しができる日がくるとは思っていませんでした」
何やら感無量の団長を見ながら、肩掛けのポシェットからタバコを取り出して、火をつけます。
お返しねぇ。
青い空に上る白い煙を見ながら、遠い目になります。
隊長の従騎士ですからというよくわからない理由で、休日も勝手に従騎士をやっていたレクス。なので、必然的にここのカフェで奢ることになっただけです。
「はぁ、休日ぐらいゆっくりされたらよろしいのでは?」
私は白い煙を吐きながら言います。
何、私の背後霊をしているのですか?
何がご指導ですか?
休暇という意味を履き違えていませんか?
私の背後からここに居ないはずの人物の声が……。
恐る恐る振り返れば、私を見下ろす赤い目が……ストーカーです!!
え? いつから? 馬車を降りたときは御者以外は誰もいなかった。
そう、貴族街の近くだったので、あまり一般庶民は近づかないのです。
くっ! ハイテンションで店の表に飾ってある商品を眺めていたので、私が気づいていない可能性が高いです。
そして手を取られて路地から一段高くなっているテラス席に連れて行かれてしまいました。
席は元からテラス席にしようと思っていたので文句はないのですけどね。
私は向かい側に腰を下ろすレクスを睨みつけます。
生成りのシャツにダークブラウンのベストを着て、同色のトラウザーを履いている姿は、威圧感たっぷりの団長と同一人物とは思えません。
恐らく右目の眼帯を隠すように前髪を流しているので、威圧感が抑えられているのでしょう。
あと、用があるなら明日でいいではないですか。
「可愛いですね。とても似合っていますよ。そう言えばマルトレディル伯爵には二人の子供がいらっしゃいましたね」
はっ! そうです。今の私は普通の令嬢の格好をしているではないですか!
それなのに何故、レクスが背後霊のようにいたのですか!
この流れ絶対にバレているではないですか。
そうです。もう父に責任を押し付けましょう。言い出した本人が責任を取るべきです。
「最近王都の治安がいいとは言えず、姉のご令嬢のドレスを借りて変装されますと、攫われる可能性がありますので、避けたほうがいいと思いますよ」
ん? バレていない?
父を知っているので、そっくりな私がその姉だと気づいていない。良し!
でも、なんだか解せない。
やはり胸なのですか? 基準は胸なのですか?
「王都の治安が悪いのですか?」
取り敢えず、話の方向を逸らしましょう。
「そうですね。昔は騎士団が治安維持に努めていたそうですが、今は警邏隊があり、そこが治安維持をしていますからね。まぁ色々あるのですよ」
「え? あの書かされた大量の書類の中に警備に関することがありましたよ」
「それは貴族街と王城に対する警備です」
あ、確かにそうでした。
書類の不備があったので、休暇は無しと言いにきたわけではないようです。
だったら、何の用でここまで団長とあろう方が来られたのでしょう。
「それで、私に何の用ですか? わざわざ気配を消して、つきまとっていたのですよね」
「気配を消していたのは、昔からのクセなので申し訳ありません」
知っているわよ。
王家の影を担うのがファングラン公爵家ですからね。昔から背後霊のように居るのは止めて欲しいと言っていたはずです。
「それから、あまりにも隊長が可愛らしくはしゃいでいる姿を見て、声をかけるタイミングが……」
……は……恥ずかしいです。私、そんなにはしゃいでいたのですか?
「それで、用件は何ですか?」
「私も隊長から剣のご指導をいただきたく、お時間が空いたときにお願いしたいと思っていたのです」
で、ストーカーをしていたと。
逆! それ逆ですから!
団長が従騎士の私に剣の指導をするのであれば、わかりましたと頷きましょう。
従騎士に指導される団長の姿など、他の騎士に見せられないではないですか!
私は思わず頭を抱えます。
いい加減に敬語を直して欲しいです。
従騎士は団長の指導は行いません。
どう言えば理解してくれるのでしょうか。
「ご歓談中失礼します」
あら? ウエイトレスではなく、店のマスターが注文を聞きに来ました。
二十年も経てば白髪が増えて、マスターの貫禄が増していますわね。
「いつもご贔屓にしていただき、ありがとうございます。ファングラン騎士団団長様」
え?こんな下町の店に通っていますの? 公爵家の方が?
「ご注文はお決まりでしょうか?」
あ、そう言えばメニュー表を開いていませんでした。
「珈琲で。マルトレディル、好きな物を頼むといいですよ」
これは団長の奢りということですね。それであれば……。
私はメニュー表をマスターのほうに向けて、指でさし示します。
「ここからここまでください。あと飲み物は珈琲でお願いします」
「これはこれは、珍しく騎士団団長様がご令嬢を連れて来られたと思っていましたら、そうですか。裏メニューでプリンアラモードがあるのですがいかがですか?」
「それもいただきます。お皿は一つにまとめて欲しいです」
「承知いたしました」
マスターは機嫌良く店の中に戻って行きました。
今からケーキ全種類用意してプリンアラモードを作るというのに、どうされたのでしょう。はっ! 金払いがいい団長がいるからですか。
「昔は隊長に良く奢っていただきましたが、隊長にお返しができる日がくるとは思っていませんでした」
何やら感無量の団長を見ながら、肩掛けのポシェットからタバコを取り出して、火をつけます。
お返しねぇ。
青い空に上る白い煙を見ながら、遠い目になります。
隊長の従騎士ですからというよくわからない理由で、休日も勝手に従騎士をやっていたレクス。なので、必然的にここのカフェで奢ることになっただけです。
「はぁ、休日ぐらいゆっくりされたらよろしいのでは?」
私は白い煙を吐きながら言います。
何、私の背後霊をしているのですか?
何がご指導ですか?
休暇という意味を履き違えていませんか?
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