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第4話
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ということがあったのを思い出しましたわ。
忘れていても仕方がありませんわ。
あのあと、調べていたルファアルカを栽培して、ルファアルカ水が美容にいいとわかって、ラヴァメイヤーブランドを立ち上げて忙しい日々を過ごしていたのですもの。
今思い返してみれば、執務に集中していると、カインが途中で休憩を促してくることがよくあると思っていたのです。
これは、図書館の日々のことがあったからなのでしょうか。
「その書面に書いてあるとおり、帝国領のいち領主になりましてね。一緒に領地の運営をして欲しいのですが、如何ですか?」
カインからそう言われて、兄が持っている紙を奪い取るようにして確認します。
ヴァレーシア帝国領? ……おかしいですわね。ヴァレーシア国として帝国の属国だったはずです。
「カイン。ここの表記が間違っていますわよ。ヴァレーシア帝国領ではなくて、ヴァレーシア国のはずです」
「それは五年前に反乱が起きましたので、丁度良さそうだと潰しておきました」
おかしな言葉が混じっていませんでした? 五年前に反乱が起きたのは知っています。そしてその後直ぐに鎮圧されたのも知っています。
「ごめんなさい。ちょっと理解できない言葉がありましたわ。何が丁度よかったのですか?」
「兄の皇太子に反感を抱かせずに、領地を得ることにですね」
第二皇子としての立場からですか。確かに帝都から離れた属国の領地を帝国領とすることに反感を与えることはないでしょう。
「あと、アフィーリアを妻に迎える条件もそれで満たされますよね?」
「……五年前ですわよね?」
「ええ」
ちらりと兄を見ます。
たぶんその時期は国王陛下から婚約の打診があった時期と重なっていたと思われます。
「だから、遠回しにやめるように言っていたじゃないか。あの馬鹿との婚約を」
「全然わかりませんでしたが?」
そもそも、私には婚約者などいませんでしたから、国王陛下の話を断る理由はないのですよ。
それに領地の采配をしていいという条件なら、私が飛びつくのは兄もわかっていたはずです。
「でも、アフィーリアの望みも叶えて、帝国との関係を良好にする案を出した私を褒めて欲しいぐらいだぞ」
「あのあと、頬を叩いたことをグジグジと嘆いていて鬱陶しいかったですがね」
「うるさいぞ。カインヴァール」
「後悔するならな叩かなければよかったのですよ」
そうなると気になることが一つ出てくるのです。
「あの……メアリーローズ様のあのことは演技だったのですか?」
私が気になるのはこれです。
あのときのメアリーローズ様の言葉。
「あれがメアリーローズの本来の姿なので、気にしなくていいですよ」
「え? 本来の姿?」
「あのような性格だから、父も嫁ぎ先を決めかねていたというのもありますね」
そうですか。あれがメアリーローズ様の本心だったのですか。
『そう! ひと目でわたくしは恋に落ちたのです。あの方こそわたくしの王子様だと感じたのです。
その王子様の愛した者が豹変したとき、どういう表情をするか想像するたけで、ゾクゾクしてしまいますわ。
恐怖に身を縮めるのかしら? 子犬のように怯えて逃げ出してしまうのかしら?
そんな王子様を飼って過ごせるなんて幸せだと思いませんこと?』
頭が痛いと押さえながら、もう話をする気にもなれないといった理由がこれです。
ミカエル様が、彼女の本性にいつ気がつくのかわかりませんが、その未来に希望がないことは、三年前から知っていたのです。
彼女の理想の王子様への愛は歪んでいたのでした。
私が悪女ならば、メアリーローズ王女は悪魔なのかもしれません。
「それで執事トーマス。何故貴方がここにいるのかしら?」
「それは私が引き抜いたからですよ。いい人材は確保しておきませんと」
カイン。いい年のトーマスを引き抜いたのですか? 確かに執事としては完璧でしたが。
「あのあと直ぐに後任の者に任せてきました。これからも何卒よろしくお願い申し上げます。奥様」
「まだ、返事もしていなし、籍も入れてないわよ」
こうして私は新たな第一歩を踏みだしたのでした。
*
閑話 公爵夫人と侍従
時間が全然足りませんわ。
何故に一日が二十四時間しかないのです!
私は積み上げられた書類の山に埋もれつつ作業をしています。
「アフィーリア様」
「……」
「アフィーリア様」
「……」
「もう、出立しなければならない時間になります」
「カイン。この状況を見てそのような言葉がよく出てくるわね」
私の手を止めてくるカインを睨みつけます。カインの手には紙の束がありますので、また積み上がっていくのでしょう。
「急ぐ必要があるのはこちらです。残りは王都から戻られてからでもいいのではないのですか?」
王都。三日後には国王陛下主催の夜会が開かれる予定なのです。
ファングラン公爵領から王都までは道路事情から車で三日かかります。はっきり言って、今日中には出発しないといけないのですが、確認しなければならないことが、山積みになっているのです。
王都に行けば、それはそれで確認しなければならないことがあるので、こちらの仕事を持っていけるのは道中でできる分のみ。
「はっきり言って、アフィーリア様は手を広げすぎなのです。何故に海運業まで始めてしまったのですか」
「流通網の掌握よ。バカバカしい運搬料の削減。人の足元を見て釣り上げてくる馬鹿を相手にするのが面倒になったのよ」
「だから、交渉事は私に任せてくださいと言ったではありませんか」
わかっているわよ。私の性格がキツイことぐらい。だから、ファングラン公爵夫人は強欲というレッテルを貼られているのは承知しているわ。
そして、ワザと悪女だという噂も流させているもの。
「弱みを見せると引きずり落とされるのが貴族社会よ」
「はい。ですから、そういうことは私の方が上手く立ち回れます」
それもわかっているわよ。帝国の皇子が無能のはずないじゃない。
でも悔しいじゃない。私にできないことがあるって。
でも、現状ではいっぱいいっぱいなのは事実。
「それでは、王都での交渉はカインに任せるわ」
「任せていただいて光栄です」
そういうカインはいつもの何を思っているのかわからない笑みを浮かべています。
そうやってサクサクと仕事を処理するカインの能力の高さに私は嫉妬するのです。
比べても仕方がないのですけど。
*
カインSide
「ずるい! ずるい!」
赤い目に涙を浮かべて、ソファーに座りながらずるいと言ってくるアフィーリア。
誰ですか? アフィーリアにワインを飲ませた者は?
「カイン様! 申し訳ございません。国王陛下に献上するワインを葡萄ジュースと勘違いされた奥様が飲んでしまわれて……」
アフィーリア付きの侍女ですか。言っておきますが、葡萄ジュースの方も献上品ですよ。
「そもそもどうして、ここにあるのです」
ここは王都に向かっている道中のホテルですから、献上品は先に王都に送っているはずです。
「荷物に手違いがありまして、一部の献上品はこちらにあります」
どうして、手違いがあった時点で報告をしないのですか。それはアフィーリアが勘違いしてワインを飲んでしまうわけです。
王都にいるトーマスがいれば、このような手違いは起こらなかったでしょうに。
「アフィーリア様。今日はもう休みましょう」
「カインはずるい」
はぁ、元々のファングラン公爵領の特産はワインなのですが、ワインを飲むといつもこうなるのです。
「私、頑張っているのに!」
「はい、頑張っておられますから、今日は休みましょう」
「うううううう」
はぁ、困りましたね。このようなファングラン公爵夫人を他人の目に晒すわけにはいきません。
「護衛の者に言ってホテルの関係者も、室内には立ち入らないようにしなさい」
側にいるアフィーリア付きの侍女に命じます。どうしてこの者をアフィーリアは侍女として側に置いているのですかね。
「はい! そのように致します」
侍女の背中を見送って、アフィーリアに視線を戻しますと、完全に不貞腐れていますね。
今度は何にご立腹なのでしょうかね?
「それで、今回は何が不満なのですか?」
「海運業のことを文句言われた」
「文句ではなく、必要がない事業だったのではという話しです。サルヴァードル伯爵家に喧嘩売っているようなものですよ」
サルヴァードル伯爵家は王国の海運ルートを掌握しています。そこと敵対するということは、あまりよろしくはありません。
「だから飛び地のレファルニア港を手に入れたのに!」
「ハウザード子爵の借金を肩代わりするという名目ですね」
「そう! そして帝国で製造された最新式の船! 絶対に現行の船では足の速さは敵わない! それを使えば、流通網が格段に早くなる! するとサルヴァードル伯爵家よりファングラン公爵家に荷を運ぶ仕事が来る! サルヴァードル伯爵家はファングラン公爵家に頭を下げるしかなくなるのよ!」
上機嫌で語りだすアフィーリア。これは出発前に言ったことを根に持たれていたようですね。
「それで、海運事業は全部サルヴァードル伯爵家にくれてやるわ」
「おや? そのまま事業を展開していかれるのではないのですか?」
「わかっているわよ。私が手を出すことじゃないって、でも航路を使おうと思えばサルヴァードル伯爵家の言いなりにならないといけない。それっておかしいわ。だから私はそのおかしいを突きつけたいのよ」
なにかと傲慢で強引な手を使われるアフィーリアですが、根本的な考えは昔から変わりませんね。
小さな疑問を突き詰めていく。
おそらく海運産業はこれから変わっていくことでしょう。
「そのようなお考えだったとは、アフィーリア様の意を汲み取れず侍従としては失格ですね」
「そ……んなことはないのよ!」
アフィーリアは立ち上がって私に詰め寄ってきました。
「カインにはとても助けられているし、カインの意見はまともだと思うわ」
おや? おや?
「だけど……」
「だけど? なにですか?」
「頑張っている私をもっと褒めてくれてもいいと思うの」
「褒めていますよ?」
「足りない! 全然足りない!」
アフィーリアの金色の髪を撫でながら言葉にします。
「私は頑張っているアフィーリアも好きですが、こうして素直に言葉にしてくれるアフィーリアも好きですよ」
「それ、褒めてるの?」
「褒めていますよ」
「ならいいわ」
そう言ってアフィーリアは目を閉じて力なく倒れていくのを抱きかかえます。
いつも酔っているときのように、素直だと嬉しいのですが。
明日の朝には、今のことは綺麗さっぱりと忘れて、頭が痛いと言っていることでしょうね。
寝ているアフィーリアの額に口づけをして、私は寝室につれていくのでした。
____________
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。
忘れていても仕方がありませんわ。
あのあと、調べていたルファアルカを栽培して、ルファアルカ水が美容にいいとわかって、ラヴァメイヤーブランドを立ち上げて忙しい日々を過ごしていたのですもの。
今思い返してみれば、執務に集中していると、カインが途中で休憩を促してくることがよくあると思っていたのです。
これは、図書館の日々のことがあったからなのでしょうか。
「その書面に書いてあるとおり、帝国領のいち領主になりましてね。一緒に領地の運営をして欲しいのですが、如何ですか?」
カインからそう言われて、兄が持っている紙を奪い取るようにして確認します。
ヴァレーシア帝国領? ……おかしいですわね。ヴァレーシア国として帝国の属国だったはずです。
「カイン。ここの表記が間違っていますわよ。ヴァレーシア帝国領ではなくて、ヴァレーシア国のはずです」
「それは五年前に反乱が起きましたので、丁度良さそうだと潰しておきました」
おかしな言葉が混じっていませんでした? 五年前に反乱が起きたのは知っています。そしてその後直ぐに鎮圧されたのも知っています。
「ごめんなさい。ちょっと理解できない言葉がありましたわ。何が丁度よかったのですか?」
「兄の皇太子に反感を抱かせずに、領地を得ることにですね」
第二皇子としての立場からですか。確かに帝都から離れた属国の領地を帝国領とすることに反感を与えることはないでしょう。
「あと、アフィーリアを妻に迎える条件もそれで満たされますよね?」
「……五年前ですわよね?」
「ええ」
ちらりと兄を見ます。
たぶんその時期は国王陛下から婚約の打診があった時期と重なっていたと思われます。
「だから、遠回しにやめるように言っていたじゃないか。あの馬鹿との婚約を」
「全然わかりませんでしたが?」
そもそも、私には婚約者などいませんでしたから、国王陛下の話を断る理由はないのですよ。
それに領地の采配をしていいという条件なら、私が飛びつくのは兄もわかっていたはずです。
「でも、アフィーリアの望みも叶えて、帝国との関係を良好にする案を出した私を褒めて欲しいぐらいだぞ」
「あのあと、頬を叩いたことをグジグジと嘆いていて鬱陶しいかったですがね」
「うるさいぞ。カインヴァール」
「後悔するならな叩かなければよかったのですよ」
そうなると気になることが一つ出てくるのです。
「あの……メアリーローズ様のあのことは演技だったのですか?」
私が気になるのはこれです。
あのときのメアリーローズ様の言葉。
「あれがメアリーローズの本来の姿なので、気にしなくていいですよ」
「え? 本来の姿?」
「あのような性格だから、父も嫁ぎ先を決めかねていたというのもありますね」
そうですか。あれがメアリーローズ様の本心だったのですか。
『そう! ひと目でわたくしは恋に落ちたのです。あの方こそわたくしの王子様だと感じたのです。
その王子様の愛した者が豹変したとき、どういう表情をするか想像するたけで、ゾクゾクしてしまいますわ。
恐怖に身を縮めるのかしら? 子犬のように怯えて逃げ出してしまうのかしら?
そんな王子様を飼って過ごせるなんて幸せだと思いませんこと?』
頭が痛いと押さえながら、もう話をする気にもなれないといった理由がこれです。
ミカエル様が、彼女の本性にいつ気がつくのかわかりませんが、その未来に希望がないことは、三年前から知っていたのです。
彼女の理想の王子様への愛は歪んでいたのでした。
私が悪女ならば、メアリーローズ王女は悪魔なのかもしれません。
「それで執事トーマス。何故貴方がここにいるのかしら?」
「それは私が引き抜いたからですよ。いい人材は確保しておきませんと」
カイン。いい年のトーマスを引き抜いたのですか? 確かに執事としては完璧でしたが。
「あのあと直ぐに後任の者に任せてきました。これからも何卒よろしくお願い申し上げます。奥様」
「まだ、返事もしていなし、籍も入れてないわよ」
こうして私は新たな第一歩を踏みだしたのでした。
*
閑話 公爵夫人と侍従
時間が全然足りませんわ。
何故に一日が二十四時間しかないのです!
私は積み上げられた書類の山に埋もれつつ作業をしています。
「アフィーリア様」
「……」
「アフィーリア様」
「……」
「もう、出立しなければならない時間になります」
「カイン。この状況を見てそのような言葉がよく出てくるわね」
私の手を止めてくるカインを睨みつけます。カインの手には紙の束がありますので、また積み上がっていくのでしょう。
「急ぐ必要があるのはこちらです。残りは王都から戻られてからでもいいのではないのですか?」
王都。三日後には国王陛下主催の夜会が開かれる予定なのです。
ファングラン公爵領から王都までは道路事情から車で三日かかります。はっきり言って、今日中には出発しないといけないのですが、確認しなければならないことが、山積みになっているのです。
王都に行けば、それはそれで確認しなければならないことがあるので、こちらの仕事を持っていけるのは道中でできる分のみ。
「はっきり言って、アフィーリア様は手を広げすぎなのです。何故に海運業まで始めてしまったのですか」
「流通網の掌握よ。バカバカしい運搬料の削減。人の足元を見て釣り上げてくる馬鹿を相手にするのが面倒になったのよ」
「だから、交渉事は私に任せてくださいと言ったではありませんか」
わかっているわよ。私の性格がキツイことぐらい。だから、ファングラン公爵夫人は強欲というレッテルを貼られているのは承知しているわ。
そして、ワザと悪女だという噂も流させているもの。
「弱みを見せると引きずり落とされるのが貴族社会よ」
「はい。ですから、そういうことは私の方が上手く立ち回れます」
それもわかっているわよ。帝国の皇子が無能のはずないじゃない。
でも悔しいじゃない。私にできないことがあるって。
でも、現状ではいっぱいいっぱいなのは事実。
「それでは、王都での交渉はカインに任せるわ」
「任せていただいて光栄です」
そういうカインはいつもの何を思っているのかわからない笑みを浮かべています。
そうやってサクサクと仕事を処理するカインの能力の高さに私は嫉妬するのです。
比べても仕方がないのですけど。
*
カインSide
「ずるい! ずるい!」
赤い目に涙を浮かべて、ソファーに座りながらずるいと言ってくるアフィーリア。
誰ですか? アフィーリアにワインを飲ませた者は?
「カイン様! 申し訳ございません。国王陛下に献上するワインを葡萄ジュースと勘違いされた奥様が飲んでしまわれて……」
アフィーリア付きの侍女ですか。言っておきますが、葡萄ジュースの方も献上品ですよ。
「そもそもどうして、ここにあるのです」
ここは王都に向かっている道中のホテルですから、献上品は先に王都に送っているはずです。
「荷物に手違いがありまして、一部の献上品はこちらにあります」
どうして、手違いがあった時点で報告をしないのですか。それはアフィーリアが勘違いしてワインを飲んでしまうわけです。
王都にいるトーマスがいれば、このような手違いは起こらなかったでしょうに。
「アフィーリア様。今日はもう休みましょう」
「カインはずるい」
はぁ、元々のファングラン公爵領の特産はワインなのですが、ワインを飲むといつもこうなるのです。
「私、頑張っているのに!」
「はい、頑張っておられますから、今日は休みましょう」
「うううううう」
はぁ、困りましたね。このようなファングラン公爵夫人を他人の目に晒すわけにはいきません。
「護衛の者に言ってホテルの関係者も、室内には立ち入らないようにしなさい」
側にいるアフィーリア付きの侍女に命じます。どうしてこの者をアフィーリアは侍女として側に置いているのですかね。
「はい! そのように致します」
侍女の背中を見送って、アフィーリアに視線を戻しますと、完全に不貞腐れていますね。
今度は何にご立腹なのでしょうかね?
「それで、今回は何が不満なのですか?」
「海運業のことを文句言われた」
「文句ではなく、必要がない事業だったのではという話しです。サルヴァードル伯爵家に喧嘩売っているようなものですよ」
サルヴァードル伯爵家は王国の海運ルートを掌握しています。そこと敵対するということは、あまりよろしくはありません。
「だから飛び地のレファルニア港を手に入れたのに!」
「ハウザード子爵の借金を肩代わりするという名目ですね」
「そう! そして帝国で製造された最新式の船! 絶対に現行の船では足の速さは敵わない! それを使えば、流通網が格段に早くなる! するとサルヴァードル伯爵家よりファングラン公爵家に荷を運ぶ仕事が来る! サルヴァードル伯爵家はファングラン公爵家に頭を下げるしかなくなるのよ!」
上機嫌で語りだすアフィーリア。これは出発前に言ったことを根に持たれていたようですね。
「それで、海運事業は全部サルヴァードル伯爵家にくれてやるわ」
「おや? そのまま事業を展開していかれるのではないのですか?」
「わかっているわよ。私が手を出すことじゃないって、でも航路を使おうと思えばサルヴァードル伯爵家の言いなりにならないといけない。それっておかしいわ。だから私はそのおかしいを突きつけたいのよ」
なにかと傲慢で強引な手を使われるアフィーリアですが、根本的な考えは昔から変わりませんね。
小さな疑問を突き詰めていく。
おそらく海運産業はこれから変わっていくことでしょう。
「そのようなお考えだったとは、アフィーリア様の意を汲み取れず侍従としては失格ですね」
「そ……んなことはないのよ!」
アフィーリアは立ち上がって私に詰め寄ってきました。
「カインにはとても助けられているし、カインの意見はまともだと思うわ」
おや? おや?
「だけど……」
「だけど? なにですか?」
「頑張っている私をもっと褒めてくれてもいいと思うの」
「褒めていますよ?」
「足りない! 全然足りない!」
アフィーリアの金色の髪を撫でながら言葉にします。
「私は頑張っているアフィーリアも好きですが、こうして素直に言葉にしてくれるアフィーリアも好きですよ」
「それ、褒めてるの?」
「褒めていますよ」
「ならいいわ」
そう言ってアフィーリアは目を閉じて力なく倒れていくのを抱きかかえます。
いつも酔っているときのように、素直だと嬉しいのですが。
明日の朝には、今のことは綺麗さっぱりと忘れて、頭が痛いと言っていることでしょうね。
寝ているアフィーリアの額に口づけをして、私は寝室につれていくのでした。
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