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第二話「解き放たれし力」
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ジャックは行く当てもなく、ただひたすらに足を進めた。
デミオンへ何も言い返せなかった自分が情けなく、苛立ちを覚えていた。
「クソッ!」
と、思わず吐き捨てる。
すると、背後から誰かに呼び止められた。
「おーい! ちょっと待ってくれ!」
その声に振り返ると、おっさんが走り迫ってくるのが見えた。
「うわっ! いきなりなんですか!?」
ジャックはひどく戸惑った。
まさか力ずくで魔石を買わせるつもりなのだろうか。
ジャックの警戒心は強まっていく。
だが、おっさんの発言はあまりに予想外のものだった。
「はぁ、はぁ、その……こいつをただで譲ってやろうと思って……」
おっさんは息を切らしながら、真剣な眼差しでそう言った。
手のひらには先程の魔石が乗っている。
「え!? あなたさっきまで金貨100枚だとか言ってたじゃないですか。それがいきなりただって……」
「まぁなんというか、いい年した大人が子供相手に情けねぇと思ってよ。それにこんなやり方で金を稼いでるようじゃ、娘に叱られちまうしな」
おっさんは頭を掻きながら、照れ隠しをするかのようにアハハと笑っていた。
一方のジャックは、困惑が深まっていくばかりである。
「いや、だとしても極端すぎませんか? わざわざただにしなくても……」
「子供はつべこべ言わずに貰っておけばいいんだよ」
おっさんはそう言うと、魔石を無理やり手渡した。
念願の魔石を手に入れることができ、もちろん嬉しいことには嬉しい。
だが同時に、おっさんからデミオンとの一件を気遣われているような感じがしてバツが悪かった。
「そこまで言うなら有難く貰っておきますけど……」
「ああ。そうしてくれ」
おっさんは満足そうに微笑みながら頷いている。
ここまで人が変わってしまうと、かえって気味が悪いものだ。
ジャックは思わず身震いした。
「それはそうと、今ここで魔術を発動してみてくれないか? そいつがどれだけの力を持っているのか、俺も見てみたいしな」
おっさんはジャックの手のひらに乗る魔石を指さしていた。
まさかあれだけしつこく売りつけてきた商品について詳しく知らなかったとは。
呆れた話である。
とはいえ、ジャックもこの魔石の力が気になっていた。
ただで貰ったわけだし、ここは協力しておくべきだろう。
「いいですけど、魔力を失って気絶するかもしれないので、あまり大きな魔術は発動できませんよ?」
「初級魔術より大きければ、どんなものでも大丈夫だ」
「なるほど。そういうことであれば……」
ジャックは少し考え込むと、ハッと何かを思いついた。
そして空を見上げ、魔石を持つ右手を太陽にかざす。
「美しき水源を操られし御魂よ!
我に大いなる清流の恵みを、アクアベネディクション!」
と、ジャックが詠唱を終えた次の瞬間!
彼の右手から水が空を目掛けて一気にぶっ放された。
「うおあっ!」
ジャックは目を丸くして驚き、思わず声を上げた。
周囲からも視線が集中し、次第にどよめき始める。
「す、凄い! この魔石、凄いですよ!」
ジャックは自分の右手を見て興奮を抑えきれずにいた。
これまでの彼であれば、せいぜい水の塊を作ることしかできなかった。
それも、こぶし大が限界……。
それが今となっては、とてつもない勢いで水が流れ続け、止まることを知らない。
やはり魔石というのは凄まじい代物である。
「ほぉー、こりゃたまげた! まさかここまで魔力が高まるとはなぁ」
おっさんは魔石の効力に驚きつつも、感心しているようだった。
だがそれも束の間、ジャックが突然ふらつき始めた。
いくら魔石があるとはいえ、彼の体は魔力を消耗することに慣れていなかったのである。
「お、おい、大丈夫か?」
と、おっさんが心配したその時、
「やっべ!」
ジャックはよろめいてバランスを崩し、そのまま尻から倒れてしまった。
そして、勢い余って水を前方にぶっ放してしまう。
すると次の瞬間!
バッシャーン!!
と、何かに水がぶち当たるような音がした。
それと同時に、「キャッ!」という甲高い悲鳴が聞こえた。
「いってぇ……」
ジャックはゆっくりと立ち上がり、地面に叩きつけられた尻を撫でる。
ふと気づくと、おっさんがあんぐりと口を開けて言葉を失っていた。
その視線は、ジャックが水をぶっ放した方へと向いている。
なんだか嫌な予感がしたジャックは、恐る恐る目を向けてみる。
「……あっ!」
ジャックはその光景に息を呑んだ。
そこには、彼と同い年くらいと思しき少女がずぶ濡れで立っていた。
美しい亜麻色の髪をポニーテールにしている。
透き通るような白い肌といい、長い睫毛に覆われた大きな瞳といい、非常に整った顔立ちだ。
ジャックは自分のしでかしたことに焦りつつも、すぐさま彼女に歩み寄った。
「あのぉ、ごめんなさい。大丈……」
とその時、彼女がジャックに向かって鬼の形相で飛びかかった。
そして、マウントポジションを取られたかと思えば、
パァン! パァン! パァン! パァン! パァン!
と、左右の頬を複数回に渡って平手打ちされた。
「よくも水をぶっかけてくれたわね! 覚悟しなさい!」
「だ、誰か助けて! このままだと死ぬぅ!」
ジャックは命の危険を感じ、必死に叫んだ。
すると、おっさんが急いで駆けつけ、彼女の腕を後ろから掴んだ。
「こら! やめなさいシエラ!」
「離してよ、お父さん!」
(……え? は? お父さん!?)
ジャックは二人の会話に耳を疑った。
なんと、おっさんとこの暴力娘は親子だったのだ。
デミオンへ何も言い返せなかった自分が情けなく、苛立ちを覚えていた。
「クソッ!」
と、思わず吐き捨てる。
すると、背後から誰かに呼び止められた。
「おーい! ちょっと待ってくれ!」
その声に振り返ると、おっさんが走り迫ってくるのが見えた。
「うわっ! いきなりなんですか!?」
ジャックはひどく戸惑った。
まさか力ずくで魔石を買わせるつもりなのだろうか。
ジャックの警戒心は強まっていく。
だが、おっさんの発言はあまりに予想外のものだった。
「はぁ、はぁ、その……こいつをただで譲ってやろうと思って……」
おっさんは息を切らしながら、真剣な眼差しでそう言った。
手のひらには先程の魔石が乗っている。
「え!? あなたさっきまで金貨100枚だとか言ってたじゃないですか。それがいきなりただって……」
「まぁなんというか、いい年した大人が子供相手に情けねぇと思ってよ。それにこんなやり方で金を稼いでるようじゃ、娘に叱られちまうしな」
おっさんは頭を掻きながら、照れ隠しをするかのようにアハハと笑っていた。
一方のジャックは、困惑が深まっていくばかりである。
「いや、だとしても極端すぎませんか? わざわざただにしなくても……」
「子供はつべこべ言わずに貰っておけばいいんだよ」
おっさんはそう言うと、魔石を無理やり手渡した。
念願の魔石を手に入れることができ、もちろん嬉しいことには嬉しい。
だが同時に、おっさんからデミオンとの一件を気遣われているような感じがしてバツが悪かった。
「そこまで言うなら有難く貰っておきますけど……」
「ああ。そうしてくれ」
おっさんは満足そうに微笑みながら頷いている。
ここまで人が変わってしまうと、かえって気味が悪いものだ。
ジャックは思わず身震いした。
「それはそうと、今ここで魔術を発動してみてくれないか? そいつがどれだけの力を持っているのか、俺も見てみたいしな」
おっさんはジャックの手のひらに乗る魔石を指さしていた。
まさかあれだけしつこく売りつけてきた商品について詳しく知らなかったとは。
呆れた話である。
とはいえ、ジャックもこの魔石の力が気になっていた。
ただで貰ったわけだし、ここは協力しておくべきだろう。
「いいですけど、魔力を失って気絶するかもしれないので、あまり大きな魔術は発動できませんよ?」
「初級魔術より大きければ、どんなものでも大丈夫だ」
「なるほど。そういうことであれば……」
ジャックは少し考え込むと、ハッと何かを思いついた。
そして空を見上げ、魔石を持つ右手を太陽にかざす。
「美しき水源を操られし御魂よ!
我に大いなる清流の恵みを、アクアベネディクション!」
と、ジャックが詠唱を終えた次の瞬間!
彼の右手から水が空を目掛けて一気にぶっ放された。
「うおあっ!」
ジャックは目を丸くして驚き、思わず声を上げた。
周囲からも視線が集中し、次第にどよめき始める。
「す、凄い! この魔石、凄いですよ!」
ジャックは自分の右手を見て興奮を抑えきれずにいた。
これまでの彼であれば、せいぜい水の塊を作ることしかできなかった。
それも、こぶし大が限界……。
それが今となっては、とてつもない勢いで水が流れ続け、止まることを知らない。
やはり魔石というのは凄まじい代物である。
「ほぉー、こりゃたまげた! まさかここまで魔力が高まるとはなぁ」
おっさんは魔石の効力に驚きつつも、感心しているようだった。
だがそれも束の間、ジャックが突然ふらつき始めた。
いくら魔石があるとはいえ、彼の体は魔力を消耗することに慣れていなかったのである。
「お、おい、大丈夫か?」
と、おっさんが心配したその時、
「やっべ!」
ジャックはよろめいてバランスを崩し、そのまま尻から倒れてしまった。
そして、勢い余って水を前方にぶっ放してしまう。
すると次の瞬間!
バッシャーン!!
と、何かに水がぶち当たるような音がした。
それと同時に、「キャッ!」という甲高い悲鳴が聞こえた。
「いってぇ……」
ジャックはゆっくりと立ち上がり、地面に叩きつけられた尻を撫でる。
ふと気づくと、おっさんがあんぐりと口を開けて言葉を失っていた。
その視線は、ジャックが水をぶっ放した方へと向いている。
なんだか嫌な予感がしたジャックは、恐る恐る目を向けてみる。
「……あっ!」
ジャックはその光景に息を呑んだ。
そこには、彼と同い年くらいと思しき少女がずぶ濡れで立っていた。
美しい亜麻色の髪をポニーテールにしている。
透き通るような白い肌といい、長い睫毛に覆われた大きな瞳といい、非常に整った顔立ちだ。
ジャックは自分のしでかしたことに焦りつつも、すぐさま彼女に歩み寄った。
「あのぉ、ごめんなさい。大丈……」
とその時、彼女がジャックに向かって鬼の形相で飛びかかった。
そして、マウントポジションを取られたかと思えば、
パァン! パァン! パァン! パァン! パァン!
と、左右の頬を複数回に渡って平手打ちされた。
「よくも水をぶっかけてくれたわね! 覚悟しなさい!」
「だ、誰か助けて! このままだと死ぬぅ!」
ジャックは命の危険を感じ、必死に叫んだ。
すると、おっさんが急いで駆けつけ、彼女の腕を後ろから掴んだ。
「こら! やめなさいシエラ!」
「離してよ、お父さん!」
(……え? は? お父さん!?)
ジャックは二人の会話に耳を疑った。
なんと、おっさんとこの暴力娘は親子だったのだ。
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