神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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35 辺境の地2

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 茶会が始まってしばらくした頃、遅れて母娘が姿を現した。

 母の沼安姫花は、深紅の絹を惜しげもなく用いた豪奢なドレスを纏っていた。胸元は大胆に開き、背や肩も大きく露わにしている。きらめく宝石と金糸の刺繍が光を反射し、遠目には目を引く。
 だが、その姿はどこか不自然で、華やかさよりも違和感が勝っていた。実のところ、支度を任されたのは通いの家政婦で、普段は炊事洗濯を担うだけの人物。衣装合わせや化粧に心得があるわけもなく、悪戦苦闘の末、どうにか形にしたのがこの有様である。仕上がりはいまひとつで、姫花は支度の最中、苛立ちを募らせては家政婦に当たり散らしていたのだった。

 娘の花蓮もまた、母に負けじと着飾っていた。田舎育ちの子供たちになめられてはならぬと意気込んだのだろう、選んだのは一番のお気に入りの宝石を散りばめた鮮やかなピンクのドレス。だが通いの家政婦の不器用な手による結い上げた髪は左右がわずかに不揃いで、幼さを残す平凡な顔立ちと豪華なドレスとの釣り合いも取れていない。華美な衣装に“着せられている”印象が強く、場の空気から浮いてしまっていた。

 周囲の婦人方や子供たちは、思わず視線を向ける。だがそこにあるのは称賛ではなく、困惑と冷ややかさだ。

 「……なぜこんなに遅れて?」
 「場違いも甚だしいわね」

 そんな囁きがあちこちで漏れる中、母娘はむしろ得意げに胸を張り、自分たちが視線を集めているのだと勘違いしていた。
 しかし、その派手な装いも振る舞いも、この辺境の茶会の穏やかな空気に溶け込むことはなく――痛々しいほどに場違いであった。

 ざわめきが残る中、辺境
領主夫人がゆったりと立ち上がった。
 にこやかな笑みを浮かべながらも、その瞳にはどこか冷ややかな光が宿っている。

「まあ……姫花殿、花蓮殿。ようこそいらしてくださいました。ずいぶんとお支度にお時間がかかったようですが……さぞ念入りにされたのでしょう」

 柔らかな言葉に包まれていながら、その一言の奥に潜む棘を、場にいた者は皆、敏感に感じ取った。
 会場のあちこちで、抑えきれぬクスクス笑いが漏れ始める。

「さあ、どうぞこちらへ」
 夫人は優雅に扇を動かし、座席を示した。
 そして花蓮には、領主家の子どもたちや隣領の子息・令嬢が集う方を示した。

「お母様とお嬢様、せっかくですから、それぞれで楽しんでいらしてね」

 場に満ちる視線は冷ややかで、二人のきらびやかな衣装はその凡庸さをいっそう際立たせていた。
 ひそやかな笑い声と視線に晒されながら、姫花は夫人たちの輪へ、花蓮は子どもたちの集まりへと導かれていく。

 まるで舞台に上げられた役者のように、注目の的となる母娘。
 それこそが、領主夫人の仕掛けた罠であることに、二人はまだ気づいていなかった。
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